PEACE BOATで世界一周の旅-その15
2024/05/10
アフリカ南東部の大都市ポートエリザベスに接岸
セーシェル島からインド洋を南下すること5日間。茫洋として海を毎日見続けていましたが、アフリカの最南端に近いポートエリザベスの遠い影が見えてきたときは、ついにアフリカに来たという実感が沸いてきました。現役時代、一度だけ生きている化石魚と言われるシーラカンスの取材でアフリカ沿岸に行くため、何種類もの予防注射とワクチンを打って準備していたことがありました。直前にビザの関係で中止になって以来、アフリカに行く機会がありませんでした。
ポートエリザベスは、近年、観光都市として急速に開発されており、動物保護区や国立公園が整備されている都市です。港に接岸すると、おびただしい乗用車が整然と並んでいることに度肝を抜かれました。それは南アフリカ共和国(南ア)から輸出される自動車であり、この国はアフリカでも随一の工業国でもあることを思い出しました。
余裕ある風情を感じた実物の動物たち
接岸した翌日は、港町を散策して様子を見ましたが、最大の楽しみは動物保護区の見学でした。翌日朝早く、船からバスに乗り換えて1時間半、目指したプンバ・プライベート・ゲーム・リザーブ(Pumba Private Game Reserve、ここでは ブンパ動物保護区と表記)は、総面積7千ヘクタールという途方もなく広い動物保護区でした。バスを降り、ドライバーをいれて10人乗りの4輪駆動の大型ジープに乗り換えました。
洒落たロッジ風の建物から出てみると、背の低いブッシュが生い茂る起伏の富んだ丘稜地が際限なく広がっています。樹高の高い樹木はなく、四方八方見晴らしのいい丘陵地帯です。
私たちの眼前に最初に出てきたのはイボイノシシでした。見る間にヌーが出て、シカ類が出てきました。いずれもテレビの番組で見た動物たちですが、図鑑も持ち合わせていなかったので正確な種名は分かりません。
そこへいきなり、ブッシュの陰から大型のサイが2頭出てきました。おお、という歓声が沸きましたが、サイは何事もないように草をはんでいます。動物園で見るサイよりもずっと大型に見えているのはなぜなのか。動物園のサイよりも大きいわけがありません。そり上がった見事な角が大きく見せているのでしょうか。
ドライバー兼案内人によると、サイは眼の機能が低く耳と鼻が優れているそうで、地面の草しか食べないということでした。ジープからの距離は20メートル程度で、確かに地面の草だけ食べている様子を飽きるほど見せてくれました。
ゾウが出てキリンも出てきた
ジープは、うねうねと不規則に続いているでこぼこ道をゆっくりと進んでいますが、左右、見晴らしのいい景観なので同乗者はみな、左右を見渡しているのですが、ゾウが出てきたのは、すぐ近くのブッシュからでした。
巨像という言葉がありますが、やはり大きく見えます。数十メートル先で灌木の若い葉を鼻でうまくたぐり寄せてゆっくりとはんでいます。アフリカ象の誇る大きな耳をパタパタとあおりながら、悠然と枝葉を食べている姿は、動物園では味わえない生活の余裕らしさが見えています。彼らは餌を食べることが仕事ですが、この地では際限なく餌が広がっているのですから、余裕があるのは当たり前という野暮なことを思ったりしたとき、やにわに「キリンだ!」という同乗者の声に、ジープはゆったりとその方向に動き出しました。
キリンもでっかいなあというのが第一印象です。この丘陵地では、キリンの首を超える樹木はほとんど見当たりませんから、彼らが一番目立っているのでしょうか。見物していると、どこからともなくシマウマが紛れ込んできました。数頭のシマウマが眼前を横切っていく風景は、アフリカに来たという満足感で満たされます。
肉食獣は出てこなかった
動物保護区とはいえ、やはりお目当ては百獣の王ライオンのお出ましです。これだけ草食獣がいるのですからライオン、ヒョウ、チータなど肉食獣が出てきて眼前で狩りが始まる、というのはテレビの話です。僅か2時間余の見学には無理というもので、それは分かっていても、ライオンが出てこないかなあと思いながら「見えない?」、「いない?」などと言いながら四方に眼を走らせるのも楽しいものでした。
見学ジープがあちらこちらと走り回っているとき、路上に近い場所で一頭のシマウマがたたずんでいました。微動だにしない姿勢でこちらを見ています。ジープがすれすれの距離を過ぎても動きません。みな「かわいいねえ」などといいながらこのシマウマを眼で追っていました。
ジープが反転して方向を変えたとき、筆者はこのシマウマの左の臀部あたりを一瞬だけ見る機会に恵まれました。その尻のあたりに茶わんくらいのサイズで赤い肉色をした部分が見えました。怪我をしていたのです。見るからに痛々しい肉をさらした色です。この平原でこのような怪我は、肉食獣に襲われときに受けたものしか考えられません。ジープは方向を変えてしまったので、筆者ともう1人の女性以外は誰も見ることができませんでした。
あのシマウマはどうしただろうか。筆者はこの日ベッドに寝付こうとしたとき、しきりにあのシマウマのことを思い出していました。無事に生き延びることができるだろうか。アフリカの大地で出会った動物たちの光景の中で最も印象に残ったものでした。
サファリのロッジで食べたランチはフルコースが準備されており、
美味しい料理に大満足でした。
この保護区に生息している哺乳類だけでも47種もいるというのです。私たちが見たのはそのうち10種程度でしょう。ヘビやトカゲ、カメなど14種類がいるし、鳥類に至っては100種類を超えているということでした。
PEACE BOATが用意しているサファリツアーは8つありました。筆者はそのうちの1つを見ただけなので、他のコースに参加した人たちは何を見たのか。ライオンやカバやチータを見たという幸運に出会った人が出たかもしれませんが、いずれ長旅の合間に聞こえてくるでしょう。
いつもまるで旅行しているような気持ちで読んでいます。今回特にサファリの記事はもっとも良く書けていると思います。文筆家です。目で見た様子だけでなく、作者の心の揺れが感じられました。また、写真を見ると、シニアがあまりおらず、比較的若い人が多いようです。乗船客はほとんどがシニアであるはずですが。なぜ?
投稿情報: 寺さん | 2024/05/12 07:39