驚異的に進化する中国社会
日本の首相に注文を付けた外国人の声明 恥じ入るのは日本国民だ

佐野陽子編「真夏の空は青かった」(サノックス)

真夏の空は青かった

 空襲警報が鳴ると、大人たちに手を引かれ、隣家との間に掘った防空壕に潜り込んだ。防空壕と言っても穴を掘って上に屋根らしい板をわたし土をかけただけだから、実際には何の役にも立たなかっただろう。トタン板を棒でたたくような連続音が響いていた。あとで分かったのだが、これが米軍戦闘機からの機銃掃射だった。

 筆者の終戦当時の記憶はわずかその程度だが、当時、10歳から10代最後の年代になっていた人たちが、記憶を持ち寄って編んだのがこの本である。学童疎開の日々、空襲に耐えた日々、飢えに苦しんだ日々、目の前で展開された地獄絵、軍国少年だった幼少期の思い出など、多数の戦時中の記録で埋まっている。

 このような体験をした多くの人がいなくなった。わずかに残された人々が戦争を知らずに歴史を修正しようとするような政治家たちも含め、誤ったかじ取りをしてほしくないとの思いをこめて作った本であろう。どの部分も平易な文体で綴ってあり読みやすく、事実の迫力で読者の心を打つ。

 憲法は占領軍に押し付けられたものであり、日本人の手で作り直す必要があるという主張を声高に唱え、日本国憲法をまるで悪しざまに言う人々がいる。日本と日本人は、戦後営々と平和憲法を尊重し、戦後の復興に取り組んだ民族である。それがあったからこそ、日本は多くの国々から支持され信頼されてきた。それを今になって手のひらを返すように自主憲法とか自主軍隊の保持などを憲法で明示しようとする勢力が日増しに強くなっている。これに対し筆者は、断固として抵抗する。

 そうした思いの一端が、この本の中で連綿と書かれている。戦後70年を迎えて、社会がざわついている。事を構えているのは政治家である。たまさか圧倒的多数を保持した政党が、70数年前に国の運命を変えたあの同じ道を歩むことがあってはならない。

 この本を作った人々に敬意を表し、新たな思いに浸っている。

 

 

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