世界一周の船旅の記録その1をアップします。1~30回です。
2024/11/25
2024年4月から7月まで、ピースボートのパシフィック・ワールド号(7万7千トン)に乗船して、世界一周をしてきました。
その様子を60回に渡って、ブログでアップします。
その①1~30回分のPDFファイルをアップします。
2024年4月から7月まで、ピースボートのパシフィック・ワールド号(7万7千トン)に乗船して、世界一周をしてきました。
その様子を60回に渡って、ブログでアップします。
その①1~30回分のPDFファイルをアップします。
写真は2015年5月8日付け日本経済新聞の報道
アメリカなどで活動する日本研究者ら187人が、安倍(違憲状態)首相に対し「偏見のない過去の清算」を迫る声明を発表した。内外のメディアが一斉に報道した。
一国の首相に対し、歴史認識で注文を付けるというのは、普通はあり得ない話である。それが堂々と行われたことで最もショックを受けたのは、安倍氏ではなく我々国民である。なんと、情けない国とその政治トップであることか。
戦後70年も経って、その終戦記念日を節目に首相が談話を発表するとしていることを受け、先手を打って「歴史を歪曲するような談話はダメだよ」という事前ダメ出しを打って出てきたのである。もし、そのようなことをやれば、中国、韓国の反発だけでなく世界が日本から離れていくことを憂慮した知日家、親日家のメッセージでもある。
なぜこのような情けないことになったのか。第一に安倍氏のこれまでの言動である。戦後レジュームからの脱却とかを主張し、日本がアジアで行ってきた過去の歴史を見直すかのような言動がある。そして憲法を「はっきり言ってみっともない憲法」とまで暴言を吐いている。
このような軽薄な首相は、歴代の中でも突出している。太平洋戦争までに日本がアジアの各地で行った侵略行為、残忍行為は疑いようにない事実である。南京大虐殺でも殺された人数の真実ではない。そこに日本軍が何を目的に侵略していったのかが問題なのである。焦点をすり替えてはならない。
中国本土に侵略したのは、領土ほしさと資源ほしさという目的以外合理的な理由は見つからない。当時の日本はABCD包囲網の理不尽さに対抗したという言い分もあるが、そのような包囲網を受けた日本の当時の指導者の国際感覚の欠如と浅薄な政治手法にむしろ原因があったというべきではないか。
資源の乏しい日本が進歩するには、いつの時代にあっても知恵を絞り汗を流す施策以外あり得ない。外国に武力を行使して資源や活路を求めるのは間違っている。その中でも最も愚かな選択と決断は、太平洋戦争の開戦である。
日米の国力を比較すれば、米国の数10分の1程度しかなかった弱小国の日本が、「神風」を頼りにして戦争を起こし、しかも国全体が焦土と化すまで戦争を続けたことである。
そのような指導者を戴いた過去は、日本人として情けないだけでなく世界に対して恥ずかしい思いだ。今回の国際的な知名人、学者らからの安倍氏宛の声明は、それに匹敵するくらい恥ずかしいものだ。それもこれも日本は、過去の戦争の歴史を自らの手で総括をしてこなかったことによるものだろう。
戦争の責任は誰にあったのか。それを日本人として総括し、反省の総括を世界に発することができなければ、いつまでたっても「ドイツでは・・・」などと他国の事例を引き合いに出すだけで、結局は何も変わらない国で終わるだろう。
このテーマについては、随時、発信していきたいと思う。
空襲警報が鳴ると、大人たちに手を引かれ、隣家との間に掘った防空壕に潜り込んだ。防空壕と言っても穴を掘って上に屋根らしい板をわたし土をかけただけだから、実際には何の役にも立たなかっただろう。トタン板を棒でたたくような連続音が響いていた。あとで分かったのだが、これが米軍戦闘機からの機銃掃射だった。
筆者の終戦当時の記憶はわずかその程度だが、当時、10歳から10代最後の年代になっていた人たちが、記憶を持ち寄って編んだのがこの本である。学童疎開の日々、空襲に耐えた日々、飢えに苦しんだ日々、目の前で展開された地獄絵、軍国少年だった幼少期の思い出など、多数の戦時中の記録で埋まっている。
このような体験をした多くの人がいなくなった。わずかに残された人々が戦争を知らずに歴史を修正しようとするような政治家たちも含め、誤ったかじ取りをしてほしくないとの思いをこめて作った本であろう。どの部分も平易な文体で綴ってあり読みやすく、事実の迫力で読者の心を打つ。
憲法は占領軍に押し付けられたものであり、日本人の手で作り直す必要があるという主張を声高に唱え、日本国憲法をまるで悪しざまに言う人々がいる。日本と日本人は、戦後営々と平和憲法を尊重し、戦後の復興に取り組んだ民族である。それがあったからこそ、日本は多くの国々から支持され信頼されてきた。それを今になって手のひらを返すように自主憲法とか自主軍隊の保持などを憲法で明示しようとする勢力が日増しに強くなっている。これに対し筆者は、断固として抵抗する。
そうした思いの一端が、この本の中で連綿と書かれている。戦後70年を迎えて、社会がざわついている。事を構えているのは政治家である。たまさか圧倒的多数を保持した政党が、70数年前に国の運命を変えたあの同じ道を歩むことがあってはならない。
この本を作った人々に敬意を表し、新たな思いに浸っている。
家族付き合いの中国人の友人
今から15年前に知り合った中国北京の旅行業者の邢鋼さんとは、親戚付き合いである。北京に行けば私の大好きな水餃子のお店でゆっくりと懇談し、東京へ来れば居酒屋へ繰り出して楽しい懇談になる。
15年前、北京に行ったときは、道路建設、ビル建設が始まったばかりであり、街中が混とんとしていた。世界のブランド品のデッドコピーが、これ見よがしに店頭に積みあげられ、観光客はニセモノ買いを楽しんでいた。筆者もニセモノツアーなるものを企画して、30人ばかり引き連れて北京を歩き回った。
混とんとしていた中国は、あっという間に追いついてきた。進展したものでもっとも顕著なのはIT関連のツールと手段の使用である。インターネットモールは、世界トップの規模に成長し、携帯、スマホ、メールが驚くほど進化した。
中国版ラインの威力を実感
本日、邢鋼さんと懇談したが、中国のラインと言われているWeChatアプリを教えてもらい、すぐに交信した。ラインとまったく同じ機能をもったインターネット交信ツールである。アプリをダウンロードしたらすぐに、東京理科大学知財専門職大学院当時の教え子で中国と台湾、日本にいる中国人、台湾人らから多数のメールが来た。
これには本当に驚いた。邢鋼さんの解説によると、中国人の多くがこのアプリで日常的に交信しているそうで、中国に行ったらこれで不自由なく情報交換できるという。中国でラインはつながらないが、その代わりWeChatはつながる。中国の国策に違いないが、その戦略には舌を巻く。
このようにIT関連技術の普及は、中国社会をあっという間に先進国を追跡し、追いつき、追い越そうとしている。中国社会が成熟し、生活レベルが上がっていくことは、日本にとってもいいことである。
1週間で一人平均100万円の爆買い
邢鋼さんは今回、30人ほどの中国人ツアー客を引き連れて来日し、日本の観光を先導しているのだが、今年中に中国から300万人を超える観光客が来日するという。邢鋼さんが引き連れている中国人観光客はかなりの裕福層だが、1週間の滞在中に一人平均100万円を日本で使っているという。驚きである。
経済的に成功した裕福層は、中国社会の進化の側面になっている。科学技術も大学の産学連携も知的財産制度も中国はあっという間に追いついてきた。筆者は15年前から60回ほど中国に渡航して中国社会の変転ぶりを見てきたが、過去を振り返って今を見ても驚きの一語である。
写真は、邢鋼さんからのお土産である。このようなお菓子類も、甘さ控えめになり日本の味に近づいてきている。中国の空港で売っている高くてまずいお菓子類、お土産類は、間もなく売れなくなるだろう。空港の免税店は利権とワイロの巣窟と聞いたことがある。日本人観光客が最大のカモとも聞いている。だから筆者は、空港では買ったことがない。
日本の実態を知らない中国人の若い世代
もう一つ、中国側の課題は、若い世代が日本を理解していないと邢鋼さんは嘆いていた。中国で垂れ流されている反日ドラマを信じ込んだ若い世代は、日本嫌いになっている。しかし来日して様々な体験をすると日本を見直し、たちまち日本ファンになっていくという。
これは日中間の政治的な摩擦が生み出しているひずみだろう。それを超えていくのは民間交流である。そんなことを邢鋼さんと話し合い有意義な飲み会だった。
生物学、医学を志す若き学徒にとって必須の本であると同時にマスコミ人にも必須の文献である。私たち一般の人にも読みごたえがあり、ためになる本である。読みだしたら止まらない興味が次々と出現することにも感心する。
前半は細胞分裂を繰り返して体が出来上がってくるまでのプログラムを組み込んだ幹細胞の役割や、これまでの研究進展を解説している。そして第2章でiPS細胞研究に至るまでの先人の業績に触れ第3章で山中伸弥教授の生い立ちから研究取り組みへと入っていく。
生物・医学の研究内容だからどうしても専門用語が多数出てくるが、巻末に「基本のキ」という項を設けて解説している。文中に出てくる人物イラストは、著者の中学時代からの親友である永沢まこと・イラストレーターであることが巻末で分かったが、それだけで感動した。この種の書物で、イラストで人物描写をするのは多分初めてではないか。
著者の黒木登志夫先生のこのようなアイデアと配慮が、書いている内容を身近にひきつける役割を果たしていることは間違いない。
黒木先生は達意の文体の書き手として知られているが、この本も大変わかりやすく随所に黒木先生だけしか言えないユーモラスな表現があって、その都度硬さをほぐしてくれている。これは「黒木節」ともいうものであって誰も真似ができない。
山中教授の語る「大阪弁の英語」のカッコ書きは秀逸である。そのほかにも折々に書いているカッコ書きのつぶやきもまた気が利いている。
この本の価値は、がん細胞の研究者として実績を積み上げてきた黒木先生が、最新の研究現場を取材し、一級の研究者の意見を吸い上げ学術論文を読み解いて書いた啓発本であることだ。だから書かれている内容は、実証的であり科学的にも確かな論述で埋まっている。巻末に掲出されている参考資料の一覧をみると、研究論文そのものである。
取材の中で得たと思われる研究者仲間の情報や学界の動きがふんだんに入っていることも読者を飽きさせない。黒木先生自身が読者に伝えたいと思うその心意気ともいうべき動機が、読者をひきつけてしまうのである。
さらに、iPS細胞は再生医療への応用というよりも、第7章の「シャーレのなかに組織を作る」、8章の「シャーレのなかに病気を作る」などで、iPS細胞研究の広がりを知りびっくりした。第9章の「幹細胞で病気を治す」でiPS細胞研究の集大成へのプロセスを知ることになる。
最後に先に世間を揺るがせた小保方晴子氏のスタップ細胞など幹細胞研究をめぐる過去の疑惑と不祥事についても言及しているが、これはいわば顔出しであって、黒木先生の次作は「研究不正」(仮題)という予告があった。こちらにも大いに期待している。
書物の紹介にしては枝葉の内容になってしまったが、黒木先生の著書の紹介ではどうしてもそちらに目が向いてしまう。書物の中核と本筋は言わずものだからだろう。是非、手にしてもらいたい一級の科学書である。
押久保政彦弁理士の博士学位取得の祝賀会を開催
宇都宮市で知的財産の地域振興で努力されている押久保政彦弁理士が、このほど東京理科大学大学院イノベーション研究科から博士(技術経営)の学位を授与されました。東京理科大学知財専門職大学院の2期生として共に学び研鑽した仲間ですが、研究室の仲間たちが集まり祝賀会を行いました。
学位論文は「地域ブランドの競争優位性の獲得プロセス」で、イタリア、フランス、欧州の地域ブランドを取材・研究し、日本の地域ブランドのあり方を分析し、競争と協調のあり方を提示した素晴らしい内容です。
イタリアの地域ブランドを調べたフィールドワークは、現地の状況がよくわかり参考になった。またこの論文の中核になっている第7章では、「競争と協調のギアチェンジ」という概念を説明している。時には協調から競争へ、ときには競争から協調へという切り替えによって、地域ブランドの信頼性と価値が高まっていくとする論述である。
日本の地域ブランドとして、松坂牛、十勝ナチュラルフーズを取り上げ、押久保論点をもとに検証している。全体的にわかりやすい文章で地域ブランドの重要性を論述したものであり、大変、参考になった。
馬場研のOB、OGの中から輩出した博士取得者の第1号であり、これからも続いて出てくると期待している。
サントリーがアサヒを特許侵害で提訴
ノンアルコールビール(以下ノンアルと略称)の製造をめぐってサントリーホールディングスがアサヒビールを特許侵害で東京地裁に提訴した。
アサヒのノンアル「ドライゼロ」は、サントリーのノンアル「オールフリー」の製法特許を侵害しているとして、アサヒに製造・販売の差し止めと在庫の廃棄を求めたものだ。最近、売り上げを伸ばし熾烈なシェア争いになっているノンアルをめぐる大手ビールメーカーの知財紛争であり、訴えたサントリーがどこまで本気でこの訴訟に取り組むのか知財関係者の耳目が集まっている。
サントリーが侵害されたという特許は、「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」(特許第5382754号)である。発端は2013年7月である。サントリーからアサヒに対し、ドライゼロは登録予定の製法特許を侵害しているおそれがあるとして、説明を求めてきた。
アサヒは、当該特許は無効理由があると主張、これに対しサントリーが反論し、ドライゼロの製法変更を含めた和解協議を提案したという。しかしアサヒはこれを拒否した。(「サントリーとアサヒ、訴訟前の熾烈な"抗争" ノンアルコールビールの製法特許を巡り火花 東洋経済2015年3月20日 田嶌ななみ編集局記者」)
結局、両社の話し合いは不調に終わりサントリーが提訴に踏み切った。この訴訟には多くの注目点がある。
損害賠償請求よりも製造販売の差止
まず第1に、損害賠償請求をしないで、製造・販売差し止めだけにしたことだ。製造・販売差し止めが実現できれば、確かに相手側に与える打撃は大きいが、食品業界関係者の感想を聞いてみると、次のような推測が返ってきた。
損賠額は数十億円から数百億円になるだろうが、請求賠償金額が巨額になると印紙代も多額になる。たとえ勝訴しても、日本の裁判所の判決では損賠額が低い。そこで損賠請求よりも心理的打撃を与える製造・販売差し止めに絞ったのではないかという。
アサヒの対抗措置の無効審判はどうなる
第2の注目点は、アサヒが対抗措置として出してくる当該特許の無効審判の行方である。特許の請求項が63あり一般的にはかなり多い方だ。弁理士に聞いてみると生物、バイオ系ではこの程度の請求項の数はよく見られるし、製法の発明を請求項にして従属クレームを付けるとこのくらいになるという解説だった。
請求項の多寡と無効かどうかは関係ないが、このような大型案件の審判には、特許庁も相当なる気合いを入れて審判をしてほしい。知財高裁や最高裁を見習って審判部長が参加するとか大合議制の5人の審判官で審理するなど審判の仕組みを改革する機会ととらえてもいいのではないか。
審決の内容によっては、特許庁に対する社会的な評価が低くなり、特許庁の存在価値が薄くなってしまうからだ。
裁判所の訴訟指揮はどうなるのか
第3の注目点は裁判所の訴訟指揮である。サントリーは製法確認のためアサヒに資料請求をすることは必至と思われる。しかしこれに対しアサヒは、営業秘密だとして応じないだろう。そのとき、裁判長が文書提出命令を出すかどうか。
日本の知財裁判では、このような訴訟指揮をすることはほとんどない。書面による判断が主流であり、実態がよくわからないまま判決を迎えることは珍しくない。
和解で決着するなら訴訟の意味がない
第4の注目点は、和解で決着するのではないかという「危惧」である。「危惧」と言ったのは、日本の裁判所の和解では知財訴訟の司法の役割が実質的に機能せず、当事者間のあいまいな決着でお茶を濁したようになるからである。
日本の裁判は、世界の中でも和解が多いことで知られている。アメリカの裁判所は和解には介入しないというが、日本の裁判所は、むしろ積極的に和解に介入する。和解を強要・押し付けするケースも少なくない。
このような実態は、日本の裁判所の問題点を余すところなく実証的に論述した「絶望の裁判所」(瀬木比呂志、講談社現代新書)の133ページから書かれている。
特許の侵害をめぐる訴訟では、技術的に高度で専門性の高い内容を判断しなければならないので、裁判官はできたら判決を書きたくないという思惑が働くのではないか。裁判官のそのような意図を感じ取る当事者も少なくない。
和解で決着すると、原告・被告・双方の代理人・特許庁など関係者はどこも傷がつかずに終わる。和解条項は、ほとんどは公表しないので当事者間だけの問題になり、世間は曖昧のままに決着したと理解したくなる。
知財立国が問われる侵害訴訟を注目しよう
特許紛争は当事者だけの問題ではなく、権利が生じているだけに多くの利害関係者が注目する司法判断である。世間に対して明確に示せるような解決方法が出せないなら、最初から提訴などしない方がいい。
原告のサントリーは特許の権利をしっかりと主張し、司法も厳正に判断した判決を出すことをしなければ、日本の知財立国は存在感がなくなり、国際社会から取り残されていくだろう。
特許を守らない国には、特許の出願をしないと外国の有力企業は明言している。日本の業界のムラ社会の知財権利なら特許を取得する意味がなくなる。そのような社会には有力なベンチャー企業は生まれないし産業技術の国際競争力は減退していくだろう。
サントリーの毅然とした対応を期待する。
埼玉県蕨市立第一中学校で数学と理科を教えていたお二人の先生にお目にかかった。
数学を教えていただいたのは、千布常雄先生(写真上)であり理科は坂井昭男先生(同下)である。
千布先生は今年91歳でかくしゃくとしており、坂井先生は86歳である。
二人の巨人と名誉あるツーショット
坂井先生は昭和24年3月に物理学校を卒業された先生で、その年の4月1日から新制の東京理科大学が創設された。
物理学校は、新制・東京理科大学と併設された時期が2年間あり、昭和26年3月に最後の物理学校の卒業生を出して閉校となった。
千布先生は、その最後の物理学校の卒業生であった。明治14年(1884年)に物理学校が創設されて以来、多くの理学の学徒を世に輩出してきた。明治、大正時代の卒業式は年に2回行われたこともある。千布先生が最後の卒業生となったとき、奇しくも100回目の卒業式であった。
坂井先生の奥様は長い間、自宅で書道教室を開いていた。それが老齢になって指導が困難になったため坂井先生が書道を学び直し、師範の免許状を取得して教室の後を継いだ。書道の基礎を学ぶため、東京・西神田の書学院に通学を始めたのは77歳のときである。
それから毎週1回、片道2時間余をかけて学院に通ったが、もちろん受講生のなかで最高齢だった。墨の擦り方から筆の持ち方、用筆法、楷書、行書、草書、隷書、万葉かななどを学び卒業試験と卒業制作、作品展を修了し、80歳にして書道師範の免許状を授与された。
ことし86歳だが、ご自宅で毎週2日のお稽古日には、小中学生8人に指導しているという。「教室の方針は、楽しく練習をして、美しい文字を書く」をモットーにしており、生徒らも書初展、硬筆展などに出展して入選するなど、指導者として実績を積んでいる。
物理学校は、入学は誰でもできるが卒業は極めて難しかった。明治・大正期の卒業者は、入学者の5パーセント前後という厳しい学校だった。その伝統は閉校するまで続いた。お二人の先生も、そのような試練を経て卒業されたのである。
物理学校への進学者は社会人からの学び直しの方も多く、卒業後は中学・高校などの教師になる人が多かった。お二人もその伝統を継いで教師になったのだろう。この2人の巨人に教えていただいた名誉を心に刻んで、先生方の背中を追いながら精進したいと思っている。
フェアユースを認めない日本の新聞社は権利の濫用ではないか
日本の新聞社が、掲載した記事や写真の著作権を主張するのは当然である。しかし社会や文化に寄与する場合には、フェアユース(公正利用)の法理によって権利を放棄するべきである。
教育に利用する場合や公共の福祉に供する場合にも、なにがしかの金銭を要求することは文化振興の観点からも認めがたい行為である。最近、筆者が体験した事例を紹介して問題提起をしたい。
さくらサイエンスプランという事業
日本政府が東アジア諸国・地域の優秀な青少年を1週間程度、短期間招へいし、日本の科学技術と文化を研修してもらう「さくらサイエンスプラン」事業は、昨年度(2014年度)、約2000人のアジアの青少年を招き、予想をはるかに超える大きな反響があった。
招へいされたアジアの青少年たちは、そのほとんどが日本の国・社会と科学技術と文化に触れて大きな感動を覚えた。招へい者が回答したアンケート調査から明らかになり感動し驚いた。
アジアの優秀な若者が将来、それぞれの国や地域で科学技術分野のリーダーとなる人材に育ってほしいということや、日本を理解して再び日本に来て研究者として世界に貢献してほしいという目的がズバリ当たった事業である。
この事業の発案者は、国立研究開発法人・科学技術振興機構(JST)の元理事長の沖村憲樹氏である。日中の学術交流に取り組み、日中大学フェア&フォーラムを立ち上げ、それを発展させてアジアの青少年の交流事業を実現させた。
筆者は、この事業の広報担当として現場からの感動と実績をフェイスブックと公式ホームページで発信し、同時に新聞・テレビ・ラジオ・雑誌などのメディアで、ニュースとして取り上げてもらった。
この事業の報告書を作成するため、新聞に掲載されたさくらサイエンスプランの記事や写真を収納する作業を進めている。そこで新聞記事や写真を報告書に掲載する許可を求めた。掲載の許可をしてきた新聞社もあるが、いくつかの新聞社は著作権を根拠に掲載料を請求してきた。
その額は7000円から3万円まで幅があるが、報道された記事の写真を掲載するだけで料金を請求するのは異常であると言わざるを得ない。この報告書は、市販されるものではないし事業の関係者や文部科学省、大学、研究機関などに報告するときに添付する小冊子である。
いわば準公的文書である。大学・研究機関では、教材として活用する場合もあるだろう。
しかしそれは置いといて、世に出回っているおびただしいホームページ、ブログ、そのほかの各種インターネットサイトに掲載されている新聞記事や写真の掲載について、新聞社は逐一チェックをし、著作権違反と認める場合は料金を請求しているならその限りで理解する。
そのような努力もしないで、たまさか良心的に申し出てきた案件に料金を請求するのは理不尽ではないか。これが筆者の主張である。
フェアユースという法理と概念
いま世界中で、発信する手段と方法が爆発的に広がっている。ブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、各種インターネットサイトの発信は燎原の火のように広がっている。
このような時代を迎えて、にわかに注目されているのがフェアユースの法理と概念である。フェアユースはアメリカの著作権法が認める権利である。法的には、著作権侵害に対する抗弁としているが、ここでは簡略的にフェアユースの権利とする。
アメリカ著作権法の107条は「批評、解説、ニュース報道,教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む)、研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェアユースは,著作権の侵害とならない」と定めている。
フェアユースの概念は、批評、解説、ニュース報道、学問、研究を目的とする場合にあっては、著作権のある著作物を許可なしで限定的に利用することは認めるとしている。
大学の教材利用にも金銭を請求する新聞社
筆者は東京理科大学知財専門職大学院で教授をしていた。大学など教育現場では、新聞記事を教材としてよく利用する。しかし筆者の活動する現場は、知的財産権の専門職大学院なので、教材として新聞記事をコピーして配布する場合でもその新聞社に断るのが礼儀だと思って新聞社に断りの連絡をした。
連絡したのは読売新聞であり、許可を求めたのはノーベル賞受賞を伝える号外の写真だった。写真をパワーポイントに入れてノーベル賞に関する講義をしようとしたものだ。驚いたことに、読売新聞社から料金を払えと請求が来た。その時点ではすでに講義を終えていたので、数千円(正確には忘れてしまったのだが、多分5千円以上だった)の請求額を支払った。
大学院の教材に使用するものであり読売新聞のPRになることはあっても、読売新聞のデメリットになることは考えられない。対象者は若い世代である。若者の新聞離れが重大な問題となっているとき、読売新聞の報道内容を紹介しながら大学院生に講義するために使用するものだ。読売新聞にメリットがあってもデメリットはないのではないか。
アメリカのフェアユースの定義にしたがえば、大学での使用は著作権の権利外と認められる。
今回、さくらサイエンスプラン報告書に使用する写真は、アメリカのフェアユースの概念である「解説、ニュース報道、学問、研究」のいずれの領域にもまたがるものであり、商業行動ではない。
そのような目的も確認しないで、画一的に掲載料金を請求する新聞社は何を基準に請求するのだろうか。社会の公器を標榜するならば、このような請求をすることは恥ずべき行為であると筆者は主張する。
自社のPRになることはあっても、損害を被ることはあり得ない引用・掲載に料金を請求することがあってはならない。しかも請求額は、筆者から見ると「はした金」である。このような料金徴収で企業活動しているならまだしも、新聞社にとってはゴミのような金額である。
日本の著作権法第1条は「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」とある。
さらに同30条には「著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる」とある。
今回、筆者が取り組んでいるさくらサイエンスプラン報告書は、公的機関である大学、研究機関、企業などで実施する若い世代の国際学術交流を報告する冊子である。そこに新聞報道の記事写真を掲載することは、第1条で言う「文化的所産の公正な利用に留意し・・・・・文化の発展に寄与することを目的とする」ものである。
そしてこの冊子は、同30条に言う「限られた範囲内において使用すること」に該当するものであり、フェアユースの範疇であると理解できるのではないか。
日本の新聞社はフェアユースの法理を尊重し、健全な著作権社会をリードしてもらいたい。
自民党知財戦略調査会で、これからの知財戦略について陳述しました。
荒井寿光氏と筆者は、4月1日午前8時から、自民党知的財産戦略調査会に招かれ「これからの知財戦略について」のタイトルで第二次知財改革の必要性を訴えました。
冒頭、荒井氏が用意してきたテキストをもとに営業秘密保護制度の活用、特許裁判の改革、地方創生のための中小企業の知財武装を支援、地方創生のための大学の知財戦略、海外ニセモノ対策の進化、国内知財戦略から地球知財戦略へなど6テーマについて解説と政策提言を行いました。
関連で意見を求められた筆者は、「制度改革が遅々として進まないのは日本の伝統。これを打破するのは政治の力しかない。知財改革では、経済界のリーダー、社会的地位の高い年配の人、大学人からの意見は決して聞かないでほしい。聞いても国際性に欠け、自社や業界のことしか考えていない。国益、時代の要請という視点に欠けている」との見解を述べ、政治家の主導で知財改革をリードしてほしいと訴えました。
また、国際標準化の重要性をあげてその対応策について意見を求められたので、「第一義的に国際標準化は、企業・産業界が取り組むべきテーマである。経団連や経済界は、職務発明の改正などに血道をあげているのではなく、国際標準化に取り組むことこそ重要である」と述べ、ここでも時代の要請、国際性に欠けている産業界のリーダーを批判しました。
隅田川支流の大横川の両岸のさくら並木は、一夜にして二分咲きから五分咲き、七分咲きにまで開きました。
近くの牡丹公園付近に咲き誇るユキヤナギ、ハクモクレン、シモクレンもさくらに負けじと咲き誇っていました。