イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-5
イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-7

イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-6

  投与国と不投与国を分けた根拠

アフリカ諸国でイベルメクチンが投与された国と不投与の国は、どのような選定手順で行われたか。

日本の外務省を始め国際機関の多くは、アフリカ大陸の主権国家は54か国としている。モロッコとモーリタニアが領有権を主張して紛争国になっている西サハラは国家としては認めていない。ソマリランドは、国際的に国家と承認されていない。この事情にならってこの調査・分析でも54か国を対象とし、イベルメクチン投与・不投与の実態をWHOのまとめをもとに調べた。

 熱帯地方に蔓延していた感染症(写真はいずれも大村博士提供)

 北里大学の大村智博士が土壌の中に生息する微生物から発見したエバーメクチンは、最初は家畜動物に投与する動物抗生物質だった。この薬剤は動物抗生物質として売り上げ20年間トップを走る記録的なヒット薬剤となった。

その後メルク社のウイリアム・キャンベル博士との共同研究でエバーメクチンの誘導体のイベルメクチンを開発し、熱帯地方に蔓延するオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症を治療する薬剤開発につながった。

WHOが熱帯病撲滅のために最初に大掛かりに取り組んだのは、赤道ベルト地帯に蔓延していたオンコセルカ症(河川盲目症)の撲滅戦略である。河川に生息するブユを介在して線虫に感染すると、猛烈なかゆみと痛みを伴う皮膚病変を起こす寄生虫感染症である。体内に入った線虫が網膜に棲みついて繁殖し、盲目にする感染症として恐れられていた。

Image1イベルメクチンの投与でオンコセルカ症から救われた子供たちに取り囲まれて歓迎を受ける大村博士(2004年9月、ガーナ共和国アズベンデで)

 APOCとLF‐MDA戦略の展開

 WHOは1995年から、オンコセルカ症の撲滅を目指して「アフリカ・オンコセルカ症対策計画(African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)」を展開し、23か国にイベルメクチンを無償で提供してきた。

 この戦略は大きな効果を上げ、WHOの専門家は「これまで熱帯病に投与されてきた薬剤の中でもイベルメクチンは、けた外れに効果がある薬剤だった」と高く評価してきた。

 さらにWHOは、蚊を媒体として寄生虫がヒトのリンパ系に入り込んで重篤なむくみ症状やリンパ系に障害を起こして死へつながるリンパ系フィラリア症(象皮症)という熱帯病の撲滅のために乗り出した。

「リンパ系フィラリア症集団医薬品管理戦略;LF-MDA」であり、29か国を対象にイベルメクチンを始めアルベンダゾール、DEC(クエン酸ジエチルカルバマジン)などの薬剤を無償で投与してきた。

このようなWHOの熱帯病撲滅作戦を報告するサイトを示して、筆者の作業に有力な助言をしてくれたのは、八木澤守正・北里大学客員教授だった。八木澤先生の示唆でこの作業は大きく進展した。

象皮症の脚象皮症になった患者の患部

(2004年9月、ガーナ共和国アズベンデで)

 WHOが①APOCおよび②LF-MDAの熱帯病撲滅戦略でイベルメクチンを投与してきた国は次の通りである。

 このうち、両方の戦略に参加した国と2つの戦略のうちどちらかに参加した国がある。この2つの戦略でイベルメクチンを投与された国は、合計32か国となった。

 

イベルメクチン投与国

APOC
(23)

LF-MDA
(29)

人口
(100万人)

1

アンゴラ

31.03

2

ベナン

 

12.15

3

ブルキナファソ

 

20.91

4

ブルンジ

 

11.88

5

カメルーン

26.55

6

中央アフリカ

4.83

7

チャド

16.43

8

コンゴ

90.79

9

コートジボアール

26.96

10

コンゴ民主共和国

4.68

11

赤道ギニア

1.41

12

エチオピア

97.18

13

ガボン

2.11

14

ガーナ

30.78

15

ギニア

 

13.97

16

ギニアビサウ

1.82

17

ケニヤ

48.69

18

リベリア

4.69

19

マラウイ

20.87

20

マリ

 

19.66

21

モザンビーク

31.99

22

ニジェール

 

24.21

23

ナイジェリア

206.14

24

ルワンダ

 

12.67

25

サントメ・プリンシペ

 

0.22

26

セネガル

 

16.75

27

シエラレオネ

7.98

28

南スーダン

 

13.78

29

スーダン

 

44.35

30

トーゴ

 

8.29

31

ウガンダ

41.22

32

タンザニア

58

 

合計

23

29

952.99

 イベルメクチン不投与国

 WHOの熱帯病撲滅戦略に指定もしくは参加しなかった国は、アフリカ54か国の中で22か国となった。そのリストは、次の通りである。

 

イベルメクチン不投与国

 

人口(100万人)

1

  アルジェリア

44.23

2

エジプト

100.88

3

  エスワティニ

1.13

4

  エリトリア

3.55

5

  カーボヴェルデ

0.56

6

  ガンビア

2.42

7

  コモロ

0.9

8

  ザンビア

18.88

9

  ジブチ

1.11

10

  ジンバブエ

15.19

11

  セーシェル

0.1

12

  ソマリア

15.05

13

  チュニジア

11.9

14

  ナミビア

2.53

15

  ボツワナ

2.35

16

  マダガスカル

27.58

17

  モーリシャス

1.27

18

  モーリタニア

4.15

19

  モロッコ

35.95

20

  リビア

6.64

21

  レソト

2.06

22

  南アフリカ

59.62

 

合計

358.05

 以上のように、WHOの熱帯病撲滅戦略の中で、イベルメクチンを投与されてきた

32か国と投与されてこなかった22か国が確定した。

 この2つのグループが、COVID-19感染はどのようになっているかを調べた結果がその5までに報告した通りである。

次号に続く

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