世界一周の船旅の記録その1をアップします。1~30回です。
2024/11/25
2024年4月から7月まで、ピースボートのパシフィック・ワールド号(7万7千トン)に乗船して、世界一周をしてきました。
その様子を60回に渡って、ブログでアップします。
その①1~30回分のPDFファイルをアップします。
2024年4月から7月まで、ピースボートのパシフィック・ワールド号(7万7千トン)に乗船して、世界一周をしてきました。
その様子を60回に渡って、ブログでアップします。
その①1~30回分のPDFファイルをアップします。
あの事故から30年。メディアの報道特集を見ながら時間の流れを感じていたが、この本を広げて読み出すと、あの日あのことが臨場感あふれる筆致で展開されており、つい先ごろの事故であったように再現されていた。
2人の元読売新聞社会部記者が、どうしても書き残したいという思いを持ち続け、ついに上梓したものである。専門的なデータと証言を再検証して整理した記録であるが、同時にこの事故の原因に迫った一級の資料にもなっている。
全編を通じて、新聞記者らしく事実に即した記録を辿っている。事故調査委員長だった八田桂三氏が書き残したB747型機の安全向上策を書いた「建議書」は、公式に取り上げられることなく幻に終わる。入院先の病院でまとめ、米側にも伝えようとしながら、結局は幻の建議書となったが、八田氏の思いが込められた直筆の文書(写真)が、巻末に収納されている。このような人物と文書を知っただけでも、この本を読んだ価値があった。
著者らは、アメリカから原因調査で日本へ派遣されてきたトム・スウイフト氏の事故原因を詳細に記述した直筆の文書(コピー)を入手する。この文書を中心に、当時の関係者の証言と資料を検証しながら機体尾部が破壊に至った過程を追跡して詳細に記述している。
事故機がどのような機内環境で飛び続け、機内の急減圧は生じたのかどうか。その様相を検証した事故調報告書とパイロットで組織する連絡会議の見解は平行線をたどったままであることを示し、さらにベテラン機長だった杉江弘氏の見解も取り上げている。
520人の命を犠牲にした史上最悪の航空機事故の原因は、30年経てもなお議論の余地を残していることを知り、あの事故は解明されない部分を残したまま、まだ「飛行」を続けているようにも感じた。本のタイトルにある「謎は解けたか」と問いかけた理由であろう。
第3章に収納されている事故調専門委員ら7人とのインタビューは、当時の生々しい状況を伝える記録として歴史的な意味も含んでいる。事故直後のインタビューだけでなく、長い歳月を経て当時を振り返りながらこの事故の教訓を改めて述べている人もいる。墜落事故の全貌を肉声で残そうとした試みでもある。
読みやすい一般書であるが、専門資料としても貴重な書籍になっている。
2015年8月6日、朝日新聞朝刊に掲載された一人一票実現国民会議の意見広告は、「違憲状態」という法理にない言葉を使い、選挙は合憲という詭弁を弄している病根を明解に解説しています。
升永英俊、久保利英明、伊藤真の3弁護士(文責)によると、「選挙は違憲状態。しかし選挙は合憲」という判決は、詭弁以外のなにものでもないとしています。法律家でない私たち一般国民にとっても、こんなに人をバカにした言い方はないと感じています。
ここでの主張は、憲法56条第2項、憲法1条、憲法前文第1文前段によって、憲法は人口比例選挙を要請しています。民主主義の根幹は多数決で物事を決するものです。国民主権は国会議員に託していますが、その国会議員は正当に選出されていないので、現在は少数の有権者選んだ多数の国会議員が多数決の原理で物事を決めています。
つまり少数の議員の思惑で国を治めているものであり、およそ民主主義国家とは程遠い状況になっています。そのことが分かっている最高裁の多くの判事は「違憲状態」という詭弁で逃げを打ち、結果的に国民を愚弄しているのです。
なぜそのような愚弄が生じたのか。意見広告の主張は、最高裁の判事の指名の仕組みが違憲という行為の中で昭和21年から既得権化してきたものであり、その既得権を失うことを回避するために詭弁判決になっているというものです。
最高裁は、意見広告の主張する法理に対し、合理的に反論し「違憲状態でも選挙は合憲」と言いくるめることは不可能でしょう。正義にしたがって「違憲、選挙は無効」と言い渡し、人口比例選挙の選挙区割で正当な選挙をすれば、初めて日本は民主国家を確立したことになります。
意見広告では、選挙無効と判決すると、社会的混乱が生じるのではないかとの危惧に対する否定論を実に簡潔に説明しています。混乱などするわけがないというのは筆者の私も同感です。
いま私たち国民が取るべき行動は、一人一票実現のために世論を喚起することです。小学生が聞いても詭弁だと思うに違いない最高裁判決は直ちに廃棄し、来たるべき一人一票実現運動の最高裁判決では毅然として「違憲、選挙無効」と言い渡したなら、日本国民はどれだけ目覚め、自覚と勇気を持ち、国家作りに真摯に取り組もうとするでしょう。
最高裁判事の英断を期待しています。
宮川幸子・清水至「事業をサポートする知的財産実務マニュアル」(中央経済社)
知財の世界は高度・専門性が高く、一般の人は容易に入り込めない分野である。これまでの企業や各種機関の知財担当者は、一種の「ムラ社会」を作り、理解しあえる仲間が寄り集まって仕事をしていた面がある。
経営者も紛争が起きれば知財ムラに解決策を一任し、聞きかじった知識だけで知財戦略を打ち出すような傾向があった。
しかしIT産業革命が世界中に広がってきた今の時代には、知財戦略は時として企業の死命を制するツールになりかねない。パテント・トロール、パテント・オークション、パテント・プールなど新しい知財の業態が芽生え、知財戦略の中で大きなうねりを起こそうとしている。
この本は、こうした現代の国際的な背景をとらえ、知財人材として本当に役立つ人を育てるためのいわばノウハウを提示したものである。特許を取り巻く課題だけではなく、意匠、商標、模倣品対策や税関対策、契約にまつわる留意点まで言及している意欲ある編集になっている。
具体的なケースステディ風に、ある架空の企業とその研究開発と知財戦略、経営戦略まで漫画入りで分かりやすく説明しており、この種の本としては異例の工夫をしている。
これは知財を教育する企業の研修などに使用できるいい教材になるし、大学などの教科書代わりにもなるものだ。何よりも、具体的なケースに対応する方法を示している点がユニークであり特長になっている。
企業や各種機関の知財部門は、この本を参考に是非、実のある知財戦略を推進してほしい。また知財を担当してきた人にとっても、この本に書かれている事例を参考にしながらこれからの取り組みをたててほしいと思った。
国民主権を無視する政権運営は国家ではない
日本経済、読売、毎日、朝日新聞、NHKの各世論調査で、「安保法案の今国会成立に反対」「国会審議は不十分」が圧倒的多数になっているのに、それを無視して法案を衆院で可決しようとしています。
世論調査は、どの報道機関もランダムサンプリング理論に基づいて、偏りのない調査相手を選ぶようにしており、調査結果は国民の総意の反映と言って間違いありません。
その証拠の一つに、選挙前の世論調査結果と選挙の結果はかなり高い相関関係になっていることがあげられます。
そのような重要な国民の意向にお構いなしに、時の政治権力と議員の思惑だけで勝手に民意を無視して議員多数決で法案を成立させようとすることは、国民主権を無視したもので、もはや国家ではありません。
歴史に残る暴挙と思います。
世論調査にみる国民の総意
上の二つの表は、日本を代表するメディアの世論調査の結果です。これを見れば一目瞭然、安保法案は憲法違反であり、今国会での成立に反対する意見が圧倒的多数を占めています。世論調査で 60パーセント以上の支持を集めることは圧倒的支持と言っていいでしょう。
このように世論調査に示された国民の総意を無視して、国会議員、政府与党は多数決で可決成立させようとしています。これは憲法で保障している国民主権を無視したものであり、到底許されません。
政治家は、世論調査結果が有権者の意向を反映していることをよく知っています。選挙のときの事前調査の支持率は、非常に重要視しており、過敏なほどに反応しています。それは、過去の選挙での事前の調査結果と選挙結果が高い相関関係で出ているからです。
したがって、今回のメディアの世論調査結果に対しても、政権与党は民意を反映していることを十分に承知していることは間違いないでしょう。都合のいいときだけ世論調査結果を参考にしたり利用し、都合の悪いときには無視するその態度は、幼児性の成熟しない政治手法であり、民主主義国家とは程遠い政権運営と言わざるを得ません。
知的財産の武器は知財の権利にある。特許、実用新案、商標、意匠、著作権、ノウハウ・・・。その権利をめぐる争いを著者の久慈氏は「喧嘩」と名付けた。いい名称である。
著者は、ホンダ(本田技研工業株式会社)知的財産部長を務め、日本知的財産協会(知財協)専務理事、日本知財学会副会長を務める知財の世界でのリーダーである。その著者が、ホンダの知財戦略や係争事件を織り込みながら知財現場の話を達者な語り口で語って聞かせてくれる。
日本の代表的な企業の知財専門家が、具体的な事例をもとに書いた知財本として優れた啓発書であり、知財活動を目指す若い世代の人たちは是非、これを読んでほしいと思った。
ホンダ育ちの著者が語るので、ホンダの知財戦略や研修の様子や創業者本田宗一郎氏が他人の知財権利を尊重するエピソードも出てくる。これを読んで筆者は、苦い経験を思い出した。
本田宗一郎氏にインタビューしたとき、本田社長はマン島でのオートバイレースで勝ったメーカーのオートバイ部品をばらして日本に持ち帰った話をした。若かった筆者は「そうして真似をするのですね」とうかつにも口走った。
すると本田社長の表情がみるみる険しくなった。「真似するんじゃねえよ!それ以上のものを作るために持ってきたんだ!」。
あの迫力に震えあがった筆者の苦い思い出がよみがえった。
示唆に富んだ話が満載であるが次作を期待したい
この本のタイトルにある「作法」とは、国際的に展開するときの国別、地域別、技術レベル別に、いかに取り組むべきかその戦略についてであり、示唆に富んだ話で埋まっている。韓国、中国の儒教思想や朱子学の行動原理との交渉術など著者ならではの話はためになる。
日本は知財訴訟が極端に少ない先進国だが、その原因は知財協などのネットワークを通じた人脈で、当事者間で話し合って解決するからだという。なるほどこれは「知財談合」とも言うべき日本の産業界に根付いた「悪しき伝統」ではないかと筆者は思った。
その一方で著者は、国際的に知財紛争が増えており、アメリカでホンダは原告となって訴訟を仕掛ける企業になっていることを語っている。さらに中国では、将来日本企業を巻き込んだ知財訴訟が増加するとの予測のもとに、法廷闘争を含めた訴訟スキルを磨くべきだとの主張も展開している。
世界同時訴訟や知財訴訟の勝率を上げるための戦略など「喧嘩の準備」にも踏み込んでおり、修羅場をくぐり抜けてきた内容は、たいへん参考になる。
ほかにもノウハウの戦略、パテントトロールの現況、ブランドマネジメント戦略、知財と税務の話など実務に即した内容は読みごたえがあり、知財部門のスタッフは参考になるだろう。
ただ、日本のすべての企業がホンダのようになれるわけではない。著者は日本の知財世界のリーダーとしてベンチャー企業、中小企業から大企業まで知財戦略を俯瞰する立場にいるはずだ。
日本が知財立国として国際的な存在感を出すためには、ホンダのような一部の大企業が勝てばそれでいいとはならないと筆者は思う。そのような視点で著者にはもう一度語ってほしいと思った。次の著作に大いに期待したい。
読売新聞の世論調査でも惨憺たる数字
上の表は、2015年7月6日付け、読売新聞に掲載された世論調査の結果を表にしたものである。この数字は、先に掲載された日本経済新聞の世論調査結果とほぼ同じである。
この2つの世論調査によって、いま国会で論議されている安保関連法案対する国民の考えがはっきりと出ており、安倍政権が目指すものとは大きな違いがある。
自民党・公明党の政権与党は、大幅な国会延長を決め、安保法制を何が何でも国会で成立させようとしている。一方で国民は、安保法制に反対であり、政府の説明は不十分であり、この国会で成立することにも反対だ。
日本は国民主権であり国会議員は、正当な選挙で当選した代議員であるはずだ。しかし現行選挙制度は、少数の国民が過半数の議員を選出するようになっており、正当な代議員制度にはなっていない。
憲法は、一人一票、つまり人口比例選挙を要請しており、今の選挙制度は「違憲状態」と最高裁は判決している。
世論調査は、国民の声を凝縮した形で出ている数字であり、国会の議員は少数有権者が過半数議員を選出したいびつな選挙区で選出された人々である。国民総意ともいうべき世論調査結果と国会議員の思惑は、当然違うものになる。
憲法は国民主権であるとしているが、現行の日本は議員主権になっている。メディアの報道が議員たちの思惑と違うものであったり、反対するものがあれば「懲らしめたやる」と吠えている政治家である。
このような政治家を選出する有権者にも大いなる責任がある。日本は、立憲国家として真の民主主義を確立し、国民主権国家を実現しなければ、いつまでたっても後発国、途上国スタイルの国家運営から脱却できないだろう。
そこから抜け出るのは、国民の自覚にかかっている。
この表は、2015年6月29日付け、日本経済新聞の世論調査結果の報道である。
いま国会で緊張状態になっている安保関連法案に関する国民の考えは、採決を強行しようとする政権与党の考えを真っ向から否定している数字が並んでいる。筆者は長年、読売新聞記者をしてきたが、世論調査でこんな数字が並んだことは見たことがない。
しかもこれらの法制は憲法違反の中で進んでいることは、歴代の法制局長官が表明している。東京新聞の報道が次のサイトで閲覧できる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015062002000118.html
それではなぜ、この法案の成立に気が狂ったように熱心なのか。いま何か日本にとってどうしても必要な法案として迫られている事情があるのか。誰に聞いても「ない」という回答だ。それは、この世論調査結果の数字によく出ている。緊迫した状況があれば、数字は違うものになる。
いまの政治家、政権に与えられているテーマは、経済回復、産業競争力、知財強化制度の取り組み、少子化対策、科学技術創造立国の取り組み、教育制度の課題解決など身近な問題が山積している。それらのテーマに必死に取り組まないで、なぜ緊迫していない安全保障法制に血道をあげているのか。
同じ日経新聞の世論調査で、景気回復を「実感せず」という回答が75パーセントを占めている。これは絶望的な数字であり、これを受けて政治は必死に対応策に取り組むべきである。
安保法制は、安倍晋三氏の個人的な思い入れを実現しようとする思惑にあるに違いないといういくつもの証拠が出ている。憲法改正の発言もよく聞くが、憲法問題を言うなら最高裁が「違憲状態」と判決している選挙制度を真っ先に解決して、日本に真の民主主義を導入し、正当な選挙による多数決で政策を目指すべきである。
安倍氏は、若い人たちとの討論の場で「はっきりいってみっともない憲法だ」と明言している。当時の連合国から押し付けられた憲法という主張である。しかし現憲法を読むと国民主権の民主国家であるべき条文であり、不戦の誓いが条文として明確に出ているのは世界で例がない憲法である。これこそ日本国家の真髄であり誇るべきであって否定することはない。
それを都合の悪いことには取り組まず、喫緊の国民的な仮題にも取り組まず、個人的な政治的思惑を最優先させて必死の形相で強行しようとしている。
自民党、公明党の政権与党の大半の議員も情けない。安倍氏の歓心を買うように、自分たちに都合の悪い報道をする「メディアは懲らしめる」という発言が出ている。都合の悪いものには強権力で押さえつけようとする発想は政治家ではなく幼児の発想である。
憲法で要請されているのは、一人一票実現による正当な国会議員であり、国民主権である。そのような根本的な問題を解決しないで政治ごっこをやっている場合ではない。政権をチェックするメディアの生ぬるい報道はどうしたことか。これにも大いなる責任がある。筆者から見てまともなのは、東京新聞、講談社などいくつかのメディアだけである。
このような政権運営とメディアの態度を許すわけにいかない。一人一票実現運動を主導する升永英俊弁護士の言う市民になって断固として闘うよりない。
発明通信社に連載中の私のコラム(http://www.hatsumei.co.jp/column/lists/2.html)を転載します。
今年の「知的財産推進計画2015」が先ごろ決定し、内閣官房知的財産戦略推進事務局から発表された。知財立国を宣言して小泉内閣から始まった知財戦略計画は、今年で10年を迎えた。大きな節目である。
さる7月1日、弁理士の日の祝賀会がホテルオークラで開催され、知財関係者が多数集まって懇親と情報交換の場となった。このとき内閣官房知的財産推進事務局長の横尾英博氏が祝辞を行い、今年の計画の柱を2点に絞って説明した。
四国TLOと川崎市の知財事業の実績を紹介
第1は地方における知財活用の推進であり、中小企業の知財戦略や産学連携の推進である。第2は、知財紛争の処理システムの活性化であり、端的に言えば侵害訴訟の見直しと知財の司法改革を提起したものだ。
第1の柱である地方の知財活用となれば、中小企業の活性化につながっていく。日本には約385万社の中小企業があり、産業競争力の源泉になっているが、 IT産業革命を迎えて旧態依然とした技術と経営では国際競争力を持たなくなり、多くの中小企業が苦戦している。これを活性化させるための知財戦略の強化策 をあげている。
推進計画によると大学発の研究開発の成果を企業と結びつけるために作った技術移転機関であるTLOの承認数は、2008年の48機関から現在36機関まで減少した。一時のブームにのって作ったものの機能しないため、店じまいするTLOが12機関もあったことになる。
こうした中にあって推進計画では、徳島大学の特許権実施収入が、わずか1年で前年度の32.6倍、1億1486千万円まで増加させた株式会社テクノネットワーク四国(四国TLO)を紹介している。
同社の提携は、徳島大学・香川大学・愛媛大学・高知大学・高知工科大学など四国内にある20大学・高専となっている。工学・理学・医学・薬学・歯学・農学 など幅広い分野をカバーしており、四国だけにとどまらず山口・岡山・広島・長崎・鹿児島・宮崎・沖縄TLOとの連携協定をして活動の輪を広げている。
これまでの製品化事例として「子供から大人まで楽しめるピースを組み立てる遊具」、「内視鏡誘導補助具・エンド・レスキュー」、「ビワ種子由来エキスを応 用した製品」、「アフラトキシン検査キット」、「ヒドラジン分解技術による大量標準糖鎖調製」、「100%米粉パンの製造方法」など多彩な活動事例を発表 している。 (http://www.s-tlo.co.jp/club/markets/product/)
また川崎市では、大企業の保有する知的財産を中小企業に開放し、それを活用して中小企業が事業展開を行う支援を行っている。知財ビジネスマッチングであり、本格的に取り組んだ自治体として紹介している。
上の図は知財戦略推進計画から転載
社会起業家を育成するビジネススクールの社会起業大学(田中勇一理事長)が主催する『ソーシャルビジネスグランプリ 2014夏』において、川崎市経済労働局、公益財団法人川崎市産業振興財団、藤沢久美氏(シンクタンク・ソフィアバンク代表)などによる中小企業支援活動 が「政治起業家部門」においてグランプリを受賞している。 (http://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000061040.html)
政府は、地方の中小企業が積極的に知財を活用した企業活動に乗り出すように支援を続けるとしており、地域の中小企業・大企業、地域の大学と産業界の連携を活性化させるための橋渡し支援基盤を整備していく方針を打ち出している。
知財紛争処理システムの活性化
これまでもたびたび指摘されているのは、特許侵害訴訟件数が日本は非常に少ないことだ。対GDP比で見ても、欧米の主要国に比べて少ないし、中国のほぼ 10分の1程度である。また権利者側の勝訴率もアメリカ、ドイツに比べて低いこともよく知られている。権利を持っていても保護されないなら、特許出願も登 録もしなくなる。
権利者の勝訴率が低いのは、国の知財体制が権利を守ってくれないということになり、外国企業は日本で特許権利を取得しても価値がないとしている。
先月、韓国に行った際に韓国特許事務所の所長と意見交換をしたが、韓国の企業の間でも日本に出願・登録しても正当に守ってくれないので出願することを躊躇している企業が出始めているという。特許出願件数の減少は、こうした事情も加担していることになるのではないか。
また権利者が中小企業の場合、大企業に比べて訴訟に勝てない傾向がはっきり出ている。中小企業は資金力が脆弱なために有名知財弁護士や一流法律事務所などに依頼することができず、法廷闘争では打ち負かされることが多い。
特許技術の内容ではなく、法理を駆使した文言・レトリック勝負になっていることも問題として指摘されている。
今年の戦略計画では、これまでタブー視されてきた司法の判断にまで踏み込み、次のような問題点を述べているので簡潔に整理してみた。
1. 日本の特許権侵害訴訟の件数は、先進国の中でも極めて少ない。
2. 権利者側の勝訴率もアメリカ、ドイツに比べて低い。
3. 中小企業の勝訴率は大企業のそれに比べて低い。
4. 権利者による侵害立証が困難である。(これでは「侵害し得」になる)
5. 裁判所で認める損害賠償額は、ビジネス実態ニーズを反映していない。
このような具体的な課題を列記して司法判断に改善を求めたのは画期的である。是非、関係機関は改善し、知財立国へのリスタートとしてもらいたい。
上の図は知財戦略推進計画から転載
変貌する調査会社の受託業務
冒頭の写真は、上海の調査会社QCAC駿麒国際諮詢有限公司(略称・QCAC)を訪問した際の写真である。中央がQCACの藩総経理、左が安達孝裕・日本部担当部長、右が陸傑・事業推進部長である。同社は、主として日本企業のコンサルタント業務を受託しているが、特に模倣品調査と摘発では多くの実績をあげてきた。
筆者とは10年以上前からのお付き合いであり、東京理科大学知財専門職大学院の教員時代には、藩総経理が研究室を訪ねてきたこともある。今回の取材で感じたことは、同社の業務が中国の産業構造の変革に合わせて拡大してきたことだ。
これまでは模倣品摘発と調査に重点が置かれていたが、これを幅広く企業経営のサポートをすることに拡大してきたことだ。知財関係の調査に重点があったが、それを経営マネジメント、人事管理、人材調査などより質の高い業務に広げてきた。
同社の得意は各種の調査である。たとえばある特定の人物調査、ライバル社の特定人物の行動調査、自社の人事管理などに必要な調査などである。中国社会で日本企業が経営するのは想像を絶するような局面を乗り越えていく必要がある。筆者な多くのケースを聞いてきた。
QCACは、日本企業向けの業務を主体にしており、近く東京にも事務所を構える方針という。QCACの活動を見ていると、中国社会の変貌ぶりが見えてくる。
不死鳥のようによみがえった白木学さん
携帯電話のマナーモードを世界に広げた人物として知られる白木学さんは、かつてはアメリカのアップル社の携帯電話に格納したカメラの自動焦点用のモーターを100パーセント受注するなどこの世界では知らない人がいないほどの有名人だった。
シコー株式会社をジャスダックに上場し、売り上げも100億円をうかがうまでに発展した。それが暗転したのは金融機関の勧めるデリバティブに手を出したためである。超円高が進んで多額の返済額が膨らみ上海に従業員1万人弱を抱えていたオートフォーカス、小型ファンモーター製造工場は立ちいかなくなり、ついに2012年12月に3億7400万円で上海の企業に譲渡された。
ありていに言えば、経営が経ちいかなくなり倒産したということだ。筆者は、シコー株式会社の倒産までの3年間ほど、非常勤監査役として経営実態をつぶさにみてきたので、そのあらましは理解していた。経営トップの白木さんをはじめ、同社の経営陣の奮闘ぶりは涙なくして語れないほど壮烈な状況だった。
どれほど努力しても為替の動向や、その為替を反映した金融商品への対応は、どうすることもできない。どこにも不満をぶつけることができない国際金融動向は魔物であった。一敗地にまみれた白木さんは、あれから2年余を経て、再びよみがえっていた。
上海の工場で実験に取り組む白木学さん
上海市松江区の、かつて大工場を構えていた同じ工場地域の一角に間借りして、小さな工場の経営を始めていた。製造するのは小型モーターである。これまでは、小型と言っても携帯やスマホに内蔵するような超小型モーターだったが、今度は自走車、ロボットなどに使うようなモーターであり、それなりに大きいものもある。
その開発に取り組み、ついに従来からのモーターの性能をはるかに超えるモーターを発明して特許を出し始めている。すでにいくつかの企業からも引き合いが来ており、製品を納品した実績も出し始めている。工場を訪問すると、多数の機械に取り囲まれた場所で、白木さんは黙々と実験に取り組んでいた。
白木さんがまた新しいモーターを引っさげて実業界に復帰する日を楽しみにしている。
元気に活動するユニ・チャームの清水亘さん
東京理科大学知財専門職大学院(MIP)1期生の清水亘さんが、ユニ・チャームの中国知財担当で活動しているので久しぶりに懇談する機会があった。筆者の宿泊したホテルから歩いて7分ほどに屹立するインテリジェントビルに入っていた。
清水さんと変貌する中国社会と業界の事情、模倣品現場の話などを聞いて情報交換をしたが、やはり中国での企業活動の厳しさを感じた。
帰国直前になって、不思議な体験をした。上海の知人に手紙を書いて投函したいと思い、宛先を書いた封筒をホテルのレセプションに持参し、切手を貼って投函したいと申し出た。普通、ホテルでは切手代を徴収して発送はやってくれるのだが、このホテルの従業員は、切手代すら知らなかった。
国内に郵送する封書の切手代を知らない。3人ほどのスタッフが顔を寄せ合い話し合っているが分からない。郵便局へ行ってほしいという。言葉は丁寧だったが、あきれてものが言えない気持ちだった。それがまだ続いた。
切手を貼らない封書を持参し、そのまま忘れて空港まで来てしまった。ANAの搭乗口まで来てから思い出し、搭乗口のスタッフの女性の中国人に切手代を出すから貼って投函してほしいと申し出てみた。そのとき「手数料」も含めて10元(約200円)を出した。
若い女性は、まず封書の国内の切手代がいくらかを知らなかった。ホテルと同じようにその辺のスタッフに聞いていたが分からない。10元はしないという。もちろん、10元はしないが、ま、手数料も含めてという気持ちで封書と一緒に10元札を出した。
しかし女性は、1元以下と思うので自分で負担するから10元は要らないと返してくる。どうしても10元札を受け取らないので、それではと筆者は1元札に変えて、せめてこれくらいは受けて取ってと懇願した。結局女性は、1元札を快く受け取り、封書は切手を貼って間違いなく投函すると言ってくれた。
無事に帰国して知人にメールで問い合わせたが、1か月過ぎてもついに封書は届かなかった。あの空港の女性が、投函しなかったとは考えられない。中国の知人に聞いたところ、中国では手紙が届かないことはよくあることだから、その程度のことだろうということだった。
また、中国社会の一面を見た思いだった。
長谷川博先生(東邦大学名誉教授)が、生涯をかけて取り組んでいるオキノタユウ保護と生態調査の日誌である。日本ではアホウドリと呼んでいるが、長谷川先生は、この呼び名は不遜ないいかただからやめようと提唱、山口県長門地方で呼んでいるオキノタユウがふさわしいとして、もうだいぶ前からこの呼称を提起している。
確かに、陸の上では歩くのももどかしく、江戸時代から明治時代には鳥島を埋め尽くしていた数百万羽のオキノタユウが、羽毛や肉を取るために撲殺されていた。人間にほとんど取り尽くされて戦後は絶滅宣言までなった種であった。
長谷川先生は1973年5月7日、京都大学大学院生時代にイギリス人の鳥類学者のランス・ティッケル博士と出会ったことから始まる。イギリス海軍の支援を受けて、博士が鳥島にオキノタユウの調査に出向いたことなどの様子を詳細に聞いてびっくりする。鳥島は1965年11月16日に気象観測所が閉鎖されてから無人島だった。
ティッケル博士は、「鳥島は日本の島であり、そこで絶滅種に瀕しているオキノタユウの保護は、日本が責任を負っている」と長谷川博士にメッセージを寄せるが、この一言で長谷川博士は鳥島のオキノタユウの調査と保護に取り組む決心をする。
この本は鳥島でたった一人でオキノタユウの生態を調査し、孵化して育った幼鳥に足環をつける活動を克明に記録した内容で埋め尽くされている。鳥島に滞在した1か月間を日誌風に書いているものではあるが、読み始めるとやめられない。そこには鳥島の自然、動植物の様子とオキノタユウの生態が書かれているだけでなく、長谷川先生のオキノタユウに対する愛情が行間に埋め尽くされている。
鳥島に渡った当時、ヒナと成鳥合わせて71羽だったものが、すでに観測数が1000羽を超えるまでに回復している。筆者は、長谷川先生の調査の初期のころから読売新聞にその活動を掲載したり、調査の支援をしてきた。たいした支援にはならなかったが、その活動には敬意をもって見守ってきた。
この本は、鳥類のフィールドワークをする研究者にとっては、バイブルのような資料になるだろう。そして一般の読者にとっても、絶滅種を保護しようと立ち上がった研究者の行動に共鳴し、ここまで続けてきた研究活動に感動せずにいられない内容になっているだろう。
読み進むにしたがって、長谷川先生と一緒に鳥島で生活しているような錯覚に陥ったが、鳥島の自然の厳しさと生物たちの生態を肌で感じるような場面も随所に書かれており、自然観察書としても一級の資料である。