シダックス55年史「志魂の道」(シダックス社史編纂委員会、河出書房新社)
自民党の知的財産戦略調査会の小委員会で陳述する

沖村憲樹さんの中国の国際科学技術協力賞受賞の祝賀会

  1CIMG1817
 中国の「国家国際科学技術協力賞」を授与された沖村憲樹さん(JST特別顧問、さくらサイエンスプラン推進室長)をお祝いする会が、3月8日、東京・一橋の如水会館で開催された。

 祝賀会の発起人は、尾身幸次(STSフォーラム理事長、元財務大臣)、高村正彦(衆議院議員、自由民主党副総裁)、有馬朗人(武蔵学園学園長、元文部大臣、元東京大学総長)、土屋定之(文部科学事務次官)、濵口道成(科学技術振興機構理事長、前名古屋大学総長)氏であり、沖村さんの広い人脈を物語るように、政官界、学界などから多くの人がお祝いに駆けつけ、行政官として異例の受勲を受けた沖村さんをお祝いした。

 今回の受賞はブログでも紹介してきたので、賞の内容や受賞の意味については繰り返さない。ここでは、出席者に配布された沖村さんのお礼の言葉と一緒に入っていた、中国の科学技術の動向について触れたい。

 というのも、沖村さんは早くから中国の発展を予想し、これからの日本は、中国の科学技術研究と協調してアジアや世界の発展に貢献することが重要であるとことあるごとに主張してきた。

 科学技術は、イデオロギーを超えて人類の福祉に貢献できるものであるから、中国と共生できるというのが沖村さんの考えである。

 その考えを出席者に伝えようと配布されたのが、この日の「引き出物」の文書であり、折りたたんだ大きさは内ポケットに入るように工夫されていた。そのさわりの部分を紹介したい。

急進的に拡充する中国の大学・研究現場

 2013年の日中の大学数を比較すると中国が4745校に対し日本は1141校である。大学生と大学院生の合計は、中国が1674万人に対し、日本は282万人であり、日本の約6倍である。当然ながら高等教育への投資額も27兆円以上であり、日本の8兆7000億円の3倍以上である。

 人口比は中国の方が10倍以上多いから、この程度の差は当然だという意見もあるかもしれないが、中国政府は重点大学を選択的に指定し、そこへ集中投資する戦略を展開している。

 1993年に指定した「211工程」は、世界的レベルの大学を目指すように112大学を指定し、重点的に投資してきた。

 1998年に当時の江沢民主席が提唱した「985工程」では、ハーバード大学、オックスフォード大学並みの世界一流の大学を目指すように39大学を指定している。最先端の研究設備や機器を備えた世界トップクラスの研究型大学の構築を目指したものだ。

 実際に中国の大学を訪問するとその規模の雄大さと勉強や研究に取り組む学生のエネルギーに圧倒されることが多い。中国から出ていく外国留学生は年々増えており、受け入れる留学生も急増している。

 次の表は、2011年の米国大学院博士取得者数である。世界中で優秀な中国人留学生が活躍している。

国名

博士号取得者数

1.中国

3978人(29%)

2.インド

2161人(15%)

3.韓国

1442人(10%)

8.日本

243人(2%)

 

 独特な中国のサイエンスパーク

 中国の大学にはサイエンスパークという独特の産学連携システムがある。主要94大学のサイエンスパークの総売り上げは7794億円である。中国を代表する清華大学のサイエンスパークには、世界中のトップ企業が集まっている。

 また大学が企業を経営しているのも中国流である。これを校弁企業と呼んでおり、北京大学の校弁企業の方正集団有限公司の売上高は、OECDの購買力平価計算によると1兆7703億円であり清華大学の同方股份有限公司は、9892億円である。

 中国の552の大学が5279のベンチャー企業を保有している。

 中国にはこのほかに世界に類をみないハイテクパーク政策があり、国家だけでなく地方政府や自治体の下で2000以上のハイテクパークが活動をしている。

 原子力、宇宙、海洋開発などビッグプロジェクトはすでに先進国に追いついており、きわめて高水準の観測衛星を多数打ち上げている。2012年には、「神舟」9号(3名の宇宙飛行士)は、「天宮1号」にドッキングすることに成功。2020年には、中国独自の宇宙ステーションを完成させるという。

 研究開発費も急激に伸びており、この13年間に6倍以上の伸びを示し、すでに日本の金額の2倍の開発費の総額になっている。

 

2000

2013

5.1兆円

35兆円

16.3兆円

18.1兆円

 論文数でもすでに日本を抜いて米国に次いで世界で2番目である。被引用トップ10パーセントの論文数も世界2位である。特許出願件数はすで米国を抜いて世界トップ。その急増ぶりは驚異的である。

 日中の科学技術投資金額の歳出割合を見ても、中国の大胆な戦略が見えてくる。

中国財政歳出(2013年 兆円)

 

日本財政歳出(2013年 兆円)

1.教育支出

65.1

18.0%

 

1.文教及び科学

5.4

5.8%

2.科学技術支出

15

4.1%

 

2.公共事業

5.3

5.7%

3.国防費

21.9

6.1%

 

3.防衛

4.8

5.1%

4.公共安全支出

23

6.4%

 

4.社会保障

29.1

31.4%

5.社会保障と就業費

42.9

11.9%

 

5.地方交付税交付金

16.4

17.7%

6.文化体育とメディア

7.5

2.1%

 

6.国債

22.2

24.0%

     ・

     ・

     ・

     

7.その他

9.4

10.2%

歳出総額

361.5

100.0%

 

歳出総額

92.6

100.0%

  この比較表でショッキングなのは、中国の教育支出割合が突出しているのに対し、日本が突出しているのは社会保障費である。

 安倍自民党・公明党の連立政権は、憲法改正を目指して躍起となっているが、日本の将来像を描く政治哲学は国民に見えない。大体、科学技術創造立国を国是としている日本が、未来の投資である科学技術予算に投与していないし、人材育成の教育に対する政策にも無関心のようだ。

 この日の祝賀会で祝辞に立った有馬朗人・元文部大臣・東大総長は「このままでは日本は滅びる。いまこそ国家の未来を考えなければならない」と声を張り上げて自説を訴えた。

 沖村さんは、中国の科学技術の実態を知ってもらうために客観的なデータを示して参加者に中国の重要性をアピールしたものである。同時に日本の中国に対する態度と方針を改める必要性を暗に示したものである。

 

コメント

フィード コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。

コメントの確認

コメントのプレビュー

プレビュー中です。コメントはまだ投稿されていません。

処理中...
コメントを投稿できませんでした。エラー:
コメントを投稿しました。 さらにコメントを投稿する

入力された文字と数字は画像と一致していません。再度入力してください。

最後に、下の画像の中に見える文字と数字を入力してください。これはプログラムを使ってコメントを自動的に投稿するのを防ぐために行われています。

画像を読み取れない場合は 別の画像を表示してください。

処理中...

コメントを投稿

アカウント情報

(名前とメールアドレスは必須です。メールアドレスは公開されません。)