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元首相「暗殺事件」で司法判断の潮目が変わったのか

2つの高裁判決は「違憲状態」だった

「一票の格差」が最大で3・03倍だった7月の参院選は、投票価値の平等を定めた憲法に違反すると訴えていた訴訟(一人一票訴訟)で、大阪、東京高裁が相次いで「違憲状態」との判決を出しました。原告の弁護士グループは14個の高裁に提訴していますが、残りの12個の高裁も、違憲状態判決を出す可能性が高くなりました。

違憲状態大阪高裁写真

司法はこれまで政治・行政権力に寄り添う形の姿勢を崩さず、違憲立法審査権という司法府の権力を正当に行使してきませんでした。それがこの判決で急転、司法判断が変わってきたように感じています(私見)。

「違憲・選挙無効」という判断にならずに「違憲状態」という曖昧で法理では説明できない判断を示していますが、司法の判断が一歩、国民主権寄りになったのかと思わせる判決でした。

国会議員主権国家を正すことができるか

一人一票訴訟代理人の一人である升永英俊弁護士は、「国民主権国家とは、一票の格差のない選挙で選出された国会議員の過半数が、多数決で法律を作りかつ総理大臣を決定する」ことと主張してきました。

しかし現在、少数の有権者が多数の議員を選出するいびつな国会(立法府)を形成しており、憲法に定める国民主権国家ではなく、国会議員主権国家になっていると主張してきました。その通りです。少数国民の選ぶ多数国会議員がすべて仕切ってきました。

多数決の原理を徹底して「利用」した政治現場

たとえ人口比例選挙になっていなくても、多数決を得るために一人でも多くの国会議員を獲得すればいい。この間違った多数決原理であっても、選挙に勝つことだけが第一義になる。選挙公約の実行性や政党理念、政治信条とは関係なく、たとえ国民主権の選挙制度になっていない不条理な選挙であっても、多数さえ握っていればいいという拙劣な考えがいつの間にか主流を占めるようになり、選挙に勝つためには手段を選ばない選挙運動がまかり通るようになっていったのです。

政治は数という政治理念の原型が固まったのは、長期政権を実現した佐藤栄作政権時代からでした。人口比例選挙になっていなくても、国会議員の頭数さえ多ければそれが国民主権の多数決だとする考えが、連綿と引き継がれてきました(私見)。

行きついた先に「銃撃事件」があった

その政治現場の価値観が、元首相銃撃事件へと行きついていったと筆者は確信しています。この事件以来、反社会活動を展開してきた旧統一教会と自民党など政界との癒着が洪水のように露見し、歴史的事件に発展してきました。

この事件を見た司法府が、行政府のタガのゆるみと立法府の不正義な活動に歯止めをかける時期ではないかと感じ取り、政治の在り方の根幹にある投票の価値について正当な判断を示す流れに行ったのではないか。

その考えに立てば、この訴訟の最高裁判決では違憲状態が示され、それを受けて選挙制度が変わり、同時に日本の政治風土にも影響を及ぼすのではないか。違憲状態判決の行きつく先を注目せざるを得ない気持ちになっています。

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