PEACE BOATで世界一周の旅ーその57
2024/07/22
空き家を改装してびっくりさせた中日ご夫妻
船には中国、韓国、台湾、シンガポール、インドネシアなど多彩な国籍の方が乗船しています。その中でもユニークな日中友好活動をしている中国人と日本人のご夫婦に出会い、それをどうしても報告したくなってアップすることにしました。
ご夫妻は同い年の68歳で上海市出身の陸建洛さんと西宮市出身の濱田裕子さんです。陸さんは、香港と中国の合弁大手港湾管理運営会社の技術スーパーバイザーを務めた方で、奥様は神戸市外国語大学中国語学科を卒業後、通訳翻訳業に入り、全国通訳案内士の資格を持っています。
2人は1995年に結婚し、上海と西宮を拠点に日中間を往復しながら、日中の文化交流で精力的に活動しています。その延長線上でやっているのが、趣味の空き家改装です。完成した「新築空き家」をギャラリーや憩いの場として人々に無料で開放することで社会貢献にもなっています。PEACE BOAT乗船をきっかけに、憩いの場を「ピース ホーム」と名付け、さらに交流の輪を広げています。
朽ち果てたモデルハウスを新品同様にする
1970年代に阪急不動産のモデルハウスとして売り出した欧風3階建て、1階コンクリート、2,3階鉄骨構造の瀟洒な邸宅がありました。しかし家主が売りに出したときは、20年以上も使用していなかったのか家全体が朽ち果て、誰も買い手がなく2022年12月、陸さんが480万円で買い取りました。
買い取った邸宅は、見るも無惨に朽ち果て、屋敷も荒れ放題になっていました。
陸さんは、農業と港湾労働者をしながら独学で様々な技術を学び、1991年の第2回世界青年発明コンクールで金賞を授与されるほどの才能のある方です。つまりモノの成り立ちを考えたり、構造を調べるのが得意であり生来、創造性に富んだ器用な方なのです。
元通りの瀟洒な邸宅にするために専門業4社に見積もりを依頼しましたが、どの会社も改修は不可能と言ってきました。最大の問題は急勾配の屋根にありました。
そこで陸さんは、自分で元通りに改修することを決心し、まず朽ち果てた家・屋敷の後片付けを始めました。可燃ゴミだけで45Lのゴミ袋が1500個以上、粗大ゴミは2tトラックに冷蔵庫4台、洗濯機3台、エアコン4台などを積み込み、ゴミ処理場に運びました。
一番苦労したのが、業者も尻込みした急勾配の屋根の修復でした。ハシゴを3つつないで作業場にのぼり、命綱をつけ、滑り止めの靴をはき、急勾配の屋根の修復に1人で取りかかりました。家の中の廊下、壁、天井、引き戸、襖、障子などは、ネットのオークションでできるだけ元のものと同じような材質を見つけて購入して取り付けていきました。
あの朽ち果てた邸宅が、このように生まれ変わりました。
室内もこの通りピッカピカになりました。
1年かかって新築同様に改修完成
途中で上海に行ったりして留守にしましたが、前後合わせると正味ほぼ1年間で8室の改修を完成させました。周辺の民家に迷惑がかからないように電気工具類は一切使わず、手作業でやり遂げましたが、元の家主が見に来たときは、腰を抜かさんばかりに驚いていたそうです。筆者は数々の写真を見せられただけでも腰を抜かしました。
少子高齢化社会を迎えて、日本ではいま全国で約20%の住宅が空き家状態です。これを安く買ってリニューアルすれば、自分の持ち家として活用できるし再販すればビジネスにもなります。陸さんは、いまの時代は空き家再生がビジネスになるチャンスであることを社会に訴えていくと言います。
日中草の根美術・芸術交流でも実績
陸さんの活動の本体は、中国友好のための書画、芸術品の展示会などのイベント活動です。先の改修した邸宅を公開して展示コーナーとして使用したり、宿泊施設としても利用しています。陸さんが長年集めてきた中国の絵画、書道などの作品は数千点にのぼり、それを展示したり、ご夫婦で各種のイベントなどにも積極的に参加して日中の芸術交流を通じたイメージ向上に取り組んできました。
中国の書画展は定期的に開催し、広く知られるようになっていきました。こうした活動が注目を集めて新聞・雑誌で紹介されたり、神戸港開港140年記念イベントに招待されて展覧会を開催しました。中国のイベントでも紹介され、「地球の歩き方」にも掲載されるなど、いまや有名人になっています。
陸さんは何でも独学で学ぶことが好きで、上海の独学キャンペーンでは、10年連続個人優秀賞を授与され、また「上海独学者の星 ベストテン」にも選出されました。裕子さんも、中国語に堪能な才能を活かしながら日中文化交流を展開しており、ご夫妻のユニークな活動はますます広がっていくでしょう。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。