公文書館の貧困で真実を知らない途上国日本

公文書館の貧困で真実を知らない途上国日本
朝日新聞1月4日付け朝刊一面に掲載された沖縄返還交渉時の佐藤・ニクソン核密約のシナリオが発見されたという「特ダネ」が、別面も割いて大特報されました。朝日にケチをつける積りではありませんが、このような重要な書面が一政治家の私邸に保存され、51年目にメディアを通じて公開するという異常さを感じました。
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このシナリオは、密使となった若泉敬の著書「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」(1994年、文藝春秋社)に詳細に書かれていた内容であり、昨年上梓した拙著「沖縄返還と密使・密約外交」(日本評論社)にも引用して紹介しました。
本来、こうした首相の公務での書面は公文書館に保存されるべきものであり、アメリカでは沖縄返還の密使外交の多くが保存され、20年後に公開されて密使・密約外交がすべて露見しています。日本は、時の権力者が保存し、何かのときに明るみに出るという異常な国です。メディアが情報を入手して報道することもあれば、政治家が後年、自慢話の一つとして語ったり書き残すこともあります。それを有難がって知る国民にも問題があります。
公文書館の貧困さが語る
つまり日本では政治家が「公務で取得した情報を私物化」し、後年の史家が正確な総括・検証ができない途上国状況が続いています。佐藤政権の沖縄返還交渉は典型的な「外交の私物化」であり、日本がアメリカに支払った実際の賠償金額すら不明です。密約交渉を記述した膨大な文書は廃棄されたと言われていますが、その真偽すら不明ということですから、国の体裁をしていないと思っています。
このようなことを放置しないで、口うるさく言うことが大事だと思って発言しました。

「スクープ取材」を掲げたNHKの本気度

さる11月17日に放映されたNHKクローズアップ現代(クロ現)のタイトルを見て度肝を抜かれました。「スクープ取材・旧統一教会 “知られざる被害”の告白」とあったからです。自ら「スクープ」と言うからには相当なる内容であることを宣言したものだからです。
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NHKはいわば「国営放送局」です。それが「知られざる被害」とうたったのは、明確に旧統一教会は「加害者」であるとの立場で番組作成したことを宣言したものです。献金を事実上強いられ続けたために自己破産に追い込まれ、「無年金」になっていった被害者に語らせ、「家族のために年金より献金」という大きなテロップを掲げました。
独居高齢者に組織的に献金を促した実例を報道し、旧統一教会の担当者が信者の資産や家族状況を詳細に把握し、遺産を献金させるための遺書作成を組織的に指示し、実行していた実態を報告しました。
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いま国会でも論議が進んでいる被害者救済の新法についても、①マインドコントロールによる被害防止、②家族の被害回復を骨子にするべきとの方向を提示しました。
面識ない信者と教団の仲介で結婚させられた被害者の実情を当事者の告白も入れながら報告し、信者の間の養子縁組がこれまで745人に達しているという驚くべき被害実態も報道しました。旧統一教会が行ってきた養子縁組は、違法性が高いものであり、これに対する旧統一教会側の方針と言い分もきちんと報道しました。しかし旧統一教会側の言い分は、むしろ旧統一教会の教義がいかに独善性と違法性の高いものであるかを自ら暴露したような内容になっており、それだからこそNHKは動画で長々と放映したものでした。
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筆者は、NHKの回し者ではありません。元読売新聞社会部記者の感覚から見ても、この番組構成は明らかに旧統一教会は加害者であり、信者の多くが被害者になっており、信者二世とされる人々の被害と悲劇を訴えたものと明確に理解しました。一連の「週刊文春バズーカ砲」に匹敵するパンチ力でした。
「国営放送」が「スクープ取材」を前面に出し、ここまで踏み込んだ旧統一教会の反社会的活動を放映したことを評価します。自民党関係者及び国会で旧統一教会問題を論議する方々はこの論調を注視し、国民の納得する結論を出してもらいたいと思います。

イベルメクチン論文の学術解析で「有効」を確認

世界の臨床試験93件を解析した八木澤守正・北里大学客員教授

イベルメクチン効果判定はさらに続く

イベルメクチンがCOVID-19 に対し有効かどうかを巡って、2年越しの論議が続いています。筆者は多くのイベルメクチン投与結果の論文と、自ら調べたアフリカ54カ国のイベルメクチン投与とCOVID-19 発症の疫学調査から、イベルメクチンはCOVID-19 の治療と予防に効果があると確信してきました。

先ごろ製薬企業大手の興和が、2021年11月~22年8月まで、軽症患者1030人を対象に偽薬(プラセボ)と比較する二重盲検試験を実施した結果、有効性を見いだせなかったと発表しました。

簡単には重症化しないオミクロン株の症例を主体とした試験結果であり、偽薬グループでも投与開始から4日前後で症状軽減が認められたという結果でした。重症化して死亡者が相次いだ従来のCOVID-19への投与とは状況が変わってしまい、イベルメクチンの効果を証明することが困難な状況での結果でした。

それではイベルメクチンをどう評価するべきか。世界で出ているイベルメクチン投与に関する多数の論文ではどうなのか。北里大学客員教授で抗感染症薬開発、薬剤耐性対策などを専門テーマに研究している八木澤守正教授が、イベルメクチンが有効であると論述した論文がどのくらいあるか解析した結果をこのほど纏めました。

93件の試験内容を解析

八木澤教授は、WEBで配信されている「Ivermectin for COVID-19:real-time meta analysis of 93 studies; Covid Analysis, Oct 28, 2022, Version 201」に掲載されている93件の試験内容を解析しました。ここでは臨床治験もしくは臨床試験を単に「試験」と表記します。

八木澤教授が解析した結果を整理したチャートは次の通りです。

早期治療37件、後期治療40件、発症予防16件です。

イベルメクチン-COVID 試験成績データベース;2022年11月4日この93件を解析対象の論文に適しているかどうかを精査したところ、イベルメクチンの効果を解析出来ない内容4件を除外しました。残り89件を解析対象としました。

合計83件のうち46件(55%)が有効

チャートでみるように、登録済治験36件のうちの16件(44.4%)、未登録治験47件のうちの30件(63.8%)の合計で83件のうちの46件(55.4%)の試験でイベルメクチンは有効であると判断しています。

一方で35件(42.2%)の試験では、「有意差は認められなかった」としています。イベルメクチンが「無効である」と判断される結果は2件ありました。

八木澤教授は「COVID-19という感染症に対するイベルメクチンの有効性を示すのは難しいことが示されています」と述べています。

早期治療の合計32件中で有効は17件(53.1%)、後期治療の合計36件での有効は15件(41.7%)となっています。

登録試験39件・未登録試験50件を精査

八木澤教授は解析対象の89件を試験登録済と試験未登録に二分した結果を一覧表にまとめて解析しています。試験登録とは、オンライン上で行われる臨床試験の事前登録でありエビデンスの質の向上を目的にした「公表バイアス(publication bias)」とも呼ばれ、後付け解析の防止などを目的にしたものです。しかし新型コロナ感染症のように、治療・予防に緊急を要する臨床現場では、医師主導の臨床試験は十分に準備したものにはなかなかならなかったという事情がありました。

こうした状況でしたが、登録済試験の論文の内訳は査読済みが34件、査読前のpreprintは5件ありました。この39件の論文を精査した結果、3件の論文内容は試験手法に不十分な点が明確であり、論文として解析する対象にならないとして除外しました。結局、登録試験では36件を解析対象としました。

登録済試験一覧

イベルメクチン-COVID試験成績データベース;登録済治験

登録36件のうち有効が16件(44%)

解析精査した内訳をみると早期治療では19件のうち8件が有効と判定していますが、「NS=Not Significant(有意ではない)」としたものが11件ありました。

後期治療では、12件のうち4件が有効、NSは7件でした。発症予防・後遺症では4件すべてが有効でした。

未登録試験50件を登録治験と同じように試験内容を精査したところ、論文の内容が不十分である3件を解析対象から除外しました。

未登録試験では、47件を解析対象にしました。

解析は、論文に記述されている試験成績が有意差をもって優れている場合を 「有効」 と判断し、有意差の無い 「有効性/無効性」 は「NS(Not Significant、有意ではない)」と判断しました。

イベルメクチンの成績が有意差をもって劣る場合は 「無効」 と判断しました。

未登録47件のうち有効が30件(64%)

早期治療13件のうち有効が9件でした。いずれも査読済論文でした。後期治療群では24件のうち有効は11件でした。発症予防では10件のうちすべてが有効でした。

未登録試験一覧

イベルメクチン-COVID試験成績データベース;未登録治験_ページ_1

発症予防はすべて有効となった

八木澤教授の解析で注目されるのは、発症予防の試験は13件の全てで有効だったことです。さらに後遺症に対する試験は1件のみでしたが、やはり有効と判断されています。

イベルメクチンの発症予防で筆者が衝撃を受けたのは、2020年3月にパリ郊外の老人施設で疥癬治療・予防から偶然にイベルメクチンのCOVID-19への発症予防に効果があることが確認された試験でした。この論文は、八木澤教授の解析対象にも入っていました。

これは老人施設で皮膚病の疥癬が広がったため、収容者と職員に対しイベルメクチンを投与しました。その結果、この施設の居住者、職員共にCOVID-19に感染した人は同じ地域にいる居住者に比べて有為に少なくなっていたという結果でした。

また、JAMA(The Journal of the American Medical Association、米国医師会雑誌)に掲載されたコロンビアの医師グループが出した「有意差なし」の論文は、掲載直後から試験内容に「致命的欠陥がある」と指摘されました。この論文も解析対象になっていますが、論議がまだ収束していないためか、有意差なしのままになっていました。

この論文では米国の医師たちが「研究著者らは主要評価項目を途中で不適切に変更し、主要評価項目を21日目までに完全な症状解決に移行しました。電話調査を通じて得られたこの自己申告による主観的エンドポイントは信頼できません」と訴え、今現在、175人の医師がネットで署名を明らかにして抗議を続けています。 https://jamaletter.com/

査読を受けている論文が70件(84%)

イベルメクチンの試験成績に関する論文は、査読を受けていないという批判がたびたび言われてきました。しかし八木澤教授の解析では「未査読論文は13件(15.7%)だけであり、70件(84.3%)は査読済の論文として発表されています」と語っています。

このような実情が学術的な解析で示されたのは、初めてではないかと思います。


投票しても「平等」ではない1票の格差 東京新聞の度肝を抜く見開きぶち抜き

投票しても「平等」ではない1票の格差

11月13日付け東京新聞サンデー版の見開きぶち抜き特集には、度肝を抜かれました。「国民主権になっていない日本」の現状を絵図だけで語った、かつて見たこともない特集です。誰が見ても理解度満点。これこそ新聞の調査報道の基本であ手本と思いました。

「4割の有権者が過半数を選出して政治を動かしている」。現行選挙区のいびつさを一見明白に示しています。一人一票訴訟のリーダーの一人である升永英俊弁護士は、これを「国民主権ではなく国会議員主権になっている」と主張しています。

この問題は、イデオロギー、政治信条、党派とは全く関係ない、日本国憲法が定めている主権国家の根本問題です。一人一票訴訟は、地方の軽視とか過疎地切り捨てなどという全く見当違いのことを語る人がいます。地方の「選挙利権」に、べったりと貼りついた人の言うことを信用してはならないと思います。

東京新聞1

東京新聞2


黒川清先生の悲痛な叫び「若者よ大志を抱け、外の世界へ出よ」

黒川清著『考えよ、問いかけよ 「出る杭人材」が日本を変える』(毎日新聞出版)

この本は、日本の科学技術行政の貧困さと学術研究の停滞を具体的な数字で示しながら今後の巻き返しを提言したものである。ここでは大学教育について書いたあたりを紹介する。

日米の医学教育の体験で感じた日米の高等教育の慣例と格差を語りながら、日本がいつまでたっても変わらない状況をどうするべきか。提言も書いている。

四行教授・ロビン教授の大学ではないか

例えば日本の大学は「四行教授」であると指摘する。経歴を見ると「○○大学卒、○○大学助手(助教)、○○大学助教授(准教授)、○○大学教授」と四行だけで済んでいる教授が少なくない。

ヨーロッパに生息するロビンと言う野鳥は、半径200メートル内で生涯を終わるというが、日本では半径数十メートル内を異動するだけで定年を迎える教授がいる。別名「ロビン教授」と筆者は呼んでいる。

こうした四行教授、ロビン教授は、日本の伝統的な大学研究室のスタイルである「講座制」の中から生まれている。

いつまでたっても変わらない日本の大学教育現場は、21世紀に入ってから様々な指標で中国に大きく水をあけられ、いまや韓国にも抜かれてしまった。

★書籍表紙

中国ははるか先で韓国にも抜かれた日本

2019年度の博士号取得者数をみると、日本1万5128人に対して韓国は1万5308人になっている。アメリカの大学へ留学した人は、2000~2021年で日本1万1785人だが、韓国は3万9491人と2倍以上の実績である。

研究開発費のGDP比は、日本3・29%に対して韓国4・81%であり、この勢いが止まらないから、これからは韓国の背中を追い求めていくことになるだろう。

論文の質をみる引用論文数の比較でも、2018~2020年の平均トップ論文は、日本が3780本だが、ついにこれも抜かれて韓国3798本となった。この差は今後も広がるとみられている。

「若者よ大志を抱け、外の世界へ出よ」の中で著者が呼びかけているのは、著者が米国で医師として鍛えてきた体験からのものであり、帰国後の医学部教授時代に教え子を通じて確信した考えを書いたものだろう。

学生諸君は休学してでも外へ出て見て来いという呼びかけは、悲痛な著者の叫びでもある。

凋落へ向かう科学技術力、構造劣化した社会システムをどう立て直すのか。いま現在の課題を整理し、その解決策を提言している。政治・行政に携わる人は、必読の書である。

【本書の構成】

第1章 時代に取り残された日本の教育現場

第2章 停滞から凋落へ向かう日本の科学技術

第3章 「失われた30年」を取り戻せるか

第4章 日本再生への道標を打ち立てる

Amazon

https://www.amazon.co.jp/dp/4620327557/


大谷智通さんがユニークな面白い科学書を上梓しました

シのげっぷが地球温暖化の原因になっていると最初に聞いたのは、1995年ころでした。当時取材した内容と本書の内容を比べてみたら、大幅に進歩していることが分かりました。温暖化現象の理屈を分かりやすく解説しており、読みやすいので小中高校生の福読書にぴったりです。
 大谷智通さんがいい本を出しました。ご本人の紹介をそのままコピペしました。
 
 新刊『ウシのげっぷを退治しろ――地球温暖化ストップ大作戦』旬報社、本日発売です!
 
本書は、地球全体の大きな問題となっている地球温暖化とそれを緩和するために急ピッチで技術開発が進んでいるウシのげっぷメタン削減を題材にした科学ノンフィクションです。
「地球温暖化と気候変動のメカニズム(環境問題)」「ウシの体のしくみ(ウシの生物学)」「ウシのげっぷを減らすための研究の最前線(農学研究の現場)」「健康的な食生活とはなにか(食育)」という、持続可能な社会を考えるうえで必須の4テーマをわかりやすく解説しました。
読者はこの1冊を読むだけで、地球の未来を左右する重要な4テーマの基本的な知識が身につきます。
執筆にあたっては、日本におけるウシのげっぷ削減研究の第一人者である北海道大学の小林泰男先生の取り組みを取材し、監修していただきました。
日本の科学技術行政について思うところ、最近なにかと話題の「肉食の是非」について思うところなども、せっかくですので突っ込んで書きました。
これからの地球の未来を担う、これから自らの「食」を選択していくことになる、若者たちに特に読んでもらいたいと思いから、中学生から読めるわかりやすい語り口となっております。もちろん、大人にも楽しんでいただけると思います。
詳細は添付のお品書き(目次)をご覧くださいませ。
よろしくお願いいたします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

元首相「暗殺事件」で司法判断の潮目が変わったのか

2つの高裁判決は「違憲状態」だった

「一票の格差」が最大で3・03倍だった7月の参院選は、投票価値の平等を定めた憲法に違反すると訴えていた訴訟(一人一票訴訟)で、大阪、東京高裁が相次いで「違憲状態」との判決を出しました。原告の弁護士グループは14個の高裁に提訴していますが、残りの12個の高裁も、違憲状態判決を出す可能性が高くなりました。

違憲状態大阪高裁写真

司法はこれまで政治・行政権力に寄り添う形の姿勢を崩さず、違憲立法審査権という司法府の権力を正当に行使してきませんでした。それがこの判決で急転、司法判断が変わってきたように感じています(私見)。

「違憲・選挙無効」という判断にならずに「違憲状態」という曖昧で法理では説明できない判断を示していますが、司法の判断が一歩、国民主権寄りになったのかと思わせる判決でした。

国会議員主権国家を正すことができるか

一人一票訴訟代理人の一人である升永英俊弁護士は、「国民主権国家とは、一票の格差のない選挙で選出された国会議員の過半数が、多数決で法律を作りかつ総理大臣を決定する」ことと主張してきました。

しかし現在、少数の有権者が多数の議員を選出するいびつな国会(立法府)を形成しており、憲法に定める国民主権国家ではなく、国会議員主権国家になっていると主張してきました。その通りです。少数国民の選ぶ多数国会議員がすべて仕切ってきました。

多数決の原理を徹底して「利用」した政治現場

たとえ人口比例選挙になっていなくても、多数決を得るために一人でも多くの国会議員を獲得すればいい。この間違った多数決原理であっても、選挙に勝つことだけが第一義になる。選挙公約の実行性や政党理念、政治信条とは関係なく、たとえ国民主権の選挙制度になっていない不条理な選挙であっても、多数さえ握っていればいいという拙劣な考えがいつの間にか主流を占めるようになり、選挙に勝つためには手段を選ばない選挙運動がまかり通るようになっていったのです。

政治は数という政治理念の原型が固まったのは、長期政権を実現した佐藤栄作政権時代からでした。人口比例選挙になっていなくても、国会議員の頭数さえ多ければそれが国民主権の多数決だとする考えが、連綿と引き継がれてきました(私見)。

行きついた先に「銃撃事件」があった

その政治現場の価値観が、元首相銃撃事件へと行きついていったと筆者は確信しています。この事件以来、反社会活動を展開してきた旧統一教会と自民党など政界との癒着が洪水のように露見し、歴史的事件に発展してきました。

この事件を見た司法府が、行政府のタガのゆるみと立法府の不正義な活動に歯止めをかける時期ではないかと感じ取り、政治の在り方の根幹にある投票の価値について正当な判断を示す流れに行ったのではないか。

その考えに立てば、この訴訟の最高裁判決では違憲状態が示され、それを受けて選挙制度が変わり、同時に日本の政治風土にも影響を及ぼすのではないか。違憲状態判決の行きつく先を注目せざるを得ない気持ちになっています。


「日経バイオテク」編集長の支離滅裂コラム

 誤った情報とは何か

「日本発の医薬品を求める気持ちは分かるが・・・」とタイトルのついた「日経バイオテク」(2022.10.10)のコラム「編集長の目」は、コロナ感染症治療薬開発のための臨床試験をめぐる論評を書いたものですが、何を言わんとしているのか支離滅裂で真意がわかりませんでした。

イベルメクチンと塩野義製薬ゾコーバの臨床試験の結果を受けて書いたものですが、ここではイベルメクチンについての「くぐもった論評」を指摘したいと思います。

コラム執筆者の坂田亮太郎編集長の友人から、イベルメクチンを調達したからコロナに罹患しても大丈夫と「どや顔」で1年ほど前に言われ、「めまいを覚えた」という書き出しでした。友人には「誤った情報が刷り込まれ」ており、「誤解を解こうとしたがムダだった」と書いています。

編集長が書いている「誤った情報」とは何かは書いていませんが、前後の文脈から推測すると、イベルメクチンはコロナ治療や予防に使用することは間違った情報だと確信しているようです。ならばイベルメクチンに対し、コロナの適応外治療を認めている国の判断は不問にされていいのでしょうか。「めまいを覚える」ほどショックを受けているなら、適応外から除外せよと主張することが科学ジャーナルの役割ではないでしょうか。

イベルメクチンを国は調達せよという意見広告

坂田編集長が友人から聞いた1年前と言えば、東京都医師会の尾崎治夫会長がコロナ患者急増で医療施設ひっ迫を受け、その治療・予防に「今こそイベルメクチンを使え」と同医師会こぞって主張していたころでした。

私の主宰する認定NPO法人21世紀構想研究会と東京都医師会は共同で、昨年9月にある大手新聞紙面で菅総理大臣に向かって「国はイベルメクチンを確保し、医療現場で使えるようにせよ」という主旨の1ページ意見広告を掲載する予定であり、ゲラまでできていました。

「菅総理大臣の英断を望む」というどでかい見出しの意見広告の賛同者には与野党国会議員をはじめ各界の有識者、医師、研究者ら多数が名前をそろえており、日本ではかつてないような大掛かりな意見広告であり、掲載日も決まっていました。ところがこの掲載の直前、菅総理が自民党総裁を退き、事実上、首相を退陣することを表明しました。これでは意見広告で訴える相手がいなくなるので、急きょ取りやめになったものでした。

幻の意見広告

結果的にこの意見広告は日の目を見ず、幻に終わりました。このとき立憲民主党の中島克仁衆院議員(医師)と自民党の富岡勉・衆議院議員(医師)は、「日本版EUA(緊急使用許可)法案成立を実現し、イベルメクチンを使うようにするべきという正攻法は間に合わない。緊急的に政府がイベルメクチンを用意し、希望する開業医が使えるようにするべきと言う意見広告を出したらどうか」という意見でした。

 

イベルメクチンが有効だったインドのコロナ大流行

インド株として世界を席巻したコロナ変異株の感染は、インド全土をパニックに陥れました。有効な治療薬も治療方法もないまま連日バタバタと死者が増え、病院の周辺では遺体を野焼きする有様でした。

インドでイベルメクチンは寄生虫病などに効く薬として薬局で市販されている地域もありましたが、コロナにも効くという論文が世界中で出始めており、人々はワラをもつかむ気持ちでイベルメクチンの服用を始めました。

州によっては、早くからイベルメクチンをコロナ予防薬として認める州政府が出始めており、人口2億3800万人でインド最大の州であるウッタル・プラデーシュ州では早くからイベルメクチンを州政府が導入して配布したため、感染予防に成功していました。

イベルメクチン反対だったインド政府が治験した結果は

インド政府は頑なにイベルメクチン使用を拒否していました。そこでおひざ元の全インド医科大学(All India Institute of Medical Sciences / AIIMS)の研究グループは、約3900人の医療従事者(職員及び学生を含む)全員を対象として、2020年秋からイベルメクチン効果の臨床試験を実施しました。

イベルメクチンを体重1キロ当たり0.3ミリグラム3日間隔で2回投与した群は、何もしなかった群に比べてコロナ感染を83%減少させたという論文を発表しました。

2021年2月15日、世界の臨床医や研究者が参加している医学ジャーナルの「CUREUS」に論文は掲載されました。世界でも第一級の研究グループの成果ですから、非常に信頼性が高いものです。その後この論文は、査読論文として世界で認知されました。

その記事が、同年8月5日に再掲され、メディアを通じて世界中に広がりました。この情報を受けた筆者たちは、イベルメクチンの使用を日本で普及させるための方策を考え、意見広告を掲載しようと奔走したのでした。

アメリカでイベルメクチンはどうなっているか

繰り返しますが坂田編集長はコラムで、イベルメクチンを使うことに「めまいを覚える」とか友人は「誤った情報が刷り込まれている」と書いています。これは明らかにイベルメクチンを使うことを「非難」している表現です。

ではアメリカではイベルメクチンはどのように理解されているのでしょうか。アメリカでは適応外治療として認めています。米国国立衛生研究所(NIH)やアメリカ食品医薬品局(CDC)は、治験以外に使用することは推奨しないと今でも発出しています。

しかし州政府によっては、適応外でコロナ治療に使うことを認めているところも多く、共和党と民主党がイベルメクチンの是非で論争するなど科学・医学の話ではなく、政争の具にしていると批判するメディアもあります。

アメリカの臨床医師団体(FLCCC)が分析した世界の論文

  • 東京都内の自宅待機者が2万人を超えている。
  • 医師は何も対応できず、患者が重症になっても受け入れる病院もひっ迫
  • 世界の多くの国でイベルメクチンを使用して効果を上げている

日本でこのような事態だった2021年8月、FLCCCがまとめた世界中の2万6398人を対象にした63件の臨床試験について613人の医師・研究者が臨床試験結果に参加しました。

これらの結果を踏まえてFLCCCの医学・統計学者たちが分析した結果を示します。

14件の予防試験において86%の予防効果

27件の初期症状治療試験において73%の改善効果

22件の重症治療試験において40%の改善効果

25件の臨床試験において61%の死亡率低下

31件のランダム化比較試験(軽症から重症者を含む)では60%の改善効果

2021年7月中旬時点の世界の状況です。

・イベルメクチンを全国的に採用している国は15カ国

・一部地域で使用されている国は16か国

・医師の責任で処方ができる適応外使用が認められている国が2カ国

合計33か国でイベルメクチンをコロナの治療・予防に使用していました。

イベルメクチンは、数十年にわたって世界で延べ30億回以上の投与実績があり、著しく安全性が高い医薬品と評価されてきました。中国やインドなどの多数の製薬企業が製造販売している極めて廉価な医薬品であり、中南米では処方箋がなくても購入可能な一般医薬品として取り扱われています。

世界を見ればイベルメクチンの効果が見える

「日経バイオテク」の坂田編集長の友人がコロナ治療・予防にイベルメクチンを役立てようと考えたのは、世界の状況を知れば妥当な判断だったと私は思います。

もちろん製薬企業がコロナ感染症を対象に、大がかりな臨床試験を実施して薬の効果を確認することが最善の方策です。しかしイベルメクチンはオンコセルカ症(河川盲目症)、リンパ系フィラリア症などの熱帯病の特効薬として、世界保健機関(WHO)をはじめ世界中の国々が20年以上前に承認した薬剤です。今更、巨額の資金を投与してコロナ対象の臨床試験をしようとは思わなかったでしょう。

新型コロナにも効果があるなら適応外だがパンデミックの中で使用しよう、ということになったのはやむを得ないということでしょう。日本政府も2020年5月18日にイベルメクチンを「適応外」としてコロナの治療に使用する指針を出しています。

そのころまでに、世界では27か国、36件の臨床試験が行われており、イベルメクチンが予防・治療に効果が出ていると報告されていました。だから厚生労働省も適応外を認めたのです。効果がないと出ていたら承認しませんでした。

政府が使用を認めていても「めまいを覚える」

2021年2月17日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の中島克仁議員がイベルメクチンについて、「国として早期にコロナの治療薬として承認できるように治験に最大限のバックアップをすべきである」との提案を行いました。

これに対し田村厚生労働大臣は「適応外使用では今でも使用できる。医療機関で(イベルメクチンを)服用して自宅待機するという使用法もある」と答弁しています。

2021年10月15日、参議院で岸田文雄総理大臣は「イベルメクチンは、様々な研究論文が発表されており、新型コロナウイルス感染症の治療薬としての評価が定まっていないが、医師は患者に適切な説明を行い、その理解を得るように努めたうえで、個々の事例に即して適切に適応外使用を行うものと考えています。コロナ感染症にイベルメクチンを医師が処方した場合、診療報酬請求書の審査については厚労省から審査支払機関に対し、個々の症例に応じて医学的に判断していただくようお願いしている」(大略)と答弁しているのです。

つまり日本では、コロナ治療にイベルメクチンは医師と患者の同意のもとに使うことが認められており、診療報酬請求ができることを認めています。ただしその審査は支払い機関にゆだねられていると政府は明言しているのです。

それなのに坂田編集長は、イベルメクチンを使うことに「めまいを覚えている」と言います。

日本ではイベルメクチンをコロナ治療に使っている医師が何人もいます。その医師や患者は、自己責任で使っているものであり、誰にも迷惑をかけていないでしょう。むろん非難されるいわれはありません。自分の健康と命は自分が守っているのです。

坂田編集長は「私は知る限りの情報で彼(筆者 注:編集長の友人)の誤解を解こうとしましたが、ムダでした」と書いていますが、日本政府が使用を承認しているイベルメクチンを使うことが「誤解」になるのでしょうか。

イベルメクチンは日本でなぜ使えないか

日本ではイベルメクチンをコロナ治療に使えますが、実際には使うのが非常に難しいのです。通常は皮膚病の治療薬としてイベルメクチンが処方されています。アメリカのメルク社が製造し、日本企業が輸入して販売していますが、メルク社はコロナの治療薬を開発したためか、イベルメクチンはコロナの治療・予防に効くかどうかは確認されていないという見解を発表しています。

そして疥癬などの皮膚病以外に使わせない意向が強く働いているのか、メルクからのイベルメクチン供給がうまくいかなくなり、国内のイベルメクチン供給には結びつかないのです。

医師がイベルメクチンの処方を書いても、薬局に薬剤がないなら事実上、イベルメクチンは使えない薬剤になっています。多くの国民は自己責任のもとに外国から個人輸入し、予防・治療に役立てようとしています。

興和の治験の目的は何か

コロナ感染症の治療や予防にイベルメクチンが使えるようになれば、国民にとって非常に有難い。その希望を充たすため、興和は臨床試験でイベルメクチンの効果を証明しようと取り組みましたが、結果は効果を証明できませんでした。

しかし興和の臨床治験はしっかりした内容であり、研究現場からも受け入れられるでしょう。今の時点で医薬品メーカーが、多額の費用を使ってコロナ治療のための臨床試験を実施したことに敬意を表します。

この治験結果には2つの課題が残りました。

第1は、新型コロナウイルスの変異株の感染患者を対象としたものであり、この時点では重症化にはなりにくい状況になっていました。偽薬(プラセーボ)投与群でも4日以内に軽快してしまい、イベルメクチンの効果を証明することが困難であったからです。

第2は、興和の結果を受けて、イベルメクチンはコロナに効かない薬剤という判断が広がるかもしれません。これは一つの結果であり、最終的な結論にはまだ多くの科学的治験が必要でしょう。

坂田編集長は「今回の興和の発表は決定的だと感じています」などと書いていますが、科学的に論考したものではなく、タイトルに「・・・気持ちは分かるが・・」などと掲出しているように、科学の論評に個人的情緒観念を入れ込んだものと受け取りました。科学コラムとしてはいかがなものかと言わざるを得ません。

私的感情が露出したコラムです

コラムの最後にゾコーバが緊急承認されれば「晴れて日本発のコロナ治療薬となります」などと結んでいますが、なぜ「晴れて」なのかその意味が不明です。ご自分だけ「晴れて」いるのではないかと誤解を生むような書きぶりです。誰が「日本発」を待ち望んでいるのでしょうか。

また掲出した写真は、イベルメクチンの錠剤を撮ったものですが、写真説明には驚きました。

「イベルメクチンをめぐる誤った情報は、今もネットや書籍にあふれています」とあります。「あふれる」とあえて書いているこの表記は、明らかにイベルメクチンを「敵視」する書き方であり、客観性が要求される科学ジャーナルには馴染まない表記であると指摘しておきます。

イベルメクチンに対する国の方針は無批判でいいのか

坂田編集長が「めまいを覚え」るほどイベルメクチン使用にショックを受けたなら、これを適応外として治療に使うことを認めている国に対して、無批判であることは科学・医療ジャーナルとして社会的責任を果たしていることにならないと思います。

イベルメクチンにだけ焦点を当てて批判したところで、適応外として使用している医師・患者がいます。それに「お墨付けをした」国があります。そうした仕組みと実態に触れることなく、単にイベルメクチンに対する批判を展開したところで、社会に訴える科学ジャーナルとしての役割があるのでしょうか。

アメリカでもNIHやFDAに対するイベルメクチンの対応を批判する論評が、いくつも出ています。イギリスには、メタ分析の権威でありWHOの顧問も務めていたテス・ローリエ博士(Dr. Tess Lawrie)が、世界中のイベルメクチン使用の論文を分析し、イベルメクチンはコロナ治療に効果あると主張しています。

最近、テス・ローリエ博士が、イベルメクチンを葬ったのはビル・ゲイツだと糾弾しているインタビューが公開され、世界中で大きな反響がありました。

こちらです → https://rumble.com/vyozf8-former-w.h.o.-consultant-exposes-takedown-of-ivermectin.html

こうしたイベルメクチンを巡る世界の動きをイベルメクチン批判も入れて報道することが、科学ジャーナルの使命と思っています。


元信者が見た旧統一教会の真実 -入信から脱会そして教団の裏事情-

これは21世紀構想研究会で2022年9月2日に講演された内容です。

元信者が見た旧統一教会の真実

矢崎千絵(アートアドバイザー)

筑波大学第2学群比較文化学類フランス文学コース在学中に原理研究会に入信。筑波大を卒業後、幾多の事件を経て脱会。その後パリ大学に学び、商社系ギャラリー、株式会社グッドバンカーでの勤務を経て、現在アートアドバイザー、仏語翻訳、フランス画家とのコーディネートなど幅広く活動しています。

スライド2

私は20歳から26歳(1982年ー88年まで)統一教会の原理研究会(原研)という大学組織でかなり激しく活動しておりました。その後脱会し2012年から全国霊感商法被害対策弁護士連絡会(弁連)事務局でお手伝をしております。

統一教会史の概略史は一覧表の通りです。すべてを説明する時間はないのでこの概略史にとどめ、次に私個人の活動歴をもとに語りたいと思います。

スライド3私の統一教会関連の個人史です。原理に加入して信者になり、家族との闘いからやっと誤りに気が付いて脱会するまでを語りたいと思います。

なぜ人間は生きているのか

私は小さいころから、なぜ人間は生きているんだろうと疑問に思う変わった子どもでした。人間がみな死ぬということを幼稚園のころ、祖母が亡くなるときに知り、小さいころからずっと考え続けてきました。色々な文学を読んでも、キリスト教などをかじっても、その答えはなかなか出ないわけです。

1981年に大学に入学すると、ますます様々な価値観が渦巻いてきて、生きているのが本当に辛いという気持ちが日に日に増していく状況でした。そんな時に統一教会の原理研究会の2人の女性が、「世界思想研究会」を名乗ってアンケートに来たわけです。私は入学のときにこのサークルのビラをもらい、「世界の思想を追求して絶対的真理を知ろう」と書かれていて、それがまさに私が知りたかったことだったので、大変興味があったわけです。

アンケートで私は「尊敬する人物は?」と聞かれて、「イエス・キリストとゴータマ・シッダルタです」とか、かなり統一教会の教えにかぶる回答をし、統一教会にはまるような人間でした。原研の人が何回も訪問してきて、最初はそれが原理だとはわからなかったんですが、途中から周囲の人から「それは原理だ」、「危ないからそんなとこ行っちゃいけない」と言われるようになりました。

2DAYSから7DAYSへとエスカレート

そういう噂が入る前に、私は原理の人たちが住んでいるホームにも行き、講義を受けていました。その人たちが素晴らしい人達で、人の話をよく聞いて、普段私がまったく話せないような、人生の目的とか、愛についてとかを、きちんと真摯に話していらっしゃったので、私はすごく感動して、そこで信頼関係ができてしまっていたわけです。

そのまま1年くらい過ぎて、ますます落ち込むことが多く、生きる希望が見いだせない中で、「2日間で統一原理の全体像がわかる会があるので出ませんか」と言われて、1982年4月、2DAYSに参加しました。そこで、統一原理の内容について、おお!というふうに思ったわけですが、いろいろと疑問もありました。でも講義の中で、「メシアが来ている」と言われるけれど、メシアが誰かは明かされないわけです。「知りたいなら7DAYSに出ましょう」と言われ、ちょっと抵抗しましたが原理の人みんなに囲まれてプッシュされ、結局すぐに7DAYSに参加することとなりました。


参加して、講義の中で非常に感銘を受け、その上、私を伝道してくれた人、霊の親は霊の子が7DAYSに出るときは、7日間断食をしていました。それを最後のときに聞いて、見ず知らずの人間の救いのために7日間断食する人間がいるんだ!とびっくりして、私は本当に泣けてしまったんです。統一原理の内容にもかなり感銘を受けたこともあり、じゃあこの宗教を勉強してみようと思いまして、入教ということに至りました。

ホームでの共同生活から始まった
入教というのは、原理研究会のホームで共同生活をするために、自分の荷物を全部持ってホームに引っ越します。そのときは筑波のホームに30人くらいのメンバーがいましたが、キャッシュカードも全部会計のお姉さんに預けてしまって、その人が月に1回、それぞれの振込額を全部引き出して、それがホームの会計になります。非常に貧しくて、1日1人100円くらいで、大変質素な生活でした。

信仰生活も、朝晩祈祷会をやったり、夜になると宿舎に伝道に行ったりします。夏休みになると資金集めのために、キャラバンに寝泊まりしながら珍味を売ったりします。1日12時間~15時間くらい、朝5時に起きて祈祷会をして、6時か7時くらいから家庭訪問をして一軒一軒回って、1袋2500円くらいの珍味を売って歩き、1日5万~10万円を売り上げました。全国で目標を立ててやります。目標に足りないと、更に飲み屋街まで行って、そこで売ったりもして、寝るのが11時みたいなことを夏休み中、40日間くらいキャラバンで寝泊まりしながらやりました。


両親は私のことを信頼していたので、一度ホームを訪れて、原研の責任者に会いに来ました。そして父が、「必ずこの子は勉強させて4年で卒業させ、一般企業に就職させてください。それを守るならいいですよ」と言って入教を許可した形になってしまい、後からすごく後悔していました。

父の教え子が「それは原理だ」と忠告
ところが高校の英語の教師だった父の教え子が、私の状況を父から聞いてびっくりして、それは原理で大変なことだということになり、両親はそれから色々なところを訪ねて、最終的に、東京のキリスト教会の牧師さんに説得をしてもらおうとなったようです。筑波に母が会いに来た際、誘拐されるようにして大勢でキャラバンに押し込められて、東京まで運ばれました。それから5日間くらい、牧師さんとずっと議論しました。

そのときにはすでに入教して1年半くらい経っていて、私の中に「統一原理は真理だ」という信念があり、それまで本当に生きる目的がなく、信じるものがない状況だったのに、統一原理がバーンと入ったものですから、これを守るしかないとなっていました。牧師さんも素晴らしい方だったのですが、キリスト教は不完全であり完成されていない、統一原理こそが完成させるんだと言って、牧師ともすごい論争をして一歩も引かなかったんです。

母親はすごくびっくりしてしまい、私は元々優等生で人の言うことを素直に聞く人間だったのに、この子は本当に変わってしまった。こんな立派な牧師さんにこんなに口答えして、こんなに敵意を剥き出しにして、本当に恐ろしい子どもになってしまったと思って、母親もちょっと精神的におかしくなってしまいました。

勘当から脱退まで-諦めなかった両親

そのことを契機に、警察の介入もあったりして説得は中止になり、父親には勘当されて、原理研究会に戻りました。勉強もなかなか身が入らず、物理的な時間もなく、その後1年留年して卒業後、統一教会の仕事に就くことになりました。

人事で、東大原研に献身者として配置され、そこで東大生を伝道するような立場になりました。東大生はかわいい子で弱いということだったので、原理研究会に属する見栄えのいい女の子を5~6人集めてエバ部隊と称して伝道させ、それを仕切るような立場になっていました。


その後京大に異動となり、ビデオセンターのトーカーとなりました。87年は名古屋で夏休み中1カ月間、印鑑の販売をしました。研修で3日間、ビデオで姓名判断のやり方などを教え込まれ、その後戸別訪問して、手相を見ながら、あなたに色情因縁やいろいろな因縁があるからなんとかしないと、などと言って印鑑とか壺を買わせるようなこともやりしました。

その間両親は諦めずに、今度は東京のマンションに、私を連れ去りました。そこに2~3か月閉じ込められて、関係者や親戚に交代で見張られて、カウンセラーや元原研の人の説得を受けました。私も抵抗して、12日間の断食とか、真冬の水行とか祈祷とか、色々やったんですが、その間疑問も出てきまして、最終的に1988年5月に脱会を決意したということです。

11月に韓国を訪問して、元幹部などと会った結果、これは本当に間違いなんだなと思いそこで本当にやめようと思いました。

スライド4キリスト教を基本にした教義

統一原理の構造についてざっくり説明しますと、まずキリスト教が基本で、聖書を元にしています。「創造原理」という理論の中で、神が造ろうとした正しい創造本然の世界というのを学びます。

しかしなぜそうならなかったかというと、「堕落論」で説明されるように、人類始祖が堕落したから。失楽園の物語で、エバがヘビにそそのかされて善悪の実を食べるという記述がありますが、実は、善悪の実というのはエバの愛であって、ヘビに誘惑されたのは性的に堕落したことだと説明します。本来は神を中心とした家庭をつくるはずが、サタンを中心とした家庭をつくってしまったので、全人類にサタンの血が流れて、サタンが支配する悪の世界になってしまったというのが「堕落論」です。

そこから救っていくのが「復帰原理」で人類を救う道があり、こういう蕩減条件というものを立てて、こうやって行ったら元の位置、創造本然の位置に戻れて、罪のない人になれるんだよと教えるのが、ざっくりいうと統一原理の基本構造です。
スライド5「アダム・エバ問題」と、「アベル・カイン問題」についての概略です。

問題は勧誘・伝道のとき正体を隠すこと

統一教会の問題点についてはまず、正体を隠して伝道するということです。正しい教義の宗教なら最初から身分・正体を明らかにするのが普通です。しかし原理と旧統一教会は正体を隠して勧誘・伝送をすることが大きな問題でした。

スライド6原理研究会にもフロントサークルがいっぱいあって、最初から原理研究会ですとは言いません。政治では勝共連合や世界平和女性連合、国際ハイウェイプロジェクトなどは政治家を巻き込んでいます。文化活動では、宇宙平和連合の大会で、ビデオメッセージをトランプ氏と安倍氏が発表しました。世界平和教授アカデミーも、私がいたころにも教授達をこの活動に誘っていて、本当に入会したということもありました。

教育としては、韓国に学校を多数作っていて、リトルエンジェルス芸術団という宝塚並みにレベルの高い劇団があり、その養成校が仙和芸術中学・高校です。鮮文大学校という4年制大学や、大学院も韓国にあります。韓国では清平修錬苑という巨大な施設があり、ここに何百億もの献金が注ぎ込まれた巨大な建物群が今できています。

企業は多岐にわたり、病院も一心病院という信者の医者がいる病院があります。美術世界は、美術品を売ってそれで献金させる会社です。他にも様々あり、こういうフロント組織や企業を通して、そこを入り口として段々心を開かせて統一原理を聞かせ、最終的に信徒にするという方向に持って行こうとしています。

スライド7 教団が政治と結びついた真の狙い

次の問題点は、政治と結びついて政治力を隠れ蓑にしているということです。1968年に国際勝共連合ができました。本部が岸信介氏の家の隣にあったというので、初期からずっと、岸家・安倍家とは連綿とつながっています。


80年代には信者を政治家の秘書などに送り込んで、選挙協力を強化しています。私は東大原研に献身する前には、政治家の秘書になれといわれていました。86年には政治に注力する方針が出て、原研から卒業生8人くらいの女性が政治家の秘書になるという話でした。

このとき東京は、自民党衆議院議員候補の越智道雄さんを応援していて、集会で信者がいっぱい集まり、越智道雄さんが来て土下座してよろしくお願いしますというと、うわーっと盛り上げていました。東大原研も選挙活動を激しくやり、夜中まで家庭訪問などをして、警察に捕まった学生もいました。

82年に文鮮明氏がアメリカで収監されたとき、岸信介氏がレーガン大統領に書簡を送っていて、彼を出してくださいと懇願していたという事実が、ロナルド・レーガン図書館のファイルから出てきました。文中で岸氏は、「文尊師は誠実な男であり、自由の理念の促進と共産主義の誤りを正すことに生涯をかけて取り組んでいると私は理解しております」と書いています。


92年に文氏が来日したときにも文氏は収監された身なので本来日本に入れなかったのですが、元自民党副総裁の金丸信氏が動いて入国が許可され、都内で会談を行ったということです。

ジャーナリストの有田芳生氏がテレビで、「公安は、1995年にオウムが摘発された後に次は統一教会だと言っていたのに、政治的な圧力で摘発はなくなった」と言っていましたが、このように政治が全部関わっているわけです。

2009年の新世事件(2009年6月11日、東京都渋谷区で印鑑販売を営む有限会社新世の社長・幹部・販売員5人の計7人が、特定商取引法違反=威迫・困惑=の疑いで警視庁公安部に逮捕された事件)でも、教会本部に公安の強制捜査が入る直前に止めました。ここでも政治的取引があったのではないかと言われていました。

2009年から2012年は民主党が政権交代した時期で、自民党は下野して非常に悔しい思いをしていました。その時期に統一教会が安倍晋三さんと密接にやり取りをして、全面的に応援しますと言ったと聞いています。2015年の文化庁の名称変更認可は、第二次安倍内閣が成立してすぐのことでした。

2016年には、徳野会長が安倍首相に招待されて首相官邸で会っています。これは内部資料でも何度も自慢げに報告されています。そのような経緯があり、2021年にビデオメッセージを安倍氏が送ることとなった。なぜそれが実現できたかというと、やっぱりすごいお金が動いていたと思います。

TBSテレビの「報道特集」で、米統一教会元幹部のアレン・ウッド氏が、レーガンとかブッシュにメッセージを送ってもらうときに、100万ドル(約1億4000万円)のお金を渡したと言っているので、今回もトランプ大統領や安倍首相にビデオメッセージを送ってもらうために、元信者やメディアの間ではかなりのお金が動いたと推察されており、私も同様に見ています。

NHKクロ現で露出した頭隠して尻隠さず

これはNHKの『クローズアップ現代』でやっていた特集のまとめです。

この梶栗正義さんという人は今の勝共連合のトップですが、彼の父の梶栗玄太郎も統一教会の会長だった人で、もう完全な二世信者、祝福二世の超エリートで、統一教会内だけで生きてきた人です。こういう発言は統一教会にとって致命的なのに、まったく世間がわかっていないというか、統一教会が本当に頭を隠して尻隠さずだという、天真爛漫な発言をしていました。

スライド8 スライド9
萩生田議員の選挙戦では、統一教会が全面的に応援していたこともメディアの報道で明らかになっています。必死に応援していた人から統一教会との関係を否定されると、「むなしいですね」と言われるのは本当にそのとおりで、かなり卑怯な話だと思います。


元信者は、安倍さんのビデオメッセージを見たときに、元首相がお墨付きを与えたと感じたと報道されていましたから、これは本当に決定打だなと思いました。ここにメッセージを送ったというのは影響がかなり大きかったと思います。

霊感商法で稼いだ献金は現ナマで韓国へ

第3の問題点として、巨額の献金問題です。霊感商法被害対策弁護士連絡会(弁連)の調べで、1987年から消費者センターや、弁護士依頼の被害者の金額を集計して、被害総額が1237億円です。

スライド10これは実は、弁連の会計で私が集計していたものですが、すごく少ない数字です。これは表面に出てきたものだけなので、実際にはこの10倍どころではない、100倍くらいあるんじゃないかという印象を持っています。


2007年当時の教団財務は、年間約500億円、これは主に霊感商法などで稼いだお金です。2007年というのは、1987年くらいからマスコミにかなり叩かれて、霊感商法もできなくなってきた時点の数字です。

私たちが印鑑販売をやっていた1986年ころはもうやりたい放題で、こんなことで摘発されないのだろうかと思ったほどです。しかし先輩の方が「いや、大丈夫、政治家の先生がついてるから統一教会は捕まらないんだよ」と言っていました。

80年代は、月間100億円やらないといけないといわれていたので、年間にすれば1000億円くらいはいっていたんじゃないかと思います。現金はうなるほどありました。

現ナマをバッグに詰めて何千万円も定期的に運んだとか、韓国の合同結婚式にみんなに分担して、お金を運ばせるとか、そういうことも裁判の証言で沢山出ています。

「韓国ヘラルド経済」からの情報だと、表向き資産が1700億円だが、実際は6000億円と書かれています。しかしそんなものではありません。

巨額の献金を奪い合う文鮮明一家

統一教会は、韓国のヨイド島という一等地に土地を持っています。パークワンという建物の利権を巡って大騒動になって、内部で法廷闘争繰り返していますが、そこの土地はかなりの価値があるので争っているものです。
文鮮明亡き後、ファミリーは大分裂して、血で血を争うような闘争をやっています。宗教とか教義ではありません。カネの闘争です。韓鶴子氏は3回目の夫人ですが、13人子どもを産んでいます。しかし非業な死を遂げた子女も多く、長男は45歳で麻薬で死に、次男は無免許運転の交通事故で、17歳で死亡しました。

三男が教団の資産を掌握しました。七男は父の教えに従い信仰的だったのですが、新たな分派を作りました。現在統一教会は、韓鶴子・三男・七男の三つのグループに大きく分裂しています。韓鶴子氏が、日本と韓国の統一教会の組織を一応は率いているということになっています。

三男と韓鶴子氏が闘うヨイド島の法廷闘争で、裁判費用だけでも何百億円もかかっていまして、日本の献金が全部そこで費消されていると言われています。
七男はアメリカで、サンクチュアリ教会という新しい分派の教会を作っており、日本の幹部でも、そちらに移る人も大勢出てきました。この教会がちょっと怖くて、四男が武器製造会社を持っています。そこで作った銃器を大量に備蓄していて、礼拝のときにみんなで武器を持って集まって武装して備えようという、危険な傾向のある分派を形成しています。

気の毒な二世信者を救いたい

第4の問題点としては、二世信者の問題が今クローズアップされています。二世信者とは、自分の出生の根拠が、親が統一原理を信仰して、合同結婚式で見ず知らずの人とマッチングされて、その結果生まれたのが自分ということです。

だから、統一教会を否定してしまうと、自分がなんで生まれたかがわからなくなっちゃうという、レゾンデートルに関する辛さを秘めています。実態的にも親が献金して、奉仕活動に従事しちゃうので、経済的貧困とか、育児放棄されやすいようなこともあります。

スライド11また特殊な教育を受けてお金の使い方も質素ですし、友人もできにくいと思います。アダム・エバ問題があるので完全に純潔教育です。彼氏もつくっちゃいけないし、キスとかもってのほかだと言われるので思春期になると非常に悩みます。

恋愛が親にばれたりすると韓国、清平の修錬所に40日間送られて、もう1回信仰してきなさいと厳しく指導されます。

たとえ信仰を捨てたいと思っても、未成年の場合は親が保護者になっているので、どこにも逃げられないというのがあります。親戚も愛想を尽かしていて疎遠で、友達もいないということで、どこにも逃げ場がありません。

たとえ脱会できたとしても、社会復帰はすごく大変です。山上容疑者もそうですが、教育も満足に受けられず、精神的トラウマと社会的に弱者ということで独り立ちするのが困難です。すごく悩んで被害者家族の会や、キリスト教会の牧師さんたちに相談してくる二世信者は数多くいます。社会全体で救いことを考えなければなりません。

カルト問題を解決するにはどうすればいいか

次に、カルト解決の道筋、というテーマで話したいと思います。フランスには反セクト(カルト)法というものがあります。アブー氏とピカール女史が作ったので、別名アブー・ピカール法といいます。

この法律が成立する発端は、フランスで1980年代に統一教会に入信した子供を親が保護するために活動して、それに触発された議員が動いたことでした。1984年より議会で議論を重ね、2001年に成立したということです。

1995年の時点で、セクトを選別するための10の基準が選定され、精神的不安定化や、法外な金銭要求など、色々な条件があって、これをセクトと考えました。

スライド12
どの団体がセクトか選別しようとすると難しくなるので、それがセクトであろうとなかろうと、上記のような逸脱した行為をしたらセクトだとみなし、罰則を受けることになります。下の方から基準が厳しくなり、最終的に法人が解散ということになります。

法律を作ったピカール女史が滞日したとき「こんな法律ができてフランスはすごいですね」と言いましたら、「いや、これは40年もかかってやっとここまで来たんです」とおっしゃって、長い道のりなんだな、ということを痛感しました。

スライド13信仰はなんでも駄目なのかというとそれは違います。マザー・テレサのような方もいますし、フランスのノートルダム寺院は、カトリック教徒が100年かけて、あの素晴らしい建物を信仰ゆえに建てたということもあります。

聖書の「ヘブル人への手紙」の中に、「さて信仰とは、望んでいる事がらを確信し、まだ見ていない事実を確認することである」というパウロの言葉があります。

この「望んでいる事がら」というのが重要で、統一教会は、たぶん文鮮明という誇大妄想狂で権力欲や金銭欲や性欲が強烈に強い人間が、巨大な欲望を全世界に発信し、それに特に日本人が忖度していく中で、あれだけ巨額な献金を捧げてしまったという形だと思います。

親族や友達がカルトをやっていたら、大変だ!と、みんな説得しようとしますが、言えば言うほど本人は頑なに心を閉ざしてしまう。説得は本当に難しい。

飯星景子さんがかつて統一教会の信仰を持っていて、お父さんが作家の飯星晃一さんで、彼はあらゆる文献や情報を持って、景子さんを説得したのですが、説得できませんでした。

忍び寄るカルトから守る道

カルト専門カウンセラーを養成するのはすごく大変で、政府の検討会などもありますが、これは容易なことではないと思います。
フランスでは国がUNADFIという機関を作って予算をつけて、そこで毎月レポートを出す中でセクトの活動をウォッチし、危険な段階にはいると警告を出します。セクト法の成立によって、統一教会はフランスでの活動がほぼ難しくなり、ほとんど活動していないということです。

フランスではカルトだから駄目ということは言わずに、法に触れた者を規制していくという方針なので、生き延びる余地はあるということです。

スライド14山上容疑者のお母さんは今も全くやめる気はないわけです。私はさもありなんと思いました。私が説得を受けている時もそうでしたが、統一教会の人は信仰に命をかけているのです。信仰を奪われるくらいなら、死んだほうがいいと思っています。

というのは、昔の一向一揆の一向宗の人たちや、オウムの人たちもそうですが、現世のことより霊界を本当に信じているので、霊界の中で永遠に救われないくらいなら、現世でつらい思いをしたほうがいいと思うのです。この信仰こそが命綱で、これを捨てたら地獄に落ちると本気で思っているのです。

山上容疑者のお母さんは、夫が自殺し、その後長男が小児がんになって、開頭手術もしています。統一教会の人のアプローチとしては、お父さんが自殺したから霊界で本当に苦しんでいて、その因縁で、長男がそのような大変な病気になったというトークをするわけです。


だから救われるには、あなたは全ての財産を神に捧げて、罪が救われなければいけないというふうに諄々とトークをしていくと、やはりお金を出さざるを得ないと思うわけです。一度信じて出してしまったら、もう賭けと一緒です。

1回賭けてしまって、賭けが大きくなればなるほど、そこでやめたら全部損しちゃうと思うことと同じで、賭けに勝たないと困る。これが真理じゃないと困るということに徐々になっていきます。

世の中には無数にあるカルト宗教

実はカルト宗教は無数にあり、弁護士連絡会でも、電話受けをしていると、様々なカルトからの電話がかかってきます。まったく聞いたことのない一人カルトみたいなものもいっぱいあり、そこに何千万円もつぎ込む人がいっぱいいるわけです。統一教会のような一つの宗教だけを取り締まるのではなく、一般的な規制をかけて取り締まることが大事なことになります。

「カルトはそこにある!」の図の右側にある「カルト宗教の構図」ですが、カルトの構造として、最初に信じる時には一般信者は純粋な信仰です。一番上に文鮮明氏がいて、この人はお金をもうけたい、世界を手中にしたいという人です。下からどこで線引きをするかわからないけれど、どこからかやっぱり私利私欲になっていくのです。

たしかに韓国の幹部たちは献金を着服しているらしく、半分くらい懐にいれちゃうというような暴露もありました。線引きがどこであれ、構造としてはこうなっていると思います。それは、最初は純粋な信仰でも、結婚も仕事も統一教会内でして地位が上がっていくと、少々疑問に思っても、もう抜けられないです。

抜けても次に人生で何をやっていいかもわからず、何がなんでもここにしがみつかなきゃいけないような方向になってくるのだと思います。

脱会しても苦しかった日々から感謝の日へ

私は6年間やっていて26歳でやめましたが、35歳とか40歳くらいまでは、本当に苦しくて、ずっと死にたいと思いながら生きているような、大変な時期を過ごしました。それはやっぱり、若いときに統一原理という思想が脳の中に入ってしまって、その理屈で全てを考えていたので、いきなり統一原理を頭から全部取り外したときに、何も自分で考えられなくなっていたんです。

何が正しくて、何が間違いだったのか、まったくわからなくなってしまって、まずそこから本を読んだり、人の話を聞いたり、一つ一つ自分が何が正しいのか、何が好きなのか、そういうことを一々確かめながらやっていくという作業があって、やっと40歳くらいになって、ちゃんと生きていけるかなというな気持ちになりました。

そこに至るまでは、両親をはじめ周りの方たちにすごいサポートをいただいて、多大なご迷惑をかけたので、その方たちのお力で、私もちゃんと社会復帰できましたことを心から感謝しています。宗教をやっているときには、本当に必死で、すべてモノクロの世界に生きていました。まったく人生を楽しむ余裕はなかったのですが、やっと色彩が戻ってきて、精神的に豊かな生活に戻りつつあるので、本当にありがたいことだと思っております。この場を与えてくださいまして感謝いたします。どうもありがとうございました。

おわり


旧統一教会との自民党調査は不十分が76%、国葬反対が62%

これが国民感情の実態です
毎日新聞社と社会調査研究センターの世論調査(9月17、18日)の結果を見ると、旧統一教会問題と自民党・政権に対する不信感はますます強まり、内閣支持率も3割を切ってきました。年齢層が上に行くにしたがって支持しない人が増えています。筆者の周囲の人たちの意見を聞いてきましたが同様の意向を明確に示しており、この調査結果は国民感情の偽らざる実態と理解しました。
ちなみに私は反自民でもなく反岸田でもありません。客観的にものを見るように修練を積んできたジャーナリストであり一市民です。
毎日世論調査9月19日