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物理学校を卒業した2人の巨人

「21世紀の日本最強論」(文藝春秋編)

 

スキャン_20150412
 日本は衰退の一途を辿っているのではないか。いずれ中国に追い抜かれていくのではないか。その「裏意識」として中国が「こけてくれる」ことを願っている人もいるのではないか。しかし、そうはいかないのが現実であり歴史である。中国の科学技術も金融システムも社会秩序も当面それなりに無事に推移していくというのが筆者の論評である。

 それはさておき、この本は、日本は沈没しません、日本民族は世界の中でも先頭を走っている人々ですとの思いを集約し、日本の近未来のあるべき姿の輪郭を示した本である。

筆者も「ノーベル賞量産の秘密」とのタイトルで、この本の中でそれなりに思いを書いた。16人の著者がそれぞれの立場で、日本と日本人の強みと誇るべきことを書いている。

 たとえば、加藤崇氏が書いている「世界一の国産ロボットはなぜグーグルに買われたか」という稿を読むと、技術の先端性よりも日本の企業社会の後進性と課題が浮き彫りにされている。ここで書かれているロボット事業が成功するかどうかは未知数だが、だからこそ挑戦するという精神風土も意気も日本には不足している。そのようなことを訴えた稿である。

 あるいは、浅川芳裕氏が問題提起している「高齢化で農業に未来はないのウソ」を読むと日本の農業の様変わりにびっくりし、政府が統制している時代遅れの施策の愚かさがあぶりだされている。

 歴史家の磯田道史氏の「日本人が日本を捨てるとき」は、日本の歴史の変遷を語りながら日本民族の行方を示唆している。そして日本語をどのように評価して生きていくのか、その未来像を訴えた稀有の論評である。読んでいて本当にためになった。

 この本の帯に『日本の「強さ」を自覚せよ』とある。しかし自覚することはこの国の強さではなく、「国家と国民が変革するべき」自覚である。たとえば一人一票実現もできない国家と国民に時代は味方をしない。それを自覚してこそこの本の価値が出てくる。

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