PEACE BOATで世界一周の旅ーその55
2024/07/18
劣化し続ける国家と組織を講演
PEACE BOATの自主企画講演会は、今回が9回目となり、最後になりました。この講演テーマは、構想研究会でもたびたび筆者が強調してきた日本の国家と組織の劣化です。立法・行政・司法はもとより企業や様々な組織も劣化していると感じてきました。
PEACE BOATに乗船してから、様々な乗船客とこのテーマで話をする機会がありましたが、例外なく皆さんは同じ意見でした。「日本は確実に劣化している」。そこで最後に、このテーマで講演することになり、会場には200人以上の方が来てくれて熱心に聞いていただきました。
GDPやイノベーション競争力、教育への投資、科学技術投資など主なテーマで国際的な比較を見ると、この25年間、日本は着実に下降線をたどっています。特に安倍内閣から以降は下降線の一途です。さらに近年の円安は、直近でやや円高に振れているもののトレンドでは今後も円安に推移すると筆者は推量しています。
なぜ、こうなったのか。円安が企業の決算に好結果をもたらし、空前の企業収益黒字を計上しています。製造業で持っている国が、円安で儲かっています。儲かったカネは内部留保で備蓄しています。その内部留保額は、日本の国家の予算のなんと2年分と推測されています。
国家の財政は借金だらけで、後生にこのツケを回しています。国家はさびれ、企業だけ潤っている。このような現状を国民はどう理解すればいいのか。
アベノミクスを総括できない
安倍政権以来の劣化は、様々な数字で明らかです。ひところアベノミクスという経済政策で期待感を抱かせましたが、当時から疑問視する経済学者やそれを報道する経済誌がありました。失敗だったという講演を構想研でもしていただきました。
しかしその総括がきちんとされていません。日本は、歴史的な事実をしっかりと残し、その教訓を学ぼうとしていません。沖縄返還の密使密約外交が典型的であり、アメリカの公文書公開、日本の密使になった学者の暴露本、それを裏付けるアメリカの数々の文書などがあっても、国家としては未だに密約はなかったということにしています。国民はもっと真摯に歴史と政治に向き合わなければなりません。
教育現場の劣化は、構想研創設25周年記念シンポジウムでも取り上げました。安西祐一郎先生は、「1000人の海外留学生計画、5年間で1500億円」という衝撃的な提言を発表しましたが、これも講演後の聴者からの感想の中で、共鳴者が多数いました。
また、一人一票になっていない現実をアメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどと比較したデータをしめしました、日本を除いてはすべて一人一票になっていますが、日本だけ、少数の得票率で多数の議員を獲得しているいびつな状況を示しました。これにも多くの共鳴者がいました。
司法の劣化は、たびたび筆者が公言してきましたが、特に行政訴訟ではまず勝てない現実。裁判所は国会と行政に寄り添う判決を出して、本来の役割を放棄している現実を語りました。
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