01 日々これ新たなり

PEACE BOATで世界一周の旅ーその19

南半球は太陽が西から昇る!?

5,6人で囲む朝の食事のテーブルは、前日の出来事や各自の近況報告で会話が弾みます。知らない同士ですが1ヶ月も経つとどこかでお顔を見たかなと思う人も出てきます。ちょうど、太陽が昇ってくる時刻でした。水平線の彼方から赤い太陽が昇ってくる光景は、いつ見てもいいものです。

角際で写真を撮っていたご婦人が「あら、今日は太陽が西から昇っている」とつぶやきました。船は北に向かって航海しているので、太陽は船の右方向に見えるはずです。それが左方向に見えている。だれかが「南半球は、太陽は西から昇るんだよ」というと「そんなこと学校で習わなかったよね」と言います。なんとなくそれで皆、納得したようでした。

筆者は、そうだろうかと頭の中で地球を思い浮かべて考えていましたが、納得いかない。ヘンだな。進行方向の左側に太陽がある。ということは船は南に向かっている。謎は、翌日の朝の食卓で解けました。

急患発生で船がナミベアに戻った!

前日、急患が発生したので船は反転し、ナミベアに戻ったと言うのです。船内放送で3回も知らせ、ナミベアには急患を搬送するヘリコプターがないので、高速モーターボートが接近し、船から降ろした急患を収容して戻って行ったというのです。

患者さんは若い人だったようで、皆、無事を祈る言葉であふれていました。すでに船で亡くなった方が2人出ているという話も聞きました。PEACE BOATスタッフに聞いた話ではありませんが、食卓の話題ではよく出てきます。スタッフも入れて1500人の乗員がいるのですから、そういうこともありうる話です。

PEACE BOATに申し込んだとき、70歳以上は健康診断書を出すように言われ、筆者は一か月以内の人間ドックの診断書を提出して、乗船OKをもらった身でした。

ともかくも太陽が西から昇ったと思っていたとき、船は急患収容のため、反転してナミベアに戻ったので南に向かって航海していたのです。太陽はやはり東から昇っていた! 

謎が解けたとき、みんなで大笑いしました。どおりで船の速度が速かったことを筆者は思い起こしました。窓から流れゆく光景を見ていると、いつもの船の速度より速いなと思ったのです。しかし、船内放送で3回も急患発生したことを告知したことに全く気がつかなかったことにショックを覚えました。PCで何か作業をしているときに、船内放送があっても上の空でいることが少なくありません。

船内放送は、英語、日本語、中国語、韓国語と同じことを4回も放送するので、うるさいなあと思うことが多いのです。日本語のところできちんと聴いていなければ、あとは雑音と同じです。

急患を引き渡して船が再び反転して北へ向かったときに、あのむせび泣く汽笛を一回だけ鳴らしたと言うのです。急患搬送のお礼と患者には無事に帰って来いよと鳴らしたのでしょうが、筆者はこれも聴いていませんでした。そうこうしているうち、部屋のキーを中に置いたまま外に出てしまい、レセプションまで行って開けてもらうという失態も演じました。我が国の劣化を嘆く前に自らの劣化を反省するという日になりました。

 

趣味道楽から教養テーマまで各種の集まり

PEACE BOAT乗船客が自主的に企画して発表したり行動を起こす「自主企画」というイベントがあります。1300人(寄港地で乗り降りの乗客がいるので、大体の人数です)の人がいるので、趣味・道楽から始まってスポーツの類い、文化・芸術、教養まで人々の興味のあるものすべてに人が集まるもんだと感心しています。

例えばお習字、折り紙、朗読会、ペン字履修などに中国の舞踊、太極拳、ヨガなども会場を覗いてみたらほぼ満杯の盛況です。ヨガやサルサなどは、大きな会場やプールの周囲の回廊をうまく使って楽しんでいます。

1IMG_6150小中学校の教育を考える会に集まり、早速意見交換会が始まりました

小中学校の教育を考える会が発足

筆者が日本の学校給食はいまや世界一であるという主旨で講演をしたことがきっかけになって、若い世代の乗船客と言葉を交わす仲になりました。その中に、中学校の国語の教師を4年務めて辞め、船に乗ってきた女性がいました。理由を聞いてみると、教師・学校という職場に飽き足らず、生き方を考え直したいというようなことを言います。

21世紀構想研究会の創設から25年を記念して開催したシンポジウムは教育がテーマだったので、そんな話から、船でも教育問題を提起する自主企画をしようかという話に発展しました。そこに大学の教育学部3年生の男子学生も加わることになり、3人が発案者になり「小学校の教育を考える」自主企画を立ち上げました。

20人以上の集まりにびっくり

当初、どのくらい集まってくるか不安もありましたが、開いてみれば20人以上が会場に集まってきました。船の中で知り合いになった元小中学校の教員をしていたご夫妻、国立大学の教授をしていたご婦人など、教育関係者も顔を見せており、初等中等教育が劣化をしている現状を憂えることで一致していました。

2IMG_6153参加者は意見を付箋に書いて出し合い、終了後の整理に役立たせます。

学校現場ではこのような方法がよくとられているようで、勉強になりました。
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これから現場で何が問題になっているのか。その現状を出し合い、解決する方法を模索してまとめ、それを行政当局や政治家に届けて対応策を講じてもらおういう狙いです。最終的には船でシンポジウムを開催してまとめるという計画です。

参加者の意見をどのように集約するのか。主催した若者たちは、大きな付箋を配布して、そこに全員の意見をメモしてもらい、それを集めて整理するという方法には感心しました。教室の授業では、よくやっているという方法だとか。こうして教育問題を討論してよりよき現場の実現に船の同士は動き出しました。

 


岸田総理が説明すればするほど国葬反対に傾いていきます

9月8日の国会審議で野党代表と岸田総理のやり取りで次のようなことが明確になりました。
* 国葬を定めた法制度はない。これで佐藤栄作元総理も国葬を見送った。当時の内閣法制局長官は、法制度がないので国葬とするには、立法・行政・司法の了承が必要だとの見解だった。

羽鳥モーニングショーより          9月9日朝のテレ朝・羽鳥モーニングショーより

* 今回の国葬は、国会に相談もなく総理と内閣だけで決めた。国会に相談なく国葬を決めたのは戦後初めて。
* 国葬を決めた4つの理由(①最長の任期、②経済と外交で大きな実績、③世界が弔意、④参院選中の非業の死)を繰り返し岸田総理が言明し、これ以上の説明はなかった。しかし②についての安倍政権の評価は、否定する意見も強くまだ評価は固まっていない。
* 岸田総理は、国葬儀は行政権によるものであると「新見解」を披歴。内閣府設置法と閣議決定だけで決めたと言明した。
* 全額税金で実施することに総理は「世界各国からの弔意を受け止め、国の行事として葬儀を行うことが適切」と答弁した。
* 安倍元総理と旧統一教会との関係を問われると「お亡くなりになっているので限界がある(ので調査はできない)」と表明。

岸田総理がこのような見解を、何度も何度も繰り返せばするほど、国葬は賛成できない方へ傾いていきます。


国葬に反対する国民感情をあなどる政治センス

国を挙げて取り組む国葬という祭事に、過半数の国民が反対するのは、世界でも多分初めての珍事ではないでしょうか。各種世論調査結果は、みなそう出ています。筆者は7月15日のフェイスブックにアップした「歴史に刻まれた4つの汚点」の一つとして国葬反対を主張しました。「数々の反社会的な行動を繰り返し、問題を起こしていた団体とかかわってきた元総理を国葬として執り行うことに筆者は反対します。これこそ歴史に残る汚点と断じます」と表明しました。
8月5-7日調査の読売新聞世論調査では、国葬を評価する(賛成)49%、評価しない(反対)46%でしたが、9月2-4日の同世論調査では、賛成38%に対し反対派56%に大逆転しています。
日増しに明らかになっていく旧統一教会の反社会的活動と政治の癒着が次々と明らかになり、国民は不信感を募らせていきました。
それに拍車をかけたのが自民党の有力議員の「言い訳」でした。一見明白に虚言と見える言い訳を言ったり、世論動向を見ながら小出しに言い方を変えながら、最後の最後に「今後関りを持たない」という表現に変えました。国民をあなどる変転です。
国葬経費の説明も、岸田総理は当初の閣議決定では2億5千万円と発表していましたが、その数字は信用できないとの指摘が相次ぎ、6日には総額16億6千万と変えてきました。
極め付きは自民党・二階俊博・元幹事長の講演会での発言です。旧統一教会との関係で批判を浴びていることに対し「自民党はびくともしないよ」と発言し、国葬については「やらなかったらバカだ」と発言しました。この程度の語彙力でしか語れない人物が政界で幅を利かせているのです。国葬に反対する国民が増えていくのは当然ではないでしょうか。

「私がまるで安倍元総理を殺してしまったような錯覚に陥った」

NHKクローズアップ現代(クロ現、9月5日夜7時半から放映)は、息子からの心の叫びを受け、苦しみを語った旧統一教会信者の苦悩をこう語らせました。安倍総理銃撃事件を受けたジャーナリズムの問題意識を凝縮した、すごい番組でした。

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銃撃事件のよってきたる背景を語っており、高額献金に応じて一家が自己破産した実例など多くの悲惨な信者の話と信者同士の間に生まれた信者二世の苦悩を余すところなく報告した番組でした。

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これまでテレビ局各社のワイドショーや特番、さらに出版社の週刊誌・月刊誌なども特集記事で埋めてきました。どの報告も旧統一教会の反社会的活動、財産収奪、人権侵害などを報告してきました。

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新聞を除くジャーナリズムが、これほど一致した姿勢と視点で問題を指摘し、政治との関りで国家の危機を訴えてきた例は歴史的になかったことです。全国紙(東京新聞を除く)は、いったいどのような編集方針で旧統一教会の問題点を読者に伝えてきたのでしょうか。

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この日のクロ現では、安倍元総理の銃撃事件のあと、両親が旧統一教会信者同士の間で生まれた信者二世が孤立を深めていた現実を報告しました。韓国の教団関係者は「いまだ多額の献金をするのは日本くらいだ。日本の信徒は、日本よりも韓国の協会運営を助けるために献金している」と語っていました。

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二世信者になった人々の苦しみと、旧統一教会の理不尽で許しがたい教義と献金強要の有様を様々な証言で報告しました。

多額の献金、信仰や霊感商法の強要。そして2009年に、教団がコンプライアンス宣言したあとでも、困窮した家庭に対し高額献金を強要してきた現実を実証的に放映しました。献金による経済的な損害だけでなく、二世は人権も侵害されてきたと訴えました。苦しむ宗教二世の子を持つ一世信者のなかで、安倍銃撃事件をきっかけに脱会した一世の苦しみも語らせました。

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見なかった方は、是非、見逃し配信から見てください。歴史に残る番組です。

https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/plus/


統一教会は収益事業が中心のビジネス宗教だ

「統一教会は収益事業が中心のビジネス宗教だ」
2年間、信者になりすまして潜入取材した韓国人女性ジャーナリストが証言
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旧統一教会の反社会的活動とその被害者に焦点を当て、衝撃的な「反社実証番組」を制作・報道しているTBSの報道特集。さる8月27日に放映された「元信者5人の人妻たちが語る旧統一教会の実態」を見逃し配信で見て仰天しました。
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5人の元信者妻たちが、合同結婚式で韓国人と強制的に「結婚」させられた後の信じがたい「人生」を赤裸々に語りました。これは人権侵害であり、犯罪であることは明らかです。
後半で2012年から2年間、信者を装って統一教会に潜入取材した韓国人ジャーナリスト、オ・ミョンオクさん(「宗教と真理」代表)が語ったこの教団の実態は、次のようなものでした。
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「最初は他のカルト宗教を模倣した新興宗教から始まったが、次第に事業化されて家庭を破壊する集団になった。私は、ビジネス宗教とみている」
そして収益事業が中心であり、所有している企業が多岐にわたっていると証言。
「教団の収益のために家庭と人生を破壊された被害者が多数いる」ことを証言し、さらに重大な発言がありました。
「自らの利益と名声のために、反社会的な集団と裏で関係を持つ。正体を知っていながら手を組み、成功のためなら何でもする人たちのせいで旧統一教会の被害者は消えない」
元信者は選挙のとき「投票はこの人にしてくださいと連絡がきた」と語り「(教団の)正義のためには嘘をついてもいいのが旧統一教会だ」と証言しました。
TBS報道特集の一連の旧統一教会特番には、反社に立ち向かうジャーナリス魂を見ました。是非、見逃し配信から見ることをお勧めします。

自民党は旧統一教会と関係断つとは思わないが72%

自民党は旧統一教会と関係断つとは思わないが72%
読売新聞の世論調査結果は深刻な政治不信
読売新聞が9月2-4日に実施した世論調査結果は、深刻な政治不信を露呈しています。自民党が旧統一教会と「関係を断つことを自民党の基本方針とする」ことの表明に「評価する」とした人が76%ありました。ところが、自民党が旧統一教会と関係を断つことができるかどうか質問したところ、断つとは思わないが72%、思うが21%でした。
つまり関係を断つことは「評価する」が、実際には「断つことはできないでしょうね」という世論の「本音」表明です。これこそ政治(政党)不信の表れでしょう。自民党が旧統一教会と関係を断つことに反対する人はいないでしょうから、設問自体に意味がなかったということかも知れません。
安倍元総理の国葬を評価する(賛成)、評価しない(反対)では、反対が56%で賛成38%を大きく上回りました。前回8月10、11日調査では賛成がわずかに上回っていましたが、今回は若年層でも大幅に反対に傾きました。政府の説明不足のせいなどではないでしょう。説明すればするほど反対が増えると思います。これが国民感情であり、国葬反対の国民世論は、もはや動かしようがないでしょう。
写真のグラフはいずれも、8月5日付け読売新聞朝刊に掲載されたものです。
読売新聞世論調査2
 
読売新聞世論調査1-1


旧統一教会と安倍元総理の「癒着」を実証的に報道

NHK番組「クロ現(クローズアップ現代)」で旧統一教会と安倍元総理の「癒着」を実証的に報道

8月29日午後7時半からのNHKクロ現は、旧統一教会と自民党・安倍派との水面下での癒着ぶりを、実証的に報道しました。旧統一教会側にも釈明を語らせていますが、番組の意図・目的は、旧統一教会と安倍元総理、安倍派との「癒着」を語るためのものであることは、ジャーナリストの感覚からよくわかりました。

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このほかの報道内容で重要な点は次の通りです

・安倍元総理が旧統一教会関連団体のUPFのイベントにビデオメッセージを送ったことについて、現教団トップの梶栗正義氏に次のように語らせました。

「安倍元総理と考えが同じなので様々な勉強会を各地で行い、安倍氏の考えに賛同し、各地で選挙応援をしてきた」

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・安倍氏のビデオメッセージを見た元信者は「安倍元総理が教会を肯定したことに絶望した」「終わったなという気持ちになった」と語らせた映像を放映しました。

・旧統一教会周辺に、政治的ないくつかの団体があるが、そこに(霊感商法などで集めた)旧統一教会への献金が流れ、活動の原資になっていたことを梶栗氏に婉曲的に語らせて放映しました。

・安倍氏の8年弱の政権にあって6度の国政選挙で、旧統一教会が示した「誠意」を安倍氏が評価していたことを梶栗氏は語っていまた。

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・水面下でつながっていた政治との関係が公になることや安倍氏との近さを教団内で心配する声がありました。教団の広告塔のように(安倍氏・自民党を)使っているのではないかとの声があったことを紹介しました。

・旧統一教会は急速に安倍元総理に近づき、選挙運動、秘書スタッフなどを通じて安倍派に浸透しました。その代表格が萩生田議員でした。萩生田氏が旧統一教会との関連を否定的に言うことを知った信者に「むなしいですね」と語らせ、萩生田氏の弁明が不正義である印象を実証的に示しました。

このほかにも次のような重要な事実を報道しました。

・政策に影響を出すためには、会員が地方議員になったり、国会議員の秘書になり中央政界へ波及する戦略をとりました。

・旧統一教会の思想に沿う政策が実現するように旧統一教会は地方政界を後押ししてきました。地方で条例が多数重なっていけばひとつの土台になると旧統一教会幹部に語らせました。

・「地方の動きを中央でもどうでしょうか」と働きかけることができたと旧統一教会側に語らせました。

・旧統一教会に汚染されていた富山県の県議38人のうち、6人が選挙支援を受けていました。

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・旧統一教会のこれまでの活動が、安倍氏銃撃事件に結びついたのではないかとの質問に、梶栗正義氏はそのような受け止めがあったならば「重く受け止めたい」と語らせました。これこそ旧統一教会の真意だったのです。それを示すために、この場面を編集したのです。

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たった30分の番組でしたが、旧統一教会と安倍氏・安倍派の親密な歴史的交流を実証的に映像化したもので、見方によっては安倍氏の銃撃をした容疑者の言い分に根拠があると言わんばかりの内容でした。

再放送があると思いますので、是非、そちらを見てもらいたいと思います。この番組を制作した取材記者と編集デスクに敬意を表します。


新聞の黄金時代を駆け抜けた記者魂の回顧録

鶴岡憲一著「新聞記者人生」(花伝社)

新聞記者人生

特定のイデオロギーに傾かず、物事は是々非々で判断する

最近、新聞を代表とするメディアの停滞ぶりが指摘されています。かつて読売新聞記者をしていた筆者も同感であり、時代の変革と共に新聞記者活動が驚くほど変わってしまったことは、日々読んでいる紙面を通じて感じてきました。

昭和時代の新聞記者は、こうではなかったという思いに応えるかのように本書が発刊されました。

著者の鶴岡憲一氏は、読売新聞社会部・解説部・編集委員・論説委員と筆者と似たようなコースで記者活動をしてきたもので、テーマは違っても原稿執筆にかける取材活動の視点は同じでした。

ここに書かれている内容は、冒頭の民訴法改正をめぐる動きと顛末から始まり、日航ジャンボ機事故の原因追及はじめ、欠陥車問題、独禁法違反事件、温暖化京都会議、情報公開法問題などの取材・執筆を通じての裏面史は、読んでいて迫力がありました。まさに当事者としてどっぷりとつかった記者でなければ出くわさない問題であり、そこをどう切り抜けたか、敗北したかを淡々と語った記者人生として秀逸でした。

昭和時代の新聞記者は、第四の権力とか社会の木鐸とか言われた時代であり、社旗をはためかせて疾走する事件記者の活動は、NHK日曜日の連続ドラマでも人気番組となり、時代を映す社会現象でもありました。

著者の記者活動で貫かれていたことは、社会正義であり真実に迫ろうとする記者魂でした。淡々と書いているのですが、それが自慢話になっているかも知れないという感想をエピローグで語っています。自慢話に「聞こえる」シーンもあったかもしれませんが、それは真実を語った迫力であり、読んでいていささかも違和感がありませんでした。

リベラルだった往時の新聞記者が確信をもって活動したその中身は、自慢できるものだったのです。その流れが、この書籍の中を貫いていました。「特定のイデオロギーに傾かず、物事は是々非々で判断する」という新聞記者の取材姿勢を書いていますが、全くその通りであり、私たちはそういう時代の新聞記者でした。読みながら著者と同時代に活動できた幸運に感謝していました。


先月だけで90件余の相次ぐ被害者相談、NHKが報道

8月27日(土)午後7時のNHKニュースで、旧統一教会の被害者相談が急増しており、先月1か月だけで90件余に上っていると報道しました。相談内容に具体的に言及し、20歳代の「宗教二世で元信者」の悩みを語らせていました。

1相次ぐ相談

2相談できなかった

「不安とか恐怖とか憎しみ恨みを打ち明けられる存在がいままでなかった」との告白を紹介しました。さらに安倍元総理の銃撃事件が起きてから旧統一教会が間違っていることが多いと気がついたことも語らせていました。

3間違い

4頑張れ

NHKは、このところ、被害者に焦点を当てて事実を追跡報道しているように感じます。被害者家族の会の副会長が「諦めないで何とかなるので大変だが頑張ってほしい」というコメントを紹介していました。

5何度も相談

また霊感商法で被害者に売りつけた経典などの写真を入れて、旧統一教会のインチキぶりを印象付けていました。新聞(東京新聞を除く)がやらなくてもNHKなど民放テレビ局が頑張って調査報道していると思います。


この夏をしたたかに乗り越える力

元総理が手製の散弾銃で撃たれて死亡する事件をきっかけに、旧統一教会問題がマグマのごとく噴出し、世の中が激しく揺れ動いています。嘘を何とも思わない教養のない人物たちが繰り広げている品性下劣な言動。それに振り回され、被害にあってきた善良な国民。何もかも知っていながら「傍観」してきた一群の無力なメディア。それを知って切歯扼腕する「昭和時代」の年寄りたち。

日本はいま、コロナ、ウクライナ、台湾・中国問題を抱えながら、忍び寄るスタグフレーションの足音におののいています。そして劣化する時代の「覇者」は、なんといっても賄賂をもらって逮捕された五輪組織委員会の理事でしょう。このような悪質で稚拙な犯罪が、日本社会の裏で浸潤していたとは驚きです。

酷暑と集中豪雨とコロナの2022年の夏。ここをしたたかに乗り越え、課題を着実に総括した上で、私たちの時代を作る力を持ちたいと思います。


正体隠しと様子見対応は表裏一体か

旧統一教会で最も許しがたいことは正体隠しです。これは初期の旧統一教会の迷惑活動を取材した体験から染みついた筆者の評価であり、今も変わっていません。正体を隠して善良な市民に接近する手口は、詐欺師と暴力団が代表格です。最初から正体を出して接近すれば、みな逃げるからです。

旧統一教会が立派な教義なら、最初から堂々と正体を名乗り活動を展開すればいいことです。旧統一教会は、信者に献金ノルマを課したり、いったん上納された献金は、返金義務がないとする「合意書」を献金者から取り、返金の請求を放棄させる文書に署名捺印させています。献金後の返金要求を法的に難しくしている手口です。善意に付け込んでカネをむしり取るようなやり方を私たちは、反社会的行為と言っています。

岸田内閣政務3役(大臣・副大臣・政務官)を務める自民・公明の国会議員73人のうち、32人が旧統一教会と接点がありました(NHKニュース)。その内訳は閣僚8人、副大臣11人、政務官12人などになっており、19人は行事・イベントに本人もしくは秘書が出席していました(読売新聞8月25日付け朝刊)。

国会議員は、いまになって接点をもった団体や組織を旧統一教会とは知らなかったなどと釈明しています。そうかも知れません。しかし今後の対応については、あいまいに付け足す言い方をし、国民の非難が強まるにしたがって「党としてもう一段踏み込んだ対応が必要だ」(8月24日の岸田首相)と対応を変えてきました。萩生田政調会長は、あいまいな言い方から「今後は関係を持たない」と言い方を変えてきました(8月24日BSフジ)。これは、国民の批判を見ながら小出しに対応策を変えてきたもので、できたら時間とともにうやむやにしたいとする姑息な考えではないでしょうか。

「正体隠しと様子見対応」。表裏一体の関係に見えてきました。