正当性のない政治家が世論を無視する異常な政権与党
2015/07/05
この表は、2015年6月29日付け、日本経済新聞の世論調査結果の報道である。
いま国会で緊張状態になっている安保関連法案に関する国民の考えは、採決を強行しようとする政権与党の考えを真っ向から否定している数字が並んでいる。筆者は長年、読売新聞記者をしてきたが、世論調査でこんな数字が並んだことは見たことがない。
しかもこれらの法制は憲法違反の中で進んでいることは、歴代の法制局長官が表明している。東京新聞の報道が次のサイトで閲覧できる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015062002000118.html
それではなぜ、この法案の成立に気が狂ったように熱心なのか。いま何か日本にとってどうしても必要な法案として迫られている事情があるのか。誰に聞いても「ない」という回答だ。それは、この世論調査結果の数字によく出ている。緊迫した状況があれば、数字は違うものになる。
いまの政治家、政権に与えられているテーマは、経済回復、産業競争力、知財強化制度の取り組み、少子化対策、科学技術創造立国の取り組み、教育制度の課題解決など身近な問題が山積している。それらのテーマに必死に取り組まないで、なぜ緊迫していない安全保障法制に血道をあげているのか。
同じ日経新聞の世論調査で、景気回復を「実感せず」という回答が75パーセントを占めている。これは絶望的な数字であり、これを受けて政治は必死に対応策に取り組むべきである。
安保法制は、安倍晋三氏の個人的な思い入れを実現しようとする思惑にあるに違いないといういくつもの証拠が出ている。憲法改正の発言もよく聞くが、憲法問題を言うなら最高裁が「違憲状態」と判決している選挙制度を真っ先に解決して、日本に真の民主主義を導入し、正当な選挙による多数決で政策を目指すべきである。
安倍氏は、若い人たちとの討論の場で「はっきりいってみっともない憲法だ」と明言している。当時の連合国から押し付けられた憲法という主張である。しかし現憲法を読むと国民主権の民主国家であるべき条文であり、不戦の誓いが条文として明確に出ているのは世界で例がない憲法である。これこそ日本国家の真髄であり誇るべきであって否定することはない。
それを都合の悪いことには取り組まず、喫緊の国民的な仮題にも取り組まず、個人的な政治的思惑を最優先させて必死の形相で強行しようとしている。
自民党、公明党の政権与党の大半の議員も情けない。安倍氏の歓心を買うように、自分たちに都合の悪い報道をする「メディアは懲らしめる」という発言が出ている。都合の悪いものには強権力で押さえつけようとする発想は政治家ではなく幼児の発想である。
憲法で要請されているのは、一人一票実現による正当な国会議員であり、国民主権である。そのような根本的な問題を解決しないで政治ごっこをやっている場合ではない。政権をチェックするメディアの生ぬるい報道はどうしたことか。これにも大いなる責任がある。筆者から見てまともなのは、東京新聞、講談社などいくつかのメディアだけである。
このような政権運営とメディアの態度を許すわけにいかない。一人一票実現運動を主導する升永英俊弁護士の言う市民になって断固として闘うよりない。
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