先月だけで90件余の相次ぐ被害者相談、NHKが報道

8月27日(土)午後7時のNHKニュースで、旧統一教会の被害者相談が急増しており、先月1か月だけで90件余に上っていると報道しました。相談内容に具体的に言及し、20歳代の「宗教二世で元信者」の悩みを語らせていました。

1相次ぐ相談

2相談できなかった

「不安とか恐怖とか憎しみ恨みを打ち明けられる存在がいままでなかった」との告白を紹介しました。さらに安倍元総理の銃撃事件が起きてから旧統一教会が間違っていることが多いと気がついたことも語らせていました。

3間違い

4頑張れ

NHKは、このところ、被害者に焦点を当てて事実を追跡報道しているように感じます。被害者家族の会の副会長が「諦めないで何とかなるので大変だが頑張ってほしい」というコメントを紹介していました。

5何度も相談

また霊感商法で被害者に売りつけた経典などの写真を入れて、旧統一教会のインチキぶりを印象付けていました。新聞(東京新聞を除く)がやらなくてもNHKなど民放テレビ局が頑張って調査報道していると思います。


この夏をしたたかに乗り越える力

元総理が手製の散弾銃で撃たれて死亡する事件をきっかけに、旧統一教会問題がマグマのごとく噴出し、世の中が激しく揺れ動いています。嘘を何とも思わない教養のない人物たちが繰り広げている品性下劣な言動。それに振り回され、被害にあってきた善良な国民。何もかも知っていながら「傍観」してきた一群の無力なメディア。それを知って切歯扼腕する「昭和時代」の年寄りたち。

日本はいま、コロナ、ウクライナ、台湾・中国問題を抱えながら、忍び寄るスタグフレーションの足音におののいています。そして劣化する時代の「覇者」は、なんといっても賄賂をもらって逮捕された五輪組織委員会の理事でしょう。このような悪質で稚拙な犯罪が、日本社会の裏で浸潤していたとは驚きです。

酷暑と集中豪雨とコロナの2022年の夏。ここをしたたかに乗り越え、課題を着実に総括した上で、私たちの時代を作る力を持ちたいと思います。


正体隠しと様子見対応は表裏一体か

旧統一教会で最も許しがたいことは正体隠しです。これは初期の旧統一教会の迷惑活動を取材した体験から染みついた筆者の評価であり、今も変わっていません。正体を隠して善良な市民に接近する手口は、詐欺師と暴力団が代表格です。最初から正体を出して接近すれば、みな逃げるからです。

旧統一教会が立派な教義なら、最初から堂々と正体を名乗り活動を展開すればいいことです。旧統一教会は、信者に献金ノルマを課したり、いったん上納された献金は、返金義務がないとする「合意書」を献金者から取り、返金の請求を放棄させる文書に署名捺印させています。献金後の返金要求を法的に難しくしている手口です。善意に付け込んでカネをむしり取るようなやり方を私たちは、反社会的行為と言っています。

岸田内閣政務3役(大臣・副大臣・政務官)を務める自民・公明の国会議員73人のうち、32人が旧統一教会と接点がありました(NHKニュース)。その内訳は閣僚8人、副大臣11人、政務官12人などになっており、19人は行事・イベントに本人もしくは秘書が出席していました(読売新聞8月25日付け朝刊)。

国会議員は、いまになって接点をもった団体や組織を旧統一教会とは知らなかったなどと釈明しています。そうかも知れません。しかし今後の対応については、あいまいに付け足す言い方をし、国民の非難が強まるにしたがって「党としてもう一段踏み込んだ対応が必要だ」(8月24日の岸田首相)と対応を変えてきました。萩生田政調会長は、あいまいな言い方から「今後は関係を持たない」と言い方を変えてきました(8月24日BSフジ)。これは、国民の批判を見ながら小出しに対応策を変えてきたもので、できたら時間とともにうやむやにしたいとする姑息な考えではないでしょうか。

「正体隠しと様子見対応」。表裏一体の関係に見えてきました。


民主主義の原理を悪用した旧統一教会

「政治は数、それはカネの力」そのような政治哲学を最初に語ったのは岸信介と思います。国会で多数を握っていれば、何でもできる。それを実践したのは岸の実弟の佐藤栄作でした。沖縄返還交渉では密使・密約外交を展開し、「外交の私物化」を押し通して嘘の答弁を繰り返し、返還を自身の手柄にして退陣しました。国会で多数を握っていれば、何でもできる。その有様をつぶさに書いたのが拙著「沖縄返還と密使・密約外交 宰相佐藤栄作、最後の一年」(日本評論社)です。

民主主義は多数決の原理で成り立っています。しかし「政治は数、数は力、力は金」。このように明言したのは田中角栄であり、それを実践した政治家でした。国会で多数を保持していれば何でもできる。その伝統は引き継がれ、国会で嘘八百を語っても数で押し切れる。日本の政治風土が完成しました。政治信条・哲学・倫理は希薄でも、数でなんでも押し通すことができる政治風土を確立したのです。

モリカケ・桜を見る会の一連の事件は、国会で多数であればなんとでもなることを示してくれました。そのためには、票が必要だ。そのためには、カネと人手が必要だ。それが政治家の最大の望みになっていきました。カネと人手-その望みを叶えてやるのが、旧統一協会の戦略でした。カネは霊感商法で掻き集めてヤミ献金する。人材はマインドコントロールして信者に取り込んだ中から、資質の高い信者を政治の現場に送り込んで役立たせる。その代償として旧統一教会は政治からの庇護を受ける。この見えない糸で結ばれたギブアンドテイクが旧統一教会と政界を結んでいる全体像ではないでしょうか。

直近5年間だけでも被害相談は500件以上、総額54億円の相談が全国霊感商法対策弁護士連絡会にきています。そういう団体と付き合っている政治家は反社会的活動にくみしていることになり、絶対に許せないと私は思っています。


国葬に反対か賛成か。8月12日現在の主な世論調査結果です。
岸田内閣の旧統一教会への対応を聞いたところ、不十分だという認識が過半数を超えています。特に日本経済新聞社の調査結果では76%が「不十分」と回答しており、これは旧統一教会と政界との癒着を絶対に許さない、総括せよという国民の声と思います。
シェアしていただけると、認識が広がると思います。
写真8月12日世論調査
 

安倍銃撃死事件の容疑者を精神鑑定する狙いは何か

奈良地検は安倍元首相を殺害した山上徹也容疑者の精神鑑定を行うため、6月25日から11月29日まで長期間の鑑定留置を行っています。「刑事責任能力の有無を調べるため」と発表していますが、本当にそうでしょうか。検察当局(国家権力)の思惑による鑑定留置ではないかと筆者は疑っていました。

かつての事件記者の体験から見ると、この判断は奈良地検→大阪高検→最高検→法務省→国家権力と縦に上っていった結果出てきたことは疑いようがありません。この刑事事件は、事件勃発直後から日を追うごとに国策捜査の範疇に入ることを感じ取っていました。

「元首相・旧統一教会・反社会的活動・選挙活動と政治献金」などの関係が、週刊誌・テレビ番組・ネット情報などに洪水のように流れ出し、加えて夜回り取材で出てきた容疑者の供述内容が次々と露出してきました。

この中で「おやっ」と思ったことは、山上容疑者の旧統一教会に対する恨みと安倍元首相銃撃とは「直接的に結びつかない」ような当局の判断もしくは思惑が流れ出してきたことです。「銃撃死事件」と「旧統一教会と安倍元首相」とは、直接的に結びつかないように、国家権力が「苦慮」しているように見えてきたからです。山上容疑者の銃撃は、安倍元首相と旧統一教会が関係あると「思い込んだ」ための隅発的事件であったことへ導こうとしているように感じたのです。

これは思想・主義・信条・党派とは関係なく、確定事実に拘泥する記者活動の基本をやや超えた、社会部記者時代のカン(勘)から出てきたものでした。そう思った根拠を上げます。

1. 国葬前の起訴を避けたのではないか

刑事訴訟法256条(起訴状、訴因、罰条)3及び4には、罪となるべき事実を特定すること、適用すべき罰条を示すこととあります。国葬前に起訴すれば山上容疑者の犯行動機に「もっともな理由がある」との印象を国民に持たせるリスクがあります。これでは国葬反対が燎原の火のように広がって収拾がつかなくなる恐れが出てきます。その責任は国策捜査のやり方に穴があったからだとの指弾を権力側から受ける可能性が出てきます。これを避けるため、国葬前に起訴しない時間稼ぎを現場の検察当局は考え出したのではないでしょうか。

2. 奈良県警・地検の調べに任せていると、容疑者の供述内容が激しい取材競争の中から外部に漏出します。すると容疑者の犯行動機に、それなりの「妥当な理由」を印象付ける可能性があります。これを断つために鑑定留置を決行して、完全にメディア取材から「隔離」する方法をとったのではないでしょうか。鑑定留置後には、山上容疑者の供述内容はもとより、調べの様子も全く外部に出てくることがなくなりました。

3. もし鑑定の結果、精神に異常があれば当局が管理する医療機関などに隔離されて、この事件の真相は永久に闇の中に沈んでいく可能性があります。そのような思惑を秘めているとは考えたくありませんが、可能性はゼロではありません。

ジャーナリストの良心に従って、あえてこのような論評を発信します。


旧統一教会の反社会的活動の実態報道を始めたNHK

7月29日夜7時外国FCCJ2

NHKが最近、旧統一教会の反社会的活動を報告するニュース報道を視聴者の多い朝と夜の番組で放映を始めています。新聞の全国紙(東京新聞を除く)よりも、旧統一教会への厳しい批判姿勢になってきたことを評価したいと思います。

さる7月27日の夜9時からのニュース・ウオッチ9では、旧統一教会信者の家族がその被害を語り、特定政治家を支援してきたことを語っていました。被害者を支えてきた全国霊感商法対策弁護士連絡会の山口広弁護士も、反社会的活動を展開する旧統一教会の組織的運動を語っていました。

7月29日の夜7時からのNHKニュースでは、被害者を支えている弁護士グループが外国特派員記者クラブで会見したことを長々と報道しました。名称を旧統一教会から世界平和統一家庭連合と変えたあとも被害は続いており、直近5年間で500件以上の霊感商法などの相談があり、総額54億円余の被害額を発表していました。また政治家とのつながりを指摘し、安倍氏銃撃事件は、決して許されるものではないが、旧統一教会の悲惨な被害実態を改めて強調するという会見内容を報道していました。

NHKがこうした理不尽な旧統一教会の活動が今でも続いていること、政治家とつながりがあるという問題意識を報道したことを評価します。

新聞はあり余る情報を整理した「調査報道」をシリーズでやるべきと思います。


NHKのゴールデンタイムで旧統一教会と政界の「癒着」を放映

8月5日午後7時からのNHKニュース番組で、旧統一教会の反社会的活動の実態と政界との「癒着」について、長々と問題提起をしました。

まず小林経済安保大臣、石破元幹事長らが旧統一教会とかかわっていたことを放映しました。続いて、旧統一教会から2015年6月に名称変更した後、霊感商法や献金強要による被害が広がったのではないかと語り、文化庁が名称変更を承認した手続きに問題があるのではないかとの問題意識を示しました。

その際、承認を進める役割をしたと言われているのが、当時の下村文科大臣です。前川喜平・元文科事務次官が「下村さんの意思が(名称変更承認に)働いていたことは100%間違いない」と証言したことを放映しました。これらに対する自民党議員側の言い分も簡単に語らせていますが、これはメディア報道の「ルール」であり、一方的にならないように形式的に配慮したものです。

NHK報道が、旧統一教会と政界の癒着とその問題点を、正確に指摘したニュースであることは間違いありません。筆者は、どちらかというとNHK批判派でしたが、旧統一教会報道に関しては、国民に真実を伝えようとする姿勢が見えており、評価を変えています。これからも期待したいと思います。


民主主義の原理を悪用した旧統一教会

国会で多数決を保持すれば、なんでもできる。政治哲学や政治倫理が希薄でも、「多数」を政治のすべての論理として位置づける。そのためには、票が必要です。そのためには、カネと人手が必要です。それが日本の政治現場の最大の望みです。カネと人手。その望みを叶えてやる。それが統一協会の戦略でした。

そのためのカネは、霊感商法で掻き集める。人材は、マインドコントロールして信者に取り込んだ中から、資質の高い信者を政治家のもとに送り込んで役立たせる。これが、全体像ではないでしょうか。

角栄は常々「政治は数、数は力だ。そして力は金だ」と言っていた。これは、金と力は有権者の要求に応えるための手段だ、という意味。「目白詣で」と呼ばれていたエピソードがそのことを裏づける。

民主主義の原理を悪用した旧統一教会

「政治は数、それはカネの力」そのような政治哲学を最初に語ったのは岸信介と思います。国会で多数を握っていれば、何でもできる。それを実践したのは岸の実弟の佐藤栄作でした。沖縄返還交渉では密使・密約外交を展開し、「外交の私物化」を押し通して嘘の答弁を繰り返し、返還を自身の手柄にして退陣しました。国会で多数を握っていれば、何でもできる。その有様をつぶさに書いたのが拙著「沖縄返還と密使・密約外交 宰相佐藤栄作、最後の一年」(日本評論社)です。

民主主義は多数決の原理で成り立っています。しかし「政治は数、数は力、力は金」。このように明言したのは田中角栄であり、それを実践した政治家でした。国会で多数を保持していれば何でもできる。その伝統は引き継がれ、国会で嘘八百を語っても数で押し切れる。日本の政治風土が完成しました。政治信条・哲学・倫理は希薄でも、数でなんでも押し通すことができる政治風土を確立したのです。

モリカケ・桜を見る会の一連の事件は、国会で多数であればなんとでもなることを示してくれました。そのためには、票が必要だ。そのためには、カネと人手が必要だ。それが政治家の最大の望みになっていきました。カネと人手-その望みを叶えてやるのが、旧統一協会の戦略でした。カネは霊感商法で掻き集めてヤミ献金する。人材はマインドコントロールして信者に取り込んだ中から、資質の高い信者を政治の現場に送り込んで役立たせる。その代償として旧統一教会は政治からの庇護を受ける。この見えない糸で結ばれたギブアンドテイクが旧統一教会と政界を結んでいる全体像ではないでしょうか。

直近5年間だけでも被害相談は500件以上、総額54億円の相談が全国霊感商法対策弁護士連絡会にきています。そういう団体と付き合っている政治家は反社会的活動にくみしていることになり、絶対に許せないと私は思っています。


初期の旧統一教会を取材 

初期の旧統一教会を取材 写真花の押し売り

1970(昭和45)年1月29日の読売新聞夕刊社会面トップ
筆者が世界基督教統一神霊協会(統一教会)の初期の街頭活動を取材したのは1970年1月でした。当時、読売新聞社会部の警察担当をしているとき、都内の主ターミナル駅でカンパを装った「花の押し売り」を取材し、その異常な行動を取り上げました。


「ダニのような ヘビのような」しつこさを語った記事を読んでください。当時の警視庁もその異常ぶりを認めて、道交法違反として摘発する動きを見せました。
筆者は、当時の統一教会関係のリーダーであった笹川良一氏を追いかけ、大阪出張中のホテルで捕まえ、電話で取材しました。笹川会長は「そのような迷惑な活動は許しがたい。すぐにやめさせる」と強い調子で語りました。


驚いたことに翌日から、都内の繁華街で活動していた統一協会の花の押し売りは、一人もいなくなりました。警視庁も驚いていました。その後、別件で笹川会長にほんの短時間会った際に、正義感のある人物のように感じましたが、主義・信条まではわかりませんでした。


統一協会はやがてマインドコントロールで信者を増やし、霊感商法など反社会活動へとエスカレートしていきました。
筆者はその後、別のテーマの取材で忙しく、統一協会のことなどすっかり忘れていましたが、ほぼ20年後に霊感商法の被害者と偶然に出会い、統一協会の反社会活動のあらましを知って驚愕しました。


「花の押し売り」時代から、統一教会は警視庁からもマークされる団体だったのです。それが名称を変え、活動が地下に潜っていきましたが、実態は不条理な「カネ集め」であり、その多くが政界工作資金として国会議員に流れていきました。


安倍元首相の銃撃事件をもとにして、その反社会的活動の全貌が姿を現してきています。今度こそ、実態を解明し、多くの被害者を救済しなければなりません。筆者は社会正義とジャーナリストの立場から、自分のできることをいま考えています。断固としてやりたいと思います。