2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智先生が、特別講演を行いました。大村先生は「私の研究 いま」のタイトルで、これまでの研究人生を振り返りながら、ご自身の研究業績をめぐる最近の動向を分かりやすく講演し、感銘を与えました。
大村先生はまず、八木沢行正先生の助言から米国留学を志し、ウエスレーヤン大学に客員教授として招かれたいきさつを語りました。マックス・ティシュラー教授との出会いが運命を変えていったドラマを紹介しました。
帰国後の研究は、土壌を採取してスクリーニングし、新しい化学物質を発見する手順を説明、これまで新化合物493個を発見しその中でも重要な化合物を26個発見したと報告しました。
中でもスタウロスポリン、ラクタシスチン、セルレニンなど重要な物質について発見からいま、どのように研究が発展しているかを報告しました。スタウロスポリンは、発見9年後にプロテインキナーゼCの阻害剤であることが発見され、抗がん剤の創薬に応用する道が開けました。慢性骨髄性白血病、非小細胞肺がんなどの薬剤として応用されるまでになったと解説しました。
またノーベル生理学・医学賞を受賞したハーバード大学のコンラッド・ブロック博士やノーベル化学賞を受賞したエリアス・コーリー博士とのドラマチックな出会いから発展した共同研究など興味あふれる話を語って聞かせました。
ノーベル賞受賞につながったオンコセルカ症の特効薬のイベルメクチンについても、発見からメルク社との共同研究のあり様を語り、犬のフィラリア症、人間のリンパ系フィラリア症、糞線虫症、疥癬の特効薬にもなったことを報告しました。
オンコセルカ症の流行地のアフリカへの視察を報告し、悲劇の現場を見て愕然としたことを語りました。
大村先生の講演は、極めて専門的な内容であっても創薬や疾病の話を織り交ぜながら興味あふれる内容であり、聴衆を引き付けました。
最後に大村先生は、研究人生は人との出会いでありそれが自身の研究発展につながったことを語り、茶道の一期一会の精神が研究にも必要であるとの見解を披露して締めくくりました。
終了後、21世紀構想研究会の生島和正理事から感謝の花束贈呈がありました。