PEACE BOATで世界一周の旅ーその19
2024/05/17
南半球は太陽が西から昇る!?
5,6人で囲む朝の食事のテーブルは、前日の出来事や各自の近況報告で会話が弾みます。知らない同士ですが1ヶ月も経つとどこかでお顔を見たかなと思う人も出てきます。ちょうど、太陽が昇ってくる時刻でした。水平線の彼方から赤い太陽が昇ってくる光景は、いつ見てもいいものです。
角際で写真を撮っていたご婦人が「あら、今日は太陽が西から昇っている」とつぶやきました。船は北に向かって航海しているので、太陽は船の右方向に見えるはずです。それが左方向に見えている。だれかが「南半球は、太陽は西から昇るんだよ」というと「そんなこと学校で習わなかったよね」と言います。なんとなくそれで皆、納得したようでした。
筆者は、そうだろうかと頭の中で地球を思い浮かべて考えていましたが、納得いかない。ヘンだな。進行方向の左側に太陽がある。ということは船は南に向かっている。謎は、翌日の朝の食卓で解けました。
急患発生で船がナミベアに戻った!
前日、急患が発生したので船は反転し、ナミベアに戻ったと言うのです。船内放送で3回も知らせ、ナミベアには急患を搬送するヘリコプターがないので、高速モーターボートが接近し、船から降ろした急患を収容して戻って行ったというのです。
患者さんは若い人だったようで、皆、無事を祈る言葉であふれていました。すでに船で亡くなった方が2人出ているという話も聞きました。PEACE BOATスタッフに聞いた話ではありませんが、食卓の話題ではよく出てきます。スタッフも入れて1500人の乗員がいるのですから、そういうこともありうる話です。
PEACE BOATに申し込んだとき、70歳以上は健康診断書を出すように言われ、筆者は一か月以内の人間ドックの診断書を提出して、乗船OKをもらった身でした。
ともかくも太陽が西から昇ったと思っていたとき、船は急患収容のため、反転してナミベアに戻ったので南に向かって航海していたのです。太陽はやはり東から昇っていた!
謎が解けたとき、みんなで大笑いしました。どおりで船の速度が速かったことを筆者は思い起こしました。窓から流れゆく光景を見ていると、いつもの船の速度より速いなと思ったのです。しかし、船内放送で3回も急患発生したことを告知したことに全く気がつかなかったことにショックを覚えました。PCで何か作業をしているときに、船内放送があっても上の空でいることが少なくありません。
船内放送は、英語、日本語、中国語、韓国語と同じことを4回も放送するので、うるさいなあと思うことが多いのです。日本語のところできちんと聴いていなければ、あとは雑音と同じです。
急患を引き渡して船が再び反転して北へ向かったときに、あのむせび泣く汽笛を一回だけ鳴らしたと言うのです。急患搬送のお礼と患者には無事に帰って来いよと鳴らしたのでしょうが、筆者はこれも聴いていませんでした。そうこうしているうち、部屋のキーを中に置いたまま外に出てしまい、レセプションまで行って開けてもらうという失態も演じました。我が国の劣化を嘆く前に自らの劣化を反省するという日になりました。
趣味道楽から教養テーマまで各種の集まり
PEACE BOAT乗船客が自主的に企画して発表したり行動を起こす「自主企画」というイベントがあります。1300人(寄港地で乗り降りの乗客がいるので、大体の人数です)の人がいるので、趣味・道楽から始まってスポーツの類い、文化・芸術、教養まで人々の興味のあるものすべてに人が集まるもんだと感心しています。
例えばお習字、折り紙、朗読会、ペン字履修などに中国の舞踊、太極拳、ヨガなども会場を覗いてみたらほぼ満杯の盛況です。ヨガやサルサなどは、大きな会場やプールの周囲の回廊をうまく使って楽しんでいます。
小中学校の教育を考える会に集まり、早速意見交換会が始まりました
小中学校の教育を考える会が発足
筆者が日本の学校給食はいまや世界一であるという主旨で講演をしたことがきっかけになって、若い世代の乗船客と言葉を交わす仲になりました。その中に、中学校の国語の教師を4年務めて辞め、船に乗ってきた女性がいました。理由を聞いてみると、教師・学校という職場に飽き足らず、生き方を考え直したいというようなことを言います。
21世紀構想研究会の創設から25年を記念して開催したシンポジウムは教育がテーマだったので、そんな話から、船でも教育問題を提起する自主企画をしようかという話に発展しました。そこに大学の教育学部3年生の男子学生も加わることになり、3人が発案者になり「小学校の教育を考える」自主企画を立ち上げました。
20人以上の集まりにびっくり
当初、どのくらい集まってくるか不安もありましたが、開いてみれば20人以上が会場に集まってきました。船の中で知り合いになった元小中学校の教員をしていたご夫妻、国立大学の教授をしていたご婦人など、教育関係者も顔を見せており、初等中等教育が劣化をしている現状を憂えることで一致していました。
参加者は意見を付箋に書いて出し合い、終了後の整理に役立たせます。
学校現場ではこのような方法がよくとられているようで、勉強になりました。
これから現場で何が問題になっているのか。その現状を出し合い、解決する方法を模索してまとめ、それを行政当局や政治家に届けて対応策を講じてもらおういう狙いです。最終的には船でシンポジウムを開催してまとめるという計画です。
参加者の意見をどのように集約するのか。主催した若者たちは、大きな付箋を配布して、そこに全員の意見をメモしてもらい、それを集めて整理するという方法には感心しました。教室の授業では、よくやっているという方法だとか。こうして教育問題を討論してよりよき現場の実現に船の同士は動き出しました。
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