宮川幸子・清水至「事業をサポートする知的財産実務マニュアル」(中央経済社)
2015/07/24
宮川幸子・清水至「事業をサポートする知的財産実務マニュアル」(中央経済社)
知財の世界は高度・専門性が高く、一般の人は容易に入り込めない分野である。これまでの企業や各種機関の知財担当者は、一種の「ムラ社会」を作り、理解しあえる仲間が寄り集まって仕事をしていた面がある。
経営者も紛争が起きれば知財ムラに解決策を一任し、聞きかじった知識だけで知財戦略を打ち出すような傾向があった。
しかしIT産業革命が世界中に広がってきた今の時代には、知財戦略は時として企業の死命を制するツールになりかねない。パテント・トロール、パテント・オークション、パテント・プールなど新しい知財の業態が芽生え、知財戦略の中で大きなうねりを起こそうとしている。
この本は、こうした現代の国際的な背景をとらえ、知財人材として本当に役立つ人を育てるためのいわばノウハウを提示したものである。特許を取り巻く課題だけではなく、意匠、商標、模倣品対策や税関対策、契約にまつわる留意点まで言及している意欲ある編集になっている。
具体的なケースステディ風に、ある架空の企業とその研究開発と知財戦略、経営戦略まで漫画入りで分かりやすく説明しており、この種の本としては異例の工夫をしている。
これは知財を教育する企業の研修などに使用できるいい教材になるし、大学などの教科書代わりにもなるものだ。何よりも、具体的なケースに対応する方法を示している点がユニークであり特長になっている。
企業や各種機関の知財部門は、この本を参考に是非、実のある知財戦略を推進してほしい。また知財を担当してきた人にとっても、この本に書かれている事例を参考にしながらこれからの取り組みをたててほしいと思った。
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