PEACE BOATで世界一周の旅ーその30
PEACE BOATで世界一周の旅ーその32

PEACE BOATで世界一周の旅ーその31

憧れの巨大な遺跡列岩を見に行く

船が寄港地に寄る時間は1日か2日と決まっています。イギリスはロンドンから40キロの距離にあるテムズ河口のティルベリー港に接岸して2日滞在し、上陸して見物する10本のツアーが用意されていました。その中から1つだけ選ぶのは相当に迷いますが、1泊2日でストーンヘンジ(stone henge)に行くツアーに参加しました。

初日のロンドン観光は、前回書きましたが記録的な大規模デモの規制を受けてほぼバスに缶詰状態。2日目は早朝からバスに乗り込み、ひたすらストーンヘンジに向かって走ります。前日はバスに閉じ込められて終わった反動もあり、広々とした平原と羊たちの群れを飽かずに見ていました。

突然、眼に入ったのは平原の彼方にうごめく一本の線でした。あれは何だろう。アリの行列のように何かに向かってうごめいています。その先端まで追いかけてみると、そこに大きな岩石のようなものが点々と見えます。筆者はあっと心で中で叫びました。ついに来たのです。ストーンヘンジの独特の形が並んでいます。長い間、実際にこの眼で見たいと思い続けてきた憧れの巨大な岩石遺跡です。

すと2長い人の列が巨大遺跡群につながるように尾を引いていました。

シャトルバスで至近距離まで接近して見学

バスは遺跡から遠く離れたセンターに着き、そこからシャトルバスに乗り換えてストーンヘンジまで運ばれていきます。この巨大な岩石遺跡に筆者が注目したのは、少年時代でした。いまから4500年も前に、なぜにしてあのような巨大岩石を人々が組み立てたのか。少年雑誌に特集として写真入りで掲載されていました。その雑誌のことは大人になってもしばらく思い出すことがありました。

構成する何十トンという巨大な岩石は、数十キロ離れた山地から運んできたものです。先史時代に誰が何の目的でこの平原まで運び、組み立てたものなのか。野の原の中に屹立する岩石の構造体を筆者はいま見ようとしています。わくわくするうちに、それが眼前に現れました。

ストーンヘンジ見学は、遠巻きに一周するようにコースが出来ており、歩いてほぼ1時間で終了します。筆者の記憶では、1963年にイギリスの有名な天文学者、ジェラルド・ホーキンスが「ネイチャー」に論文を発表し、この遺跡岩の配置は、天文学的に考えたものであり、月と太陽の位置関係を配慮したもので日食を予測していたというものでした。

しかしこの見解もその後、否定的に見る研究者が現れており、この遺跡岩の配置と存在の意味は、まだ何も確定していません。しかし、遠隔地からこの平原まで人力だけで運び、それを組み立てていまの状態にした意味は何か。不可思議を超えて際限なく人間の才知を感じさせます。

ストーンヘンジをバックにした写真は、長い間筆者の憧れでした。人類の英知と力量を感じるからです。

スト1見る角度によって容貌が変わる遺跡群像

現場を一周して分かったことは、見る角度によってストーンヘンジの光景が変わっていきます。つまりストーンヘンジの容貌が変わるのです。だから私たちがさまざまな写真で見ている遺跡岩は、皆違う光景であるはずです。

一周するようにコースを作ったのは、その全貌を見て欲しいという配慮からでしょう。しかも10メートルにも満たない至近距離から見る位置にも行くように、作ってありました。その地点には幾重にも人の輪が広がりました。

数メートルの距離になるとその存在感が、あたりを払うように押し寄せてきました。

すと4写真で見るようにすぐ近くで手で触れるくらいの距離に来ると、圧倒的な質量感が迫り、この岩を「屋根」まで載せて作った先史時代の人たちは何を考えていたのだろうかと思わずにいられませんでした。屋根に当たる平らな岩石と、それを支える2本の岩柱との接点には、落下を防止するちょうつがい構造で固定されているというのです。

手で触れるくらいの距離から飽かずに観察する機会に感動しました。ゴツゴツした岩の構造物が、後生の人間に感動を与えるだろうと彼らが考えたことはないでしょう。しかしこれをつくった人たちは、現代人と同じような英知を備えていたでしょう。

すでにマンモスは滅び、現世の動物とほぼ同じ種に置き換わっていた動物群を追い求めていたクロマニヨン人たちは、私たち農耕民族とはまた違った価値観の中で独自の狩猟民族文化を築いていったに違いありません。

帰り際、ストーンヘンジに別れを告げようとしたとき、ある角度に気がつき、急いで回って撮ったのがこの写真です。

正面3
この角度で見た遺跡構造体が最も整っていると思ったからです。これこそストーンヘンジの正面から見た顔ではないだろうか。これをつくった一群のリーダーも、同じ思想で完成させたのではないだろうか。そういう思いを巡らせながら、撮影してきたスマホの写真を繰り返し眺めては、帰りのバスの席に埋もれていました。

さらばストーンヘンジ。もう二度と出会うことはないでしょう。しかしそれらは筆者にとって、永遠の輝きを宿して決して消えることない顔貌を心のひだに刻みつけたのでした。

コメント

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楊 威

良い天気でよかったね!前日の写真を見ると怒涛の黒い雲が今でも雨を落としてきそうで、ロンドンだなと思いました。

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