沖縄返還交渉の密使・密約の書籍を上梓しました

沖縄本写真2020年5月2日

 この本の著者として訴えたいと思います

 いまから50年前の1972年5月15日、沖縄の施政権がアメリカから日本に復帰しました。その節目に、返還交渉のときに佐藤栄作総理は、どのようなことをしていたか検証した本です。

 返還から20年を経過したころから、アメリカで公文書公開が始まり、沖縄返還交渉の全貌が分かってきました。その文書をみると、佐藤政権が国会で説明していることは嘘が多く、国民も国会も知らない交渉条件で返還が実現していました。米軍の沖縄基地の自由使用と有事の核持ち込みを日本側がアメリカに保障していました。密約です。

 国民・国会に嘘をついてまで返還されたことが原型となり、今の米軍への「思いやり予算」の原型を作りました。ウクライナ戦争によって、ロシアの核使用が現実として語られる時代になりましたが、核使用の戦争に拡大したら、日本はどのような対応をするのか。日米安全保障では、どのような約束になっているのか。

 佐藤総理は、自民党総裁任期中に沖縄返還を実現するために、公式に返還交渉している外務省にも相談せず、勝手に民間人の密使を使って密約を結び、国会と国民に嘘で固めた国会対応をしていました。そのことを日本では、政治の場でもメディアでも学会でもきちんと総括されたことがありません。まして多くの国民はよく理解しないままに放置されてきました。

 民主国家が日本で育たない重要なケースとしてこの本を書きました。同時に佐藤総理は、任期が切れる直前には、別の民間人密使を使って中国との国交正常化を目指す交渉を香港を舞台に極秘裏に進めていました。

 日中復興でも北京と密使外交を展開

 沖縄復帰と日中国交正常化という50年前の大問題を、外務省を蚊帳の外に置き、総理直轄の民間人の密使を使って密約を結んで実現しようとした「手口」は、先進国とは思えず、議会制民主主義国家の体裁もしていませんでした。密使に依頼するときには、官房機密費から200万円、300万円の「餞別」を手渡していました。

 ニクソン大統領と極秘で署名を取り交わした「有事の核持ち込み」を保障した議事録は、佐藤栄作私邸にそのまま保存されており、一方のアメリカは国務省に国家機密文書として保管されていました。国家の命運を決めるかもしれない外交折衝の議事録が、日本では元総理の私邸に保管されたままであり、今なお日本政府も外務省も「承知していない」というスタンスでお茶を濁しています。

 このように、国家としてのたたずまいをしていない状況を国民はもっと真剣に考えるべきと思って、この書籍を上梓しました。多くの人に読んでいただきたいと思っています。

 


COVID-19の行方はどうなるのか

 コロナ感染症の猛威は何だったのか

 年の瀬を迎えて皆様、いかがお過ごしでしょうか。コロナ変異株オミクロンが、世界中で徐々に拡大している様子ですが、今のところ感染しても無症状とか軽症で済むという報道もあります。困るのは無症状でどんどん拡大することです。拡大したあげく、症状が出てくるということなら問題です。

 下のグラフを見てください。グーグル統計が毎日報告している世界の感染者数の推移(以下同)を見ると、世界は4つ目の山を迎えるような状況です。コロナは全く沈静化していないことが分かります。

世界(10)
  お隣りの韓国はいま、感染者数がピークを迎えています。この推移グラフを見てください。この1か月に急増しています。なぜでしょうか。

韓国(11)
  一方で、日本は次のような推移グラフになります。

日本(9) 今年の8月20日前後をピークに急降下で減少を続け、いまやゼロに限りなく近づいています。直近3カ月間の韓国と日本の余りの違いに驚きます。日本が急降下で減少していることに世界の研究者は大きな関心を抱いているようですが、その解明はまだされていません。

世界の状況を報告します

では世界各国はどうなっているのか。12月12日現在、世界で感染者数がピークを迎えている国は4か国です(ロイター統計、以下同)。

韓国 ピークに到達 1日あたりの感染者数の平均がピーク。現在の新規感染者数は5,865件。
フィンランド 1日あたりの感染者数の平均がピーク。現在の新規感染者数は1,403件
ノルウエー 1日あたりの感染者数の平均がピーク。現在の新規感染者数は4,231件。
デンマーク 1日あたりの感染者数の平均がピーク。現在の新規感染者数は6,045件。
ジンバブエ 1日あたりの感染者数の平均がピーク。現在の新規感染者数は3,508件。

逆に感染者数が底をついたような状況になっている国が、日本など5カ国あります。

 アメリカは世界最多の感染者数

 アメリカではこのところ感染者数の増加を材料に、ニューヨーク、ナスダック株式市場がともに株価の乱高下を繰り返しています。上げる理由も下げる理由も、本当のところは分かりませんが、コロナの材料が色濃く反映していることだけは言えそうです。

フランス ピーク時の92% フランスでの感染者数は増加傾向にあり、平均で1日48,547人の新規感染者が報告されている。1日平均人数のピークだった 11月7日の92%になる。
ドイツ ピーク時の90% ドイツでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死者数の1日あたりの平均が3週間で160件以上増加。前回のピーク時から17%増加。
ベトナム ピーク時の85% 1日平均14,805人の新規感染者を報告。ピークだった11月29日の87%
イギリス ピーク時の82% 英国では、1日あたりの新規感染者数の平均が3週間で9,800件以上増加。前回のピーク時から16%増加。
アメリカ ピーク時の48% 新規感染者数は世界で最多。新規は一日平均12万700人。

 その他の感染者数が増加している国

 そのほかの主な国で感染者数が増加している国を拾い出してみるとこの3か国です。

南アフリカ ピーク時の78%
ロシア ピーク時の77%
オーストラリア ピーク時の67%

 いずれにしても世界的に見るとコロナはまだ、警戒水域から一歩も出ていないように見えます。

 それを言いたくてこのような分析を試みました。

 


真鍋叔郎博士がノーベル物理学賞を受賞した理由

   2021-10-05 (1)NHK放映より

 数々の栄誉の最後にノーベル賞

 気象学の理論学者として地球温暖化現象を1960年代に予測していたプリンストン大学上席研究員の真鍋叔郎博士(90)が、ノーベル物理学賞を受賞した。

 日本生まれの自然科学のノーベル賞受賞者としては25人目、物理学賞しては12人目となる。このうちアメリカ国籍を取得しているのは、2008年の物理学賞の南部陽一郎博士、2014年の中村修二博士に次いで3人目となる。

 真鍋博士がノーベル賞受賞候補者になっていると予想していた人は、日本ではほとんどいなかっただろう。いま調べてみると気象学の分野では、地球温暖化の理論研究者として抜きんでた業績を残しており、専門の研究者の間では非常に高く評価されていたことが、数々の学術的な栄誉・褒賞を見るとよく分かる。

 この分野の主な賞を総なめにして最後にノーベル賞を授与されたという、よくある典型的な授与経歴であった。

 コンピュータ社会の先端を走ったアメリカで大成する

 真鍋博士の受賞について考察してみると、いくつかの特徴が出てくる。

 まず第一に、物理法則をもとに地球全体の気候現象を、コンピュータで予測する数値モデルを開発したことである。それが1960年代に手がけているということは、コンピュータ時代の幕開けのころから、コンピュータという技術革新の旗手となったツールを使いこなしていたことが分かる。

 1958年に東大理学部で博士号を取得と同時に、アメリカ気象局(現海洋大気局)の招待を受けて渡米し、コンピュータが実用化されて間もないころから予測研究に取り組んでいたことになる。

 日本が、コンピュータ実用化時代を迎えたのは、1970年代に入ってからである。60年代後半の日本企業は、アメリカのIBMを代表とするコンピュータメーカーの模倣品を製造するか、丸ごと輸入して使っていた。筆者もそのころ、コンピュータと取り組んでいたことがあったので、そのころの事情はよく分かる。

 学術現場でも産業界でも、アメリカのコンピュータ実用化には遠く及ばず、スピード感では飛行機と自動車ほどの差があった。

 その時代にアメリカで地球温感化の理論予測を発表し、それが50年以上経て、実際に地球温暖化という「実証」によって確かめられた。

 ノーベル賞業績を見ると、理論物理学で予測を提示し、後年、それが実験物理学の研究で実証されて証明されることが多い。その場合、理論と実証の双方からノーベル賞受賞者を出すこともある。

 日本人として初めてノーベル賞受賞者となった湯川秀樹博士の場合、中間子理論の提唱が実験物理で実証され、それが評価されてノーベル賞を授与された。

2021-10-05 (4)

研究内容を語る真鍋博士(NHKテレビより)

 

 大半の学術功績はアメリカで評価された

 真鍋博士の経歴を見ると、数々の受賞歴に輝いている。1966年に「大気の熱収支および放射平衡に関する研究」で藤原賞を授与されたのを皮切りに、1967年にアメリカ気象学会から、あらゆる規模の大気運動の観測、理論、モデリングに関する研究成果が認められ、個人に授与される「Clarence Leroy Meisinger賞」が授与されている。

 その後も価値ある学術的褒賞を総なめにして、最後にノーベル賞に輝いた。これは典型的なノーベル賞受賞歴と言える。

 90歳でも現役の研究者として遇するアメリカ

 真鍋博士のノーベル賞受賞で最も印象を受けたのは、真鍋博士がテレビとの会見で語っている姿と語り口である。90歳とはとても思えない「頭脳明晰・言語明瞭」であることだ。

 肩書を見れば分かるが、世界の頭脳が集まるプリンストン大学上席研究員とある。学術的存在感をずっと保持し続けたことの証拠であり、アメリカの大学は能力を発揮できる学者・研究者は終身雇用されるという実例を知った。

 年功序列、定年制度を厳密に守っている日本では考えられないことだ。日本では、どのように優れた科学者でも、一律に「定年」という線引きで閑職か事実上のリタイアに追い込むのが普通になっている。突然作った名誉職の肩書を付けてやるという慣行が横行している。

 実力主義ではなく年功序列主義で、多くの才能・才知を途中で切り捨てている。研究者だけでなく企業にあっても同じである。どのように優れた経営者であっても定年を迎えれば世代交代という慣行にならってリタイアし、名誉職に祭り上げられる。創業経営者だけが「居残り」を許され、それなりの功績を残すことができる。

 こうした日本社会の慣行を見直すいい機会にするべきだろう。真鍋博士を首相官邸に呼んで総理からほとんど意味のない「祝辞」を発し、それをメディアに露出することで官邸のPRに利用するという愚がまたも繰り返されるのだろう。

 気象学の理論研究者が地球温暖化という現実の実証によってノーベル賞を授与したノーベル賞選考委員会(王立スウェーデン科学アカデミー)の審査は、ノーベル賞の歴史の上でも異彩を放つ素晴らしい実績となった。


NHKの欺瞞に満ちたイベルメクチン報道           イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-10

 公正性ゼロのNHKの報道番組

さる8月23日に放映されたNHKの「効くのか?効かないのか? イベルメクチン コロナ治療に効果は…」という報道番組は、一方的にイベルメクチンを否定する内容である。

「効くのか?効かないのか?」とタイトルでうたっているが、「効かない」ことをこれでもかというほどの主張を掲げて放映したものであり、著しく公正性に欠けた番組であった。

 筆者のもとに、NHKを見たがどう思うか。反論はしないのか-などの反響が多数寄せられたので、この番組を総括しておく。

 メジャーな国際機関やメルクに語らせた主張

 まず第一に「効くのか? 効かないのか?」とタイトルに掲げておいて、「効いている」とする実例と米英を中心とする医師・研究者団体の成果は一言も触れていない。

 「効いていない」ことを言わんがため、十分な証拠(エビデンス)が揃っていないとの見解をあげているWHO、NIH、FDA、アメリカの薬剤メーカーのメルクなどの言い分を羅列したものである。イベルメクチンを開発しておきながら躍起となってコロナ利用には否定しているメルクの言い分まで出している。

 メルクはいま、新たなコロナ治療薬を市場へ出す寸前になっているとされ、イベルメクチンに効果があるのでは困る立場になることは客観的に見ても明らかだ。国際的にもメルクは、この理由で糾弾されている。

 一方的な見解や主張をこうした国際的に著名な機関やメーカーに語らせて視聴者に「効いていない」ことを印象付けようとした番組編集であることは明らかである。

 イベルメクチン効果ありとする紹介はゼロ

 アメリカの救急救命の専門医らが中心になって組織したFLCCCBIRDの活動は、すべてネットで公開されており、大きな影響力を発揮している。途上国に対してイベルメクチン使用を奨励するコメントを発信し、それを受け入れている国もある。

 PLCCCによると、世界中の2万6398人を対象にした63件の臨床試験に613人の医師・研究者が参加しており、同グループな臨床試験のメタ分析を行ってきた。その結果、86%の予防効果、73%の改善効果、重症治療試験において40%の改善効果があった。61%の死亡率低下、31件のランダム化比較試験(軽症から重症者を含む)では60%の改善効果があったと報告している。

 イベルメクチン否定派が最も強調するランダム化比較試験でも、31件出ている。これに対し多分、否定派は小規模な臨床試験とか世界的に確立された臨床試験方法の「欠如」をあげるだろうが、その背景には「途上国の医師団の臨床試験」を意識しているというのが大方の見方だ。

 逆に言えば、先進国の医師・研究者しか信頼できないとする不条理な差別意識につながっている。

 NHKにそのような意識があったかどうかは不明だが、報道姿勢からは明らかにそのような視点を感じざるを得ない。

 さらに適応外使用を無視した報道

 日本ではイベルメクチンを2020年5月18日、厚労省は「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第2版」(24ページから)で、「適応外」としてコロナ治療にイベルメクチンを医師が処方することを認めている。

 「日本国内で入手できる薬剤の適応外使用」としてイベルメクチンを記載して全国に通達をしたものだ。むろん、処方すれば医師は保険請求もできる。臨床医がこれを根拠に治療に使っても違法でも不適切でもない。

 ただ適応外とは、使用にあたっては医師・患者が同意し、万一副作用などの薬害があっても救済制度の対象外とされているだけだ。

 つまり医師・患者の自己責任でコロナ治療に使用してもいいという国の判断である。この判断は、効いているという前提で出しているのであり、効いていないものや効いているかどうか全く分からない薬剤を適応外として認めたら、国は犯罪者になる。

 立憲民主党の中島克仁議員が、この3月の衆議院予算委員会でイベルメクチンの使用拡大に向けて政府に質問したとき、田村厚生労働大臣は「適応外使用では今でも使用できる。医療機関で服用して自宅待機の使用法もある」と答弁している。

 NHK番組では、このようにイベルメクチンに効果があるとする根拠に基づいて適応外使用を認めていることを一言も報道しなかった。使用することをあたかも「不適格者」でもあるような、一方的な悪意を感じさせるような内容だった。

 全国には、この適応外の制度を利用してイベルメクチンをコロナ患者に処方している医師が多数いる。代表的なのは、兵庫県尼崎市の「長尾クリニック」院長・長尾和宏医師で、約100人の患者にイベルメクチンを処方してすべて効果があったと報告している。民放テレビ番組やネット情報で多く取り上げられ社会現象ともなっているがNHKは触れなかった。

 これこそ効果があるという事例を無視したものである。

 勇気ある東京都医師会の方針

 東京都医師会の尾﨑治夫会長は、筆者とのインタビューで東京都医師会としてイベルメクチン適応外使用を推奨していることを語った。

 この報道には大反響があった。しかし尾﨑会長は推奨してもイベルメクチンがないことへの危惧を語っていた。筆者は、医師で衆議院議員である立憲民主党の中島克仁議員、同じく医師の自民党、富岡勉議員に取材したところ、お二人とも絶対にイベルメクチンを投与すべきと主張した。

 中島議員は、今も臨床医として活動しており、イベルメクチンを処方して効果を上げていると語っていた。また富岡議員は「適応外として一斉に全国で処方するとモノ(イベルメクチン)がなくなる。ジェネリックでも使用できるように緊急に制度を変えればできる。立法化などなくてもできる」と語っていた。

 NHK放映の意図は何か

 このような国内の動きを全く無視し、イベルメクチン全否定の編集方針で番組を作った意図は何か。想像するに厚労省の一部の官僚の思惑を受けて、NHKがイベルメクチンの火消しに回った可能性である。

 筆者らはそのころ、一部の政界からの要望もあって、メジャーな新聞1ページを使い菅総理に向けて「イベルメクチンの緊急確保と副作用などの健康被害には救済せよ」とする意見広告を掲載する準備を進めていた。菅総理に届いたかどうかは不明だが、菅総理が理解できるように説明した書面もある人を介して届けるように手配していた。

 そうした動きを厚労省は察知したかもしれない。ここで火消しをしないと意見広告によってイベルメクチン使用が国内に燎原の火のように広がりかねない。それはまずい。日本政府としては、自ら判断を下すのではなく、あくまでもアメリカ政府機関の判断待ちであり、それを越えて自ら判断をくだす力量も度量もなかっただけである。

 医療施策の貧困さが、はからずもイベルメクチンで露呈したと言わざるを得ない。意見広告は、菅総理の自民党総裁選不出馬という政局動向を受け、効果は極めて疑問とする判断から取りやめた。大金を使って意見を吐いても無駄と思ったからである。NHKの番組を意識したからではない。

つづく


イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-8

  インド発のデルタ株が東アジアを襲撃

  インドから出現したデルタ株がマレーシア、インドネシアを経てタイ、韓国、日本へと拡散している。コロナウイルスの特徴である変異株の猛威であり、これから何回も人類は変異株に襲撃されるかも知れない。

 ロイターによると、8月8日現在で感染者数がピークに向かっている東アジアの国は日本、韓国、マレーシア、タイであり、ピークに近い感染者数を出している国はベトナム、ラオス、メキシコなどである。

 インドから移入してきた変異株に汚染されたインドネシアは、7月上旬から地域別にロックダウンを実施し、8月になっても感染拡大に歯止めがかからない地域は厳しい外出制限や飲食店の営業規制を行っている。

 日本の人口の2倍以上のインドネシアの感染者数が、いま減少傾向にあるとはいえ平均1日、3万2000人をこえている。人口比で言えば、日本もほぼ同じだろう。

 コロナウイルスは、遺伝子が次々と変異を起こし、感染力を強くしているところが、人類との闘いの武器になっている。

 変異株ができる理屈

コロナウイルスがヒト細胞に侵入するとき、ウイルス表面にあるトゲ状の「スパイクたんぱく質」が、ヒトの細胞表面の受容体たんぱく質(アンジオテンシン変換酵素2=ACE2)に結合し、そこから細胞内へ侵入する。

細胞内では、ウイルスのRNAの情報に従って、ウイルス自身を作成するたんぱく質を合成する。RNAは大量に複製され、たんぱく質とともに組み立てが進んでいわゆるコピー・ウイルスが大量に作成され、それが細胞外へ放出されていく。この一連の過程のうち、RNA複製のときに一定の確率でミスが発生する。RNAを構成する塩基の配列が変わることがあり、この現象を「変異」と呼んでおり、変異した遺伝子を持っているウイルスを変異株と呼んでいる。

1981年、アメリカで最初に報告され、世界に拡大して人々を恐怖に陥れたエイズ(後天性免疫不全症候群)も、コロナと同じNRA型ウイルスで、次々と変異株を生み出し、欧米、アジア、アフリカなど地域によってさまざまな変異株が広がった。エイズの感染は、主として血液・体液を介するもだから予防方法もそれほど難しくなかった。

しかしコロナの場合は、空気感染であるためマスク着用、ソーシャル・ディスタンス厳守、三密厳禁など社会活動や生活に密接に関わることから、防御方法もエイズの比ではなくなった。

主な変異株は4つある

 厚労省など政府機関のこれまでの発表資料によると、国が監視を続けている主な変異株は、イギリス由来のアルファ株、南アフリカ由来のベータ株、ブラジル由来のガンマ株、インド由来のデルタ株がある。変異株が生まれると次々と従来株にとって代わるように感染をしていき、一般的に従来株よりも感染しやすく、罹患すると重症化しやすいと言われている。さらに免疫やワクチンの効果を低下させる可能性も指摘されている。

 2021年4月中旬ころから連日、1000人を越える感染者数を出した大阪府など関西地域の場合、感染力が強く致死率は従来型の1.6倍とされるアルファ株が主流になったと言われた。しかしそのころの東京・首都圏では、感染力が従来と変わらず、変異株の由来などは不明とされていた。

 このように変異株は、ある地域で広がり、別の地域ではそれほど広がらないなど感染拡大状況が変わってくる。2021年7月現在で、22個の変異株が報告されているが、この数は時間とともに増えていくことになる。海外では日本で変異をしたコロナウイルスとして「日本株」とされる変異株も報告されているが、医療関係者に聞いたところ影響は不明としている。

人種によって「弱点」があるのだろうか

  赤血球の血液型は主としてA、B、AB、O型に分けられる。これをABO血液型と呼んでいるが、白血球にもHLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)という血液型がある。白血球はいわば血液の工場である骨髄中で作られる血液細胞のことで、細菌、ウイルス、カビなどから身を守るために働いている。HLAは白血球だけでなく、ほぼすべての細胞と体液に分布していることも分かってきた。

 この白血球血液型のうちHLA-A24という血液型は、日本人のほぼ60%が持っている。変異株の中でもガンマ型のインド株に感染するとHLA-A24を認識する箇所が変異してウイルスへの攻撃力が低下してしまうとされている。

 インド株の変異を学術的に「L452R」と記述していることを各種報告資料でよく見かける。この記述の真ん中の数字の452は、たんぱく質の452番目のいみであり、アミノ酸がロイシン(L)からアルギニン(R)に変異したという意味になる。こうした変異が頻繁に起こっていると言われている。

HLA-A24は、アジア系の人種に多い白血球血液型であるため、ワクチンの効果の低下まで影響するようなら大きな問題になるとして専門家は注視している。

これとは逆に変異株の影響が確認されないものもある。今後もCOVID-19の感染が続く限り変異株と治療対応などの問題は避けられない。研究テーマとしても非常に興味深いものであり、今後の研究発展を見守りたい。

これまで確認された変異株は、イギリスの「アルファ株」が、173か国・地域で報告があった。南アフリカで確認された「ベータ株」122か国・地域に及んでいる。ブラジルで確認された「ガンマ株」は74か国・地域となっている。

そしてインドで確認された「デルタ株」は、2021年6月から世界中に急激に拡大しており、7月上旬には104か国・地域で確認されている。国立感染症研究所は、7月上旬には、関東地方ではすでに全体の30%以上をこの変異ウイルスが占めていると推定しており、世界の感染拡大が続くと予想している。

このように変異株の感染力とこれを阻止するワクチンの実施状況と関連しながら、終息に向かうのかコロナの盛り返しになるのか、うねりとなって地球を取り巻いているように見える。

 


イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-7

インド弁護士会が、イベルメクチン使用禁止を発信したWHO幹部の刑事訴追も辞さず

  インド弁護士会(IBA)は、さる5月25日、世界保健機関(WHO)の主任科学者であるスミヤ・スワミナサン博士に法的通知(LEGAL NOTICE)を送付し、イベルメクチン使用を拒否する言動をやめるように「警告」した。通知文書ではイベルメクチンの治療・予防効果に関する多数の科学論文を根拠にあげ、スワミナサン博士の刑事訴追も辞さないとする強いメッセージである。送付と同時に世界に向けてこの警告書を公表した。

弁護士会写真インド弁護士会のHP

通知文書は、51ページにわたってイベルメクチンの科学的論文や解説を紹介し、これを無視もしくは批判的に語ってきたWHOの前事務局次長で現在、チーフサイエンティストの役職にあるスワミナサン博士を痛烈に批判した。

同博士はインド生まれの女性で、小児と成人の結核、疫学と病因、およびHIV関連疾病を専門とする臨床医である。2017年10月からWHOの事務局次長の要職を務め、2019年3月からチーフサイエンティストになり、WHOの科学的な見解の発信や政策を決定する際に大きな影響力を出していた。

 同通知で取り上げているイベルメクチンに関する解説は、アメリカの医師団(FLCCC)やイギリスのイベルメクチン推奨開発団体(BIRD)などの論文を根拠としてあげており、そこで報告されている科学的根拠に対しスワミナサン博士は「意図的に無視してきた」として痛烈に批判した。

弁護士会法定文書送付された法定文書

 

 WHOの立場を悪用して影響を誇示

 同文書で列記しているスワミナサン博士への批判は、次のような内容だった。

  • 2021年5月10日にツイッターで「安全性と有効性はどんな薬でも、新しい適応症に使うときには重要です」とし、メルク社が2021年2月4日に発表したイベルメクチンを使うことをけん制したステートメントにジャンプするように設定した。このツイートは、現在、削除されているが証拠は確保している。
  • 2021年5月16日にYouTubeチャンネル「MOJO STORY」に出演し、「エビデンスに基づいた指導と治療、そして予防が重要だ。WHOで試みていることは、新しいデータに基づいて、できるだけ頻繁にガイダンスを更新している」と語った。さらに「ヒドロキシクロロキン」「ルピナビル」「リトナビル」「インターフェロン」「イベルメクチン」「レムデシビル」は、「いずれもその使用を支持するものではありません。SARS CoV-2(新型コロナウイルス)感染者に広く使用することはできません」と語った。これは非常に良心に反し誤解を招くものであり、下心と意図的な思惑で出したものだ。

スワミナサン会見記者会見するスワミナサン博士

  • WHOのチーフサイエンティストとしての立場を悪用して、医師や科学者を含む人々に悪影響を与えるために、WHOはCOVID-19の予防や治療にイベルメクチンを使用することを支持していないという事実を人々に押し付けようとした。自分の目的を達成するために、意図的に人々に死を選ばせている。
  • 刑事訴追の十分な根拠であると指摘し、後日、テドロスWHO事務局長も「同罪」であるとして「法定通知」を送付したと発表した。

スワミナサン博士の言動は、WHOの公式見解であり、2021年5月10日にイベルメクチンの使用に反対するような同博士のつぶやきは大きな影響を与えた。つぶやきの翌日の5月11日に、インドのタミルナドゥ州がイベルメクチンをプロトコルから取り消している。

タミルナドゥ州はスワミナサン博士の出身地であり、地元に対し大きな影響力があったと推測されている。弁護士会はこの事実をあげて、つぶやきは「効果をもたらした」と指摘している。

 そのころインドでは、コロナ感染者が急増し、有効な治療薬もなく、治療装置も決定的に不足し、押し寄せる患者の対応に医療現場は修羅場になっていた。そんなとき、一縷の望みをかけて国が使用禁止をしていたイベルメクチンにすがりついた。効果も出していたとき、WHOの禁止発言は人道的に許されないというのがインド弁護士会の主張である。

メルクステートメント日本のメルク社から出されたイベルメクチン「反対」ステートメント。

アメリカ本社からの同じステートメントは2か月前の2月に発信されている。

 

さらに同文書では、インドを始め多くの国でイベルメクチンを使用することに抵抗があるのは、WHOのチーフサイエンティストが、「イベルメクチンの有効性を証明する膨大なデータを故意に無視し、薄っぺらな理由でイベルメクチンの使用に抵抗」してきたからだとし、「スワミナサン博士の悪意と下心を証明している」と言及している。

 また、「パンデミックへの対応における惨めな失敗のために、WHOの信頼性と誠実さは日を追うごとに衰え続けている。WHOが発行する報告書は、ますます偏ったものと見なされるようになっている。品質、信頼性、合理的なアプローチを全く欠いていると見られるようになってきている」と糾弾した。

 同文書の後半では、世界の医療界、医師、科学者らは、一部の製薬企業やそれに連なるロビー活動に引っ張られてイベルメクチンの有効性のニュースを抑圧し、治療に使ってきた薬剤の多くが長時間かかって無効であったことを確認するはめに陥ったと指摘した。

 最後に患者の利益を第一に考えるヒポクラテスの誓いを語り、イベルメクチンを積極的に使用してCOVID-19治療・予防に闘ってきた多くの医師の名前を列挙している。

 この文書の写しは、インド大統領・首相・全州の知事と行政機関の長ら15人に送付したとしている。

 イベルメクチン使用で感染拡大を阻止

 今年になってからインドで、COVID-19感染症が急増し、国民を恐怖に陥れてきた。インドの中心的な医療組織であるAIIMS(All India Institute of Medical Sciences )は、在宅の軽症患者に対して「体重1キロ・グラムあたり1日0.2ミリ・グラムのイベルメクチンを3~5日間投与することを推奨する」との治療指針を出していた。

ところがインド政府は、イベルメクチンを治療薬として承認していなかった。そこでインドで最大の2億400万人の人口を抱えるウッタル・プラデーシュ州(Uttar Pradesh)は、州政府がイベルメクチンの使用の承認を公布し、即座にCOVID-19の治療に使用されるようになった。同州では4月中旬のピーク時の感染者数約4万人から5月16日には、1万505人まで減少した。

Desert review報道

イベルメクチン投与によって感染者激変を伝えるThe Desert Review」

インド・コインバトゥール工科大学(防衛工科大学)の招聘講師をしている桂秀光・博士によると、インド国内でイベルメクチンの投与が始まった地域では、急激に患者数が減少に向かったと報告している。

アメリカの「The Desert Review」によると、インドのゴア州では、州内の全ての成人にイベルメクチンを投与する政策を実行した。これを5月10日に発表したが、その日の感染者数は3124人だったが、5日後には1314人に急減した。

また、首都圏のデリーでも4月20日に2万8395人だった感染者数が、イベルメクチン使用後に急落しており、5月15日には6430人まで減少したと報道した。

次号に続く

 


イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-6

  投与国と不投与国を分けた根拠

アフリカ諸国でイベルメクチンが投与された国と不投与の国は、どのような選定手順で行われたか。

日本の外務省を始め国際機関の多くは、アフリカ大陸の主権国家は54か国としている。モロッコとモーリタニアが領有権を主張して紛争国になっている西サハラは国家としては認めていない。ソマリランドは、国際的に国家と承認されていない。この事情にならってこの調査・分析でも54か国を対象とし、イベルメクチン投与・不投与の実態をWHOのまとめをもとに調べた。

 熱帯地方に蔓延していた感染症(写真はいずれも大村博士提供)

 北里大学の大村智博士が土壌の中に生息する微生物から発見したエバーメクチンは、最初は家畜動物に投与する動物抗生物質だった。この薬剤は動物抗生物質として売り上げ20年間トップを走る記録的なヒット薬剤となった。

その後メルク社のウイリアム・キャンベル博士との共同研究でエバーメクチンの誘導体のイベルメクチンを開発し、熱帯地方に蔓延するオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症を治療する薬剤開発につながった。

WHOが熱帯病撲滅のために最初に大掛かりに取り組んだのは、赤道ベルト地帯に蔓延していたオンコセルカ症(河川盲目症)の撲滅戦略である。河川に生息するブユを介在して線虫に感染すると、猛烈なかゆみと痛みを伴う皮膚病変を起こす寄生虫感染症である。体内に入った線虫が網膜に棲みついて繁殖し、盲目にする感染症として恐れられていた。

Image1イベルメクチンの投与でオンコセルカ症から救われた子供たちに取り囲まれて歓迎を受ける大村博士(2004年9月、ガーナ共和国アズベンデで)

 APOCとLF‐MDA戦略の展開

 WHOは1995年から、オンコセルカ症の撲滅を目指して「アフリカ・オンコセルカ症対策計画(African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)」を展開し、23か国にイベルメクチンを無償で提供してきた。

 この戦略は大きな効果を上げ、WHOの専門家は「これまで熱帯病に投与されてきた薬剤の中でもイベルメクチンは、けた外れに効果がある薬剤だった」と高く評価してきた。

 さらにWHOは、蚊を媒体として寄生虫がヒトのリンパ系に入り込んで重篤なむくみ症状やリンパ系に障害を起こして死へつながるリンパ系フィラリア症(象皮症)という熱帯病の撲滅のために乗り出した。

「リンパ系フィラリア症集団医薬品管理戦略;LF-MDA」であり、29か国を対象にイベルメクチンを始めアルベンダゾール、DEC(クエン酸ジエチルカルバマジン)などの薬剤を無償で投与してきた。

このようなWHOの熱帯病撲滅作戦を報告するサイトを示して、筆者の作業に有力な助言をしてくれたのは、八木澤守正・北里大学客員教授だった。八木澤先生の示唆でこの作業は大きく進展した。

象皮症の脚象皮症になった患者の患部

(2004年9月、ガーナ共和国アズベンデで)

 WHOが①APOCおよび②LF-MDAの熱帯病撲滅戦略でイベルメクチンを投与してきた国は次の通りである。

 このうち、両方の戦略に参加した国と2つの戦略のうちどちらかに参加した国がある。この2つの戦略でイベルメクチンを投与された国は、合計32か国となった。

 

イベルメクチン投与国

APOC
(23)

LF-MDA
(29)

人口
(100万人)

1

アンゴラ

31.03

2

ベナン

 

12.15

3

ブルキナファソ

 

20.91

4

ブルンジ

 

11.88

5

カメルーン

26.55

6

中央アフリカ

4.83

7

チャド

16.43

8

コンゴ

90.79

9

コートジボアール

26.96

10

コンゴ民主共和国

4.68

11

赤道ギニア

1.41

12

エチオピア

97.18

13

ガボン

2.11

14

ガーナ

30.78

15

ギニア

 

13.97

16

ギニアビサウ

1.82

17

ケニヤ

48.69

18

リベリア

4.69

19

マラウイ

20.87

20

マリ

 

19.66

21

モザンビーク

31.99

22

ニジェール

 

24.21

23

ナイジェリア

206.14

24

ルワンダ

 

12.67

25

サントメ・プリンシペ

 

0.22

26

セネガル

 

16.75

27

シエラレオネ

7.98

28

南スーダン

 

13.78

29

スーダン

 

44.35

30

トーゴ

 

8.29

31

ウガンダ

41.22

32

タンザニア

58

 

合計

23

29

952.99

 イベルメクチン不投与国

 WHOの熱帯病撲滅戦略に指定もしくは参加しなかった国は、アフリカ54か国の中で22か国となった。そのリストは、次の通りである。

 

イベルメクチン不投与国

 

人口(100万人)

1

  アルジェリア

44.23

2

エジプト

100.88

3

  エスワティニ

1.13

4

  エリトリア

3.55

5

  カーボヴェルデ

0.56

6

  ガンビア

2.42

7

  コモロ

0.9

8

  ザンビア

18.88

9

  ジブチ

1.11

10

  ジンバブエ

15.19

11

  セーシェル

0.1

12

  ソマリア

15.05

13

  チュニジア

11.9

14

  ナミビア

2.53

15

  ボツワナ

2.35

16

  マダガスカル

27.58

17

  モーリシャス

1.27

18

  モーリタニア

4.15

19

  モロッコ

35.95

20

  リビア

6.64

21

  レソト

2.06

22

  南アフリカ

59.62

 

合計

358.05

 以上のように、WHOの熱帯病撲滅戦略の中で、イベルメクチンを投与されてきた

32か国と投与されてこなかった22か国が確定した。

 この2つのグループが、COVID-19感染はどのようになっているかを調べた結果がその5までに報告した通りである。

次号に続く


イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-5

WHOの発表データでイベルメクチン効果を確認

WHOは、毎週、世界中の国・地域からコロナ感染者と死亡者の数と人口10万人当りのその国の感染者数と死亡者数を集計して発表している。

6月29日に最新の集計データが発表され、筆者は昨年9月から、毎月末の発表データを分析している。アフリカでイベルメクチンを投与されてきた国と、投与されてこなかった国の間で、コロナ感染症の実情に違いがあるかどうかを見てきたものだ。

結論から言うと、イベルメクチンはコロナ感染症の予防に効いているように見えるのである。

皆さんは、これを見てどう判断されるだろうか。

直近のデータ分析の結果から報告する。

一覧6月集計

10万人当りの死亡者数でおよそ13倍以上多い

上の表で見るように、2021年6月29日にWHO発表のアフリカでイベルメクチンを投与されてきた32か国の感染者数、死亡者数の累計と10万人あたりの感染者数、死亡者数の一覧集計が左側の表である。

右側の表は、イベルメクチン不投与の22か国の同じデータである。

投与国と不投与国の一覧を見ていくと、投与国の方がどう見ても実数も10万人当りの数も少ない。死亡者数は10万人当り(32.8÷2.5=13.1)となる。不投与国は、およそ13倍以上も多いのである。これを投与国群と不投与国群に分けた累積感染者・死亡者数と10万人にあたりの数を昨年9月末からの発表データで推移を追ったものが次の表である。

一覧推移 この1年間の投与・不投与群の推移

疫学で検証する対象になるのではないか

このシリーズで紹介したように、この状況に最初に気がついたのは、日本のP医師であった。次いでアメリカとコロンビアの研究者が同じ仮説で論文を書いて発表しているが、投与・不投与の分け方が正確性を欠いており、論文としての価値がないことは、このシリーズの「その3」で詳しく述べた通りである。

P医師の論文内容は、ほぼ正確に事態を分析したもので、論文として非常に価値が高いと思った。しかしWHOの投与・不投与の分け方に一部不備があった。論文の結論には、ほとんど影響を及ぼさない程度のものだったが気になった。そこで過去のWHOの投与・不投与の実績に従って、正確に分析をしたいという思いが募り、ようやくこのような表を完成した。

この1年間の推移を見ると明らかなように、10万人当りの感染者数、死亡者数は、明らかにイベルメクチンを投与されてきた国の方が少ないのである。これは学問的に疫学や公衆衛生学の研究対象にならないのだろうか。

世界中の研究者で、このデータに気が付いている人が一人もいないとは考えにくい。P医師以外、特段の問題意識を示す論文も出てこないところを見ると、このようなデータは学問的にはほとんど価値を見出さないのかもしれない。

筆者が様々な意見を聞いた限りでは、WHOのイベルメクチン投与は1年に1回程度である。それだけでコロナ感染の予防になっているとは考えにくい。イベルメクチンのin vitro(試験管レベル)の研究で、コロナ・ウイルスの増殖をブロックする効果が出ていることが確定しているが、それだけではイベルメクチンがコロナ感染症の治療に効いていることを説明するのは無理があるということのようだ。

つまり作用機序からみても、この一覧表の結果からイベルメクチンがコロナ感染症の発症抑制をしているとは説明できないというものであった。

南アフリカ共和国(南ア)でもイベルメクチンの投与始まる

そうした議論とは別に、現実にはパンデミックになっている。イベルメクチン不投与国でも約6000万人の人口を誇る南アフリカは、アフリカの中でも感染者が多い国として目立っていた。

コロナ感染の予防と治療にイベルメクチンが有効だと言われていたが、国としてはイベルメクチンを治療に使用することを勧めていなかった。しかしアフリカのほかの国ではイベルメクチンの「効果」で感染数が低く出ていることから、イベルメクチンを闇で輸入して服用する人々が拡大した。

このため2020年を超えた1月には、急増する感染者数を抑えるために、国がイベルメクチンを治療・予防として使用することを許可することにした。これを見ていたのかジンバブエも、イベルメクチン使用に踏み切った。

そのような事情があったので、今の時点では投与・不投与の分け方は、あまり意味がなくなってきたと言わざるを得ない。

しかしそうした事情を入れても、2つのグループには、歴然とした差が出ているのである。

次回に続く


イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-4

 アフリカ諸国の感染状況集計表に仰天

 今年の4月に入って間もなく、北里大学大村智記念研究所所長の花木秀明教授から、一枚の集計表が送られてきた。COVID -19のアフリカでの感染状況を調べた集計表であり、一般の方から研究所に送られてきたものだという。

アフリカの国・地域の全てについて人口、COVID -19の感染者累計、その10万人当りの数、死亡者の累計、その10万人当りの数を一覧にしたものだ。

 2021年4月1日時点の調査によるとした数字が並んでいる。国別の各項目別数字は、①各国当局、②現地メディア、③オックスフォード・コロナウイルス政府対策トラッカー、④ロイターなどにある数字を、一個ずつ拾って書き込んでいったことが後日、本人から聞いて分かった。

 ともかくもこの集計表を見た瞬間、筆者はやられたと思った。イベルメクチンを投与されてきた31か国と投与されてこなかった22か国の感染者数、死亡者数が明らかに投与された国の方が一見明白に少ない数字になっていたからだ。

 そのころ筆者も、北里大学客員教授の八木澤守正先生からご教示をいただきながら、アフリカ諸国がなぜCOVID -19感染者数が少なく、死亡者数も少ないかに興味を持って調べ始めていたからだ。

 データ分析技術者が丹念に書き写した数字

 作成したのは東京の末吉榮三さん(77)で、NPO法人まちづくり・建物なんでも相談室の理事をされている方だった。武蔵工業大学土木工学科を卒業され、仲間と一緒に立ち上げた株式会社応用技術試験所で、建築技術のデータ分析などに取り組み、後に代表取締役社長をなさった方であった。

0末吉さん

 応力、たわみ、振動、騒音測定、データ分析などを手がけてきた方と聞いて、なるほどと思った。オンラインに散見している目的のデータを検索して蓄積し、それを分析することは得意だったのである。

 なぜ、イベルメクチン投与国と不投与国とでは、COVID -19感染状況が違うのか。アフリカ諸国は、COVID -19の感染者数が少ないことが各種メディアなどでも報道されるようになったとき、イベルメクチンの投与と何か関係があるのではないかと思い始めていた。

末吉さんは拙著「大村智ものがたり」(毎日新聞出版社)を読んだとき、赤道熱帯地方の重篤な感染症で盲目になるオンコセルカ症の感染予防に、WHOから無償でイベルメクチンが投与されてきたことが書かれてあったことを思い出していた。

1回のイベルメクチン投与でオンコセルカ症の感染予防に効いている。もしかしたらCOVID -19の感染予防にも有効に働いているのかもしれない。まるでワクチンによって抗体を獲得したように、イベルメクチンが長期間効き目を持続すれば、COVID -19感染者数も少なくなるはずだ。

その仮説を証明するため、2021年4月1日現在のアフリカ諸国のCOVID -19感染状況を調べ、熱帯病治療・予防のためにWHOからイベルメクチンを投与された国と不投与国の2つのグループに分けて調べてみた。

イベルメクチンが感染予防に効いている!?

末吉さんは、苦労して自分が調べた結果を見て驚いた。投与された国は、不投与の国に比べて明らかに感染率が少なく、死亡者数も少なくなっていたからだ。

0アフリカの感染状況末吉さんがアフリカ諸国のCOVID -19感染状況を調べると、イベルメクチン投与国は不投与国に比べて顕著に少なく出ていることに驚いた。

2021-06-24 (4)

 こんなにきれいなデータになって出てくるのは、何か因果関係があるに違いない。COVID -19とイベルメクチンの研究に積極的に取り組んでいる北里大学に参考資料として送った。

 筆者がこの「末吉集計表」を知ったとき、P教授論文、アメリカ論文、コロンビア論文を調べていたときだったの、本当にびっくりした。

 正確な集計表の作成

 筆者が調べていた3本の学術論文は、いずれも国際的に知られている学術サイトに投稿された論文だが、アメリカ論文とコロンビア論文には投与・不投与の2つの母集団に明らかな間違いがあり論文の価値を失っていると感じていた。

 P医師の論文は学術的に価値の高い内容であることが分かり、重要な知見を示していたが、筆者が調べた投与・不投与の国と一部で合わないことが分かった。論文の結論にはほとんど影響がない程度であり、査読論文として掲出されるときは修正すれば済むようなことだった。また、「末吉集計表」でも筆者のリストとは一致しない国が出てきた。

 ここに至って、正確な投与・不投与母集団を確定した集計表を作成する必要がある。そう考えて、八木澤先生の助言を受けながらWHOの資料検索から追跡し、ついに目的の母集団確定までこぎつけていった。

次回に続く


イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-3

 コロナウイルス(SARS-CoV-2)に抗生物質は本当に無効か?

2020年になってからコロナウイルスが中国・武漢から徐々に世界へと広がりだしたころ、WHOはウイルスには抗生物質が無効だからCOVID-19に使用しないようにとの通達を出した。そのことに敏感に反応したのは、CTやMRIの画像診断など最新IT技術を駆使した研究と生理学を合体させて研究している日本のP医師だった。

日本の一部の医師、研究者の間では、武漢でインフルエンザ様症状の患者にタミフルとセフェム系抗生物質がある程度効いていたことを知っており、WHOがコロナウイルスにだけ敢えて抗生物質を使うなと通達を出すことをP医師は奇異に感じたのである。

そこで抗生物質の使用量と使用比率がコロナウイルスの罹患率および死亡率

に相関関係があるかどうか多くの文献を精査して調べてみたところ、相関関係があることが分かった。その成果をまとめアメリカのメジャーな学術誌に送った。

すると編集長が「審査に時間がかかり、受理される率も全体で10%程度だから至急他の雑誌に投稿した方がいい」とアドバイスをしてきた。

その論文のディスカッションの部分で「Macrolides have been shown to be active in vitro against RNA viruses. Indeed, it seems that the mortality rate caused by COVID-19 is low in Onchocerciasis endemic areas of Africa(マクロライド系抗生物質は、RNAウイルスに対してin vitro=試験管レベル=で有効であることが示されている。実際、アフリカのオンコセルカ症の流行地では、COVID-19による死亡率は低いようだ)と記載しておいた。つまりイベルメクチンの有効性に言及したものだった。

そうしているうち、オープンアクセスとしての投稿を示唆してきた。しかし投稿するには40~50万円かかるという。それならば日本の公益財団法人日本感染症医薬品協会の英文機関誌「The Journal of Antibiotics」に投稿することにした。

国内では判断できずドイツの査読者に回される

P医師から論文を受理した「The Journal of Antibiotics」誌は、この論文の採否の決定ができないとしてドイツの査読者に回した。しかし査読後の結論は、不採用となった。ウイルスに抗生物質は効かないとしてイベルメクチンがコロナウイルスに作用することは認められないとの理由だった。

そこでP医師は、2020年10月18日、査読前の論文掲出を受け入れている「medRxiv」に投稿したところ、2日後の同年10月20日に掲出された。

ウイルスに抗生物質は効かないとか、イベルメクチンがコロナウイルスに作用することは認められないとの理由に対して違和感を抱いていたP医師は、COVID-19とオンコセル症との関係に関する疫学分析を行い、それをまとめて2021年3月26日に「medRxiv」に送った。

論文投稿後すぐに掲出されたアフリカの疫学的考察

P医師が投稿後すぐに掲出してきた。この対応にP医師も驚いたという。論文のタイトルは、「Why COVID-19 is not so spread in Africa: How does Ivermectin affect it?(なぜCOVID-19はアフリカでそれほど広がっていないのですか:イベルメクチンはどのように影響しますか?)」というもので、論文の大略は次のようなものである。

アフリカのオンコセルカ症流行国31カ国と非流行国22か国におけるCOVID-19に対する影響を調査した。オンコセルカ症による罹患率、死亡率、回復率、致死率、COVID-19による罹患率,死亡率,回復率,致死率をアフリカにおける状況報告書から算出した。

オンコセルカ症の流行国31か国と非流行国22か国の2つのグループの母集団が等しい平均を持つという仮説を検定するために用いられるWelch検定による統計的比較を行ったものだ。イベルメクチンを投与された31か国の罹患率,死亡率,回復率,致死率、平均寿命は次の通りである。
テーブル1ー1 テーブル1-2

 イベルメクチン不投与22か国は次のような結果だった。 テーブル2 (2)この分析論文は、世界で最初にアフリカ31か国のイベルメクチン投与と不投与22か国とCOVID -19の感染関係を明快に見せてくれたテーブルである。

 

結論としては オンコセルカ症撲滅のためにイベルメクチンを投与されてきた国の罹患率および死亡率は、不投与されてきた国のそれよりも低いことが分かった。

結論

 アメリカとコロンビアで発表された2つの論文

ところが、P医師のアフリカでの疫学論文の発表前に、アフリカでイベルメクチンを投与された国は不投与の国に比べてCOVID -19の感染率や死亡率が低いとする論文が2020年12月9日にアメリカと2020年12月20日にコロンビアから2本出ていたのである。

イベルメクチンがCOVID -19に本当に効くのか効かないのか。どちらに転んでも最初に示唆した重要な論文となる。これを誰が最初に言いだし、証明する論文にしたのかは極めて重要である。

この件に関しては、P医師は2020年10月20日にmedRxivに掲載された論文にアフリカのオンコセルカ症の流行地では、COVID-19による死亡率は低いようだと記載済みであるとしている。

論文のプライオリティー(Priority)は創意順位を決めるものであり、学術現場では知的競争の決定的な要因になる。ノーベル賞受賞かどうかその決め手に、時として論文プライオリティで決することがあるほどだ。

そこで筆者は、似通った時期に発表され、同じ仮説で論じている3篇の論文の有用性を詳細に検証してみた。

 でたらめな母集団で結論を出したアメリカ論文

アメリカ論文は、ニューハンプシャー州の州立大学の研究者が2020年6月20日に、インターネットで一部の論文を見ることができるIJAA(International Journal of Antioxidant Agents)に投稿し、12月9日に掲載されたものだ。

タイトルは「A COVID-19 prophylaxis? Lower incidence associated with prophylactic administration of ivermectin(COVID-19予防法? イベルメクチンの予防的投与に伴う発症率の低下)」とするものだった。

アメリカ論文アメリカ論文の冒頭部分

 この論文は、アフリカ諸国の熱帯病撲滅でWHOがイベルメクチンを含む薬剤を投与してきた国と不投与の国を分け、COVID -19の感染者を調べ、投与された国の感染率が低いとする結論を出していた。

アメリカ論文バイオリン図アメリカ論文で投与・不投与の感染状況を描いたグラフ

 しかし、なぜか投与・不投与を簡便に分類した表はなく、論文に掲出した母集団を切り分けた図はここで見るように非常に見にくいものであり、国名も細かくて判読するのに苦労するものだった。

辛抱強く判読した結果、ガーナ、ケニヤなど9カ国が投与されてきた国にもかかわらず不投与国としており、不投与国でも最大の人口を誇る南アフリカ共和国が抜けていた。二つの母集団がでたらめであることが判明した。

それでも投与国は不投与国に比べて感染率が小さいと結論を出していたが、全く意味をなさない論文だった。

 コロンビア論文も母集団に大きな間違い

コロンビア論文は、2020年8月28日にコロンビアの学術誌の「Colombia Medica」に送られ、同年12月20日に掲載されたもので、「COVID -19: The Ivermectin African Enigma(COVID -19:イベルメクチンのアフリカの謎)」とするタイトルだった。

コロンビア論文コロンビア論文の冒頭部分

 WHOのオンコセルカ症撲滅戦略のため、イベルメクチンを無料で投与した「アフリカ・オンコセルカ症対策計画(African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)」の対象となった19か国だけを投与国とし、これを除いた35か国を不投与国としている。

APOCは当初、19か国でスタートし、後に4か国を追加して23か国になっている。さらに後年、WHOの「リンパ系フィラリア症集団医薬品管理戦略;LF-MDA」戦略では、29か国にイベルメクチンが投与されてきた。

しかしコロンビア論文では、実際にイベルメクチンが投与されてきた13か国を投与国に入れないだけでなく不投与国に入れており、研究そのものに意味がないものになっていた。

しかし論文の結論は、APOC19か国の100万人当りの感染率、死亡率は、不投与国に比べて感染率で84%、死亡率で86%になっていると報告していた。

  本当のプライオリティ

 ここまで調べて筆者は、次のように確信した。

 アメリカ論文は、何らかの方策で日本のP医師の論文を知った研究グループが、「付け刃」でイベルメクチン投与国には効果があるとして作った論文ではないか。いわゆるパクリ論文である。

アメリカ論文のデータ収集日は、P医師論文がpreprintとして掲載されたその日になっていた。これを知ったときはびっくりした。この事実からも、P医師にプライオリティがあることは明らかである。

さらに投与・不投与の母集団の分け方があまりにも雑であり、しかもIncidence(発生率)を比較しているが、アフリカの国々では、ほとんどが国レベルでPCR検査をやっていないし、その実態も不明になっている。このようなずさんな論文でもオープンアクセスで公開されると、それなりにアクセス件数が上がっていることに驚く。

 コロンビア論文は、投与・不投与の母集団が実態とかけ離れている点では、アメリカ論文と同じである。従って論文の評価に値しない内容である。

 P医師の論文を再度検証すると

繰り返しになるが、P医師がWHOのイベルメクチン予防投与国と不投与国でCOVID-19感染状況と死亡者数などがどのような差があるかに気付いた論文は2020年10月20日に、「medRxiv」に掲載されたものである。これを詳細に分析したのが、2021年3月26日掲載論文である。

アフリカのイベルメクチン投与の31か国と非投与の22か国におけるCOVID-19による罹患率,死亡率,回復率,致死率をWHOの状況報告書から研究しており、次のような結果を示している。

  • 投与31か国の罹患率と死亡率は、不投与22か国に比べて統計的に有意に低かった。
  • 回復率と死亡率は、2つのグループに統計的に有意な差はなかった。
  • 平均寿命は、非投与国の方が統計的に有意に高かった。

谷岡論文冒頭「medRxiv」に掲出されたP医師の論文

     ただし研究対象となった投与・不投与グループの国に、次のような不備があった。

  • イベルメクチンの投与国の中に「Sao Tome and Principe(サントメ・プリンシペ)」(人口22万人)が抜けている。
  • イベルメクチン不投与国の中に「Sao Tome and Principe(サントメ・プリンシペ)」が入り、「Djibouti(ジブチ)」(人口56万人)が抜けている。

 しかしこの両国は人口が少なく、結論に影響を及ぼすようなものではなかった。査読論文として記載されるときには修正されるだろう。

次回に続く