世界一周の船旅の記録その1をアップします。1~30回です。
2024/11/25
2024年4月から7月まで、ピースボートのパシフィック・ワールド号(7万7千トン)に乗船して、世界一周をしてきました。
その様子を60回に渡って、ブログでアップします。
その①1~30回分のPDFファイルをアップします。
2024年4月から7月まで、ピースボートのパシフィック・ワールド号(7万7千トン)に乗船して、世界一周をしてきました。
その様子を60回に渡って、ブログでアップします。
その①1~30回分のPDFファイルをアップします。
投与国と不投与国を分けた根拠
アフリカ諸国でイベルメクチンが投与された国と不投与の国は、どのような選定手順で行われたか。
日本の外務省を始め国際機関の多くは、アフリカ大陸の主権国家は54か国としている。モロッコとモーリタニアが領有権を主張して紛争国になっている西サハラは国家としては認めていない。ソマリランドは、国際的に国家と承認されていない。この事情にならってこの調査・分析でも54か国を対象とし、イベルメクチン投与・不投与の実態をWHOのまとめをもとに調べた。
熱帯地方に蔓延していた感染症(写真はいずれも大村博士提供)
北里大学の大村智博士が土壌の中に生息する微生物から発見したエバーメクチンは、最初は家畜動物に投与する動物抗生物質だった。この薬剤は動物抗生物質として売り上げ20年間トップを走る記録的なヒット薬剤となった。
その後メルク社のウイリアム・キャンベル博士との共同研究でエバーメクチンの誘導体のイベルメクチンを開発し、熱帯地方に蔓延するオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症を治療する薬剤開発につながった。
WHOが熱帯病撲滅のために最初に大掛かりに取り組んだのは、赤道ベルト地帯に蔓延していたオンコセルカ症(河川盲目症)の撲滅戦略である。河川に生息するブユを介在して線虫に感染すると、猛烈なかゆみと痛みを伴う皮膚病変を起こす寄生虫感染症である。体内に入った線虫が網膜に棲みついて繁殖し、盲目にする感染症として恐れられていた。
イベルメクチンの投与でオンコセルカ症から救われた子供たちに取り囲まれて歓迎を受ける大村博士(2004年9月、ガーナ共和国アズベンデで)
APOCとLF‐MDA戦略の展開
WHOは1995年から、オンコセルカ症の撲滅を目指して「アフリカ・オンコセルカ症対策計画(African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)」を展開し、23か国にイベルメクチンを無償で提供してきた。
この戦略は大きな効果を上げ、WHOの専門家は「これまで熱帯病に投与されてきた薬剤の中でもイベルメクチンは、けた外れに効果がある薬剤だった」と高く評価してきた。
さらにWHOは、蚊を媒体として寄生虫がヒトのリンパ系に入り込んで重篤なむくみ症状やリンパ系に障害を起こして死へつながるリンパ系フィラリア症(象皮症)という熱帯病の撲滅のために乗り出した。
「リンパ系フィラリア症集団医薬品管理戦略;LF-MDA」であり、29か国を対象にイベルメクチンを始めアルベンダゾール、DEC(クエン酸ジエチルカルバマジン)などの薬剤を無償で投与してきた。
このようなWHOの熱帯病撲滅作戦を報告するサイトを示して、筆者の作業に有力な助言をしてくれたのは、八木澤守正・北里大学客員教授だった。八木澤先生の示唆でこの作業は大きく進展した。
(2004年9月、ガーナ共和国アズベンデで)
WHOが①APOCおよび②LF-MDAの熱帯病撲滅戦略でイベルメクチンを投与してきた国は次の通りである。
このうち、両方の戦略に参加した国と2つの戦略のうちどちらかに参加した国がある。この2つの戦略でイベルメクチンを投与された国は、合計32か国となった。
イベルメクチン投与国 |
APOC |
LF-MDA |
人口 |
|
1 |
アンゴラ |
〇 |
〇 |
31.03 |
2 |
ベナン |
〇 |
12.15 |
|
3 |
ブルキナファソ |
〇 |
20.91 |
|
4 |
ブルンジ |
〇 |
11.88 |
|
5 |
カメルーン |
〇 |
〇 |
26.55 |
6 |
中央アフリカ |
〇 |
〇 |
4.83 |
7 |
チャド |
〇 |
〇 |
16.43 |
8 |
コンゴ |
〇 |
〇 |
90.79 |
9 |
コートジボアール |
〇 |
〇 |
26.96 |
10 |
コンゴ民主共和国 |
〇 |
〇 |
4.68 |
11 |
赤道ギニア |
〇 |
〇 |
1.41 |
12 |
エチオピア |
〇 |
〇 |
97.18 |
13 |
ガボン |
〇 |
〇 |
2.11 |
14 |
ガーナ |
〇 |
〇 |
30.78 |
15 |
ギニア |
〇 |
13.97 |
|
16 |
ギニアビサウ |
〇 |
〇 |
1.82 |
17 |
ケニヤ |
〇 |
〇 |
48.69 |
18 |
リベリア |
〇 |
〇 |
4.69 |
19 |
マラウイ |
〇 |
〇 |
20.87 |
20 |
マリ |
〇 |
19.66 |
|
21 |
モザンビーク |
〇 |
〇 |
31.99 |
22 |
ニジェール |
〇 |
24.21 |
|
23 |
ナイジェリア |
〇 |
〇 |
206.14 |
24 |
ルワンダ |
〇 |
12.67 |
|
25 |
サントメ・プリンシペ |
〇 |
0.22 |
|
26 |
セネガル |
〇 |
16.75 |
|
27 |
シエラレオネ |
〇 |
〇 |
7.98 |
28 |
南スーダン |
〇 |
13.78 |
|
29 |
スーダン |
〇 |
44.35 |
|
30 |
トーゴ |
〇 |
8.29 |
|
31 |
ウガンダ |
〇 |
〇 |
41.22 |
32 |
タンザニア |
〇 |
〇 |
58 |
合計 |
23 |
29 |
952.99 |
イベルメクチン不投与国
WHOの熱帯病撲滅戦略に指定もしくは参加しなかった国は、アフリカ54か国の中で22か国となった。そのリストは、次の通りである。
イベルメクチン不投与国 |
||
国 |
人口(100万人) |
|
1 |
アルジェリア |
44.23 |
2 |
エジプト |
100.88 |
3 |
エスワティニ |
1.13 |
4 |
エリトリア |
3.55 |
5 |
カーボヴェルデ |
0.56 |
6 |
ガンビア |
2.42 |
7 |
コモロ |
0.9 |
8 |
ザンビア |
18.88 |
9 |
ジブチ |
1.11 |
10 |
ジンバブエ |
15.19 |
11 |
セーシェル |
0.1 |
12 |
ソマリア |
15.05 |
13 |
チュニジア |
11.9 |
14 |
ナミビア |
2.53 |
15 |
ボツワナ |
2.35 |
16 |
マダガスカル |
27.58 |
17 |
モーリシャス |
1.27 |
18 |
モーリタニア |
4.15 |
19 |
モロッコ |
35.95 |
20 |
リビア |
6.64 |
21 |
レソト |
2.06 |
22 |
南アフリカ |
59.62 |
合計 |
358.05 |
以上のように、WHOの熱帯病撲滅戦略の中で、イベルメクチンを投与されてきた
32か国と投与されてこなかった22か国が確定した。
この2つのグループが、COVID-19感染はどのようになっているかを調べた結果がその5までに報告した通りである。
次号に続く
アフリカ諸国の感染状況集計表に仰天
今年の4月に入って間もなく、北里大学大村智記念研究所所長の花木秀明教授から、一枚の集計表が送られてきた。COVID -19のアフリカでの感染状況を調べた集計表であり、一般の方から研究所に送られてきたものだという。
アフリカの国・地域の全てについて人口、COVID -19の感染者累計、その10万人当りの数、死亡者の累計、その10万人当りの数を一覧にしたものだ。
2021年4月1日時点の調査によるとした数字が並んでいる。国別の各項目別数字は、①各国当局、②現地メディア、③オックスフォード・コロナウイルス政府対策トラッカー、④ロイターなどにある数字を、一個ずつ拾って書き込んでいったことが後日、本人から聞いて分かった。
ともかくもこの集計表を見た瞬間、筆者はやられたと思った。イベルメクチンを投与されてきた31か国と投与されてこなかった22か国の感染者数、死亡者数が明らかに投与された国の方が一見明白に少ない数字になっていたからだ。
そのころ筆者も、北里大学客員教授の八木澤守正先生からご教示をいただきながら、アフリカ諸国がなぜCOVID -19感染者数が少なく、死亡者数も少ないかに興味を持って調べ始めていたからだ。
データ分析技術者が丹念に書き写した数字
作成したのは東京の末吉榮三さん(77)で、NPO法人まちづくり・建物なんでも相談室の理事をされている方だった。武蔵工業大学土木工学科を卒業され、仲間と一緒に立ち上げた株式会社応用技術試験所で、建築技術のデータ分析などに取り組み、後に代表取締役社長をなさった方であった。
応力、たわみ、振動、騒音測定、データ分析などを手がけてきた方と聞いて、なるほどと思った。オンラインに散見している目的のデータを検索して蓄積し、それを分析することは得意だったのである。
なぜ、イベルメクチン投与国と不投与国とでは、COVID -19感染状況が違うのか。アフリカ諸国は、COVID -19の感染者数が少ないことが各種メディアなどでも報道されるようになったとき、イベルメクチンの投与と何か関係があるのではないかと思い始めていた。
末吉さんは拙著「大村智ものがたり」(毎日新聞出版社)を読んだとき、赤道熱帯地方の重篤な感染症で盲目になるオンコセルカ症の感染予防に、WHOから無償でイベルメクチンが投与されてきたことが書かれてあったことを思い出していた。
1回のイベルメクチン投与でオンコセルカ症の感染予防に効いている。もしかしたらCOVID -19の感染予防にも有効に働いているのかもしれない。まるでワクチンによって抗体を獲得したように、イベルメクチンが長期間効き目を持続すれば、COVID -19感染者数も少なくなるはずだ。
その仮説を証明するため、2021年4月1日現在のアフリカ諸国のCOVID -19感染状況を調べ、熱帯病治療・予防のためにWHOからイベルメクチンを投与された国と不投与国の2つのグループに分けて調べてみた。
イベルメクチンが感染予防に効いている!?
末吉さんは、苦労して自分が調べた結果を見て驚いた。投与された国は、不投与の国に比べて明らかに感染率が少なく、死亡者数も少なくなっていたからだ。
末吉さんがアフリカ諸国のCOVID -19感染状況を調べると、イベルメクチン投与国は不投与国に比べて顕著に少なく出ていることに驚いた。
こんなにきれいなデータになって出てくるのは、何か因果関係があるに違いない。COVID -19とイベルメクチンの研究に積極的に取り組んでいる北里大学に参考資料として送った。
筆者がこの「末吉集計表」を知ったとき、P教授論文、アメリカ論文、コロンビア論文を調べていたときだったの、本当にびっくりした。
正確な集計表の作成
筆者が調べていた3本の学術論文は、いずれも国際的に知られている学術サイトに投稿された論文だが、アメリカ論文とコロンビア論文には投与・不投与の2つの母集団に明らかな間違いがあり論文の価値を失っていると感じていた。
P医師の論文は学術的に価値の高い内容であることが分かり、重要な知見を示していたが、筆者が調べた投与・不投与の国と一部で合わないことが分かった。論文の結論にはほとんど影響がない程度であり、査読論文として掲出されるときは修正すれば済むようなことだった。また、「末吉集計表」でも筆者のリストとは一致しない国が出てきた。
ここに至って、正確な投与・不投与母集団を確定した集計表を作成する必要がある。そう考えて、八木澤先生の助言を受けながらWHOの資料検索から追跡し、ついに目的の母集団確定までこぎつけていった。
次回に続く
コロナウイルス(SARS-CoV-2)に抗生物質は本当に無効か?
2020年になってからコロナウイルスが中国・武漢から徐々に世界へと広がりだしたころ、WHOはウイルスには抗生物質が無効だからCOVID-19に使用しないようにとの通達を出した。そのことに敏感に反応したのは、CTやMRIの画像診断など最新IT技術を駆使した研究と生理学を合体させて研究している日本のP医師だった。
日本の一部の医師、研究者の間では、武漢でインフルエンザ様症状の患者にタミフルとセフェム系抗生物質がある程度効いていたことを知っており、WHOがコロナウイルスにだけ敢えて抗生物質を使うなと通達を出すことをP医師は奇異に感じたのである。
そこで抗生物質の使用量と使用比率がコロナウイルスの罹患率および死亡率
に相関関係があるかどうか多くの文献を精査して調べてみたところ、相関関係があることが分かった。その成果をまとめアメリカのメジャーな学術誌に送った。
すると編集長が「審査に時間がかかり、受理される率も全体で10%程度だから至急他の雑誌に投稿した方がいい」とアドバイスをしてきた。
その論文のディスカッションの部分で「Macrolides have been shown to be active in vitro against RNA viruses. Indeed, it seems that the mortality rate caused by COVID-19 is low in Onchocerciasis endemic areas of Africa(マクロライド系抗生物質は、RNAウイルスに対してin vitro=試験管レベル=で有効であることが示されている。実際、アフリカのオンコセルカ症の流行地では、COVID-19による死亡率は低いようだ)と記載しておいた。つまりイベルメクチンの有効性に言及したものだった。
そうしているうち、オープンアクセスとしての投稿を示唆してきた。しかし投稿するには40~50万円かかるという。それならば日本の公益財団法人日本感染症医薬品協会の英文機関誌「The Journal of Antibiotics」に投稿することにした。
国内では判断できずドイツの査読者に回される
P医師から論文を受理した「The Journal of Antibiotics」誌は、この論文の採否の決定ができないとしてドイツの査読者に回した。しかし査読後の結論は、不採用となった。ウイルスに抗生物質は効かないとしてイベルメクチンがコロナウイルスに作用することは認められないとの理由だった。
そこでP医師は、2020年10月18日、査読前の論文掲出を受け入れている「medRxiv」に投稿したところ、2日後の同年10月20日に掲出された。
ウイルスに抗生物質は効かないとか、イベルメクチンがコロナウイルスに作用することは認められないとの理由に対して違和感を抱いていたP医師は、COVID-19とオンコセル症との関係に関する疫学分析を行い、それをまとめて2021年3月26日に「medRxiv」に送った。
論文投稿後すぐに掲出されたアフリカの疫学的考察
P医師が投稿後すぐに掲出してきた。この対応にP医師も驚いたという。論文のタイトルは、「Why COVID-19 is not so spread in Africa: How does Ivermectin affect it?(なぜCOVID-19はアフリカでそれほど広がっていないのですか:イベルメクチンはどのように影響しますか?)」というもので、論文の大略は次のようなものである。
アフリカのオンコセルカ症流行国31カ国と非流行国22か国におけるCOVID-19に対する影響を調査した。オンコセルカ症による罹患率、死亡率、回復率、致死率、COVID-19による罹患率,死亡率,回復率,致死率をアフリカにおける状況報告書から算出した。
オンコセルカ症の流行国31か国と非流行国22か国の2つのグループの母集団が等しい平均を持つという仮説を検定するために用いられるWelch検定による統計的比較を行ったものだ。イベルメクチンを投与された31か国の罹患率,死亡率,回復率,致死率、平均寿命は次の通りである。
イベルメクチン不投与22か国は次のような結果だった。 この分析論文は、世界で最初にアフリカ31か国のイベルメクチン投与と不投与22か国とCOVID -19の感染関係を明快に見せてくれたテーブルである。
結論としては オンコセルカ症撲滅のためにイベルメクチンを投与されてきた国の罹患率および死亡率は、不投与されてきた国のそれよりも低いことが分かった。
アメリカとコロンビアで発表された2つの論文
ところが、P医師のアフリカでの疫学論文の発表前に、アフリカでイベルメクチンを投与された国は不投与の国に比べてCOVID -19の感染率や死亡率が低いとする論文が2020年12月9日にアメリカと2020年12月20日にコロンビアから2本出ていたのである。
イベルメクチンがCOVID -19に本当に効くのか効かないのか。どちらに転んでも最初に示唆した重要な論文となる。これを誰が最初に言いだし、証明する論文にしたのかは極めて重要である。
この件に関しては、P医師は2020年10月20日にmedRxivに掲載された論文にアフリカのオンコセルカ症の流行地では、COVID-19による死亡率は低いようだと記載済みであるとしている。
論文のプライオリティー(Priority)は創意順位を決めるものであり、学術現場では知的競争の決定的な要因になる。ノーベル賞受賞かどうかその決め手に、時として論文プライオリティで決することがあるほどだ。
そこで筆者は、似通った時期に発表され、同じ仮説で論じている3篇の論文の有用性を詳細に検証してみた。
でたらめな母集団で結論を出したアメリカ論文
アメリカ論文は、ニューハンプシャー州の州立大学の研究者が2020年6月20日に、インターネットで一部の論文を見ることができるIJAA(International Journal of Antioxidant Agents)に投稿し、12月9日に掲載されたものだ。
タイトルは「A COVID-19 prophylaxis? Lower incidence associated with prophylactic administration of ivermectin(COVID-19予防法? イベルメクチンの予防的投与に伴う発症率の低下)」とするものだった。
この論文は、アフリカ諸国の熱帯病撲滅でWHOがイベルメクチンを含む薬剤を投与してきた国と不投与の国を分け、COVID -19の感染者を調べ、投与された国の感染率が低いとする結論を出していた。
しかし、なぜか投与・不投与を簡便に分類した表はなく、論文に掲出した母集団を切り分けた図はここで見るように非常に見にくいものであり、国名も細かくて判読するのに苦労するものだった。
辛抱強く判読した結果、ガーナ、ケニヤなど9カ国が投与されてきた国にもかかわらず不投与国としており、不投与国でも最大の人口を誇る南アフリカ共和国が抜けていた。二つの母集団がでたらめであることが判明した。
それでも投与国は不投与国に比べて感染率が小さいと結論を出していたが、全く意味をなさない論文だった。
コロンビア論文も母集団に大きな間違い
コロンビア論文は、2020年8月28日にコロンビアの学術誌の「Colombia Medica」に送られ、同年12月20日に掲載されたもので、「COVID -19: The Ivermectin African Enigma(COVID -19:イベルメクチンのアフリカの謎)」とするタイトルだった。
WHOのオンコセルカ症撲滅戦略のため、イベルメクチンを無料で投与した「アフリカ・オンコセルカ症対策計画(African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)」の対象となった19か国だけを投与国とし、これを除いた35か国を不投与国としている。
APOCは当初、19か国でスタートし、後に4か国を追加して23か国になっている。さらに後年、WHOの「リンパ系フィラリア症集団医薬品管理戦略;LF-MDA」戦略では、29か国にイベルメクチンが投与されてきた。
しかしコロンビア論文では、実際にイベルメクチンが投与されてきた13か国を投与国に入れないだけでなく不投与国に入れており、研究そのものに意味がないものになっていた。
しかし論文の結論は、APOC19か国の100万人当りの感染率、死亡率は、不投与国に比べて感染率で84%、死亡率で86%になっていると報告していた。
本当のプライオリティ
ここまで調べて筆者は、次のように確信した。
アメリカ論文は、何らかの方策で日本のP医師の論文を知った研究グループが、「付け刃」でイベルメクチン投与国には効果があるとして作った論文ではないか。いわゆるパクリ論文である。
アメリカ論文のデータ収集日は、P医師論文がpreprintとして掲載されたその日になっていた。これを知ったときはびっくりした。この事実からも、P医師にプライオリティがあることは明らかである。
さらに投与・不投与の母集団の分け方があまりにも雑であり、しかもIncidence(発生率)を比較しているが、アフリカの国々では、ほとんどが国レベルでPCR検査をやっていないし、その実態も不明になっている。このようなずさんな論文でもオープンアクセスで公開されると、それなりにアクセス件数が上がっていることに驚く。
コロンビア論文は、投与・不投与の母集団が実態とかけ離れている点では、アメリカ論文と同じである。従って論文の評価に値しない内容である。
P医師の論文を再度検証すると
繰り返しになるが、P医師がWHOのイベルメクチン予防投与国と不投与国でCOVID-19感染状況と死亡者数などがどのような差があるかに気付いた論文は2020年10月20日に、「medRxiv」に掲載されたものである。これを詳細に分析したのが、2021年3月26日掲載論文である。
アフリカのイベルメクチン投与の31か国と非投与の22か国におけるCOVID-19による罹患率,死亡率,回復率,致死率をWHOの状況報告書から研究しており、次のような結果を示している。
ただし研究対象となった投与・不投与グループの国に、次のような不備があった。
しかしこの両国は人口が少なく、結論に影響を及ぼすようなものではなかった。査読論文として記載されるときには修正されるだろう。
次回に続く
戦場と化したインドの状況
2021年1月ころ、インドのCOVID -19感染状況は峠を越え、やがて終息する方向へ向かっているように見えた。ところが、3月にはいると感染者数が徐々に増えだしてきた。満を持していたかのように感染爆発したのが4月に入ってからである。
4月に入るやインドで感染が急拡大する。「BBC NEWS JAPAN」「Trial Site News」、「The Desert Review」などメディアが伝えるインドの状況は、さながら戦場から伝える実況ルポであった。その中からBBC JAPAN が報道した見出しを抜き出して列挙すると次のようになる。
見出しから本文にジャンプできるので、読んでいただけると現場の状況が分かる。COVID -19ウイルスと人類が戦う壮絶な戦場の有様である。
インド、第2波で感染者・死者が過去最多に 一時は「勝利」間近と言われたが
ビデオ,感染第2波への「準備できていなかった」 インドで大勢が治療受けられず, 所要時間 2,37
インドで1日の感染者連日34万人超に 病院では医療用酸素不足で20人死亡
医療現場でイベルメクチンが浮上
戦場と化した医療現場でCOVID -19感染者の診療をする医師たちの必死の行動と思いがメディアの報道にも多数出てくるようになる。ワクチン接種が行き渡るのは、遠い先の話である。有効な治療薬もない、あっても高価な薬剤である。重症化した際に装着される人工心肺装置(ECMO、Extracorporeal Membranous Oxygenation:体外式膜型人工肺)は肺機能を代行する装置だが、インドにはほとんど普及していない。
肺炎になった際に使われるアメリカのギリアド社製のレムデシビルは、投与量が3000ドル(約33万円)であるから途方もなく高い薬剤である。こうした状況の中で、世界中の臨床試験で効果ありと報告されているイベルメクチンは、たかだか数千円で入手できる薬剤である。
メルク社が開発して製造し、アフリカ熱帯地方の寄生虫病の撲滅のために無償で配布してきた薬剤であるが、特許はとっくに切れ、ジェネリック製剤をインドの企業が製造している薬剤だ。
WHOを始め、アメリカのNIH、FDAなどがCOVID -19治療にイベルメクチンを禁止もしくは適応外としていることは医療現場の医師たちも承知していただろう。その理由が、十分な臨床試験データが得られていないというものだ。
しかしいま、戦場にあるいわば野戦病院の中での戦いである。エビデンスが出てくるまで待つことなどできない。安く入手でき、副作用もなくしかも、世界で50例以上の臨床試験で効果ありとされているイベルメクチンを使わないのは医師として怠慢と言われかねない。当然だった。
さらにもう一つ、重要な「証拠データ」があった。過去30年以上にわたってイベルメクチンを投与されてきたアフリカ諸国で、COVID -19感染者数、死者数が異常なほど少ない事実が分かってきたのである。
その証拠を世界で最初に気が付いて論文にしたのは日本人の研究者であり、次いで一市民であり、最後に筆者がWHOのデータを詳細に調べて作った決定版の証拠であった。
次回に続く
特異な山型グラフを示したインドの状況
今年3月から、インドでCOVID-19の変異種がまたたく間に広がり急カーブで上昇した。5月上旬まで一気に拡大し、ピークを打った後、下のグラフのように急こう配で減少に転じている。グラフの左側の山が感染者数で、右側の山は死亡者数である。
グラフの形状だけで見ていただきたい。この山型のグラフは、COVID-19の感染状況を見るうえでも特異な現象である。一気に急拡大して一気に沈静化していく。何がそうしたのか。
このグラフを公開しているのは、アメリカでCOVID-19の治療・予防について世界中の臨床試験例を集めて分析し、何が有効なのかを調べているFLCCC(Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)という医師グループである。彼らが行きついたのは、COVID-19の治療・予防には、イベルメクチンが最適だという結論であった。
FLCCCは、どのような団体なのか。HPを開くとその全貌が分かるようになっているので、ここでは省略して先に進めていきたい。
この団体を一躍有名にしたのは、昨年2020年12月にアメリカ上院の公聴会に呼ばれて、代表のピエール・コーリー博士が、イベルメクチンの効果について自分たちが分析した内容をもとに、アメリカでも臨床治療にイベルメクチンを適応すべきと迫ったからである。
しかしアメリカでは、ほとんど相手にされなかった。というよりも、コーリー博士らに対する嫌がらせが急激に高まり、あろうことかメディアもこの公聴会での陳述を無視してきたのである。
しかしコーリー博士らはくじけなかった。年が明けて間もない1月上旬、彼らはアメリカ国立衛生研究所(NIH)に乗り込み、彼らが分析してきた世界中のイベルメクチンによる臨床試験の分析を説明したため、NIHの研究者もある程度、納得することになる。
それまでNIHは、COVID-19治療のガイドラインでイベルメクチンはCOVID-19の治療には、臨床試験データが不十分なので「反対」(against)としてきた表記を、1月14日に次のように変更した。
イベルメクチンをCOVID-19の治療に使うことを「反対も推奨もしない(either for or against the use of ivermectin for the treatment)」という中間的な表現に後退し、イベルメクチンの治療効果をある程度認めた形になった。
FLCCCがそれまで世界に向かって公開していたCOVID-19に対するイベルメクチンの臨床試験内容は、50例を超えており、そのどれもがイベルメクチンが有効だという結果を出していた。
このアピールを自分たちで分析して妥当だとしてイベルメクチン有効という主張を掲げたグループがイギリスに現れた。「イギリス・イベルメクチン推奨開発」British Ivermectin Recommendation Development (BIRD)という医師グループである。
彼らは、イベルメクチンこそCOVID -19を撲滅する薬剤だとして、イギリスで治療・予防に政府が適応承認するべきとのキャンペーンを始めた。
インドであれだけの効果を示しているのに、世界の保健普及のリーダーになっている世界保健機関(WHO)は、いまなおイベルメクチンは臨床試験が不十分であるとして治療に使うことに反対している。しかし、インドはそれを破ってイベルメクチン投与を行った。
治療現場では、イベルメクチンだけ投与したものではなく、様々な複数の医薬品を投与しているので、正確にはイベルメクチンがどの程度効いているかは分からない。だからと言って、全く効いていないとも思えない。
イベルメクチン投与の臨床試験のデータを取り、論文を書いているのは、多くが途上国の医師である。アメリカなどいくつかの先進国の医師グループもいるにはいるが少数である。途上国の臨床試験は信用しないという先入観があったのは間違いない。しかしそれよりも途上国には、それなりの理由があったのである。
次回につづく