03 NPO法人21世紀構想研究会

第124回・21世紀構想研究会 永野博氏の講演「ドイツに学ぶ科学技術政策」

 

DSC_1336  ドイツに学ぶ科学技術政策

 永野博さんは、2013年に「世界が競う次世代リーダーの養成」(近代科学社)を出版し、今度は今回の講演と同タイトルの「ドイツに学ぶ科学技術政策」(同)を上梓した。

 いずれも日本が抱えている科学技術の重要な課題を見通すためには、必要不可欠の視点を衝いてきたものである。永野さんの最近の内外での活躍ぶりと著作活動は、眼を見張るものがある。

 日本人でドイツという国家を知らない人はいないが、ドイツの科学技術政策についてはほとんど知らないのではないか。マックス・プランク、ライプ ニッツ、フラウンホーファー協会など個別の組織の名前ぐらいは知っていても、その活動内容や財政確保の仕組みなどは詳しく説明できない。

 これは筆者の貧困な知識・情報に照らして語っているのだが、国際的な科学技術政策の動向を知らないことを改めて痛感させたのが今回の講演である。

 第一に戦後のドイツの首相は、メルケル首相まで8人しかいないということを聞いてびっくりしたが、メルケル氏が物理学者と聞いて20世紀の科学進展で貢献してきたドイツ民族を垣間見た気がした。日本で女性の物理学者が首相になる日は、永遠に来ないような気がする。

 永野さんの講演から、連邦国家が集まった複雑な統治機構というドイツの国体はもとより、科学研究は政治や行政と一線を画して自主独立にあることを 初めて知った。そして科学研究は国家の発展と位置付けている政治家の考えや、ポスドクの流動性を促進するなど次世代の研究者を養成する政策など、20世紀 の科学研究の先導役を果たしてきた国家の違いを見せつけられ、どうしても思いは日本の貧弱な姿に思い至ることになる。

 ドイツも日本も工業国家であり、中小企業がかなり重要な位置づけにあると思ってきた。これは多くの日本人がドイツと聞いて思い抱いていたことだと思うが、内実はかなり違うことがわかった。

 ここでは講演のスライドを見せられた象徴的な3枚を紹介する。各種の産業輸出額を示したグラフであるが、特にハイテク産業輸出額のグラフでは、世界の主要5カ国の中で、電子機器だけがほとんどを占めている日本のガラパゴス工業国家が浮き出ている。


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  ドイツは、歴史的に医薬品が強いことは分かっていたが、日本のハイテク競争力の様相とはかなり違う国家であることがわかる。医薬品や医療機器でのドイツの 優位性は、研究現場の取材で仄聞してきたが、このような明確な図で示されると日本は特異な工業国家ということがわかる。

 私見だが、憲法改正などに注力している場合ではない。ハイテク国家を標榜するなら、あるべき科学技術立国としての国家観を示し、それを実現するための政治哲学を国民に訴えるのが先である。

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 私見はさておき、ミディアムハイテク産業輸出額を見ても、近年のドイツの伸びに比べて日本の明確な下降線はやはり気になった。中国の消費人口を視 野に入れて、自動車販売など対中国戦略で躍進しているドイツは、自動車で伸びている。戦前の対中国視点から抜けきらない日本の政治をここでも思い浮かばせた。

 直近のドイツの話題で出てくる「インダストリー4.0」とは、ドイツでは「第4次産業革命」と呼んでいるということだが、これは情報通信技術と製造業を融合して新たな産業現場と工業生産を通じて新しい社会創造を目指すコンセプトだという。

 モノ作り国家としては日本よりドイツの方が先輩だが、インダストリー4.0に見るように、新しい技術革新に合わせて工業社会、産業社会の在り方を明確に描き、中小企業支援をするドイツと日本は格段に違うように感じた。

 それは次のグラフで見てもヨーロッパ諸国と日本の中小企業の位置付けの違いを見せつけられたように思う。

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 永野さんの講演で感じたドイツの科学技術政策の要諦は、政策立案ではボトムアップであり制度を自分たちで作り上げていくという実行力が伴っている ことだ。強力なリーダーのもとで組織を作り上げていくのは、やはり伝統と歴史がそうさせているとしか言いようがないのではないか。

 最後に永野さんが示したドイツの「知的なものへの敬意」という日本の政治に最も不足している示唆は、重い言葉に響いた。詳しくは、同名の著書を読まれるようお勧めする。

文責・馬場錬成



第123回21世紀構想研究会での安西祐一郎先生の講演 「日本の教育と科学技術 ~現状と将来展望~」

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 さる1月22日に開催された第123回・21世紀構想研究会は、研究会のアドバイザーでもある安西祐一郎先生が、「日本の教育と科学技術 ~現状と将来展望~」のタイトルで講演を行いました。

 その主な点を報告します。

科学技術関係予算の伸び率が停滞

 多くの基礎的なデータを駆使しての講演でしたが、重層多岐にわたる日本の教育現場の課題は、聞いているだけで気が重くなり、教育改革の抜本的な取り組みの必要性を痛感しました。

 2015年の日本の文教・科学振興費の予算は、5兆3613億円でした。社会保障費予算は、31兆5297億円ですから、科学振興費の約6倍です。将来にかける予算の6倍を高齢社会になってきた社会保障費に追われている日本の縮図を見る思いです。

 科学技術・教育予算に関する国際比較を見ると、日本の将来にかけるお金の使い方がよく出てきます。各国の科学技術関係の予算を2000年度に100とした場合、中国は10倍以上の1075であり、驚異的な伸び率です。

 韓国が457、アメリカ162、ドイツ158、イギリス144といずれも順調に伸びていますが、日本は111ですからこの10年間で1割ちょっとの伸びです。

 国として将来に投資する科学技術関係予算が停滞している日本の将来は、本当にどうなるのかと考えざるを得ませんでした。

教育予算も各国比較で最低

 これは教育予算を見ても同じです。2010年のGDP比3.6パーセントが日本の予算規模だが、アメリカ5.1、イギリス5.9、フランス5.8、中国4.0(2012年)などとなっています。

 高等教育機関にかけるお金の対GDP比でも、日本は0.5パーセントですが、韓国0.7、アメリカ1.0、フランス1.3、イギリス0.7、OECD平均は1.1となっています。

 日本は、親が負担している金額が多く、人材育成は国がやるという意識が低く、国民が取り組めと言う図式に見えます。

 安西先生は「収入の多い家庭に生まれないと、有名大学に行けないということになりかねない」と語っていました。たとえば東大に入学した学生の親の年収は、非常に高いことが実証されています。

 この数年の中国の教育改革は、高校と大学・研究機関を連携する高大連携で優秀な人材を育成する政策を大胆に進めていますが、日本はどうでしょうか。

 安西先生の講演では2019年から20年までに「高大接続システム改革」が開始された後の変革について解説してくれました。

 まず家庭での子育て、幼少中学校段階の変化が出てくるでしょう。学習指導要領の抜本的改定、職業教育の改革、企業の採用・処遇の仕組みの改革、地方創生への貢献などをあげていました。

 これからは教師が一方的に教えるという構図ではなく、協働学習、個別学習などが展開され、ICTツールも教室でごく普通に活用される時代になるでしょう。

 社会改革としての教育の転換について安西先生は「十分な知識・技能をもち、それ を活用できる思考力・判断力・表現力を臨機応変に発揮でき、主体性をもって多様な人々と協力して学び、働く力が身につく教育の機会をすべての子どもたちが 持てるようにするにはどうすればいいか」という課題を提起していました。

大学・高校生の質の低下に歯止めをかけたい

 安西先生の講演の中でショックだったのは、日本の高校生の現状報告でした。 1990年と2006年を比較したものですが、偏差値45未満と偏差値55以上の高校生の平日の学習時間は、この間の変化はほとんどありませんでした。と ころが偏差値40-55までの中間層にいる高校生は、大幅に学習時間が減っていました。

 たとえば1990年当時、平日112分の学習時間があった生徒層が、2006年にはほぼ半分の60分までに減っていました。つまり高校生の中間層は、ますます学習する時間が減っているということです。

 また進路について考えるときの気持ちで「将来、自分がどうなるか不安になる」とする生徒の国際比較を見ると、日本は38.7パーセントもあるが、アメリカ17.7、中国12.3、韓国33.5パーセントになっています。

 また、大学生の1週間当たりの学修時間の日米比較を見ると、日本は0-5時間しか学修していない学生は3分の2の66.8パーセントもいるが、アメリカは15.6パーセントです。

 1週間に11時間から15時間、学修する学生はアメリカで58.4パーセントもいるのに、日本はたった14.8パーセントです。

 日本の学生は勉強しないことがこれでもはっきりしています。また、就職受け入れをしている企業側の感想を見ると、今の学生には「主体性」「粘り強さ」「コミュニケーション力」の不足を感じます。大学教育には、重要な課題が課せられていると言えるでしょう。

 さらに安西先生は、大学入試について、知識・技能だけ問うのではなく、思考・判断・表現力を問うことが重要だと指摘しています。

 この日の講演では、盛りだくさんの内容があったため、日本の科学技術の課題までは至らず、時間の都合で主として教育問題に絞った内容になりました。

 講演後の質疑討論の場で、一番問題になったのは、この課題を共通認識として多くの人に持ってもらうことと、日本の各界のリーダーや政治家にも知ってもらうことが大事だということでした。

 今後、教育問題については、引き続き21世紀構想研究会でも積極的に発言する機会を作り、多くの識者の共通認識になるように展開したいと思います。


第120回・21世紀構想研究会の報告です

 日本の高度研究人材を考える  吉海正憲氏の講演報告

 21世紀構想研究会での解説と討論

 知的財産を生み出すもっとも大きな勢力になっている日本の高度研究人材が、年々、先細りになっているとの懸念が言われてきた。実際にはどうなっているのか。

 さる9月29日に開催された特定非営利活動法人21世紀構想研究会の120回研究会で、住友電工顧問の吉海正憲氏(研究・技術計画学会会長)が、様々な実証的なデータをもとに日本の危機を解説し、参加者と討論を行った。

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120回・21世紀構想研究会で解説する吉海正憲氏

  様々なデータで示した日本の先細り状況

 吉海氏はまず、「マクロ構造から見た日本の現状と大学」として多くのデータを示した。

 研究開発投資額を1985年を1とすると、2012年には0.69まで下降した。同じ統計では、アメリカは0.97、ドイツは0.96、イギリスは1.3であり、先進国での日本の落ち込みが際立っていた。

  GDPの増加率を2000年と2011年を比較した数字では、日本が24パーセント増加に対して、アメリカは51、ドイツは91、イギリスは65パーセントだった。他の国はサービス業で著しく伸ばしているが日本は低調だった。

 この間の特許出願数も2000年の日本は世界トップでドイツ、イギリスの20~30倍の水準だったが、2011年には世界3位になりドイツ、イギリスの6~12倍まで低下した。

  大学などの使用研究費の1996年から2012年までの推移が下の表である。

   金額はさておき、伸び率を見ると先進国の中でも日本の鈍化は明らかである。こうした鈍化傾向と対象的に、日本で増えているのが、社会保障費、国債費、地方 交付税交付金などで、軒並み3倍から4倍以上になっている。文教科学振興費は、この間15パーセントの減少になった。

  大学の研究資金は国からが主力

 大学の使用する研究費はどこから来るのか。吉海氏の解説によると、日本は97パーセントが政府もしくは私学負担になっており、欧米の半分から5分の1程度である。大学が海外から受ける研究費も日本は極端に低く、欧米の20分の1から100分の1程度にとどまっている。

  論文数のシェアも日本は先細り傾向が顕著である。表で見るように、1998年から2012年までの低下率を見ると日本は33パーセントであり、先進国の中で突出している。代わって出てきたのが中国で、この間20倍に伸びている。

 また、論文の被引用回数も同様な傾向にあり、中国の約32倍に対し、日本は20パーセントの減少になっている。

  

  アジアの大学ランキングでは、東大がトップで面目を保っているが、中国、韓国が猛追していることが分かる。

 産学連携の重要性を提起

 吉海氏のこの日の講演の主旨は、日本は産学連携を活性化させないと国の科学技術活動が停滞化するとの警告を発信することと、そのためには博士号取得者などの高度研究人材をどのように社会で生かしていくかを提起することにあった。

   そこで「新しい成長構造には大学と産業の強い相互作用が不可欠」とするタイトルで2つ目のテーマを解説した。まず大学が民間企業から受け入れている研究資 金は、平成25年度は695億円でやや増える傾向を見せている。しかし20年度が629億円であることを見ると、大した増加にはなっていない。

  平成25年度の国立大学の寄附金受入額は、前年比40億円の減少で、総額は750億円だった。民間企業との共同研究もわずかずつ増えてはいるが、その上昇ラインはそれほどでもない。受託研究の件数や研究費の受入額もたいした増加にはなっていない。

 つまり共同研究、受託研究共にやや増加傾向にあるという程度にとどまっている。

 有名大学に集中する研究資金

 民間企業との共同研究に伴う研究費の受入額を大学別にみると、総額390億円のうち、その41パーセントが京大、東大、東北大、阪大、九大という旧帝大に集中している。

  受託研究になると総額105億円のうち京大、慶応義塾大、早大、東大、山形大のトップ5で総額の25パーセントである。この中で山形大学が3億円で5位になっているのが目を引く。

  特許実施料収入を見ると、総額22億円で東大、京大、阪大、日大、九工大のトップ5で61パーセントを占めている。東大だけで30パーセントの6.6億円というのが突出している。

 しかしアメリカのMITは年間のロイヤリティ収入が約90億円だから桁が違う。

  民間からの研究費助成、受託研究費、特許実施料収入の3つの合計を見ると、京大、東大、東北大、阪大、慶応義塾大がトップ5で、総額の512億円の37パーセントにあたる。トップ10では51パーセントになる。

  日本の大学の研究資源は、特定の有名大学、それも旧帝大に集中しており、偏在していることが分かる。これは様々な研究助成金の交付をみても同じ傾向であり、いかに旧帝大が恵まれているかを示している。

 なぜ産学連携が進展しないのか

 吉海氏のこの日の講演は、大学と産業との共同研究がなぜ伸びないのかという点にもあった。吉海氏はこれを企業に由来する原因と大学に由来する原因とに分けて示した。

 企業行動に由来する原因

①    強い内部主義があり、事業戦略全体から大学を活用する発想に乏しい。

②    大学の機密情報管理に対する不信感

③    これまでの大学との関係の惰性

④    時間軸に対する不整合

 大学に由来する原因

①    研究論文主体と共同研究との調整

②    教授個人ないしは研究室レベルの対応で、組織としてのマネジメントができない。

③    研究費を産業から受け入れることに対する歴史的違和感(研究費は文部科学省から得るという意識の浸透)

   このような日本の事情と比較するとアメリカの大学は意識が全く違う。アメリカの大学は自らマーケティングを実施して大学が新しいコンセプトを提唱して企業 に参加を求めていく。大学の研究成果に対する企業のアプローチはスピード感があるし、決定権をすぐにも行使する。日本は、決定権が乏しい。

 そして大事なことは、大学と政府と産業界が一体となって危機感を共有することだと述べた。

   吉海氏はここでアメリカは1970年から80年代にかけて、ベトナム戦争の泥沼化、日本が追いつき、アメリカが追い抜かれていく産業界の状況などで産業、 大学、政府が危機的状況に置かれたと解説。アメリカ政府はプロパテント政策に大きく舵を切り、基礎研究の成果の産業化、産学連携の促進などで再生を図り、 今の強いアメリカと大学を確立したとの見解を述べた。

  これに対し日本は、大学改革が政府主導で進むものの、画一的な選択に陥り、アメリカのように大学と社会が競争原理の中で主体的に改革を構成することができていないと述べた。

 大学発のベンチャー企業についても日米の差は比較にならない。日本でもひところ大学発ベンチャー企業がブームになったがいまは下火である。ただ、最近になって有力なベンチャー企業も生まれるようになり黎明期ではないかと観測する。

  吉海氏は「結局は、運用する人材を確保できるか。生み出した教員への評価・リターンをどのように設計するかにある」との見解を示した。

 高度研究人材の重要性

21 世紀に入ってから世界は新たな産業革命期に入り、研究も技術進化も驚くほど早くなっている。こうした状況から吉海氏は、多様性、高度性、融合性、リスク・ テイキング、スピードなどの社会の変化の対応はもとより、今の時代は対応から変化の先導へと進める時代であることを示し、人材の異質性、異能性の活用を強 調した。

  そして吉海氏は人材こそが成長と活力の源泉であり、高度人材として博士の価値を見直し、現場を知る博士を育成する必要性を強調した。

 日本は明治維新以来、急速に近代化をはかるために工学博士の育成には熱心だったが、基礎的研究に取り組む理学博士の育成では遅れている。理学博士の人口100万人当たりの数を見ると、アメリカの5分の1、ドイツ・イギリスの10分の1程度である。

  自然科学系の修士修了者も近年はやや減少傾向が続いている。博士課程に在籍する社会人の数はわずかながら年々増える傾向があるのは、学び直しの気風が出てきたことだろう。

  博士課程に進学しない理由をきいた統計によると、そもそも博士課程に進学しようと思わなかったという人が64パーセント、博士課程の研究に魅力がない、もしくは将来に不安があるとした人は合わせて25パーセントだった。

  さらに企業が博士課程修了者を採用しない理由として、「特定分野の専門的知識は持つが企業ではすぐには活用できない」が57パーセント、「企業内外での教育・訓練で社内の研究者の能力を高める方が効果的」とした回答が58パーセントだった。

 しかし企業でのポスドクの業務遂行能力の伸びを調べた統計では、71パーセントが期待以上の働きをしているとしている。博士号取得者を採用しても、それほど期待を裏切られていない現状を示していることにもなる。

  こうしたデータをもとに吉海氏は、日本の産業界と大学が高度研究人材の活用で長い間論争を続けてきたが、いまだに基本的解決に至っていない現状を次のように分析した。

 産業界は、狭い専門性にこだわり、変化への対応力に乏しく、総合的なリーダーシップに欠ける。

 大学側は、企業の従来の事業戦略の中でしか評価しておらず、将来の布石としての活用ができていない。

 この結果の弊害として、産業界は修士修了生の囲い込みを行い、企業内で育成するか必要なら企業派遣で博士号を取得させることが多いので大学の不信感が強い。企業は変化を先導する人材価値を認めていないのではないかとする見解を述べた。

 そして「海外の優秀な研究人材は、日本社会で産業から高い評価をされない博士課程に入りたいと思わないだろう」とも述べている。

  ミスマッチを解消する方策

 こうしたミスマッチを解消するための方策として吉海氏は次のような提言を行った。

 たとえば大学法人に2つの大学を創る。既存の構造を変えるには時間がかかりすぎるので、まったく違う構造の大学を創り、時代にマッチした仕組みと要素を的確に反映する大学とする。

  さらに高度研究人材の就業選択の多様性の確保もあげている。研究者の成果と資質を見極めながら研究者の進路を的確、公平に決めていく仕組みの確立である。吉海氏は、「採用する側の目的・要件の明確性にある」としている。

  またベンチャー創業へと誘導する施策も有力な選択肢としてあげている。アメリカでは80年代の大改革の一環として、SBIR(Small Business Innovation Research)を設立して成功している。

 日本でも近年、これをまねた制度を作っているが、日本では博士のベンチャー企業誘導ではなく、中小企業の研究助成金になっていると指摘する。また文部科学省では、博士のベンチャー支援予算が組まれているが、政府全体として一貫性に欠けている点も指摘している。

  吉海氏は最後に「日本社会の持つ強さの賞味期限は、そう長くはないだろう。日本の新しい成長構造の確立は高度研究人材育成にある。これには後追い的な変化への対応ではなく、変化を先導するリスクに立ち向かうことだ」との見解を示して締めくくった。

 


第117回21世紀構想研究会の報告

第117回21世紀構想研究会の報告

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 第117回・21世紀構想研究会は、2015年3月18日、プレスセンタービル9階宴会場で開催され、世界で初めて3Dプリンターの原理を発明した弁理士の小玉秀男先生が「3Dプリンターの創出顛末」のタイトルで発明の経緯と特許取得できなかった失敗などを語って会場の人々に感銘を与えた。

   また東京メイカーの毛利宣裕氏が「3Dプリンターの最新動向」として、実用化が本格化してくるまでの歴史と現在の実用化の状況と今後の展望を追加コメントとして発表し、参加者を驚かせた。

   小玉先生はまず、三次元CADで三次元設計ができることを知ってから、この電子情報をどのようにして立体形として出力できるか、ずっと考えていた。ある時、新聞印刷のデモを見学したとき、感光性樹脂に光を当てて文字部分を硬化させ、それを版下にして印刷する技術を知った。さらに名古屋市工業研究所で半導体加工技術のホトレジスト技術を知った。

   感光性樹脂を貰い受けて自分で実験することを思い立ち、自宅の設計図をもとに家のモデルをXYZプロッターで作った。これこそが3Dプリンターの原理の実現である。

    ここまでの過程を研究ノートの記載と時宜に応じての見直し、好奇心の持続と何度も反芻して考えることからついに立体物の製造を実現した道筋を語った。

    その後、特許出願し学会などや学術誌にも発表しているが、評価が余りたくないためこの技術開発の実用性などに自信を失い、弁理士試験に合格した後はすっかり忘れてしまい、アメリカに研修に行っていた。

    帰国後にアメリカでこの原理を利用した実用機、つまり3Dプリンターが世に出てきたことを知り、特許を取り損ねた失敗なども含めて率直に経過を語ってくれた。

    なお、この経過については、発明通信社のコラムで「3Dプリンターに見る技術革新と特許」のタイトルで6回に渡り報告している。

 第1回コラムから6回まで 

1回:http://www.hatsumei.co.jp/column/detail/2/52.html

6回: http://www.hatsumei.co.jp/column/detail/2/57.html

   小玉先生の後に東京メイカーの毛利宣裕氏が最新動向を豊富なビジュアルで報告し、産業現場だけでなく趣味や芸術の分野まで3Dプリンターは広がっていることを示した。

   いまや3Dプリンターでジェットエンジンの部品など少量多品種の生産や5日で電気自動車を生産した事例、人工臓器や住宅を作った事例、血管再生に応用した事例など燎原の火のように広がっている現実を語り、参加者に大きな衝撃を与えた。

 


21世紀構想研究会ー旧バージョン

第116回・21世紀構想研究会の報告

第116回・21世紀構想研究会の報告

 

「荒井寿光さんの叙勲をお祝いし知財現場の課題について語る特別講演会」

2015年1月29日(木)午後7時からプレスセンタービル9階大宴会場で開催され、約40人が出席して楽しい講演と意見交換が行われました。

荒井さんの特別講演タイトルは「特許人生・知財人生 これからの知財を考える」でした。

日本でただ一人「知財評論家」を名乗る荒井さんは、特許庁長官、通商産業審議官、内閣官房知的財産推進戦略事務局長などを務められるなど、1996年から日本の知財立国のためにご尽力されてきました。

 官界での長年の功績により、2014年秋の叙勲で「瑞宝重光章」を受章されました。今回は、21世紀構想研究会の皆さんで叙勲のお祝いをし、荒井さんにはこれまで活動してきた知財人生を振り返っていただきながら、日本の知財の課題と将来展望を提示していただきました。

 荒井さんは1996年に特許庁長官に就任し、それまで停滞していた特許行政の改革に取り組み、日本に知財立国の実現に初めて取り組みました。講演会では長官に就任後に気が付いた特許行政の「伝統」を打ち破るために特許庁新設運動を開始。特許庁は従業員2500人、売上1000億円規模のサービス産業と位置づけ、それまでの国家権力を付与する「お上意識」を献上するように改革しました。

 知識社会を迎えて知的財産が非常に重要になったことを啓発する多くの講演を行い、多数の著書も世に出しました。行動する長官として産業界からも歓迎され、その後、内閣官房知的財産戦略推進事務局長に抜擢されました。

 このような経歴の中で活動した日々のことを振り返りながら、日本の知財現場に横たわっていた問題が今なお未解決、未改善のままにあることをとらえ、さらにそれを解決・改善する道筋まで示しました。

  分かりやすいパワーポイントを駆使し、会場と双方向の講演であり、聴く人の興味を引き出す手腕はいつもの「荒井節」で魅了させました。話題は工業製品の特許に限らず、医療、農業、クールジャパン、模倣品対策など多角的な話題に広がりました。

 荒井さんは近々「知財立国が危ない」という本を日経新聞から出版します。この本には、日本の知財課題を出すだけではなく、解決策を具体的に書き込んだ本です。

 荒井さんのパワーポイントは、伏字がところどころにあり、フロアの聴衆も一緒に考えるように工夫しています。これがただ聴くだけの立場から一緒に考える立場になり、講演会を一層盛り上げる効果になっています。

 講演会の後は、荒井さんの叙勲をお祝いするセレモニーに移り、記念品贈呈からお祝いスピーチなど最後まで楽しい研究会でした。

                     

第115回・21世紀構想研究会「忘年パーティ」報告

    

 第115回・21世紀構想研究会「忘年パーティ」報告

 今年の忘年パーティは、12月11日(木)午後6時半から開催され、多数の参加者でにぎわいました。
 第一部は、黒木登志夫先生の「パタゴニア紀行」の講演でした。すでにパタゴニアの大自然を伝える前触れを送付しておりましたので、みなさん楽しみにしていました。

 ところが黒木先生は、意表を衝いて冒頭からまったく別の話を始めました。世の中には指数関数とべき乗関則があることを説明して、地震の発生規模や戦争の死者数が指数関数に合致していることを示しました。

 続いて加齢とともにべき乗則で増加する がん、心筋梗塞、脳卒中の年齢別死亡グラフを示して高齢者の多いフロアの参加者を震え上がらせました。60歳を過ぎると急激にこの3大成人病で死亡する確率が上がっていくのです。

 黒木先生の分析によると、60歳から1年刻みで9-12%の死亡リスクが上昇するというのです。特に70歳を過ぎた人にとっては、1年間無事に生きることがどれだけ大変かという統計分析を示されたもので、人は必ず死に向かって歩を進めていることを示してくれました。

 ま、このショックも一晩寝て翌日にはほぼ忘れているので、無事にまた生きていけるのでしょうか。

 パタゴニアの自然はAricaから200km地点にある 最高地点標高4660mまでを紹介されました。途中の景色は雄大ですごいの一言でした。双子富士とか高地の動物たち、土産物屋の風景など一度は行ってみたいパタゴニアですが、簡単には行けないでしょう。

 第二部は、恒例の楽しいパーティです。黒木先生のパタゴニア紀行にちなんで、南米ワインを楽しみました。

 第三部は、これまた恒例の「合原さんちの有機野菜即売会」でした。有機野菜栽培でとれたし新鮮な野菜の数々を販売しましたが、どれもこれも好評でした。

  第114回・21世紀構想研究会
      
第114回・21世紀構想研究会 

「どうする日本の地方再生と企業経営」

日本の価値最大化に求められる重要課題

いまそしてこれまでの延長線上に日本の未来はない

株式会社・Aurea Lotus CEO 柳下裕紀   

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 学生時代、女性を輝かせてくれる社会でないように感じていたので、男女区別なくフェアな扱いをする外資系企業に入った。それから30年経ったが、日本社会はまだ女性を輝かせていないように感じる。 

 日本はなかなか変わろうとしない。息苦しさがある。アベノミクスが2012年末からスタートして13年4月に第1弾そして最近、第2弾を施策しているが、実態経済がおかしいと感じている。

 消費税の増税でインフレを実現するという。アメリカの金融緩和は日本と違う。リーマン ショックのときは、アメリカの金融機関は非常に深刻だった。モラルハザードを度外視せねばならないほど緊急だった。日本は、リーマンショックのときは金融 が重症でなかったが金融緩和してきた。

 白川前日銀副総裁のとった金融政策は教科書的にも正しい。効果がまったくなかったわけではない。 いま、企業は簡単に設備投資できない。将来的にも、設備投資は回らないと白川さんは強調していた。

 いまアメリカのFRBは金融緩和が直接経済を回復させるとは言っていない。日本は社会保障費をどうするか大きな問題だが、公共投資をしている。民間に出すべき金が、利益を出さないものに投資している。 

 株高を演出し、下品な表現になるが「シャブづけ」にしているように感じる。白川前日銀総裁 は、ちゃんと仕事をしていた。黒田総裁になってマネタリーベースを増やしても、銀行が世の中に放出するストックベースが全く増えない。日銀当座預金が増え ても貸出残高は増えていない。銀行が放出しないのでデフレを解消していない。 

 フィッシャーの貨幣数量方程式に当てはめても、日銀方針がおかしいことがわかる。(通貨の 総量)×(貨幣の流通速度)=(物価水準)×(財・サービスの取引量)=GDP この方程式の中で日銀がいくらお金を供給しても銀行にお金がたまっていれ ば、貨幣の流通速度はゼロになる。

 貨幣の流通速度や財・サービスの取引量を決めるのは国民だが、雇用に不安があり生活防衛で買い物をしなければ、この方程式はうまくいかない。  銀行がお金を出す、国民がお金を使う、そしてGDPを決めるのは国民だが生活防衛でお金を使わないのでは成り立たない。

  日銀は、短期国債を償却額の上回る金額で市場から買い入れている。マネタリーベースの増 加が政策目標なので国債買い入れが目的化している。損失覚悟で額面を上回る高い価格で落札し金融機関にプレミアムを付けている。 コストはすべて国庫納付 金から出るのでつけは国民にくる。

 日本は総事業所数の91パーセント、雇用者の84パーセントが非製造業である。輸出依存も15パーセント以下の内需大国である。この60年間、日本の輸出依存度は10-15パーセントである。円安になっても一部の輸出企業が潤うだけである。

 消費税のアップは、経営に対する中立性が欠如した弱いものいじめである。人口減少が進めばお金を使う人数が減るのだから一人当たりの使う金額を増やすために減税しなければならないのに増税している。内需の減少は、所得税、法人税など他の税収も落ち込むことになる。

 これこそ天下の愚策だ。

  かつて超円高水準の中で輸出を倍増させていた。バブルのころ42兆円でありリーマン ショックの前には80兆円台になっていた。日本の企業の競争力はものすごく強いからもっていた。 円安になったらその特質を生かす政策をしなければならな い。観光業の伸びしろはまだ大きく、外国から呼び込む観光客の総数はモロッコと同じ程度の観光産業である。これを活性化しなければならない。

  国内の旅行効果だけでも30兆円ほどあり、雇用者も460万人を生む。海外から旅行者を呼び込めば、高齢者の活用の広がりも出るし外国人の消費は国内減退の補完になる。必要な施策は規制緩和、許認可制度の改善、新規ビジネスのアイデアを積極的に採用するなどがある。

  カジノで国を救うなんて懐疑的だ。経済効果に疑問符をつけたい。日本はギャンブル大国であり24兆円の市場規模がある。カジノで4000億円の収入があっても小さい。

  世界は今カジノ離れでありマカオも不況だし斜陽産業だ。ラスベガスはカジノだけではな い。子供、家族も楽しませるデザインと洗練されたビジネスメソッドになっている。政府は経営しないでテナント料を取るだけだ。債権管理能力をどこに任せる のか。地方振興になるわけがない。

  地方再生の要諦は、外部の力や財源に頼らず、地元の人、モノ、金、文化を最大限活用する ことだ。地元を最大限活用して地域住民を巻き込むことだ。自立して稼ぐことしかない。 たとえば清酒造りは日本の風土そのものだ。日本酒造りは独自に磨き 上げられたワザである。並行複発酵は日本独特のものだ。日本人だけが麹菌を発見した唯一の民族だ。

  発酵が進むとアルコール度が高くなる。水がおいしい場所でないと酒が造れないし日本の風土とあっている。日本酒を水で薄めたりシャンパンにしたり自由度の高いお酒である。日本が伝統として持っている酒の資源を大事にすることだ。

  海外20か国に日本酒を出している桜井博志さんは、巧みなブランド戦略と明確なコンセプトで成功している。「日本酒の伝道師」である長谷川酒店の長谷川浩一社長は、全国の酒蔵200以上をめぐり、知られていない地酒を発掘し、常時800種の銘柄を取り揃えている。

  いま進行中のTPPを恐れず、外へ攻めて出ることを考えよう。円安の弊害を緩和して外へ攻めることを考えよう。良質なコメをアメリカに売り込むチャンスだ。将来の人口年齢層別分布の推移を見てもアメリカが成長することは間違いない。 

 四国には徳島県上勝町の過疎化・高齢化を強みに転換した株式会社いろどり、伊予現代町家のコンセプトで施工まで請け負う建築事務所の株式会社コラボハウスなど、多くの成功事例がある。

  愛媛の今治造船も大手海運企業、造船所、荷主、保険会社、船舶部品メーカー、銀行などと連携した独自のビジネスを築いて成功している。このような成功例を見習い、日本の再生に取り組むことが重要だ。 

第112回 21世紀構想研究会の報告 

第112回 21世紀構想研究会の報告   

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  第112回・21世紀構想研究会は、9月17日に開催され、科学技術振興機構(JST)特別顧問、日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)推進室長の沖村憲樹氏が「アジアからなぜ2600人の青少年を招へいするのか」とのタイトルで、さくらサイエンスプランの事業について講演した。

  講演後に活発な議論が行われ盛会だった。

 沖村さんは、JSTの理事長時代から中国に関心もち、将来は中国が世界の大国へと成長することを予想し、JSTに中国総合研究センターを創設した。そして中国の科学技術の文献データベースを構築し、中国との学術交流を始めた。   

 小泉政権以降の日中の友好関係は必ずしも良好ではなく、日中両国の国民が相手国への印象をよく思っていないことが、各種の世論調査でも出ている。たとえば、最近のNHK世論調査でも日本人(93.0%)、中国人(86.8%)ともに9割前後が「(相手国に)よくない印象をもっている」との結果が出ている。   

 こうした結果から、両国の特に若い世代が直接顔を合わせて交流する機会を作るべきとの考えを持つようになった。交流には国同士というのではなく、民間交流、草の根交流であるべきとの考えから、政府機関はこの交流を支援する立場で行うことにした。  

 また、当初は中国だけに特化した交流にしたかったが、下村文部科学大臣らの助言・指導もあり東アジア14カ国・地域の青年を招へいするプランに切り替え、名称をさくらサイエンスプランと付けた。   

 さくらサイエンスプラン事業は、大学や企業からの公募を採択する①公募計画コースと、JSTがすべて企画・実施する②高校生特別コースを実施している。高校生特別コースはすでに8か国の高校生281人の招へいが終了した。これらの高校生は例外なく感謝し、日本の科学技術の先端研究を評価し、将来は日本へ留学したいとの希望を持って帰国していった。  

 公募計画コースは、全国の大学・研究機関で現在進行中であり、アジア各国の大学生らが日本の大学、研究機関、企業などを訪問してセミナー、見学、実習、研修に取り組んでいる。 

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これからの交流方法を提案する藤島昭・東京理科大学長
  

 沖村さんは、このような経過を説明しながら、さくらサイエンスプランが具体的に活動しているようすを説明した。 

  活動の交流は、次の2つのサイトから見られる。  

さくらサイエンスプラン公式HP=http://ssp.jst.go.jp/index.html   さくらサイエンスプラン応援サイト=https://www.facebook.com/sspjapan 

 沖村さんの講演後、フロアとの活発な討論が行われ、多くの出席者がこのプランの成功を喜び、今後ももっと充実したプランへと広げていくことなど前向きなコメントが次々と寄せられた。  

                                

震えるほど感動した中国の高校1年生のスピーチ

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 日本政府がアジアの優秀な青年を招へいして科学技術交流を展開している「さくらサイエンスプラン」で来日した中国の高校生第一陣が、1週間の見学や研修を終えて7月26日に無事帰国しました。

  1週間のスケジュールは分刻みの過密でしたが、多くの大学、研究機関、人々と科学技術交流をしました。その報告会が7月25日に開かれ、8人の高校生がそ れぞれの感想をスピーチしました。中でも北京市第11中学校1年(日本の高校1年)の李釣正君のスピーチは、堂々とした態度といいその内容といい聞いてい て感動せずにいられませんでした。

 スピーチの要旨を紹介します。

 「私たち中日は兄弟のように似た国です。中国と日本は漢字や茶の文化など、とても共通するところが多い国です。中日の言葉は似た文字を使っているし顔もよく似ています。よりよく理解するべきですが、実際にはそうではありません。

 似た民族なのにそれぞれが利益を考えて、お互いに怒りが大きくなっており争いが大きくなっています。人々を怖がらせているのが現状です。これには失望を覚えていましたが、今回、新たな希望の光を見たと思いました。

 理化学研究所には多くの中国人が研究者として活動していましたし東大にもいました。研究の成果も共有していました。しかしこれに反対する人がいるかもしれません。

  昨日(7月24日)は、東工大付属科学技術高校の生徒とお昼に交流会がありました。そのときお互いに写真をとり合い、一緒に笑いあいました。彼らは非常に 誠実でした。だから女生徒も心配することなく心を通じて握手をし、友情を素直に示すことができました。これは純粋な気持ちでした。

 30年後、ここにいる高校生は必ず社会で活躍しているでしょう。政治家や科学者になっているかもしれません。各方面で立派な社会人になっているでしょう。  あるいはその時には、国を背負っているかもしれないし、いまの純粋な気持ちが変わっているかもしれません。

 しかし昨日の友情が変わることがないと信じています。

 30年後 科学者になった人は緊密に協力し、すべての国民が純粋な協調をもって二つの国と世界のために貢献することを競い合うでしょう。これからは共同の未来を築くことです。

 それはあなたの未来ではなく僕たちの共同の未来です。」

                                

日本一秋田工場を見学(秋田シンポジウムの後で)

 

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  焼き鳥・うなぎ製造・販売の老舗で、21世紀構想研究会の理事を務めている染谷幸雄さん(日本一ホールディングス株式会社代表取締役社長)が経営する日 本一フード秋田株式会社(齋藤英二社長)の工場を見学した。秋田シンポジウムに参加した21世紀構想研究会のメンバーで総勢20人ほどだった。

 今年の2月に操業開始したばかりであり、ご覧のように見るからに新工場らしくピカピカ。齋藤社長ら社員の皆さんの歓迎を受けてまず工場の会議室で、新工場の経営方針などをうかがった。鶏肉を串刺しにし、冷凍して全国に出荷する工場であり従業員は61人。

 驚いたことに、60人が正規社員で、1人は本人の都合により臨時で就業しているという。染谷社長の方針で、正規社員によるこだわりの製造を実現している そうだ。焼き鳥製造の工場は、日本全国に多数あるが、従業員はほとんどが臨時雇用とかバイトである。しかしそれでは、いい品質の焼き鳥はできないというこ だわりから雇用も正規社員にしたという。

 齋藤社長は、人件費が高くなっているので経営は大変だが、「それを乗り越えて頑張っています」ということだった。工場の中に入ることになったが、そこでまたまた驚いた。 頭のてっぺんから靴まで全て帽子から白衣、マスクなどで完全衛生管理の服装。

 工場内に入る際も、手洗いからエアシャワーでの洗浄など、原発施設と同じような厳格な管理になっている。中に入ると整然と作業台に並んだ社員が手際よく 焼き鳥を串刺しにしている。完全衛生管理であり、しかも手際がいいので、あっという間にケースに入った焼き鳥が次々と冷凍保存されていく。

 その製造工程は自動化されており、手作業は串刺しの行程だけ。これとてできるだけ作業をやりやすく準備しているそうであり、自動化の各種作業設備も開発中という。作業現場の写真撮影は禁止なのでお見せできないのが残念だ。

 見学したあとで、焼きあげたばかりの焼き鳥をいただいたが、これがほっくりした味のいい焼き鳥であり、大満足の見学会だった。

 
 
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会社説明会では齊藤社長から焼き鳥工場の設備内容や経営方針をうかがった。
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秋田シンポジウム速報「跳びだせ世界へ秋田県」

「跳びだせ世界へ秋田県」

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 モデレーター 

橋本五郎(読売新聞特別編集委員、ニュースキャスター、21世紀構想研究会理事) 

パネリスト  

銭谷眞美(東京国立博物館館長、元文部科学省事務次官、21世紀構想研究会顧問)

吉村 昇(東北公益文科大学学長、前秋田大学学長、秋田大学学事顧問)

三浦廣巳(秋田商工会議所会頭、秋田日産自動車会長)

生越由美(東京理科大学知財専門職大学院教授、21世紀構想研究会理事)

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橋本 先に出版された「中央公論」6月号、7月号によると、2040年までに何もしなければ日本の市町村は半分になってしまうという報告が掲載され、大きなショックを与えています。秋田県も同様の減少率で24市町村がなくなると出ています。地方の振興がいま、重要な政治課題になっている。

  ところで安部政権は、1年経っても支持率が下がらない。最近の内閣では非常に安定している。しかし不満がある。地方の再興という政策が成長戦略の中に入っていない。これは大きな問題だ。 

 過去の内閣を見ると、田中内閣、大平内閣でも日本の地方振興という政策を重視してきた。故郷をどうするかという視点があった。これをいま、どうすればいいのか。

 まず大事なことは、いま地方に住んでいる人たちが何かをしようという発想や行動がなければならない。地方の再生可能にするためには自分たちで考えて行動を起こすということが大事だ。

 今日のシンポジウムは、地方再生を考える一つのきっかけにしたい。この秋田に生まれてよかったとするにはどうあるべきか。そのような論議を期待したい。

 それではこのシンポジウムでパネリストの方々に秋田県を活性化する発想でそれぞれの思いを語っていただきたい。地方を活性化するきっかけにしたいと思います。銭谷さんから順にご発言をお願いします。

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  銭谷 昨夜は秋田市に帰り実家に泊まった。秋田で生まれ育ったが、高校を卒業後は、秋田を離れてしまったが秋田を心から愛している。

  本日のシンポジウムのモデレーターを担当している橋本さんは、高校の先輩であり、先年、東京で50年前の秋田の映画「17歳は一度だけ」を観る会があり、 そのとき橋本さんの講演を聞いて感動した。橋本さんは、故郷を思う気持ちを語り母親の話をしたときには会場の多くの人が感動して泣いていた。そのような縁 で、本日のパネリストになった。

  さて、いま私は日本で一番規模が大きく一番古い歴史を持っている博物館の東京国立博物館の館長をしているが、ここには多くの国宝や重要文化財が収納されており、随時展示もしている。

 秋田県関係の重要文化財を調べてもらったところ、縄文時代の土器から始まって江戸時代の秋田城に関する文書、後三年役の絵巻物、佐竹氏の時代まで文書や資料が多く保存されていることを知った。秋田は江戸時代から交通の要衝にあり、拠点になっていたことが分かった。

 さらに当時は鉱山、油田という産業がありそれに関連する化学工業もあった。そのような歴史的な産業や古くからある文化を見直す機会を持つことが大事ではないか。

  吉村 秋 田大学学長から酒田にある東北公益文科大学学長に転出した。鳥海山を見ながら酒田と秋田を往復する生活になっているため、山形県と秋田県を比較するように なった。山形県民は、よく働き競争して活動してきたようだが、秋田は食うに困らない人が多いせいか、のんびりしている。

  秋田大学の歴史を見ても、意欲的に学部を増やすようなことをしなかった。秋田はほんわかした土地であるが、これを考え直す時期になってきた。東京は、オリンピック開催もありさらに一極集中が進むだろう。リニアモーターカーにしても常に東京を中心に考えている。

 アメリカは各地で栄えており一極集中にはなっていない。大震災後の復興も太平洋側が優先的になっているが、日本海側も考えてやらないと均衡ある発展にはならない。

  三浦  このシンポジウムの冒頭に橋本さんから重い発言があった。何もやらなければ、2050年には秋田県の人口が70万人になると言われている。知恵を出してや ならいとこうなってしまう。それではわれわれは、何をやるのか。秋田商工会議所でも、中小企業経営者らと現実をしっかりと認識し、いろいろな課題を話し 合っている。

  企業経営でもそうだが対前年実績を割らないことが一つの目標になっている。しかしそう簡単にはいかない。それでも最低限、これだけはやろうという目標を立 てている。それは人口減少への対応でも同じだ。秋田県の人口は100万人を割らない、減らさないという目標にこだわりを持つことが大事だ。

  人口が増えれば企業が増えるし雇用者が増えることは成長することだ。首都圏一極集中を解消するという構想があったが、いつの間にか消えてしまっている。首都圏に大地震が発生したら甚大な被害が出る。地方に首都圏の機能を分散してリスクを軽減するという考えがあるべきだ。太平洋戦争のときは、都会から地方へと疎開した。これを見習って企業のバックアップは地方へ持っていくべきだ。地方に分散することを考えるべきだ。

  生越 産 業史を振り返ってみると、農業社会から工業社会になりいまは知識社会へと発展してきた。社会の中心価値の変遷をみると、無形資産と有形資産の割合が劇的に 変化した。1978年には無形資産は17パーセントだったものが20年後の1998年には69パーセントになっている。

 昨日から秋田県庁などでご当地の産業や地域ブランドについて取材しましたが秋田県にはたくさんのブランドがあることが分かりました。これを生かす方策がいろいろ考えられると思います。

  世界競争に生き残るためのポイントの一つは、地域にしか存在しないものとか地域に行かないと味わえないもの、地域でしか作れないものなど地域の固有化が要になる。ウエブ情報でみても秋田県には多数の食文化がある。「いぶりがっきー」とか「ぷれすてなまはげ」などユニークな食品も開発されている。

  ポイントの2つ目は、価値と価格の多層化時代を認識して対応することだ。ハンバーガーも100円から2000円まであって、高くても付加価値があれば売れ る時代だ。ポイントの3つ目は、使えるものは全て使うという発想だ。曲げわっぱ、秋田八丈など名品があるので活用方法を広げたい。

 秋田には多くの強みがある。竿灯、なまはげ、かまくら、ハタハタなどや横手市増田町の内蔵など文化資本である地域資源、歴史資源、コンテンツ資源など多数ある。今後の展開によって楽しみな県である。

  橋本 大 変素晴らしいご意見をいただきました。銭谷さんからは、秋田には歴史的に古い文化の資料が多数あることが報告され改めて再認識したものです。一極集中は、 なぜそうなるのか。もう一度私たちは考える必要があるようです。新幹線もすべて東京から始まる。大震災が発生したらいったいどうするのかという課題もあり ます。

  一極集中が改められないと職を求めて多くの人材が東京に行くことになる。雇用の問題を地方で考えると大変な課題がある。いまは、大学を卒業しても正規社員 として就職できない人がかなりいる。これでは若い世代がかわいそうだ。産業界は雇用問題では自分で首を絞めているような感じもある。

  吉村  日本の発展をみると西から発展してきた。東北はどうしても遅れてきた。秋田も工業と農業しかなかった。アメリカは一極集中ではなく、歴史的に分散して発展 してきている。ボストンから始まって北から南へと発展した。シアトル、ロチェスター、ニューヨーク、デトロイトというように産業の種類によっても固有に発 展する都市が変わっていった。

  日本は東京から南へ発展した。半導体の九州、自動車の名古屋という具合だ。山形県には売上100億円以上の企業が数社あるが秋田県にはない。これからは秋 田県の企業で世界へ羽ばたくような企業を育てなければならない。その意味で大学の責任は重い。これからは産学官で連携して発展する時代だ。

  三浦 最近は企業の環境が変わってきた。本社はどこにあってもいいという時代になってきた。日本は中小企業が95%と言われている。秋田は中小企業ばかりだが、一流の技術を持った中小企業が秋田には多数ある。

  秋田はまだまだアピールが足りない。親はどうしても子供の就職先は大企業がいいと思っているが、魅力ある中小企業をアピールしてひきつけることが肝要だ。 商業地の地価を考えると、東京は秋田の36倍も高い。秋田には付加価値を付けて、よりいい地域であることをアピールしていくことが大事だ。

  橋本 今日のシンポジウムの見出しはどうなるか。「東京の一極集中を見直す」とならないか。それには地方は何をなすべきか。東京でなく自分の住んでいる地方都市の魅力を見直し、外から見ても魅力あるものに見えないとならない。

 鳥取県の知事が「わが県にはスタバはないが砂場がある」と語っていた。鳥取砂丘を砂場と言ったものだが、マイナス面と考えないでプラス思考で考えることが必要だ。

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  生越 徳島では刺身のつまに使う葉っぱで収入があがった地域がある。山奥の葉っぱを生かすことで年収がみな1500万円から2000万円になった。こうなると地方に対する若い人の見る目が変わってくる。

 またブランド豚肉を売り出した平田牧場のように、豚作りで独自の産業に発展させている例がある。農業はこれからハイテク化が進むので逆転の発想と成果が出てくることが期待できる。. 

  橋本 秋田県の人口が減少すると心配しているが、秋田は100万人を維持するということにこだわるべきだ。卑近な例で恐縮だが、読売新聞は1000万部を何が何でも維持しようと目標を掲げて頑張っている。そのように目標をきちんと立てないと人口も購読者数も維持できなくなる。

  高齢化率が高いと言うが、それは長生きする率が高いということになる。マイナス思考ではなくプラス思考でいきたい。がんの死亡率は、秋田県が最も高いと言 うが、がん研究者に言わせるとそれは長生きする人が多いからだという。長生きすればがんで死亡する人が多くなるからだ。

 また地方の文化の良さもアピールして都会の人に認識してもらうことも必要だ。

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  銭谷 橋本さんがいま言ったことは私も言いたかった。高齢化率日本一は長生きしているからである。子育て環境日本一にすれば、人口を100万人は維持できるだろう。米国は企業の定年制がない。これを見習っていくこともいいのではないか。

 秋田は北緯40度だが、世界地図をみると北緯40度の都市は、北京、ニューヨーク、スペインのマドリードなど世界の文明圏として重要な都市になっている。

  健康で長生きする健康寿命には、文化が重要だ。50年前に地域にいた人に来てもらい、いろいろやってもらうこともいい。秋田大学は鉱山学部からさらに発展 して国際資源学部を作った。これこそ秋田の特徴を生かしている。就職すると秋田を離れると言うが、若い学生が4年間秋田にいるだけでもいいという考えが あってもいいのではないか。

  橋本 隣の県に移った吉村さんは、秋田県を隣から見て分かる点があると思う。どこに問題があるのか。

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  吉村  秋田は米に困ったことがない。これに比べ他の県や地域はたくましく生きてきた。秋田大学も昭和24年に学芸部、鉱山学部から出発した。農学部も工学部もな かなか作れなかったし、今も農学部はない。昔の学長や事務局長に責任があるということも言われているが、それはさておき秋田はゆったりと生きてきたという ことではないか。

  橋本 なるほど、秋田は豊かであるがゆえたくましさがなくなった。暮らしずらい方がエネルギーを生み出すことになるかもしれない。

  三浦 秋田は農業で発展してきた。だから他人と違うことはやらない。しかしこれを打破しないとならない。ベストの計画を立て事業経営者はチャレンジしないと伸びない。可能性のあるものを応援することも大事だ。

 岩手は手を引っ張るが秋田は足を引っ張るという言葉がある。秋田は人がやらないことはやらない。リセットして、おれもやるからお前もやれということにならないと可能性が出てこない。

  ベンチャー企業を立ち上げ、時間がかかるだろうが新しい企業を育てていくというように仕組みを変えていくことが必要だ。他人の邪魔をしないことだ。応援出来ない人は、静かに見守ってほしい。秋田は自分たちがプレーヤーとして頑張っていくよりない。

  橋本  行政の役割も大事なのでこれを考えてみたい。行政は積極的に秋田のいいところ魅力を見つけ、それを伸ばしていく必要がある。このシンポジウムでも秋田のい いところがたくさんでてきた。農業も大事だし秋田を高齢者の県にするというのもいい。2つとか3つに絞って施策をすることだ。

  生越 各地に行って取材をすると、リーダーはよそ者、若者、馬鹿者と言われている。たとえば宇都宮餃子は、長老がうまく育てた。行政は安心して挑戦できる環境を作ることだ。

  橋本 行政の役割の重要性が出てきた。さて時間も少なくなってきたので、最後にこれだけは言っておきたいという発言をお願いしたい。

  銭谷 冒頭にも言ったが文化と観光とは別物ではない。文化は人が来なくても育っていく。文化と観光は資源である。その良さを知ってもらうことが重要だ。

  吉村 過去からの脱却が大事だ。安いカネで大量の消費をしてきた。それをやめて日本のオリジナルを作ること、できることをやるということが重要だ。

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  三浦 秋田にはいいものがたくさんある。いいもの、悪いものなどと言い訳しないで秋田のいいものを伸ばすことだ。親父の生き方を経営に生かしていくことが最も大事だ。

  生越 秋田の生活の豊かさをみんなに見せることが大事だ。日本は介護技術が遅れている。そのような産業を秋田から起こすことができないだろうか。

  橋本 外から来ないとカネが落ちない。そのためにはちゃんと自分のよさを見つけて強固なものにすることだ。秋田に行くとすごくいいというものがほしい。改めていいところを再認識してもらう。

 秋田駅に降り立つと私はちょっと不満だ。県庁所在地だが秋田だなあというもが見えない。まだ盛岡はある。隣の芝生はよく見えるというのと同じかもしれないが。

 いいところを伸ばし悪いところを逆に利用する。発送の転換だ。東京に住んでいても孫が秋田へ行きたいという時代と土地にしなければならない。

 「中央公論」で衝撃的な報告と課題提起がされたが、これを乗り越えていくことを秋田に期待していシンポジウムを終了したい。

21世紀構想研究会の第14期総会の開催

   

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 特定非営利活動法人21世紀構想研究会の第14期総会が、6月2日、プレスセンタービル9階の宴会場で開催され、今年度の事業計画や新役員の陣容を全会一致で承認した。

  昨年度の21世紀構想研究会は、100回記念シンポジウムの開催のほか、知的財産委員会の活発な論議と政策提言や、教育委員会の第8回全国学校給食甲子園の開催など、例年以上の事業の開催で非常に活性化した活動だった。

 総会では、昨年度の事業の報告、会計報告と今年度の事業計画と予算案が提案され、いずれも全会一致で承認された。また特定非営利活動法人21世紀構想研究会定款を改正し、理事・監事を20人以下に改正する案も承認された。これまでは10人以下となっていた。

 理事の増員は、活動を活性化させるために各界の人材を理事会に集めて、企画、実行などに弾みをつける目的がある。様々な意見やアイデア、さらに助言などもいただきながら、21世紀構想研究会の活動を発展させていきたい。

 総会後の講演は、政策研究大学院大学の永野博先生が「 次世代リーダーの養成にしのぎをけずる世界 ~第4の矢は若者への投資。理研の出来事がブレーキをかけてはならない~」とのタイトルで、日本の大学や研究機関に横たわる若手人材養成の課題を解説した。

 永野先生は、ドイツに滞在し期間が長く、たびたび欧州へも出張する機会があった。その体験からヨーロッパ学界での見聞が豊富だ。イギリスやドイツでの若 手の人材養成の実際を紹介しながら、日本が立ち遅れているとの認識を示しながら、これから日本の取り組みについても提言を行った。

                                

21世紀構想研究会・生命科学委員会の開催

  生命科学委員会の開催報告 

  21世紀構想研究会・生命科学委員会(東中川徹委員長)が、5月19日、プレスセンタービル9階の宴会場で開かれ、黒木登志夫先生(日本学術振興会・学術 システム研究センター・相談役、東大名誉教授、元岐阜大学学長)が、STAP細胞論文は捏造にあたるとする厳しい見解を示した。

  黒木先生のレクチャータイトルは「幹細胞研究の光と影 Hop STAP Drop」。受精卵というたった1個の細胞から、人間一人分=60兆個で出来上がっている生物個体を形成する元になっている幹細胞について学術的に分かり易く解説した。

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      幹細胞の研究の歴史を紹介

  これまでの幹細胞の研究の歴史とその業績、臨床研究への応用への挑戦まで多くの歴史的事実を駆使して解説した。またノーベル賞受賞者の山中伸弥博士が開発したiPS細胞の作成までの歴史も紹介した。

  そして幹細胞であることの証明は、その細胞が多分化能であることを証明しなければならないと解説。それには①培養細胞の分化、②奇形腫の形成、③キメラマウスの作成、④丸ごとES細胞マウスの作成の4つの証明が必要であることを示した。

  黒木先生が論文を精査したところ、小保方晴子さんのSTAP細胞論文は、この4つの証明をきれいに書いており、論文としてはきわめて完成度の高い内容になっていた。しかしこの論文の信じられなかった理由と信じた理由を書き分けてみたという。

  信じられなかったのは、いとも簡単に幹細胞を証明しており、信じたのはこの分野のトップクラスの研究者が共同研究者として名前が記載されていたことだった。

 STAP細胞をめぐる疑惑を解説 

 STAP細胞論文の発表直後から、「11jigen」などのネット上に論文を疑問視する指摘が相次ぎ多分化能を証明する画像の捏造を指摘されるようになる。改ざん、不審、疑問点を整理したうえで黒木先生は、小保方さんは研究者失格であるとして4つの点をあげた。

   それは①他の論文からのコピペ、②データ画像のコピペ、③スキームのコピペ、④お粗末な実験ノートである。そして「論文は自己完結でなければならないが、 STAP細胞論文はこれを著しく逸脱しており、STAP細胞存在の証明はされていない。論文は撤回するよりない」との結論を表明した。

  さらにSTAP細胞問題が日本の科学界へ波及していく懸念があることを指摘し、「日本の科学研究が生き延びるためには、むしろ小保方さんと共同研究者らのしっぽ切りが必要である」とする独自の見解を示した。

   講演は黒木先生のいつものように、ユーモアやときに皮肉を織り込んだ分かりやすい興味あふれる内容であり、聴衆が理解できるように組み立てたものであり、 このテーマの学術研究を歴史的に解説した点でも優れた内容だった。聴きに来ていた高校生も非常に感銘を受けた様子だった。 

 

中尾政之教授講演「論文数・伸び悩みの理系、論文数・さっぱりの文系」

 

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 第109回21世紀構想研究会は、2014年4月21日(月)にプレスセンター9階宴会場で開催され、中尾政之東大工学系研究科教授が「論文数伸び悩みの理系、さっぱりの文系」とのタイトルで講演と討論を行った。  

 就職活動では修論を語るほうが有利

 中尾先生はまず、東大をめぐる学生の考え方や就職活動、研究に取り組む姿勢などを語った。日本の大学の頂点に位置する東大でも悩みが大きいことを、さまざまな出来事や客観的なデータなどをもとに語ったもので、中でも筆者の印象に残ったのは就職活動のことである。

  筆者もかつて勤務した東京理科大学知財専門職大学院で院生の就職活動には、ずいぶん力を入れていた。企業の面接時の対応などは最も重要な準備である。中尾先生が語ったことは、「一番苦労したこと楽しかったことを語る際、旅行の話やバイト、NPO活動などを話しするよりも、卒論や修論についての苦労や楽しさ、その中身を語ったほうがはるかにいい印象を与えているようだ」ということだった。

  確かに学生生活を語る上では最もふさわしい話題であり、就職活動対応のノウハウ本では紹介されていないテーマだと思った。 また日本の大学で取得した単位は、外国の大学では等価交換できないというショッキングな話もあった。これでは日本と外国の大学間の交換学生交流などに支障をきたすことになる。

 論文数で下降線を辿る日本

 中尾先生が示した世界の国別論文数の動向を見ると、アメリカ、中国などの論文数は年毎に増加しているのに日本は近年下降線を辿っている。また大学ランキングを見ても、日本の大学のポジションは低下してきたように見える。 ここ10年間、研究資金が伸び悩んでおり、その結果を語るように、理系の論文数も伸び悩みになっているという指摘である。

 さらに、論文数を教員数で割ると、欧州の一流大学に比較するとその数が半分くらいに落ちる。それは統計の中に「論文数・さっぱり」の文系が含まれるからである。 

 ま た日本の大学の論文は、ポスドクなど任期つき研究員である非正規職の研究者がかなりの割合で執筆されていることだ。非正規職の研究者はローンを組むもこと もできず、身分不安定で研究に取り組まなければならない。このような現状も研究現場を脆弱にしているとの課題もあげた。 

 理系・文系とわけることも日本独特の文化である。最近、文系の就職が難しくなってきて、理系のほうに受験生が流れてくることは戦後始めての流れであるという。「文系の教員も英語の論文を大量生産して、海外で自論を主張する文化に変えるべきであろう」とも提示した。 

 日本の文系の研究者が英語で論文を書かないのは、その必要性を問われていないからでもある。能力がないからではなく、英語で発信するテーマが少ないと理解したい。これからは国際的なテーマを掲げて、大いに英語の論文を書いて海外へも発信することを期待したい。 

 と ころで、中尾先生の話でびっくりしたのは、東大は入学したら最後、退学や落第がほとんどないことである。極端な言い方をすれば、勉強しなくても卒業できる 大学なのである。東大は、こうした現状を変えようとしているのかどうか。もし落第学生を出すようになれば、他の大学への影響も大きくなるので、是非、東大 はリーダーになって適正な大学生指導を発揮してもらいたい。 

 また東大などエリート大学の学生は、適正検査をしてみると「反復・継続」が得意であるという結果が出ているという。 これが日本のエリートは「ミスを起こさない」という結果につながっているのではないかということだ。一面では結構なことだが、「堅実だけで発展性がない」人材になりかねない。こうした大学現場の教育課題にも言及し、会場との活発な討論が展開された。   

 

「スイカの原理を創った男 特許をめぐる松下昭の闘いの軌跡」出版祝いと松下昭先生のご健勝をお祝いする会の開催

  

 先ごろ日本評論社から上梓した拙著「スイカの原理を創った男 特許をめぐる松下昭の闘いの軌跡」の出版を祝い松下昭先生のご健勝をお祝いする会が、2014年2月26日、プレスセンターで開催され、多くの人たちの参加をいただき盛会だった。

 筆者がこのような形で開催したのは、出版のお祝いというよりも松下先生の発明人生を顕彰し、85歳になっても頭脳明晰、言語明瞭である先生のご健勝をお 祝いしたかったからである。発起人代表になっていただいた荒井寿光元特許庁長官はじめ、多くの支援者に囲まれ、筆者はもちろん松下先生も満足した表情だっ た。

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発起人代表でスイカカードを掲げながら松下先生の発明人生を紹介した荒井寿光さん
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祝辞を述べる藤嶋昭東京理科大学学長(左)と佐藤一雄元日本弁理士会会長

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挨拶した馬場錬成(左)と松下昭先生

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松下先生を囲んで記念写真

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生島和正・21世紀構想研究会理事から記念品の贈呈

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渡部政博さんから強力抗酸化作用のあるアスタキサンチンが贈呈された

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美女軍団に囲まれてご満悦の筆者

21世紀構想研究会・メタンハイドレート実用化委員会の開催

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 東京都知事選で各候補者たちは、脱原発かどうかなどエネルギー政策をめぐって激しい論戦を展開しているが、21世紀構想研究会のメタンハイドレート実 用化委員会(委員長・平朝彦・独立行政法人海洋研究開発機構=JAMSTEC理事長)が、1月29日にプレスセンターで開催され、活発な論議が展開され た。

 まず冒頭の挨拶に立った平委員長は、メタンハイドレート研究についての現在の国の取り組みの概略を説明し、今後、この委員会でも活発に論議していくべきとする抱負を語った。

 続いてJAMSTECの木川栄一海底資源研究プロジェクトリーダーが、メタンハイドレートの基礎的な知識から現在の研究開発に対する国の取り組み、さら にJAMSTECの最先の研究を分かりやすい写真や図を示して解説した。日本は研究レベルで世界の先端を行っていることにも言及し、新たなエネルギー源と して期待されているものの、過去のエネルギー開発の歴史を示しながら、実用化までには相当の歳月を要するのではないかとする見解も語った。

 続いてメタンハイドレート実用化への技術開発について株式会社みかづき代表取締役社長の杉本昭寿氏が講演した。杉本氏は、海底で採取するメタンハイド レートのシステム設計を開発して特許を取得している。今回はその特許技術に基づいた採掘現場の実際をイメージするアニメーション絵を披露し、凍結している メタンハイドレートを効率よく採集する技術を語った。

 このあと会場との討論となった。21世紀構想研究会理事長の馬場錬成氏は、「個人の見解だが」と断りながら、「大震災後に原発事故被災で深刻な事態を体 験した日本は、いまこそ新エネルギー源としてメタンハイドレートを実用化するべきだ。国家として取り組むテーマであるが、既成の原発・電力企業の消極的反 対にあって新エネルギー開発が滞っている。これを乗り越えていかなければ、日本の将来のエネルギー政策は行き詰まる」と述べた。

 また、メタンハイドレートの研究開発と商業的実用化への取り組みが、省庁別になっていたり研究現場で別れていることは非効率的だとの意見も出され、これからは国家が一本化したプロジェクトとして取り組むべきとする意見も強く出された。

                                

第108回21世紀構想研究会で林原靖氏が講演

                               
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第108回21世紀構想研究会は、岡山県の有力な地元企業として活動していた優良企業の株式会社林原が、実質的に倒産に追いまれた顛末について講演 し、活発な質疑が展開された。倒産に追い込まれたのは、同属経営による放漫経営であり、長い間、粉飾決算をしていたと報道された。本体の株式会社林原は、 子会社の林原生物化学研究所で研究開発した多くの成果を特許出願しており、少なくとも数千件の特許があったはずだ。

 この日の林原氏は、まず1886年の創業以来から破綻に至るまでの社歴と世界初として市場に出してきた製品の数々を紹介した。本体だけで年間350億円ほどの売上があり、年間キャッシュ獲得は100億円を超えていた。関連子会社を入れると650億円の売上だった。

 しかも破綻とされたときに、弁済率が93パーセント以上であり、知的財産権や様々な文化的な資産を計上すれば、優に100パーセントを超えていたとも語った。そのような企業がなぜ、金融機関によって破綻させられたのか。

 金融機関の事業価値の評価は、知的財産権のような無形資産は評価せず、社長の個人保証や生命保険を担保にするような非人間的な査定だったことを明らかにした。個人保証は、憲法違反とする意見もあるなど、日本の会計処理の後進性を訴えた。

  またマスコミの報道も表層的なものだけであり、「ガラパゴス状態」になっていると厳しく指摘した。ここの部分は、会場がプレスセンターであることなどから レジュメだけにして口に出さなかったが、中国銀行、住友信託銀行、大手法律事務所、マスコミの3極によって押し潰された実体を詳細に語った。

 林原氏が書いて出版した「破綻 バイオ企業・林原の真実」(WAC)は10万部を超えるベストセラーになっており、すべて実名で書いたものである。書か れた金融機関や法律事務所からクレームが来てもおかしくないと思われていたが、これまでクレームは1件もきていないという。

 また、粉飾決算とされた内容について質問が出たが、林原氏は売上の過大計上が30年間に300億円ほどあったが、年々これが減少しており、破綻とされた 時点で先の見通しがあったとも語った。一挙に計上して正常決算にする道もあったが、そうすると税金が過大にかけられてくる心配があり、徐々に減らす方向で 努力していたともいう。このあたりの事情は、講演会後の打ち上げ会で語ったものだ。

 いずれにしても林原は、約700億円で長瀬産業に「身売り」され、事業はほぼ引き継がれているという。創業一家が追い出され、蓄積してきた実績がそっく り他人の手に渡ったことになる。また、多くの美術品や土地、建物など林原グループとその一族が所有していたものは、二束三文で処分されてしまい、この倒産 劇では、まるでハゲタカのように利得を手にしていった人たちもいたことになる。

 個人資産を債務にあてるなど日本の未熟な制度は、産業の進展に大きな妨害要因として残っており、今後は社会問題として制度を見直す方向へ行かなければ、競争力のある国家や企業はできないし、ベンチャー企業も生まれにくくなる。

 そのような問題意識を確認して活発な講演と討論を終了させた。

 第4回知的財産委員会の開催

                              
      今後の知財制度の改革を論議する21世紀構想研究会の第4回知的財産委員会(荒井寿光委員長)が、12月19日、プレスセンター会議室で開催された。

 この日はまず、経産省知的財産政策室の川上敏寛室長が「営業秘密の保護」とのタイトルで講演し、その後に出席者らと討論を行った。川上室長の講演内容 は、営業秘密保護のこれまでの取り組み、営業秘密をめぐる近年の情勢、営業秘密をめぐる国際情勢、営業秘密の今後の方向性など豊富な情報を報告したもの だった。

 この中で、海外拠点からの技術流出、サイバー攻撃による技術流出、技術提携先からの技術漏洩など最近の動向を解説した内容を知って、出席者の視点が大きく広がったように感じた。特に韓国ではすでに技術流出に関する保護法律を実施しており、その迅速な対応には感心した。

 筆者の感想を言えば、日本は技術流出の現状と課題が分かっており、これに対応する法制度など枠組みをどのように実現するかがまだ見えない。その手順を進 めなければ漏洩の被害を食い止めることはできない。特に中国に流出した日本企業の技術で製品が製造され、日本を含む世界に輸出されている実例もある。

 国内法の整備を早急にしなければ、技術垂れ流しが常態化していくことになる。この日の委員会の後半は、日本の技術漏洩防止に関する法整備について具体的 に論議し、営業秘密保護法の試案も発表された。 今後この試案については修正しながら政策提言などの取り扱いについては荒井委員長に一任することで了承した。

 次回・第5回知的財産委員会は、1月28日(火)に開催する。

 第106回・21世紀構想研究会の開催

      

 第106回・21世紀構想研究会は、科学技術振興機構(JST)・中国総合研究交流センターの上席フェロー(元JST理事長)、沖村憲樹氏の講演で盛り上がった。

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 講演タイトルは「日本の科学技術は中国に抜かれた」というショッキングなものである。沖村氏は、中国の巨大大学群を築いた戦略的な大学・研究現場の統計データを示し、さらに世界に例がないハイテク・テーマパークの現状を紹介した。

 さらに中国の最近の研究水準が、欧州・日本に接近してきたこと、これに伴って産業技術力も急速に向上していること、宇宙、原子力など巨大プロジェクトで も日本に並び、あるいはぬき去っていった実情を報告した。中国の科学技術政策は、強力な政策遂行体制で推進しているものであり、政策決定と実行に時間がか かる日本の各種データと統計の比較なども随所で示した。

 この日の講演内容は、これまで一般に示されていなかった中国の科学技術の客観的なデータや現状を紹介して、日本の科学技術政策遂行に刺激を与えるためとも受け止められるものだ。また、中国の科学技術の現状に対する正しい日本人の視点を提起したものでもある。

 講演後の質疑応答では、次のような質問が出た。中国のハイテクパークは、不動産投資と外国企業や技術を呼び込むものであり、言われるほどの効果は上がっ ていない。それほど大きなインパクトはないのではないかとか中国は近未来、国が崩壊するのではないか。あるいは、中国の模倣品は世界中にばら撒かれている 現状を憂慮する意見なども出された。

 沖村氏とこの日、出席していた共同研究者の中国センターのスタッフなども加わって、こうした観測や見方に対する意見交換と討論を行い、実のある講演・討論の時間だった。

 

21世紀構想研究会で伊勢神宮を正式参拝

  
 21世紀構想研究会の活動報告をし、これからの社会貢献の決意を誓う伊勢神宮正式参拝が10月25日に行われ、19人の会員が厳かな中で参拝した。

伊勢神宮はさる10月2日、20年ごとに繰り返されている式年遷宮が滞りなく行われた。内宮は参拝が再開され、21世紀構想研究会としてご神体が移されたばかりの新正殿に参拝することを計画した。

本研究会会員の南川三治郎氏が、20年に一度催行される式年遷宮の写真記録を続けており、月刊「文藝春秋」10月号、「週刊文春」10月17日号(http://shukan.bunshun.jp/articles/-/3204)のグラビアで、「遷御の儀」として写真とともに原稿が掲載された。

今回は南川氏の尽力で伊勢神宮への正式参拝が実現したもので、10月25日は、堀川宗晴氏(元神宮徴古館館長)の案内で新正殿の中に進み出た。服装は全員ダークスーツという正装に威儀をただし、堀川氏の説明に聞き入った。

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当日は折しも台風27号の接近による暴風雨が心配されたが、「台風接近決行」で行われたものの、参拝する時刻には台風も沈静化して雨もなく、靄の中で煙るようにうっそうと茂る森林と大雨の水を集めて流れる五十鈴川の景観を見ながら、緊張した面持ちで正殿へと進んだ。

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 参拝者の氏名などはすでに登録しており、代表者記名などの手続きを経たうえで玉砂利の中を正殿前に導かれた。正殿の前に出るとさすがに心が洗われる気 分になる。ヒノキの香りが辺りを支配する中で弐礼弐拍壱礼という儀式にのっとり、無事、参拝を済ませた。 参拝後は、相差海岸花の小宿「重兵衛」に宿泊 し、楽しい歓談を行った。

翌日の10月26日は、マイクロバスで伊勢と鳥羽の間にある朝熊山・金剛證寺へと向かった。金剛證寺は、西暦572年に即位したとされる欽明天皇の時代に、暁台上人が草庵を建て修法したことに始まった寺院である。

その後、825年には弘法大師(空海)が真言密教の道場として、この金剛證寺を建立したとされる。

金剛證寺は、神仏が一体となった神仏習合の教えから伊勢神宮の鬼門を守る寺として、また霊場として伊勢神宮と並んでこの時代から信仰の対象とされてきた。

 この参拝でも南川氏の配慮で特に寺院の内部にまで入ることができ、寺院の祭壇の奥に祭ってある「天照大神」の神霊祭壇をも参拝できた。厳粛な気持ちの中で神道と仏教が融合する日本の歴史を実感した。

この金剛證寺には国宝が9点、国の重要文化財指定が5点あり、平安時代から桃山時代までの歴史の変遷を学び充実した気持ちで帰途についた。

 
                               
   21世紀構想研究会の知的財産委員会の第1回会合が、9月30日、プレスセンタービル9階の会議室で開催され、多くの知財改革への提言を討論した。

 この委員会は、従来からあった産業技術・知的財産権委員会を発展的に改組し、新たに出発したものである。新委員会の委員長には、荒井寿光さん(元内閣官 房知的財産戦略推進事務局長、元特許庁長官)に、副委員長に佐々木信夫さん(元特許庁特許技監)、事務局長に生越由美・東京理科大学知財専門職大学院 (MIP)教授が就任した。

 議題は、知的財産制度への提言をまとめることである。2002年の第一次知的財産制度改革から10年余を経て、知財制度にもほころびが出ている。中国、韓国など近隣諸国が着々と知財制度を構築しているのに比べ、先行していた日本はむしろ追い越された点もある。

 また模倣品対策などはもっときめ細かく、かつ迅速にしないと日本の技術流出が続き産業競争力が低下していく。こうした現状を考えれば制度改革は喫緊の課題である。

 この日の委員会では、出席者の立場から多くの意義のある意見が出され、討論された。模倣品が日本に入らないように水際で阻止する制度などでも不十分になっていることや、営業秘密保護法制定の必要性などの意見も出された。

 今後も論議を重ねて提言をまとめ、いずれ政府に提出することも視野に入れている。

                                

第104回・21世紀構想研究会の開催

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 第104回・21世紀構想研究会は、岩本沙弓先生をお招きして「これからどうなる日本経済」とのタイトルで講演をお願いした。当日はオープン参加としたため60人以上が参加して盛会だった。

 岩本先生は、100回記念シンポジウムのパネリストの1人として経済関係の見解を発表していただいたが、当日は時間の制約があって十分な発言には至らなかった。このため、この日の講演で存分に語ってもらう機会とした。

 講演ではまず、日銀の異次元金融緩和によって金利が低下するのかどうかを2008年からの米国10年もの金利のデータを基に解説を行った。日本の10年 もの国債については1981年からの金利の推移を示し、80年代の8パーセント代から1パーセント以下に低下していった経緯を解説した。

 金利急騰は4.6年に1回発生することを示しながら、過去の国際的な経済状況と連動する金利推移を解説し、日本国債の市場価格が下落することで日本経済、金融システムが破たんするというような論調は行き過ぎであると指摘した。

 消費税引き上げによる景気動向でも見解を表明したが、その中で非関税障壁としの消費税の在り方の例として、消費税のないアメリカの事情を解説した。これ は岩本先生の研究テーマの一つであり、これまでマスコミなどでもほとんど触れられていないテーマだけに非常に面白かった。

 日本の税の配分では、うまく機能していない日本の税の仕組みを指摘したが、OECDの所得再分配後の可処分所得の各国比較を見せられると、確かに日本は 分配がうまく機能していないように思えた。 税の仕組みについては、先月号の月刊「文藝春秋」でも、岩本先生は自民党野田税調会長らとの座談会で見解を語っている。

 アベノミクスの総括では、3本の矢のうち第2、第3の矢はこれからの政策であり、物価上昇の目標よりも日本経済力の増強がメインとなるべきだと指摘した。成長戦略についても具体的な内容はまだ出ておらず、国土強靭化にとって日本経済の死角はエネルギー問題であるとした。

 日本の強固な経済ファンダメンタルズにも言及した。支払能力の指標となる経常黒字、対外純資産、外貨準備高などは、いずれも世界のトップクラスであり、10年もの国債の利回りも世界の中で日本が最も低い事実も示した。

 いま、株式市場はきわめて神経質に上下を繰り返しており、直近のトレンドは東京オリンピック招致決定もあって上昇している。しかし株価は、為替相場と連動しており、米国の大統領選と株価・為替の推移とオバマ大統領の再選後の為替政策は転換する可能性を示した。

 岩本先生は、いまドル高材料になっているシェールガス革命に言及し、米国が本当に世界一の産油国になるのか、革新的技術改革が実体経済に浸透するまでのタイムラグを示しながらオイルバブルのリスク要因なども指摘した。

 グローバルな経済状況を歴史的なデータを俯瞰しながら自らの見解を披歴し、現在と近未来の経済を読み解いて解説した講演であり、参加者に大きな感銘を与えた。

 

 21世紀構想研究会・100回記念イベント打ち上げ会の開催
 

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さる4月から続いていた21世紀構想研究会・100回記念イベントの最後を飾る「打上げ会」が、7月19日、プレスセンタービル9階で開催され、50人を超える参加者で盛会のうちにイベントを閉幕した。

この日は、100回記念イベントの講演を行った、加藤紘一・日中友好協会会長(元自民党幹事長)、記念シンポジウムのシンポジストになった藤嶋昭・東京理 科大学学長、岩本沙弓・大阪経済大学客員教授、本会アドバイザーの荒井寿光・元特許庁長官ら多くの人が参加して楽しい宴となった。

打上げ式に先立ち、本会会員で曹洞宗の名刹・霊巌寺住職、秋尾常民師が「遊び心と禅」のタイトルで講話を行った。多くの仏教語を出しながら、その深遠 な意味と現代人の行動様式を引合いに出しながら、思い遣りや気配り、時代が変遷しても変わらぬ物事の価値観などについて思索する話をして参加者に感銘を与 えた。

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                      講話をする秋尾常民師

 この後で日本酒を賞味しながら日本酒文化の国際的な広がりを語り合う「日本酒を国酒に!」とする打上げパーティを行った。

 この日は本会会員である伊勢丹本社フードアテンダントの中澤律子さんが、特別に調達しきた12種類の銘酒を飲みながら、日本酒を堪能する会となった。

  

 

乾杯の挨拶をする加藤紘一先生(左端)、真ん中が筆者、右端は中澤律子さん。

 

 

ずらり並んだ銘酒と特製の升とお猪口も準備万端。

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次々と銘酒を味わい、連日続いた猛暑を吹き飛ばした。

  まず乾杯には「八海山」(新潟)スパークリングシャンパンと同じ製法で作られた発砲酒である。まるでワイン趣向の乾杯に参加者も大喜びだった。さらに次々と開けられた銘酒を特注のお猪口や特製の升(本会会員・井上善男氏の寄贈)で飲みながら楽しんだ。

堪能した銘酒は次の通りである。

*  新千歳(福井) さくらロック お酒の概念を変えてアルコール度数を氷でお好きなように。

*  小左衛門(岐阜) ゆず酒  香りとほのかな甘味を楽しんで。

*  古酒(福島) 流転 ワインのようにヴィンテージを楽しむ大人の味わい。

*  萬乗酒造(愛知) 醸し人九平次 三ツ星レストランのワインリストにも掲載される世界の酒。

*  大村酒造(秋田) 福小町 通の大吟醸 オリンピック招致のレセプションで出されました。

*  南部酒造(福井) 花垣 日本酒をオーク樽につけてバニラ香を楽しむ新しい日本酒。

*  宮坂醸造(長野) 真澄 ワインに近いアルコール度数を12度に抑えた優しい創造酒。

*  出羽桜酒造(山形)出羽櫻 100年前以上前から鑑評会に出ている地酒の雄といえる酒。

*  菊水酒造(新潟) 菊水 酒造米ではなく魚沼産コシヒカリで醸した柔らかい味わい。

*  勝山酒造(宮城) 勝山 貴腐ワインのような味わい チーズやショコラとのマリアージュも。

*  大七酒造(福島) 大七生もと 最高級の雫原酒の選りすぐり サミット乾杯酒にも採用!

 

100回記念シンポジウムの報告(その4)

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 記念シンポジウムは、「希望ある日本のために何をなすべきか」をテーマに、5人のパネリストによる意見発表のあと、橋本五郎氏をモデレーターに討論を行った。

  橋本五郎氏

 それではこれからディスカッションをしたい。論点を私なりに絞って、パネリストの先生方から話をお聴きしたい。

 最初に岩本先生からアベノミクス後の株式、債券市場の乱高下の話があった。これは最も切実な問題であり神のみぞ知るとあったが、まさに政治では制御不能という状況ではないか。岩本さんの指摘を踏まえてもう少し考え、分析を試みたい。塩崎先生はいかがでしょうか。

塩崎恭久氏

 株式、債券などのマーケットは近視眼的に動き過ぎる。たとえば不良債権を処理しようとなった時、次に何をやろうかと いうときにマーケットの動きが大きくなることがあった。今回の株の乱高下のようにナーバスになっているときは、何か変化が起きるときであり、政治が制御不 能だからではない。いずれ市場は落ち着いていくことだろう。

 毎日動いていることに一喜一憂しないで、トレンドとしてどうなっていくのかを見るべきだろう。株価ではなく本当の経済実態を見ることだ。日本はいい方向 ヘと向いているのであり、基本的にアメリカも同じだ。アメリカの金融引き締めは、景気がよくなっていくからそうするのであり、マーケットは賢くないと思 う。

 政治が不能なのではなくマーケットとはこんなものだ。時間が経てば一つの方向に向かっていくのであり、むしろトレンドとしてどうなるか、本当のところを見ることだ。日本はいい方向へ向かっているし、アメリカは経済もよくなっている。

 橋本五郎氏

 大きなが流れとしては、成長戦略がきちんと実行できるようにならないといけないとよく言われるが、岩本さんは如何でしょうか。

 岩本沙弓氏

 日本経済は、エネルギーの問題を抱えており貿易収支は赤字である。原発は止められ原油の輸入価格が上がっているので赤字が続いている。海外にエネルギー を頼っている場合には一方的に円高がいいのではなく、やはり円安もいい。円高はエネルギー源を安く調達できるのでいいかもしれないが、円高・円安のどちら がいいとか悪いとかの問題ではない。これまでは円安がいいのではないかという論調もあったが、ここはバランスを取ってニュートラルに考えるべきだろう。

 塩崎恭久氏

 為替は双方向だ。これまではどう考えても円高が強すぎたかもしれない。しかしこちら側が決めることではなく、相対的なことで決まることだ。金融政策でど こまで変えられるかという問題があったが、今回、政策でこんなことができることが分った。あとはどのくらいがいいのか考えながらやることだ。

 橋本五郎氏

 さて経済の問題はこのくらいで、次にリーダーはどうあるべきか、リーダー像をどう思うかというテーマに移っていきたい。藤嶋さん如何でしょうか。

 藤嶋昭氏

 橋本さんがイギリスのサッチャー首相や大平首相についてのリーダー論を語った。これを聴いて、いま本当に真のリーダーが必要だなと思った。それがいま一番欠けているように思う。

 橋本五郎氏

 大学の現場ではどうですか?

 藤嶋昭氏

 大学は使命をきちんとわきまえて活動することが大事だ。日本が生きていくためには、資源がないから科学技術でしか生きていけない。今までは自動車、カメ ラ、電気製品とか工業製品でリードしていた。それがどんどん中国などに追い上げられてきた。こうなると日本は、ブレークスルーをやっていくよりない。私た ちもその使命を担って次世代の素晴らしい技術を開発するよりない。大学としてはそれよりない。

 橋本五郎氏

 中曽根内閣のときにがん撲滅10か年計画という政策を打ち出した。何年計画というのは、やはり必要ではないか。柳澤さんは、これをどう理解するか。

 柳澤幸雄氏

 自分は環境問題が専門だ。中曽根政権の打ち出したがん撲滅10か年計画では、確かに人材の基礎が出来上がった。研究の基盤を作り若い人を育てるというの は、短期間では意味がないので10年規模くらいの期間で人の基盤を作っていくことが重要だ。いくつかの分野でやるべきだ。人が育っていく土壌を作る必要が ある。

 橋本五郎氏

その点で塩崎さんはいかがでしょうか?

 塩崎恭久氏

 今回の成長戦略でも長期計画は見ている。ただ10年は長い気もする。例えばGNI(gross national income=国民総所得 )を増やすとか、名目3パーセント成長を目指すとか、10年目標でやっているが、しかしもっと短期間になるべきこともある。

 政府も今回、高低を付けて停滞から次の10年、再生の10年と言っている。10年は長いと思うが、他に短くていいものが多数あり政府も一つ一つに目標を定めてやることが重要だ。

今回のアベノミクスの特長は、総理が絶対ぶれない意志を持っていることが伝わっている。第1弾で農業とか医療とか雇用とかの課題でオンゴーイングするんだということだ。

  岩本沙弓氏

 アベノミクスを肯定する立場というわけではないが、私はディーラーとして、いい状況があれば必ず悪い状況もあるはずだという常にリスクを考える仕事をし てきた。アベノミクスの最大の問題は、日本の経済状態の好転はアベノミクスだけなのか、ちょっと俯瞰して考える必要がある。 

 国内だけの要因ではなく海外特に米国の事情もある。アメリカはシェールガス革命になっている。たまたまアメリカ経済が立ち上がってきた、日本も一緒に立ち上がる状況になってきた。

 ドル・円レートでも、円だけの要因で動くのではなくドルの要因でも動いている。双方の要因がオーバーラップしていくことを分析して見ることが重要だ。アベノミクスの一番のリスク要因は消費税である。これまでも消費税を導入した後にさまざまな状況が派生的に起きている。

  塩崎恭久氏

 97,98年の金融危機は、消費税が主因ではないと思っている。不良債権問題があり、借りたけど返せない状態になった。不動産屋さんだけでなく、そうで ないところも同じになった。産業構造の転換がうまく言っていなかったという構造の問題があったからあのようなことが起きてしまった。

 それには金融機関も責任あったし、監督する当時の大蔵省にも責任があった。課題解決を先に送ってきた。みんなで先送りした。

 今回の消費税は合計5パーセントあげるのだから、これには備えて行かなければならない。財政で勝てるかとなると、それだけではなく国際競争で負けてきたという問題がある。

 どうもうまくいってなかったし、日本は負けてきた。その根本のところを日本はどうするのかが大事だ。景気が上がったら反動が必ずある。これをどうするかが大事だ。

 社会保障の先行きに不安を持ちならが、財政にも赤字垂れ流しでいくのでは経済健全化にならない。財政はある程度の方向性を出すべきだろう。

 橋本五郎氏

 経済を議論したが教育の問題に移りたい。藤嶋さんが示した753を864に変えるには。いったいどこに問題があるのか。教師にあるのかそれとも文部科学省にあるのか。どこに問題があるのか。

 藤嶋昭氏

 いま一番の重要なことは小学5,6年の理科教育をきちんとやることだ。小学5,6年生の理科はかなり難しい。小学校の教師は大体文系だ。これで全科目を やらないとならない。そこで5,6年の理科を専任の教員かあるいは理科に強い先生が教えてくれて、理科の面白さを子供たちに伝えることが大事だ。

 橋本五郎氏

教師たちはどう思っているのか。

 藤嶋昭氏

 小学校の先生は全教科をみるのだが、大体は文系の先生だ。理科の難しいのを教えるのは難しい。実験の面白さからやってもらうようにしないとならない。観察とか実験をやるだけなら簡単だ。それ以上のことをやることが難しい。そこをうまく教えることが重要だ。

 橋本五郎氏

 現場では苦心のしどころだろうが、それではどういう風にやるべきか。柳澤さんいかがでしょうか。

 教えることはものすごくお金がかかる。さきほど、藤嶋先生はコンパクトな実験を見せてくれた。そのような実験を子供たちがやるには一人だけではできない。実験助手が必要になってくる。

 理科の専任の先生と同じ人数だけ助手が必要になってくる。そうするとその人たちの給料が必要になる。理科の教室の設備も含めてお金がかかる。

 たとえば枕草子を読むだけならお金はかからない。そころが、ある現象を教育するにはお金がかかってくる。これをどうするかが大きな課題だ。

 

橋本五郎氏

 退職された先生をバイトで雇うことはできないか。辞めたが一日中、家にいるのでは奥さんが一番困るだろう。それを敏感に察知した男性は、朝飯食うと公園 に出かけて静かに時間をつぶしているらしい。これをバイトで雇えば元気が出てくる 学校では余り教え子に近づけたくないのだろうか。昔の話ばかりするから かなとも思う。

 

藤嶋昭氏

 東京理科大学は歴史的に数学と理科の教員を多数世に出している。いい先生を出すには学生のうちに指導することが大事だ。この教員の育成には、校長先生を やって家にいると困る人にお願いして指導者になってもらっている。理科大ではボタンティアに近い形でやってもらっている。

 

 橋本五郎氏

 理科だけでなく、大学を出たばかりの若い先生がすべてに対応できるわけがない。一線を退いた人をうまく使うことは資源のリサイクルになるのではないか。もうちょっと積極的にやるとうまくいくのではないか。

 

塩崎恭久氏

 世界の100の大学のランキングを見ると日本の大学では東大と京大しか入っていない。 韓国は3つ入っている。自民党は10年内に10大学を入れることを目標にしている。

 そのために何をやるか。たくさんやることがある。3年前に成長戦略を作った時に、指標は実は国際化で負けている。しかし科学という指標でいくと上に行くがトータルで行かないとダメだ。日本の大学は外国の先生が少ないし、外国の学生も研究者の少ない。開かれていない。

 留学生の話もあった。希望する人が優秀なら全員、留学できるようにやりたいし逆に来てもうこともオープンにするべきだ。小中高といろいろ問題が出ている が、入試にも問題もある。日本では自分の大学で入試問題を作ってやっている。この形式は先進国ではあまりない。みんな共通テストでやり、後は論文とかアド ミッション方式でやっている。日本は大学入試制度を変えないとダメだ。

 高校生が入試を目標にやると、大学入試後は燃え尽きた学生になりがちだ。入試の点数が高いからいいというものではない。それでは決まらない。高校でどう いう社会貢献をしたのか、大学がアドミッション方式で取るときに評価の基準を作ればいい。そうすると高校生は、自分が地域で何をしたのか何を貢献したのか を考えるようになる。

 そのように入試を改革することは、とても大きな課題であると位置づけている。小学1年から英語を教科にしようとしたら、時の文部科学大臣が日本語もできないのに英語をやるのはダメだと反対した。結局、小学5年生からになった。

 英語をただ読んだり書いたりではなく、英語でコミュニケーションができる人を育てないとならない。コミュニケーションができないのでは社会に出ても伸びない。大学改革が大事だ。

 学長は選挙で選ばれるのではなく、理事会とか選考会が指名するなど大学のガバナンスを高める必要があるのではないか。教授会が学長の足を引っ張ったりすることがないようにするために、教授会の位置づけを本来の学長の諮問機関とするべきだ。

 選挙で学長を選んでいるとなかなかうまくいかないのではないか。我々国会議員も選挙で選ばれていると、あっちににこにここっちににこにこしないと選挙に当選しない。これでは大胆な改革などできない。

 ノーベル賞級の学者がなぜ日本で教えられないのか。逆になぜ、日本でノーベル賞を取った人が外国へ出ていくのか。そういうことを考えると大学のありかた、ガバナンスを考える必要がある。リーダーシップをとれる大学に期待している。自民党は改革のメニューを入れている。

 

橋本五郎氏

 大学は一見、民主主義的にやっているようだが結構無責任だ。恨みと嫉妬だけはある。政界とかなり似ているところもある。弾が後ろから飛んでくることもある。藤嶋さん、これはどうあるべきか。

 

藤嶋昭氏

 やはり理事会がリーダーシップを持って確固たる方針をもってやるべきだ。そうするとついてくる。堂々とやることが大事だ。さっきの大学のリーダーが必要だということと同じだ。

 

橋本五郎氏

 日本で最初にノーベル賞をもらった湯川秀樹博士の自伝の中で、父親は兄弟の中で一番ダメだと言われたという。ところが学校の先生は一番可能性があると見抜いて、ちゃんと大学に行かせるべきだと進言したという。

 先生が子どもをちゃんと見ている。そのことで一生が左右される。そうなると先生の役割は最も大切だと思っている。この世の中で、それぞれの一生を決めて しまうほどの役割がある。そうなるとそのような体制になっているのかという問題もある。東大に行くのも一つの指標かもしれないが、長い一生を決めるにあ たっては、先生がその役割を担っていることは非常に大事だ

 

柳澤幸雄氏

 子供が生まれて誰に育てられるのか。時系列で考えると生まれてすぐは親だ。幼稚園から小、中、高校と先生が関与する。そして思春期になると友人の影響が非常に大きくなる。

だからどういう生徒集団、どういう学生集団を作るか、その中でどういう形でお互いに切磋琢磨するのか。

 それを教員が持っていないと、時間的に持っていないとダメだ。教員は教室で知識を教授するだけではない。ものの考え方人格の形成に大きな影響を発揮するべきだ。また、友人関係をどう意識するのか、それを意識させる学校運営が大事だ。

 

 橋本五郎氏

 藤嶋さんは時代の雰囲気が非常に大事だと言った。昔、末は博士か大臣かと言ったが、あれは結構いいキャッチフレーズだ。いまはそれに代わるものがない。この雰囲気をどうやったら作れるのか。

 

藤嶋昭氏

 それは一人では無理だ。複数の同じ考えの人が集まって、なんかやろうとなるときにできる。やはり2,3人の同じ考えの人が来るというのが最も大事だ。明治時代もいろんな芸術でも同じ分野の人が集まって雰囲気を作って大きな力になった。

 

橋本五郎氏

 非常に大事だ。気持ちが国民全体の中に回ることが重要だ。宇宙探査機「はやぶさ」のときもそうだった。知識を血に対することだ。

 

藤嶋昭氏

 本を読もうという運動をやったきっかけは、川崎市の教育委員を10年やった経験からだ。教員採用試験をしたとき、面接者にこの1年間に読んだ本を言ってくださいと質問したら誰1人読んだ本を言えなかった。

 受験勉強の本を読んでいても一般の本を誰一人読んでいない。その人たちがみんな先生になる。これはひどい。自分を高めないとダメなので本を読もうというキャンペーンを始めた。

 大平正芳元首相はすごい読書家だった。あーうーと言っているが、一番の読者家だったのをみんな知っている。自分を高めることをしている人はみんな分かっている。

 

橋本五郎氏

 アメリカの元大統領のリチャード・ニクソンが、指導者とは、偉大な政治家とは、偉大な読者家であったとも言っている。塩崎さんいま政界を見ていて如何ですか。

 

塩崎恭久氏

 ま、人それぞれだと思います。今回まとめたものに知恵に対する話があったが、中間提言のなかで総理の科学顧問を設けよと提案している。英米では、チーフサイエンスアドバイザーがいる。

 政治家が科学をどのくらい受け入れる心を持っているか。原発事故が発生したとき、海水注入をやめろとか、あるいはベントを早く命令するとか、大きな声を 出した総理大臣もいた。イギリスの人に聞いたら、イギリスの政治家はそのような科学的な判断に口を出す人はいませんと言っていた。原子炉の中の問題につい ては、独立性をもってやならいとならない。

 下手な科学者の判断よりも政治家の方が判断は正しいと思い込んでいる政治家が多いのではないか。サイエンスアドバイザーを日本でもおけと言っている。しかし文部科学省が反対している。総合科学技術会議があるではないかと言っている。しかしこれは人を置くことだ。

 イギリスにはほとんどの役所にサイエンテフィックアドバイザーがいる。国務省にもいる。深い科学者として考えを持った人が科学的判断を提供している。そ してそれを受け入れる人がいる。事務官にも政治家にもいる。向こうでは専門的なアドバイスを受け入れることが事務官にも役所にも政治家にもある。

 

橋本五郎氏

 専門家が十分に機能を果たしているのか。そこだと思う。それぞれの立場もあるし意見もあるのだろうが、日本で言えるのは、みんな自信なげである。そう やっていままで原発をやってきたのかとなる。ここは藤嶋さんに聞きたい。専門家がこうやるべきだ、素人が口を出す問題ではないと言わねばならないのに、国 民の目線になっているようだ。専門家がこれではどうするんだとなるがいかがでしょうか。

 

藤嶋昭氏

 それについてコメントするのは難しい。大体、原子力の専門家は同級生にいるが、あのときは優柔不断というか決断をちゃんと言わなかったように感じる。それが一番問題だ。 専門家はちゃんと言わないとダメだ。

 

塩崎恭久氏

 国会の事故調査委員会で問題になったことは、規制のとりこになっていたことだ。専門性があまりに高いので、専門性の規制のされる側にとりこになった。

 原子力安全基盤機構があって、専門家として組織を統合して、かつての保安院は基盤機構に下請けに出して作ってもらっていた。事故のとき基盤機構に100くらい提案あるとしていたが、保安院にいくと10くらいしか理解できなかった。官邸には1くらいしか届かなかった。

 これを解決するには、1つにまとめてこれを専門性のある力のあるものに変えていかないとならない。統合することに法律で決めている。しかし一部政府の人 たちは熱心にしていない。早くやらないと原子力規制に対する信頼はいつまでたってもできない。能力がないと言われてはダメだ。

 

橋本五郎氏

 高校のときからいい人材を作っていくことが大事だ。大学でなく高校のときからということが大事なことでしょう?

 

柳澤幸雄氏

 英語、数学、国語という科目が入試にある。抜けていることで典型的なことがある。たとえば国語で漢字をよく知っている。教養があると思われている。数学がよくできる。この人は頭がいいと思われている。英語がよくできる、この人はスマートな人と思われている。

 日本の場合、大学で文系と理系に分ける。高校でも分けている学校がある。開成高校は分けていない。大学に行くとき、数学が苦手だから文系に行くという人が非常に多い。そうすると仕事に入った時にも数学的な素養が不足し、損をすることになる。

 高校で言うと、入学試験は教育の大きな流れを決める非常に大きな要素だ。小学、中学、高校とも指導要領に縛られているが、生徒は学校だけでなく塾でも勉 強をしている。そうすると大学の入試はこういう問題である。それに合わせて子供たちは勉強している。莫大なエネルギーがそこに使われている。

 大学がどのような入試問題を出すかというのは、大学の社会的に存在する自分たちのメッセージなっている。いま入試改革が言われている。そのとき日本の入試では生徒自身が自分を評価しているというメカニズムがない。

 TOEFLなどは何回も受けられる。最大で7回受けられる。自己評価とその試験の評価の一致をはかることができる。何度も受けることができると自分はもっとできるのに点数が悪い。それならもっと勉強するとなる。また受ける限界かなとか判断できる。高校時代に判断できる。

 そのように生徒自身が判断できる。自己判断ができることが大事だ。是非とも入試改革をするべきだ。

 

 

橋本五郎氏

 最後に株価はいったいどうなるのか。買ったらいいのか買わない方がいいのか。ということは受験勉強と何も関係がない。スポーツのあり様と株価のあり様とどう関係があるのか。

 

岩本沙弓氏

 難しいですね(笑)。大阪経済大で教えているが大阪には堂島という取引所がある。先物取引所がある。この取引を世界に先がけて開発したのは日本人である。

 実は日本人は市場経済に非常に敏感な国民である。大阪と京都にいち早く伝える旗振り通信、火の見やぐらを作って伝えた。旗振りの中継所は4か所ある。そこで旗振って伝達していた。

 大阪から京都まで旗振りで伝える中継地点が全部で4つある。旗を振るだけだが、どのくらいの時間がかかると思うか?

 

橋本五郎氏

?・・?・・、3時間くらいだろうか。

 

岩本沙弓氏

 実は4分でできていた。旗を振り、双眼鏡で眺めて情報を収集した。いまNTTで電波通信は旗振り通信だと言われている。日本人は創意工夫する国民だ。相場も、もともとそうだった。

 いわき市にカンガルーという会社がある。大震災で100パーセントダメになってから1か月で回復させた。底力のポテンシャルがある。底力があるのだから、もう少し自信をもってやると全然変わると思う。

 

橋本五郎氏

なるほど。そのポテンシャルに期待してこのシンポジウムを終わりたい。

 

 

馬場錬成・21世紀構想研究会理事長の閉幕挨拶

 5人の先生方の専門性の高い思索からの意見が述べられ、一時は話が発散してどうなるかと思いながら聴いていた。アベノミクス、財政金融問題、そして広く教育問題へと話題は広がり、日本のためにどうするのかというフォーカスでは一致していた。

 5人の先生方が明確にそのようなメッセージで語ったわけではないが、私なりにそのように感じた。ご発言の中で共通だったことは、日本にはリーダーが不足している。今こそ確固とした信念をもった専門性の高いリーダーが必要だ。

 国を建てるのは教育である。教育は教師の在り方、教育制度の在り方、入試のありかたなどで各論が出ていたがリーダーといい人材を育てていく教育が一番重要であることを5人の先生が角度を変えて発言していた。

 日本と日本人は、この150年間に世界でも稀有な進歩を遂げた。日本と日本人はきわめて優れた民族の1つだ私は考えている。これまでの実績と民族の資質 を認識し、これからも誤りなきように歩いて生きていきたと思う。世界に貢献できる人類の福祉に貢献できる日本と日本人でありたいと思う。

 21世紀構想研究会100回記念シンポジウムは、実り多い討論に終始して終了した。5人の先生方に篤くお礼を述べ、改めて盛大な拍手で謝意を表したい。

 有難うございました。

             

                               

21世紀構想研究会・100回記念シンポジウム報告(その2)

                               
                 

 冒頭に21世紀構想研究会の歴史と活動を紹介

 シンポジウムの冒頭、21世紀構想研究会の馬場錬成・理事長から、1997年9月の創設から今日までの研究会の活動実績を報告し、今後も社会貢献を目指して討論や政策提言を目指す決意が語られた。

  まず、21世紀構想研究会の設立目的は、時代の変革で続出してきた課題を提起、討論する場を作ったことだった。IT(情報科学)の進展によって国、企業、 社会のあらゆる場面での変革を予見し、知的基盤の強固な研究現場と産業振興の技術革新の実現をしなければ、日本は真の科学技術創造立国を確立できない。

 そのような課題を認識し、適宜、研究テーマを掲げて討論し、そこで得られた成果を社会に訴えて啓発しながら国の政策にも結びつくように活動する方向を目指して出発した。

 会員は現在およそ100人。主として有力なベンチャー企業、政府機関、大学・研究機関、マスコミの4極から集まっている。

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 21世紀構想研究会の歴史と活動を紹介する馬場錬成・理事長

  下部組織として4つの委員会が活動

 21世紀構想研究会には現在、産業技術・知的財産権委員会(生越由美・委員長)、生命科学委員会(東中川徹・委員長)、教育委員会(銭谷眞美・委員長)、メタンハイドレート実用化委員会(平朝彦・委員長)が活動を行っている。

 それぞれ時代の要請を見ながら研究会を通して課題を認識し、政治、行政に対して成果を伝え、働きかける活動につなげている。過去の実績では、本会アドバイザーの元特許庁長官、荒井寿光氏を中心に度々、知財立国への制度改革や現場の課題を報告し、政府にも政策提言を行ってきた。

 また中国にも2回訪問し、中国社会の急速な進展と日系企業の現地での活動を視察した。さらに東日本大震災の前後には東北電力女川原発を視察し、原発の実情を学び、大震災の被災の現場を見る機会があった。 

 会員企業の栄枯盛衰

 21世紀構想研究会の会員は、有力なベンチャー企業の創業者に参加を求めたところに大きな特徴があったが、会員となった企業は成長するとは限らず、厳しい競争社会の中で大きな試練に立っている現状を知った。

 会員企業の中で、業績が順調に伸びた企業と事実上倒産した企業が交錯している。業績を伸ばした代表的な会員企業は次のような企業である。

 武蔵エンジニアリング株式会社、株式会社日本一、株式会社ガリレオ、株式会社発明通信社、株式会社高速屋、株式会社みかづき、株式会社グッドバンカー、株式会社ホトロン、ユーヴィック株式会社、株式会社東京大学TLO、バイオジェニック株式会社などである。

 会員になった多くのベンチャー企業は、特許など知的財産権を多数取得し、独創的な技術を武器に市場へ打って出たものであり、順調に業績を伸ばして上場した企業も3社ある。一部上場まで果たしたのが荏原実業株式会社である。

 その一方で上場した後に事実上倒産した企業が2社出ている。株式会社YOZANとシコー株式会社である。また知的財産戦略をもとに活動を続けるも業績不振で事実上倒産した会員企業が5社出ている。

 株式会社 YOZANは、第3世代携帯電話(W-CDMA)用の集積回路の設計・開発を行い国際的にも脚光を浴びて2000年9月1日に株式をJASDAQに上場し た。その後、半導体開発では安定的な成長が望めないとして電気通信事業者へ業態転換を行ったがうまくいかず事実上の倒産となった。

 シコー株式会社は、振動モーターを発明して携帯電話機のマナーモードを世界中に広げたものだが、円高、中国での人件費高騰、デリバティブ差損などの逆風に持ちこたえることができず、わずか3億9千万で中国の名もない中小企業に買収されていった。

 このような実例を知ることによって、21世紀構想研究会は国際的な技術開発競争、ビジネス経営の難しさを知り、分析・研究を行い、研究成果の一部は2011年度の日本知財学会で発表した。 

 「たかが学校給食と言うなかれ」

 また、食育推進事業の一環として始めた「全国学校給食甲子園大会」は、2013年に第8回目を迎えることになり、全国の学校給食現場では知らない人がいないくらいに有名なイベントになった。 

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  第7回学校給食甲子園大会に優勝した愛知県西尾市立西尾中学校
学校栄養職員・冨田直美さん、調理員・三浦康子さん
 

  昨年の応募校は、全国から2271校(センターも含む)あり、年々参加校の数が増えている。これは単に学校給食の調理コンテストではなく、一般の人々にあ まり知られていない学校給食の理解を高め、日本を背負っていく次世代の児童・生徒の栄養と健康を見守り、重要な使命を帯びて日夜頑張る栄養教諭、学校栄養 職員、調理員を顕彰する大会にするのが主たる目的である。

 また、地場産物を供給する生産者、流通業者、保護者らとの交流促進にも役立て、食文化が一国の文化と密接につながっていることを理解しながら学校給食の重要性を社会に向かって啓発しているイベントである。「たかが学校給食」と言うなかれというのが私たちの主張である。学校給食は、食育推進の観点から、次のようなキーワードで研究を進めることができる。

  子供 栄養 健康 躾 教育 生活 地域 社会 国家 文化

 学校給食から見えてくる課題は、国家観にまで広がっている。  

 これからの21世紀構想研究会活動にご支援を

 世 界的な産業構造の大変革の中で、日本はどのような国作りをし、どのように産業構造を変えていくのか。そのために知的財産戦略をどのように策定し推進するの か。これは国家だけではなく企業、大学・研究機関など日本全体の課題である。産業技術・知的財産権委員会では、近く知財改革の討論を開始し、日本の近未来 の産業構造や知財戦略の再構築を模索しながら政策提言できるような改革案を作成したいと考えている。

 私たちは時代認識を明確に意識した社会啓発活動を続けていく決意である。

 これからもご指導、ご支援をお願いしたい。

 大学学長、東大特別栄誉教授) 

柳澤幸雄(開成中学・高校校長、東大名誉教授)

  21世紀構想研究会の100回開催記念のシンポジウムが6月11日午後6時半から、東京・内幸町の日本記者クラブ10階のプレスセンター大ホールで開催された。 

 冒頭、筆者は21世紀構想研究会の理事長として、第1回の研究会開催から今日までの歴史を簡単に説明し、これまでの活動実績や今後の活動方針について報 告した。この後、「希望ある日本のために何をするべきか」をテーマに、モデレーター、パネリストの5人が冒頭にコメントを述べ、そのあとで討論を行った。

 今回の報告では、全体の印象を筆者なりに示したいと思う。まず第一印象は、自分たちが主導で決めたパネリストの人選であるが、多方面の分野からの代表と いう形になり非常によかった。(自賛) 将来の首相候補として最も近い距離に立っている塩崎先生は、さすがに政界事情を巧みに勘案した発言をしていたが、 基本的に「実現可能な政策」という視点に立っていたことは政治家として一定の評価をしたい。

 岩本先生は経済学者、特に直近の為替変動、金融政策、株価乱高下を日々解説する立場に立っているので、冒頭は株式市場の解説を歴史的なデータを示して行っていた。これは冷静な視点を示したもので非常にためになった。

 藤嶋先生は、最近取り組んでいる青少年の読書運動と理科離れへの歯止め運動から教育全般にまで広げた話題は面白かった。「空はなぜ青いか」と問いかけ、その理屈を解説し、しかも持参したペットボトルに懐中電灯を当てて青空の理屈を見せてくれたのは、鮮やかな手法だった。

 柳沢先生は、東大進学断然トップという有名高校の校長らしく、開成高校の卒業式での式辞の話からこれから人生を歩む若い世代に告げるメッセージを披露しながら、親や社会人の果たすべき責務について考えさせるメッセージを発言していた。

 モデレーターの橋本先生は、膨大な蔵書を抱える読書人らしく、昔の偉人たちのエピソードを適宜に織り込みながら、地方の疲弊、少子化問題など現代の重要 課題を国民の目線で考えることを提起しながら深く思索するように示唆した。さらに4人のパネリストを巧みに束ねて2時間の論戦を仕切った手腕はさすがだっ た。

 5人の討論の内容については、この後で詳報を掲載していきたい。

 

                               

21世紀構想研究会・100回記念イベント第3弾で生島和正氏が講演

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 21世紀構想研究会の100回記念イベントの第3弾は、武蔵エンジニアリング株式会社の生島和正社長が「我が社の事業とその経営哲学について、または、これからの世の中を確かに生きていくために -若者に捧ぐー」とのタイトルで講演を行い、会場と熱い討論を展開した。

 生島社長はまず、液体を超細密に制御するハイテク技術で世界トップの技術力とマーケット支配をしている活動を分かり易い映像データなどを使って説明した。

 経営哲学とする基本理念には、幸田露伴の「努力論」と二宮尊徳の「報徳訓」の思想を取り入れた「露伴・尊徳ism」を確立し、独自の経営理念で活動して いることを熱く語った。具体的な行動様式としては、誠実、挑戦、独創性の3本の柱を掲げていることを説明したが、この中でも特に誠実という企業姿勢を明確 に打ち出していると語った。 

 さらにビジネス社会は競争ではなく闘いであるとし、企業が強くなるためには技術力、製品力、販売力、組織力、仕事力、人間力をあげ、もの作りに取り組む経営は「美学」であるとする独自の経営観を語った。

 さらに「これからの世の中を確かに生きていくために -若者に捧ぐー」として、世の中の見方、考え方について独自の歴史観と世界観を披歴し、感銘を与えた。

 21世紀構想研究会「100回記念シンポジウム」の開催案内

    
 21世紀構想研究会は、設立から15年目の2013年6月、100回開催記念のシンポジウムを開催します。

 是非、参加をお待ちしています。無料です。

特定非営利活動法人21世紀構想研究会100回記念シンポジウム案内

 開催日時:2013年6月11日(火) 午後6時半~9時

テーマ :希望ある日本のために何をなすべきか
 

モデレーター 橋本五郎(読売新聞東京本社・特別編集委員)

 

パネリスト 

岩本沙弓(大阪経済大学 経営学部 客員教授) 

塩崎恭久(自民党衆院議員、元内閣官房長官) 

藤嶋 昭(東京理科大学学長、東大特別栄誉教授)

柳澤幸雄(開成中学・高校校長、東大名誉教授)

 

  橋元五郎氏

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 1946年生。1970年、慶應義塾大学法学部政治学科卒、読売新聞社入社。政治部、論説委員、政治部長、編集局次長などを歴任。読売新聞編集委員を経て現在同特別編集委員。日本テレビキャスター(「ジパングあさ6」「ズームイン!!朝!」)、東京大学経営協議会委員、NHK中央放送番組審議会委員、東日本大震災復興構想会議委員などに就任。 読売新聞紙面でタイムリーなテーマで論評を執筆して多くの「橋本ファン」を作った。現在、読売テレビ「ウェークアップ!ぷらす」コメンテーターなどを務める。著書に『新聞の力』(労働調査会)、『総理の器量』(中公新書ラクレ)、『「二回半」読む』(藤原書店)、『範は歴史にあり』)など多数。

 岩本沙弓氏

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  1991年東京女子大学卒。同年から日・米・加・豪の大手金融機関にて外国為替(直物・先物)、短期金融市場を中心にトレーディング業務に従事。日本経済新聞社発行のニューズレターに7年間、為替見通しを執筆。金融機関専門誌「ユーロマネー誌」のアンケートで為替予想部門の優秀ディーラーに選出される。 現在、為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院特別委員会にて参考人として出席するほか、政党関連の勉強会等の講師にも招かれる。大阪経済大学経営学部の客員教授を務めている。主な著作に「新・マネー敗戦」(文春新書)、「最後のバブルがやってくる」(集英社)など。最新刊「バブルの死角」(集英社新書)は2013年5月発刊。

 塩崎恭久氏

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1950年(昭和25年)生。1975年、東大教養学部教養学科アメリカ科を卒業して日銀に入行。1982年にハーバード大学行政学大学院を修了、行政学修士号を取得。1993年、衆院議員選に出馬して初当選。以後、衆院議員6期、参院議員1期を務める。金融危機に伴う1998年の金融国会では、金融再生トータルプラン、金融再生法の策定に奔走し、政策新人類と呼ばれ注目された。衆議院法務委員長、外務副大臣を経て2006年の第1次安倍内閣で内閣官房長官・拉致問題担当大臣に就任。2011年3月の福島第一原発事故を機に「国会事故調査委員会」(憲政史上初めての国会内調査委員会)を立ち上げ、「原子力規制委員会」の創設を主導し原発・原子力問題に全力傾注。現在は、自民党政調会長代理・日本経済再生本部本部長代行として日本経済のデフレからの早期脱却に向けて鋭意取組み中。

 

 藤嶋昭氏

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 1966年、横浜国立大学工学部卒業、71年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。神奈川大学工学部講師、東大工学部講師、助教授を経て教授、同大学院工学系研究科教授。東京大学特別栄誉教授。2003年4月より財団法人 神奈川科学技術アカデミー理事長、08年科学技術振興機構・中国総合研究センター長。2010年1月より東京理科大学学長。酸化チタン光触媒の原理を発見した業績で世界的に知られる。日本化学会賞、紫綬褒章、日本国際賞、日本学士院賞を受賞。2010年文化功労者。 学術的な専門書を数多く刊行したが、最近は子供の科学啓発教育に情熱を燃やしている。「時代を変えた科学者の名言」、「科学も感動から」(いずれも東京書籍)、「太陽と光しょくばいものがたり」(偕成社)など著書多数。

 

 柳沢幸雄氏

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   1947年生、東大工学部化学工学科を卒業。コンピュータ会社のシステムエンジニアとして3年間従事後、東大大学院で大気汚染を研究し博士号取得。東大助手を経て、84年よりハーバード大学公衆衛生大学院に移り、研究員、准教授、併任教授としなる。1993年より、財団法人地球環境産業技術研究機構の主席研究員を併任。1999年東大大学院・新領域創成科学研究科教授、2012年東大名誉教授。主要研究テーマは、空気汚染と健康に関する研究。2011年より母校の学校法人開成学園・中学校、高等学校校長に就任。社団法人大気環境学会副会長、室内環境学会会長、臨床環境学会理事、NPO法人環境ネットワーク文京副理事長などを歴任。主な著書に「化学物質過敏症」(共著、文春新書)、「CO2ダブル」(三五館、1997)など多数。
               
     
                               

永野博氏が読売新聞・論点欄で若手人材育成の国家戦略について提言

                               
  永野博氏が、2013年5月1日付け、読売新聞論点欄に「研究リーダー養成必要」との論文を発表した。

 世界主要国、後発国ともに、若手の人材育成に力を入れて多くの政策を遂行しているが、日本の人材育成はこれでいいのか。世界の現状を調べて分析し、日本の国家戦略として若手の人材育成をどう取り組むべきか。

 その視点を明快に提起している論文である。是非、読んでほしいと思った。

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21世紀構想研究会・100記念イベントで佐々木信夫先生が講演

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 21世紀構想研究会の100回記念イベントが進んでいるが、4月24日には第2弾として佐々木信夫先生(元特許庁特許技監、株式会社特許戦略設計研究所 代表取締役)が講演し、日本に横たわる知財戦略の課題を分析して指摘し、これから取り組むべき戦略について多くの示唆に富んだ提言を行った。

 佐々木先生は、1998年に特許技監を務めたが、そのときの特許庁長官は荒井寿光氏である。この日は荒井氏も出席し、往時の長官・技監の名コンビで講演の後の討論を盛り上げた。

 佐々木先生の講演内容で筆者が印象に残ったのは、アジア・中国を中心に広がっている巧妙な特許模倣システムの広がり、欧州特許庁の停滞ぶり、日米特許対 話の流れなどである。また、自身の手がけている具体的な特許・ビジネス戦略について、ケーススタディの形で披露し、日本の特許戦略と産学連携の現場に横た わる様々な課題をあげた。

 安倍政権の掲げる「三本の矢」政策の最大の課題は、失われた20年で現出していたデフレ経済を脱するために成長戦略を見直して具体化し、速やかに実現す ることだ。そのために佐々木先生は、知財の保護ルールの国際的な共通化をあげた。TPPの知財保護ルールの共通化、日中韓のFTA交渉の知財保護ルールの 共通化、日欧のEPA交渉の知財の保護ルールの共通化などである。

 また国内の知財政策では、グレースピリオド1年の制度化、超早期審査の制度化、18か月以内の特許取得手続きの制度化などをあげ、そのためには特許紛争 実態の調査と監視の励行や無審査実用新案法の根絶などをあげた。これは中国で急増する実用新案出願と特許出願は、中国独自の制度が権利意識を突出させてお り、こうした実態を国際的な共通システムに改めていかないと公正な競争にならないことを指摘したものである。

 そのほかにも重層多岐にわたる国際的な課題提起と日本のとるべき戦略は極めて重大なものばかりであり、今後、佐々木先生の提起した課題を整理し、安倍政権に政策提言できるよう論議を成熟化していく方向を確認してこの日の講演は終了した。

 

                               

加藤紘一氏(日中友好協会会長)が日中問題について21世紀構想研究会で講演

                               
                 

 

 元自民党幹事長の加藤紘一氏(日中友好協会会長)が、4月19日、21世紀構想研究会で講演し、緊迫する日中問題について核心に触れる解説を行った。こ の中で加藤氏は、2012年9月9日、ロシアのウラジオストックで開催されたAPECで、中国の胡錦濤国家主席が野田総理と非公式ながら30分ほどの会談 を行っていたという新たな事実を披露した。

 日本では、日中の2人の首脳が立ち話をした程度として伝わっているが、立話以外に日中2人のトップが部屋に入り、通訳を交えずに片言の英語で語り合った 内容が問題であったと推測できる中国側の動きと情報を元に、これまで伝えらていない日中外交問題の齟齬について大胆な解説を行った。

 また1984年 - 1986年に、中曽根内閣の国務大臣防衛庁長官をしていた時代に、日本海を舞台に日中で緊迫した事態が勃発した秘話、尖閣紛争を原因とした日中の武力衝突 の可能性、レアアースを巡る日本の報道とその真相、中国共産党の若い指導層の仕事ぶりと近年の日本の官僚の考えと仕事ぶりなどについて見解を述べた。

 加藤氏は元外務官僚であり中国語語学研修で鍛えたチャイナ・スクールの系譜にある人である。中国語が堪能なので中国の指導層、要人とも個人的な太い人脈 がある。この日の講演でも、中国に関する豊富な情報量を感じさせる多くの話が語られ、真の日中関係を理解するうえで非常に役立った。

 また、膠着している日中問題を打開する手だてについて加藤氏は、日本の政治家の中でいま中国側と最も太いパイプを持っているのは安倍首相であると解説 し、安倍総理自ら動くことが重要であるとの見解を述べた。第一次安倍政権誕生後の中国との外交を振り返りながら、先月下旬、中国側が安倍首相に期待をかけ ている動きを見せたが、日本側がそれに対応しなかったとのいきさつを語った。

 この膠着状態を打開するのは政治問題として取り組んでも困難なので、民間が積極的に様々な交流を進めることが重要なカギになるとの見解も語った。

 またこの日の研究会には、在日中国大使館の李纓(Li Ying)公使も出席して熱心に加藤氏の話を聴いていた。研究会後半のフロアとの質疑応答では、フロアから李公使に中国の経済問題や科学技術問題で質問す る人も出たが、李公使は流暢な日本語で率直な意見を述べて参加者に感銘を与えた。

 

 加藤紘一先生(日中友好協会会長)と懇談

                               
                 

 

元自民党幹事長で同党の重鎮である加藤紘一先生と2月28日、東京・六本木でお会いし、直近の様々な話題で意見交換した。

 加藤先生は先の衆院選で山形3区で14選を目指したが前坂田市長の阿部寿一氏に負けて落選した。この日、久しぶりの出会いだったが元気な様子であり、健啖ぶりは相変わらずで安心した。

 最近の加藤先生は、緊迫する日中関係の改善に貢献したいという意欲を持っている。それは、外務官僚時代から中国通として活動し、中国の要人にも太いパイプを持っているからだ。現在も日中友好協会会長として中国との関係改善に動いているという。

 そこで、100回開催記念イベントを行う21世紀構想研究会の特別講話として、来る4月19日午後7時から、プレスセンタービル9階の宴会場で、特別講話をしてもらうことにした。

 演題は「中国第6世代が考える日中未来志向」と決まった。第1世代・毛沢東、第2世代・鄧小平、第3世代・江沢民、第4世代・胡錦濤、第5世代・習近平と続き、次の中国共産党のリーダー候補が第6世代となる。

 いわば中堅幹部として活動する中国の第6世代は何を考え日中対応にどのように動こうとしているのか。日中戦争勃発寸前という緊迫した状況もあるだけに加藤先生の分析と解説を注目したい。

 

 

             

                               

第98回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

第98回・21世紀構想研究会は、2013年1月25日、プレスセンターで開催され、「大丈夫か日本の大学の産学連携活動」のタイトルで、株式会社東大TLO社長の山本貴史さんの講演と討論で盛り上がった。

 山本さんは、日本の大学TLOの必要性を1990年代から主張し、時代の先駆けを行った人である。それはアメリカの産学連携の最初のシステムを構築したニルス・ライマース氏に私淑し、そのイロハを教えてもらい、日本にその文化を導入した。

 産学連携など日本ではほとんど話題にならなかった時代に、次世代の風をかぎ取って活動を始めたという点で非常に価値ある活動であった。

 日本の産学連携は、まだ道遠しであり、軌道にのるのに、あと10年かかるだろう。山本さんは、東大への国からの莫大な資金投与と高度資質の人材とこれまでの研究インフラがあるから成功していると思いがちだが、そうではない。

 この日の講演でも、マーケティングを最重要課題に掲げ、営業努力があって初めて成功している企業活動であることが分かった。外国の企業が東大の発明成果 に素早く群がってくるという報告は、日本の企業文化、官僚文化がいかに世界の潮流に遅れているかという現実を報告していた。

 いま、日本で最も遅れている点は、決定までに至る道筋と時間である。官僚の世界でも企業でも大学でもあらゆる世界で即決即断ができない。それは日本の文化であり、それがいい時代もあった。しかし今は違う。競争の世界では後れを取ることが少なくない。

 産学連携の話を聞いていて、産業競争力と政治、行政の現状に思いが至った。日本はやはり国のカタチを変えなければならない。そのためには、若い世代のエネルギーを使って年寄りたちの知恵を現代の社会に生かさなければならない。

 産学連携の話は、実は日本の社会構造変革の課題の取り組みを語っていることに気が付いた。産学連携の成功事例が多数出てきたときに、日本は再び日のいずる国として世界の羨望を浴びるだろう。

 

 21世紀構想研究会 忘年パーティの開催

                               
                 

 

 21世紀構想研究会の忘年パーティが12月10日、東京のプレスセンタービルで開催した。会員の合原亮一氏(株式会社ガリレオ社長)が長野県上田市で展開している有機野菜の実際を語る講演があり、収穫した野菜の即売会も行った。

 驚いたことに日本の野菜は、年を追うごとにビタミン類などの含有量が少なくなってきたという事実だ。有機野菜の必要性を知って本当にためになった。

 最後に一人一票実現のために、来るべき総選挙での最高裁裁判官の国民審査では、心を鬼にして現在の最高裁判事にバッテン(×)を付けることで司法にカツを入れ、立法府にも影響を及ぼして日本に真の民主主義国家を建設しようと盛り上がった。

 

                               

構想研100回記念委員会の開催

                               
                 

 

1997年9月に創設された21世紀構想研究会は、来年4月ころに100回開催の記念日を迎える。その節目の開催を記念するイベントや研究会をどうするか。

 このほど100回記念委員会(合原亮一委員長)が設置され、その第1回委員会が11月21日、プレスセンタービルで開催され、シンポジウムなどの開催について意見を交換した。来年4月ころの日本全体の動きを今から想定するのは非常に難しい。

 間もなく衆院選挙が公示され投票が行われる。比較第1党は自民党が予想されるが、そうなれば安倍内閣の発足となる。2回目の首班指名となるが、右翼志向の強い内閣ができると中国との関係がさらに緊迫することになる。

 第1党になっても他の会派と組まなければ首班指名は難しだろう。そうなると組む相手の政策とのすり合わせで外交、経済問題がゆがんでくる可能性もある。 政府原案の予算案は年内には無理だとすれば、来年1月中に作成し、通常国会に急ぎ提案して年度内に成立させなければならない。

 こうしたスケジュールも考えると、21世紀構想研究会の100回記念開催時には、日本全体が緊迫した動きの真っただ中にあることも想定される。そのような状況も考えたテーマのシンポジウム実施となると、開催直前までテーマを決められない可能性もある。

 そのような意見を踏まえながら、いまは広くテーマを設定し、直前になって的を絞る方向でさらに検討することでこの日の委員会は終わった。21世紀構想研 究会の今後の活動方針、社会貢献、政策提言集団としての役割など再考する懸案があるので、この委員会は将来展望も踏まえた討論を重ねることになるだろう。

 

 

                               

第96回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 

  インターモダル社社長の園山玲子さんが講演

第96回21世紀構想研究会は、10月30日に開催され、インターモダル株式会社代表取締役社長の園山玲子さん(本研究会会員)が「知られざる世界-航空貨物の現場 どうする日本」をテーマに語ってもらった。

  園山さんは航空コンサルタントとして格安航空を手がけるなど航空ビジネスのエキスパート。アジアで急成長する格安航空社の誘致を目指す地方関係者が頼りにする強い味方である。 長年の外資系企業勤務で培った人脈と行動力・交渉力で世界を奔走。中国の空港公団の重鎮が相手でも、一歩も引かずズバズバ物を言える。それでいて険悪な雰囲気にはならない。交渉の巧みさに大手商社マンも舌を巻くという。

 航空貨物の動向は産業構造と連関している 

 この日の講演では、航空貨物の状況が産業構造の変化と密接不可分にあることを示して参加者たちを驚かせた。例えば輸出入貨物の取扱量と金額の推移を見ると、日本の製造業が海外へ移転して国内産業が空洞化してきた現状が統計に表れている。いまの状況を端的に言えば、輸出する貨物が急激に少なくなってきたということだ。

 これまでの機械、部品、 化学製品などに代わって高級果物や生鮮食品などが新たに存在感を見せ始めている。このような物流は温度管理をして輸送することになるので、輸送手段も空港 の設備も運搬する方法もすべて温度管理に適したものでなければビジネスにはならない。航空輸送の構造改革が始まっている。

 国際的な物流、航空貨物現場の遅れなどをしてきた園山氏は「世界は物流からモノの価値が生まれる時代になっている。国際物流の出入り口である空港は、いつでも必要なときに離発着が可能でなければ新しいビジネスは獲得できない」という。

 韓国の仁川空港に後塵を拝する日本 

 

 たとえば成田空港は、午後11時から午前6時まで発着はできない。空港周辺住民の騒音規制からだが、このままにしておけば日本は産業競争力で大きなデメリットを持つことになるという。韓国の仁川空港は24時間の発着を許可しており、何よりも年間の1機当たりの着陸料が成田のほぼ3分の1程度になる。空港の上屋賃借料は成田5分の1強、ハンドリング料も成田のほぼ3分の1である。

 

 韓国は東アジアの航空貨物のハブ空港を目指し、国ぐるみで取り組んでいる。さらに航空貨物の設備と運用を売り物に、途上国などの貨物空港ターミナル建設の受注を目指して積極的に攻勢をかけており、仁川空港は航空貨物の中心に育てる戦略が着々と実現しているという。

 

 これはシステムのノウハウであり、知的財産権でもある。このようなビジネスは戦略がなければ成功しない。日本はこの面でも劣化してこないよう国家的な戦略がほしいのである。

 

 

                               

第95回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第95回21世紀構想研究会(http://www.kosoken.org/)は、9月18日にプレスセンタービルで開催され、東京理科大学の坂口謙吾教授から「バイオ発電」について語ってもらった。

 バイオ発電とは、グルコース(ブドウ糖)を原料にする発電で、よく言われているバイオマス発電とは違う。坂口教授は、人類が地球上に登場して以来、どのようにエネルギー消費が変転したかを説明し、化石燃料を使い続けているといずれ人類は破たんすることを示した。

 そのあとでエネルギー革命を起こすにはバイオ発電しかないとして、その具体的な実現方法について学術的な根拠を示しながら提示した。日本にとってバイオ 発電は、十分な電力を安定的に生産でき、原料は海外に依存することなくクリーンで何よりも高い電気料金にならないということだ。

 ただ今の状況では政府も研究機関も及び腰で、この構想は賛成しても実現に取り組む姿勢が見えないという。それならば、世界の大金持ちに投資してもらい、実現の研究を広げる方法があるのではないか。そのような視点での討論だったが、非常に盛り上がった講演会だった。

 

 

                               

荒井寿光氏の講演

                               
                 

 

 第94回21世紀構想研究会が7月9日(月)に開催され、多くの参加者で盛り上がった。

 今回の講師は元特許庁長官、内閣官房知財戦略推進事務局長、通産省通商産業審議官、21世紀構想研究会アドバイザーでもある荒井寿光氏(中小企業投資育成投資株式会社代表取締社長)である。

荒井寿光氏は、1996年に特許庁長官になると矢継ぎ早に知財改革に着手し、産官学の知財意識に変革を求め特に企業の知財戦略を変えることに成功した。そ の後、通産省通商産業審議官を経て民間に転進したが、小泉内閣の知財戦略本部の設置とともに内閣官房に設置された知財戦略推進事務局長として采配をふる い、知財推進計画を策定して多くの実績をのこした。

しかし小泉政権終了後、知財改革は停滞期に入り、くるくる変わる歴代内閣の知財政策も存在感が薄くなってしまった。
  その間、中国、韓国が知財改革を急進的に推進させ、両国の産業競争力の増強ともあいまって知財政策でも日本を凌駕し始めている。米欧も知財政策を着々と進めており、日本の停滞が際立ってきた。
 荒井氏は、直近の世界の知財動向を分析しながら日本の知財改革への道筋を提言し、知財再構築への提言なども行った。

 講演後の質疑応答では、多くの人が意見を陳述したり討論を行い、日本の知財の将来展望について今後の取り組みを語り合った。

 

                               

第91回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

第91回・21世紀構想研究会が2月1日、東京日比谷のプレスセンターで開催され、研究会のアドバイザーでもある銭谷眞美・東京国立博物館長が「東京国立博物館ーその歴史と今年開催のハイライト」と題する講演をおこなった。

 トーハクの呼称で親しまれている東京国立博物館は、日本で最も古い歴史を持つ博物館であり、国宝だけで137点を所蔵しているという。明治5年(1872年)に創設されて以来、幾多の所管の移転と災害をくぐり抜けて今日のトーハクにつながっている。

 来年は創立140周年を迎えるという。その記念のイベントも盛りだくさん用意されている。今年は、現在開催されている「北京故宮博物院200選」に続いて、3月20日からボストン美術館が所蔵する日本美術のコレクションを披露する特別展が開催される。

 この日の講演ではトーハクの歴史とその活動内容など興味あふれる話が続き、参加者との質疑応答、意見交換も活発に行われた。日本の伝統的な美術は、世界の中でも異色なものであり、世界に発信する力を強くすることも必要だろう。

 デジタル、インターネット時代だからこそ、芸術活動や美術鑑賞の世界が価値観を持つ時代になったと受け止められる。そのような感慨を持ちながら銭谷館長の講演を聞いて楽しかった。

 

                               

21世紀構想研究会の忘年パーティを開催

                               
                 

 21世紀構想研究会の忘年パーティが、12月7日、プレスセンターで開催され50人を超える参加者でにぎわった。

 この日のゲストスピーカーには、藤原歌劇団団員ソプラノ歌手の砂川涼子さんが来てくれた。21世紀構想研究会の会員である永野博・(財)日本オペラ振興会理事長が、自分とオペラとの関わりについて講演し、そのあとで砂川さんのトークと会場との質疑応答となった。

 

 この日の演題が「心おどるオペラの世界へようこそ」となっているので、砂川さんの歌唱を期待して出席した会員もいたようだが、会場のこの部屋では唄うことは禁止されているので、砂川さんと永野さんのトークだけとなった。

砂川涼子さんのプロフィール

http://www.gotoh-mf.jp/show/0074_16_opera_ryouko_sunakawa.php

 

 

 オペラの観劇というと敷居が高いようだが、意外と21世紀構想研究会の会員の皆さんも観劇している人がおり、興味もあるようだ。オペラの魅力について語る砂川さんのお話で、すっかりオペラファンになり、劇場に足を運ぶ人も出てきそうだ。

 

 

 

 トークショーのあとは、恒例のパーティとなり、異分野の人の飛び入り参加もあって楽しい懇談の場となった。21世紀構想研究会へ入会した井上リサさん、 福間智人さん、三和圭二郎さんの3人が挨拶を行い、21世紀構想研究会も新しい人々の輪が広がっていくことを期待したい。

 

 また、本研究会の最年少である33歳の小林憲人さんが挨拶に立ち、埼玉県ふじみ野市の市会議員として活動している様子を語って拍手を浴びていた。

 この忘年パーティで、21世紀構想研究会は90回を迎えており、2013年には100回を迎えることになる。今からその記念開催に向けて準備に入ることになる。

 

                               

メタンハイドレート委員会の打ち合わせ会

                               
                 

 

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 21世紀構想研究会のメタンハイドレート実用化研究委員会(平朝彦委員長)の打ち合わせ会が、10月27日、東京・内幸町の海洋研究開発機構(JAMSTEC)東京事務所のセミナー室で開催され、平委員長を囲んで当面の研究動向について討議し、情報交換を行った。

 この日の打ち合わせ会ではまず、高知県の杉本昭寿氏から最近の研究動向が発表され、今後の展開について話し合った。東日本大震災がもたらした東電福島原発の事故を見るまでもなく、新エネルギーに対する開発と取り組みは非常に重要な課題になっている。

 その中でメタンハイドレート(MH)の実用化開発をどうするのか。国の開発戦略は、必ずしも挑戦的なものでなく、企業の開発参加も重要ではないか。国際 的な開発動向とMHの世界の埋蔵分布による戦略も俯瞰する必要があるだろう。そのような話題を話し合いながら委員会の開催に向けて今後の活動を模索した。

 

                               

山下俊一教授が21世紀構想研究会で講演

                               
                 

 

「私たちは、発がん物質の海の中を泳いでいる」と語ったのは、杉村隆・国立がんセンター名誉総長である。ことほど左様に環境中には、発がん物質があふれており、がんへのリスクに日常的にさらされて私たちは生活している。

 海外へいくために長時間、フライトすれば宇宙からの放射線を浴びるし、健康検診でCTスキャンを受ければこれまた大量の放射線を浴びることになる。単に発がんリスクを語れば、タバコ、高塩分摂取、肥満、運動不足などいくらでもある。

 先の東電福島原発の事故で、福島県民はどのくらいの放射線リスクにさらされているのか。それを科学的に検証して説明し、いたずらに怖がるのではなく「正 しく怖がろう」と説明するのが福島県立医科大学副学長の山下俊一教授である。山下教授は長崎大学医学部で放射線医学の第一人者として国際的な活動をしてき た。

 この日の21世紀構想研究会の講演でも、広島・長崎の原爆被爆者の膨大な疫学データや、チェルノブイリ原発事故後の科学的なデータを示しながら、諄々と説明した。

 山下先生の解説では、「放射線を100ミリシーベルト以上浴びると発がんのリスクが上がるが、それ以下の低線量被爆者の健康被害の確定的なことは分かっていない」としている。ただ福島県民の人々で100ミリシーベルトを超える線量を受ける危険性はないという。

 山下先生が強調しているのは、政府の発信するデータへの信頼回復とメディアの正しい報道、さらに被ばく医療の専門家が住民に丁寧に説明することだとい う。一部の週刊誌や出版物で、科学的に未確定のことをあげて危険性を主張する論述がある。こうした報道がいたずらに国民に不安感を植え付けないようにする ことこそ大事なことである。

 山下先生の解説をバッシングする風潮も出ているようだが、自身の信念に責任を持って語ることの重要さをこの日の講演で受けたもっとも重要なことだった。

 

                               

東北電力女川原発を見学

                               
                 

 

 東日本大震災で被災しながらも津波の被害を受けず、原発サイトにある体育館を避難住民に提供した東北電力・女川原子力発電所を8月25日、21世紀構想研究会の一行が見学訪問した。

 一行は女川原子力発電所の渡部孝男所長らの案内で所内を見学し、まず原子力発電の状況を見学した。いま同原発は定期検査と今回の震災後の点検で3機とも安定した冷温停止状態にあるが、そのメンテナンスの状況の説明を受けて、原発が稼働するメカについて勉強した。

 また、原子力技術訓練センターでは、想定された大地震発生の瞬間から緊急に対応する訓練を見せてもらった。中央制御室のモックアップの前での臨場感あふれるきびきびした書員の対応は、いかにも訓練を重ねてきたという感じが出ており、見ていて参考になった。

 
中央制御室のモックアップで訓練する所員

 今回の見学の説明で東電・福島原発との比較で分かり易かったのは次のような数値である。まず津波襲来の想定推移であるが、女川では、9.1メートルとしていたが、福島では5.7メートルだった。

 続いて原発サイトの敷地の高さだが、女川は13.8メートルに対し、福島は、10メートルだった。さらに津波の高さは、女川が13メートル福島も同程度 の高さを想定していた。しかし福島は、敷地の高さが10メートルであるから、最高の津波が来たらもろに超えてくるのは設計上でもわかっていたはずだ。

 女川の敷地を海岸の隣接状況を見て、その高さが津波からの決定的な防御になったことがよくわかった。

 また、女川町に隣接する石巻市の被害の状況を、東北電力石巻営業所の山形安生所長と引地宗範副所長の案内で見ることができた。まだ被災地は津波の爪痕が 残っている地域が多く、その惨状を目の当たりにしてびっくりした。引地副所長が被害直後から被災地をつぶさに見てきた話を聞きながら、津波の恐ろしさとそ の被害にあった人々の不幸を思って暗澹たる気持ちだった。

 

 

              津波被害の惨状が、まだいたるところに見られた。

 

 
 
 

被災者の鎮魂のモニュメントには、献花する人々が絶えないという。石巻の1日も早い復興を願わらずにはいられなかった。

 
      

             

                               

21世紀構想研究会の法人会を開催

                               
                 

 

 21世紀構想研究会の法人会の集まりが、7月25日、赤坂の「ふきぬけ」で開催され、これからの構想研究会の在り方などで意見交換をした。

 「ふきぬけ」は、本会理事で法人会員である染谷幸雄さんの企業、株式会社日本一が経営するうなぎのレストランで、有名な老舗である。この日は高知県の杉本昭寿さんと渡辺望稔さんらも加わって、楽しい懇談の席となった。

 21世紀構想研究会の研究会は、今年で90回を超えて、2年後には100回を迎える。継続は力なりであり、ここまで続いているのは法人会からの支援によ るところが大きい。大震災では、2回にわたって緊急報告・討論の会を開催したが、これからもタイムリーなテーマで研究会を開き、社会への喚起や政策提言で 存在感を出していきたい。

 

                               

第88回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

第88回・21世紀構想研究会は、7月7日に日本記者クラブで開催され、「大震災の報告その3」として、 東北電力女川原発の報告と原発に関する課題について活発な討論が行われた。

 この日の講師は、東北電力東京支社の宮本保彦副支社長、大渕正和同副支社長で「東北地方太平洋沖地震による女川原子力発電所の状況について」と題して講 演を行った。女川原発の現場には、高さ13メートルの巨大な津波が押し寄せたが、運転中の3基の原発はいずれも自動停止し、冷温停止に至った。

 東電福島原発の惨状と比べると余りの違いにびっくりするが、その原因がよくわかった。女川原発は、海面から13.8メートルの敷地に建設されていたために、津波が押し寄せることはなく、海水をかぶって電源を失うこともなかったのである。

 それでも地震の揺れで重油タンクが倒壊して油が漏出したり、地下に埋設してあった潮位計の上蓋が押し上げられて海水が入り込んだりしたが、それほどの被 害もなく無事に収拾した。女川周辺では津波の被害をもろにかぶってすべてを失った住民も多く、被災者たちを原発敷地内に誘導して緊急の避難所として提供し たことも分かった。

 東電と女川の決定的違いは、原発サイトの建設敷地である。津波が来ても届かない敷地を選択した女川とそのような考えもなく防潮堤も低かった福島原発で は、天地の差が出てしまった。また東電は、災害が発生した後の処理はミスがあったとしか考えられない不手際が続き、取り返しのつかない事態へとつながって いった。

 この大災害は、たとえて言えば戦争に匹敵する国難である。指揮系統、判断力、決断力など人知の総力をあげて取り組んだ結果が今日の体たらくということ は、危機管理が全くできていなかったということにもなる。女川原発は対照的に非常にうまく危機を潜り抜けたことになり、3基の原発はすぐに冷温停止となり 以来、安定している。

 研究会の論議では、再生可能エネルギーによる発電などの推進策も出たが、GDP世界3位、家庭では何不自由なく使い放題の電力を使い、工業国として世界 有数の生産力を誇る日本のすべての電力をまかなうことを考えると風力、地熱、太陽光などのエネルギーでは到底間に合わない。

 もちろん、節電効果も考える余地はあるが、しかしこれは限度がある。それでは日本のエネルギーはどのようにして確保するのか。海底に眠るメタンハイドレードの利用を含め、再生可能エネルギーの推進策もあるが、もっとも重要なことは国民の意識改革だろう。

 ことはエネルギー問題だけではない。これからの日本をどのような国家として建設するのか。国民の価値観と生活様式、文化まで考える必要がある。エネル ギー問題は、単に経済的な問題ではなく国家と国民の意識と文化にまで広がってきている。そのようなことを意識させた研究会だった。

 

 

                               

第87回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第87回・21世紀構想研究会は、5月31日に日本記者クラブで開催された。この日は2011年度の総会も開かれ、昨年度の活動報告と決算内容が満場一致で承認された。さらに2011年度の活動計画と予算案についても承認され、近く東京都に届け出ることになった。

 総会のあとは、「東日本大震災の報告会その2」をおこなった。この日の講師は、内閣府参与の広瀬研吉氏である。本会の会員でもあるが、広瀬氏は元原子力安全保安院院長として、いま首相官邸と原子力安全保安院、原子力安全委員会の連絡調整役という重要な任務を行っている。

 講演では、福島原発の事故について時系列に従って事故の概要を説明した。原子炉に制御棒が入って炉心の反応が停止したあとに津波の被害を受けて電源を失い、冷却システムの立て直しに至る過程を整理して示した。

 広瀬氏は、現在の立場と任務があるので個人的な見解は全くせず、すべて公表されてきた内容に基づいて整理したものを示したものだが、改めてこの事故の流れを知って問題の整理をすることができた。

 講演の後は質疑応答と見解の発表、意見交換などであったが、非常に活発な意見交換会だった。今後の日本の原子力防災と取り組みについても建設的な意見か ら原発撤退という厳しい意見まで一通り出されたが、まだ原発サイトの冷温システムは確立されていないだけに心配する声も多かった。

 筆者もいくつかの見解を述べたが、特に今回の大地震とよく似た平安時代の貞観地震の学術的な検証と行政対応についていくつかの疑問点をあげた。このテーマについては、これから多くの検証が行われるだろう。

 

                               

第86回21世紀構想研究会は大震災の報告会

                               
                 

 

 第86回・21世紀構想研究会は、4月25日、プレスセンターで開催され、「東日本大震災の緊急報告会」を行った。

 報告者は、宮城県南三陸町で大震災に被災した佐藤門哉さん、災害発生後から日夜報道をしてきた読売新聞東京本社科学部の柴田文隆部長、野依英治科学部記者、伊藤崇科学部記者の4人である。

 津波の被害を受けて九死に一生を得て助かった宮城県南三陸町の佐藤門哉さんが、まず被災した当日の模様を語った。有線放送で流れてきた津波情報は、高さ 6メートルという警告であり佐藤さんはこれなら防波堤を超えてこないだろうと軽い気持ちで自宅裏の高台にのぼったという。

 その時のビデオ映像と写真をもとに報告した内容には、息をのむような場面が多数あった。逃げ遅れて津波に呑み込まれようとしている人々の姿には何とも言えない痛切の気持ちだった。

 取材記者として巨大地震のメカニズムを追い求め、津波の被害を見るために現地を取材した記者たちの仕事は、現場と読者の間に立ち、媒体としての役割を果たしている活動がよくわかった。

 福島原発のトラブルについては、柴田部長が報告したが、政府、東電側の説明と発表内容に幾多の矛盾が見られ、国民に対する報告義務に欠けているのではないかと思わせる原子力安全委員会の活動などについて言及した。

未曽有の災害に遭遇した菅政権は、ある意味で政権浮上の絶好のチャンスを得たにもかかわらず、国民の信頼を得られなかった。政権浮上を意識したときに 守りの意識に入り込んでいったのではないか。日本の最近の政治活動の貧困さを浮き彫りにするような出来事だったのではないか。

 いずれ今後の歴史の検証で明らかになっていくだろう。

  

第84回21世紀構想研究会 

第84回21世紀構想研究会は2月22日(火)に、東京駅丸の内の創英特許法律事務所のセミナー室で開催され、約40人が参加して有意義な時間を過ごした。

今回の講師は、ベンチャー企業を立ち上げて東証1部上場まで育てあげた株式会社モリテックス創業者の森戸祐幸氏が、内紛に嫌気をさして創業した同社を惜しげもなく売却、再び起業家として身を投じました。

そして、その体験から得た日本の企業文化、日本の社会、日本人の精神文化を鋭利に分析して語ってもらいました。

講演後の質疑では、感銘を受けたというコメントが寄せられ、翌日になっても反響が続いている。

             

                               

ベンチャー企業で果敢に市場に打って出る森戸祐幸氏を訪問

      

東証1部上場企業の株式会社モリテックの創業者として知られる ユーヴィック株式会社社長の森戸祐幸氏を訪問し、活動状況を取材した。

 森戸さんは、昭和39年、日本はまさに高度経済成長期に差し掛かったころ、東京理科大学理学部応用化学科を卒業して丸紅に就職。その後、自ら商社企業を興しやがて光ファイバー関係の製造業へと転進した。ベンチャー企業の走りである。

 創業したモリテックスは右肩上がりに業績を伸ばし、東証1部上場にまでのし上がった。しかしその後、経営方針で企業内部でトラブルが発生し、嫌気した森戸氏は創業会社を辞めて別天地へと転進した。それが光触媒関連のユーヴィック株式会社である。

 森戸さんは、60歳過ぎてからベンチャー企業を興しているので、これをシニアベン チャーと名付けているが、その飽くなき技術開発への挑戦は、その方針を聞いている方も胸が躍るような話である。2月22日には21世紀構想研究会で下記の ような講演をする予定であり、今から楽しみである。

第84回21世紀構想研究会 

 第84回21世紀構想研究会は2月22日(火)に開催いたします。

 今回の講師は、ベンチャー企業を立ち上げて東証1部上場まで育てあげた株式会社モリテックス創業者の森戸祐幸氏が、内紛に嫌気をさして創業した同社を惜しげもなく売却、再び起業家として身を投じました。

 そして、その体験から得た日本の企業文化、日本の社会、日本人の精神文化を鋭利に分析して語ってもらいます。 

 8421世紀構想研究会

日 時:2011222日(月)19:00

 場:創英国際特許法律事務所セミナールーム

演 題:「シニアベンチャー企業を立ち上げる」   

  ~あくなき挑戦 魅力ある人生を求めて~

 講 師:森戸祐幸氏(ユーヴィックス株式会社代表取締役社長、株式会社モリテックス創業者、元同社代表取締役会長)

 

 

               
                               
               
             

                           

                   
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メタンハイドレート実用化について高知県知事と会見

                               
                 

 メタンハイドレートの実用化で内閣官房の総合特区に申請している21世紀構想研究会の代表である筆者と平朝彦・メタンハイドレート実用化研究いい回委員長らメンバー及び高知県の黒岩県議らは、12月24日、高知県庁を訪問し、尾崎正直知事と会見した。

 まず、筆者から21世紀構想研究会の自己紹介をした後、平委員長からメタンハイドレートと高知県の関連について説明し、今後のメタンハイドレート実用化には県も全面的に協力体制を整えてほしいとの要請を行った。

 これに対し知事は、メタンハイドレートの実用化についての意義を理解し、これから高知県がどのようなメリットがあるかなどを検討し、このプロジェクトに 前向きに取り組むことを検討したいと表明した。県がどのような体制で参加してくれるかはまだ決まっていないが、知事と出席した県幹部の方々も好意的に受け 止めたように感じられた。

 これから地元産業界などにも働きかけ、東京の21世紀構想研究会のメンバーと一体となってこの実用化戦略を推進したい。

 

 

               
                               
               
             

                           

                   
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高知市でメタンハイドレート研究会を開催

                               
                 

 

 メタンハイドレート実用化研究会が12月23日、高知市のホテルで開催され、地元の産業界、行政、各種団体、市会・県会議員ら約40人が参加して、今後の産業化へのプログラムについて意見交換を行った。

 この研究会は、21世紀構想研究会が内閣官房が公募している総合特区制度に提案したメタンハイドレート実用化についてのプロジェクトの具体的な取り組みについて、地元高知県で初めて趣旨説明と今後の支援を依頼するために黒岩県議らが奔走して開催したものだ。

 まず、平朝彦・独立行政法人海洋研究開発機構理事が「海底資源研究開発と高知県の役割 -特にメタンハイドレート研究開発を例としてー」の講演を行った。これは総合特区に提出した申請書に描かれているプロジェクトの内容について理解を求めたものだ。

 ついで筆者が、21世紀構想研究会がこの提案に至った経過を説明し、高知県の皆さんと東京のグループが一体となって総合特区のプロジェクトに採用されるように頑張りたいとの決意を表明した。

 さらに21世紀構想研究会の渡邉望稔弁理士が、メタンハイドレートを海底から汲み出す技術で特許出願をしている杉本昭寿氏の技術内容と今後の展望について説明し、地元の方々の賛同と一体化となって活動することを訴えた。

 出席者の多くは、このプロジェクトの趣旨や内容については初めて触れる人が多かったようだが、この研究会後に開催された懇親会の席上でも、大半の参加者がプロジェクトに賛同しており、今後の取り組みに積極的に参加する意志を表明した。

 

 

 

               
                               
               
             

                           

                   
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第84回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第84回・21世紀構想研究会が12月21日、プレスセンターで開催され、忘年会もかねた楽しい宴で今年の活動に区切りをつけた。

 この日は、21世紀構想研究会のメンバーだけでビジネスを立ち上げているVOXMOL方式の発表会を行った。この方式は、21世紀構想研究会のメンバーである関口博司さんが発明者した技術であり、それを長谷川芳樹弁理士が特許権利化した。

 その技術開発の話を聞いた筆者が、メンバーの株式会社ガリレオ社長の合原亮一氏に実用化戦略で検討を依頼し、ガリレオが実用化の開発を手がけて、市場へ出すまでになった。つまり、21世紀構想研究会の4人がそれぞれの立場で力を発揮して、市場に殴り込みをかけているものだ。

 開発したのは、英語、中国語など外国語のリスニング学習をする場合に音声再生プレ イヤーに応用する技術である。リスニング学習をしているとき、「再生されたところをもう一度聴き直したい」と思ったときに、適切な位置に戻す技術である。 ガリレオでは「spirivio」として市場に出した。

 関口さんが以前に開発したリンガマスター方式をさらに進化させ、人間の発声と呼吸 との間合いをうまく取り込んだ方式になっている。教材はインターネットにある音声ファイルである。たとえば教材となる英語の音声ファイルをサーバで区切っ て位置データを作成し、その区切り位置をもとに元の音声を再生する。 サーバで提供される音声ファイルの区切り位置データは日々追加することも可能だ。

 最初は無償で提供し、後で有償にしていくというビジネスメソッドであるが、この方法がビジネスとしてうまく軌道に乗るかどうか。関口氏のリベンジ開発であり、ガリレオの新規市場開拓として成功するように支援したい。

 

 

               
                               
               
             

                           

                   
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メタンハイドレート実用化研究委員会の開催

                               
                 

 

 21世紀構想研究会の第2回メタンハイドレート実用化研究委員会(平朝彦委員長)が、12月6日、東京・内幸町の海洋研究開発機構(JAMSTEC)東京事務所のセミナー室で開催され、約20人が参加して活発な討論を展開した。

 この日の委員会ではまず、平委員長が「海底資源探査の現状と将来」と題する基本的な情報レクチャーを行い、続いて鈴木朝夫氏(高知市在住、東工大、高知工大名誉教授)が、杉本昭寿氏の発明したメタンハイドレート採取工法について説明を行った。

 この技術は、海底数百メートルから1000メートルにあるメタンハイドレートを採取する際に、海底の現場でエネルギー源を作り、そのエネルギーを利用し てガス化して海上へと汲み上げる方法である。特許出願もしており、この技術をメタンハイドレート採取の標準化までできないかとする夢を持っている。

 続いてメタンハイドレート開発について東大工学研究科の増田昌敬・准教授がカナダで実施された日加共同プロジェクトの成果を紹介した。これは永久凍土下 の地層中にあるメタンハイドレートを減圧方式と言う技法によって分解してガスを汲み上げるもので、実用化になるだけの生産もできた。しかしメタンハイド レートの分解に伴って地層中の砂が産出するという現象も確認され、これをどう処理するかという新たな課題も出てきている。

 このような課題解決には、技術開発で相当の時間がかかりそうだ。天然ガスのコストより下回り、安定して供給できるようになるためには、まだいくつもの難問を突破する必要があるだろう。

 杉本氏の発明した特許技術がどのように実証されて実用に利用できるようになるか。その期待も大きいが、まだ実証もできていない技術だけに未知数である。 しかしこうした技術の実証実験を通して高知県の地域振興に活用したい意気込みもあり、東京グループと連携しながらエネルギー改革への波紋を起こしていきた い。

 

 

               
                               
               
             

                           

                   
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第83回21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第83回21世紀構想研究会が11月22日、プレスセンターで開催され、約40人の参加者が活発な論議を展開した。

 この日の研究会では、まず林幸秀氏(元文部科学省文部科学審議官)が、日本に横たわる科学技術をめぐる課題を洗いざらい整理して提示した。これは先ごろ 刊行した「理科系冷遇社会」(中公新書ラクレ)で提示した課題をまとめたものであり、科学技術創造立国を国是としている日本は果たして、そのような国創り になっているかどうか疑問視するデータを多く示した。

 この基調講演のあと、会場との質疑・討論に入ったが、安西祐一郎・慶応義塾大学理工学部教授は「日本はあらゆる階層の人々が、本気になって科学技術創造立国に取り組んでいない」とする主旨の発言をしたが、その通りであると筆者は感じた。

 時の政権は、都合のいいときだけ科学技術を標榜するが、日ごろから政策の課題としてはほとんど視野に入れていない。法学部卒が主体の財務省官僚は並べて 科学オンチであり、科学技術を語るときは予算緊縮など数字的な裁量をするときだけのようである。これは多くの技術官僚の感想である。

 政治家もまた、ほとんどが科学オンチであり、2代続いた理系総理大臣には、科学技術創造立国を前面に出すような言動は何もなく、科学技術に関する国家的な戦略は自民党政権から続いて依然として不明である。

 日本から科学技術を取り除いたら、何が残るのか。借金だけではないか。デジタル産業革命によって世界は時間差がなくなり距離感もなくなった。その時代の変革に迅速に対応する国家戦略の中では、科学技術が最も重要なテーマである。

 この日の討論でもその課題に集約する発言が相次いだ。

 

               
                               
               
             

                           

                   
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メタンハイドレート実用化戦略のミーティング

                               
                 

 

 内閣官房が公募している総合特区制度への提案に、21世紀構想研究会からメタンハイドレート実用化戦略について提出した。政策提言であり、採用されればメタンハイドレート実用化への大きな刺激になると期待される。

 11月15日、このプロジェクトの中心になりリーダーになっている平朝彦先生の事務所に集まり、メタンハイドレートを海底から回収する技術を発明して特許出願している杉本昭寿氏からその特許技術について解説を受けた。

 民主党政権の新成長戦略「元気な日本復活のシナリオ」として総合特区制度が創設されるが、「メタンハイドレート実用化に向けた戦略」が採用されれば、日本をエネルギー大国へと転換させることも夢ではなくなる。

 今回応募した内容をさらに討議して熟度を高める必要があり、12月6日には21世紀構想研究会で第2回のメタンハイドレート実用化研究委員会を開催する。

               
                               
               
             

                           

                   
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第82回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第82回の21世紀構想研究会は、9月17日、東京内幸町のプレスセンタービルで開催され、60人というかつてない参加者が熱心に聴講した。

 この日の講師は、平朝彦先生(独立行政法人海洋研究開発機構理事)で、 演題は「ちきゅう」号による新しい地球像の探求 ~ メタンハイドレート 熱水鉱床 地下生命圏 ~」
   
 海世界トップの性能を誇る地球深部探査船「ちきゅう」が探査する巨大地震発生のしくみ、地球規模の環境変動、生命の起源と海底に広がる新しい生命観、新しい海底資源などについて最新の情報を解説した。

 暗黒の海底は、想像を絶する生命体やエネルギー源であふれているようであり、特にメタンハイドレートの広がりには、大変、興味を持った。
 メタンハイドレートとは、簡単に言うと海底1000メートル付近にたまっているシャーベット状になっているメタンである。海底1000メートルは100気圧になるので、メタンガスにならないでシャーベットになっている。

 これを地上にくみ上げると約160倍の容積のメタンガスになり、これを燃料に使ったり、化学製品の原料にする。埋蔵量は、高知県沖合いなど日本列島のすぐ近くに眠っているメタンハイドレートだけで、日本の天然ガス消費量のほぼ100年分とされている。

 これを実用化しようという「メタンハイドレート実用化委員会」が21世紀構想研究会に設置され、委員長に平先生が就任した。また、内閣官房で公募している地域活性化プロジェクトに応募することも決まっている。

 このプロジェクトには、21世紀構想研究会会員である、高知県の杉本昭寿氏の発明した特許技術を活用しようとするものだ。その杉本氏の発明を特許 化している渡辺望稔弁理士も会員である。こうした人的ネットワークをフルに動員して、高知県の地域活性化だけでなく、日本をエネルギー大国にしようと言う 野望である。

 メタンハイドレートの実用化は、世界の誰かがやるエネルギー革命である。日本が世界の先導役にならなければ意味がない。なぜなら日本近海に眠っているメタンハイドレートを利用しないてはないからだ。

 大きなプロジェクトのスタートで、21世紀構想研究会の会員の中にも活気がみなぎってきた。是非、形あるものにしたい。

               
                               
               
             

                           

                   
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メタンハイドレート実用へ取り組む4人が来訪

                               
                 


 写真は左から黒岩直良高知県議会議員、渡辺望稔弁理士(元日本弁理士会副会長)、鈴木朝夫東工大名誉教授(高知工科大名誉教授)、杉本昭寿株式会社みかづき代表取締役。

 日本を世界有数のエネルギー大国にしようと考えている4人の活動家が、8月27日に馬場研究室に訪ねてきた。21世紀構想研究会で新たな委員会を設置することも決まっており、近く内閣官房が公募している国際戦略総合特区への応募を予定している。

 来訪したのは、写真で見るように黒岩直良・高知県議会議員、渡辺望稔弁理士(元日本弁理士会副会長)、鈴木朝夫・東工大名誉教授(高知工科大名誉教授)、杉本昭寿・株式会社みかづき代表取締役の4人。

 4人の方々は、メタンハイドレートを実用化するために並々ならぬ情熱を持っており、この日は21世紀構想研究会で政策提言テーマにしてほしいとの熱い思いを語るための来訪だった。

 日本近海には、膨大な量のメタンハイドレートが眠っている。 
 メタンハイドレートとは、簡単に言うと海底1000メートル付近にたまっているシャーベット状になっているメタンである。海底1000メートルは100気圧になるので、メタンガスにならないでシャーベットになっている。

 これを地上にくみ上げると約160倍の容積のメタンガスになる。これを燃料に使ったり、化学製品の原料にするが、メタンは非常に使い勝手のいい化学原料とされており、実用化への期待が大きい。

 埋蔵量は、高知県沖合いなど日本列島のすぐ近くに眠っているメタンハイドレートだけで、日本の天然ガス消費量のほぼ100年分とされている。これを実用化に成功すれば、日本は世界有数のエネルギー資源国になる。

 すでにカナダでは海底から汲み上げて実用化に着手しているが、汲み上げたときに海底の砂も一緒に地上へ汲み出すので、新たな環境問題が出てきている。
 そのような課題を解決する技術を考えたのが、発明家でもある杉本昭寿氏である。すでに2件の特許を出願しているが、そのほかにも多くのアイデアを練っているようだ。

 杉本氏は独創的な水の浄化装置を発明し、代々木のオリンピックプールなどにも採用されている。そのほかにも様々な特許技術を編み出している発明家であり、その特許出願、取得で支えているのが渡辺望稔弁理士である。

 このお二人は、21世紀構想研究会の会員でもある。さらに鈴木朝夫先生もメタンハイドレート実用化推進の共鳴者であり、地元の有力者である黒岩直良高知県議も加わってプロジェクトチームを結成している。

 21世紀構想研究会では、エネルギー安全委員会を衣替えして、メタンハイドレート実用化研究委員会とし、委員長には平朝彦先生(独立行政法人海洋研究開発機構理事)に就任することになっており、近く政府に対する政策提言へ向けて活動を開始したい意向である。

               
                               
               
             

                           

                   
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創英国際特許法律事務所の移転

                               
                 




 新事務所の入り口で長谷川所長(左)と光野文子所長補佐が出迎えてくれた。

 特定非営利活動法人21世紀構想研究会の理事をしている長谷川芳樹所長の創英国際特許法律事務所が東京・銀座から丸の内に移転した。
 旧明治生命ビルに隣接した近代的なビルの9階に移転したものだが、早速表敬訪問すると、ロビーは移転お祝いの花に埋もれていた。

 オフィスの窓からは、皇居を眺望できる素晴らしいビューポイントがあり、職場の人たちも生き生きした様子で働いている。周辺は丸の内のビル街であり、近代的な垢抜けした雰囲気が漂っていた。

 創英国際特許法律事務所の移転先は下記の通りです。

〒100-0005 
東京都千代田区丸の内二丁目1番1号 
丸の内 MY PLAZA(明治安田生命ビル) 9階
TEL 03-6738-8001 (代) FAX 03-6738-8004 (代) 

 

               
                               
               
             

                           

                   
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「小さく産んで大きく育てるは大きな誤り」を講演

                               
                 

 

 第81回・21世紀構想研究会は、7月1日午後7時から東京の日本記者クラブで開催され、早大胎生期エピジェネテック制御研究所の福岡秀興教授が、最新のエビデンスを紹介しながら生活習慣病は胎児期に発病のタネを植えられてくるとする衝撃的な研究内容を発表した。

 日本では昔から赤ちゃんを産むとき「小さく産んで大きく育てる」という言い伝えが語られてきた。出産は大変な負担だが、赤ちゃんが小ぶりならそれだけお産の負担が軽くなる。出産後の育児で大きくて丈夫な子供に育だてていけば、その方が母子ともに幸せである。

 そのようなことを希望してこの言い伝えは代々、言われてきたのだろう。
 ところが最近の医学は、これを否定するエビデンスを突きつけてきた。小さく生まれた子供は、子供時代も大人になっても老年になっても、健康不安や成人病の罹患率が高くなるという論証だ。

 生活習慣病は、胎児期に発症する芽を植えられてくるという衝撃的な疫学調査結果である。イギリスの研究者らを中心に発展した研究テーマだが、胎児プログラミング説としてにわかに注目を集めるようになってきた。

 生まれたときの体重が2500グラム以下を低出生体重児と呼んでいる。日本ではこのような低体重の赤ちゃんの生まれる比率が年々高まっているとい う統計にはびっくりした。1975年ころは出生割合が5パーセント程度だったが、近年は10パーセント程度まで増えてきている。

 2003年の経済開発協力機構(OECD)の先進30カ国の統計を見ると、日本は9.1パーセントで低体重児が生まれる最大割合になっている。つまりワースト1である。
 なぜ、こうなってきたのか。日本の出産女性(妊婦)はやせている女性が多いようであり、これでは必然的に小さな赤ちゃんが生まれてしまう。妊婦が細身になったのだ。

 若い女性の間では、ダイエットが大きな課題になっており、その影響が妊婦にも及ぼしているのではないかという推測もあるが、正確にはよく分からない。
 このように小さな赤ちゃんは、様々な疾病にかかるリスクが、平均的な体重で生まれてきた赤ちゃんに比べて大きく、成長してからも成人病に罹患するリスクが、平均的な体重で生まれた人に比べて高く出ている。
 
 いずれも欧米などの疫学調査や動物実験の結果出てきているものだ。まず因果関係を調べる必要があるし、日本と外国での相違についても正確にとらえる必要があるだろう。
 さらに日本人の生活習慣や社会的な価値観など社会学からのアプローチも必要だし、教育的な観点からの研究も必要だろう。

 福岡先生の研究テーマは、重大な課題を突きつけており、国を挙げての取り組みが必要だ。とりあえず、研究支援を広げていくように文部科学省に働きかけたいと思う。

 

               
                               
               
             

                           

                   
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第80回・21世紀構想研究会の総会と講演会の開催

                               
                 


   2010年度の総会にかける議事内容を決定する21世紀構想研究会理事会
 2010年度の21世紀構想研究会の総会で決定するための理事会が、5月18日、プレスセンターで開催され、昨年度の事業内容と決算を承認し、総会の議 題を決定した。理事会終了後に引き続いて開催された総会では、この承認事項を全会一致で決議し、今年度の活動計画と予算書を決定した。

 その後、第80回の節目を迎えた21世紀構想研究会が開催され、40人以上の会員が日本の研究現場や企業活動現場の課題と将来展望について熱い討論を行なった。

 この日は、文部科学省の中川正春副大臣が講演を行い、その後討論する予定だったが、国会の本会議開催が大幅に遅れたために午後7時からの開催時間に間に合わず、急遽、民主党に要望する討論の場となった。

 中川副大臣に対する要望書は、希望者が各自書面にして直接手渡すことになっていたが、当の本人が欠席となったために準備していた会員がその内容を発表し、それをめぐって討論するという展開となった。

 

 いずれの意見も日本の現状を憂うと同時に、政府の対応施策を要望するものだった。その中でもショックだったのは、日本の研究現場から発信する学術論分数が年々減少の一途をたどっており、研究エネルギーが先細りになってきたのではないかとする黒木登志夫先生の発表だった。

 また、佐々木信夫先生は、日本の成功した高度経済成長期型の経済活動モデルがすでに役割を終えて役立たなくなってきていること、中国、韓国、台 湾、シンガポールなどアジア諸国が日本のかつての経済モデルを追従して追いついてきていることなどを示しながら、知財を重視した施策の重要性を強調し、そ の政策について提言した。

 民主党政権に対する期待と注文は非常に大きく、後日、中川副大臣にこうした要望書を届ける予定である。

               
                               
               
             

                           

                   
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第79回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第79回・21世紀構想研究会が、4月19日、プレスセンタービルで開催され、筆者が「中国の科学技術力と中国の知的財産権の動向」のタイトルで講演を行った。

 中国の経済活動が毎年、驚異的な伸びを示しているのは誰もが認識しているが、科学技術、特に研究開発の力はどの程度なのか知ることは難しい。
 日本科学技術振興機構(JST)の中国総合研究センターなどが実施した、中国の科学技術や知的財産権に関する最近の調査結果と筆者の独自の取材、情報などに基づいた講演内容となった。

 中国の科学技術政策の中で注目するのは、優秀な人材の招聘戦略である。海外へ留学で出て行った中国人留学生を母国へ呼び寄せて、中国の活性化に役立たせようとする国家政策である。
 10年ほど前までは、国費で先進国へ留学した中国人が帰国するのは少数派だったからだ。

 近年始まった「1000人計画」では、一時金として1300万円を政府が帰国研究者に進呈。家の提供はもちろん、配偶者の就職、子弟の学校の斡旋、税制優遇措置など多くの特典を用意している。
 実際に、日本で活躍しているトップクラスの中国人研究者が中国政府から帰国しないかと声をかけられており、大いに迷っているようだ。いずれ、この様な政策は外国人研究者の招聘へと発展するだろう。

 知的財産権の活動も近年素晴らしい実績を積み上げており、すでに商標、意匠、実用新案の出願数は世界トップである。特許出願数でもアメリカ、日本についで3位に浮上してきた。

 PCTによる特許の国際出願数では、通信機器メーカーの華為(ファーウエイ)が2008年にトップになり、2009年にはパナソニックに首位を譲ったが2位を保持している。
 特に最近は実用新案を登録する個人と企業が増えており、侵害訴訟も増加傾向にある。トラブルになっても実用新案の権利を無効にすることは非常に難しいという。
 
 このような現状を踏まえて、中国の知財戦略を展開する必要性などについても強調した。

               
                               
               
             

                           

                   
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第78回21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

第78回21世紀構想研究会は2月4日(木)に開催され、1月1日に東京理科大学学長に就任された藤嶋昭学長が 「物華天宝 ー研究にはセンス、雰囲気、そして感動が大切ー」のタイトルで講演を行った。

 藤嶋昭先生は、1967年に東大大学院生だったとき、酸化チタンを電極にして光を当てると水を分解する現象を世界で初めて発見し、科学ジャーナル「ネーチャー」に発表した。これは「ホンダ・フジシマ効果」と呼ばれ、世界中に知れ渡った。
 
 その後この原理による研究は、橋本和仁東大教授、渡部俊也東大教授らに引き継がれ、藤嶋先生らとも共同研究を進めながら、浄化作用、殺菌作用、親水作用による様々な応用研究と実施へと広がっている。

 講演では、光触媒の研究のあらましを紹介しながら、研究現場の「集団の雰囲気」の重要性や「アインシュタインとナビゲーション」、「ピラミッドの奇跡と土台作り」、「ソメイヨシノはなぜ一斉に開花するか」など独自の視点を織り込んだ非常に魅力ある講演だった。

 特に創造する時代、世代、社会には雰囲気があることを強調し、科学研究には特に必要であることを実例を織り交ぜながら話をした。

 また、自然界の不思議、驚異に感動する心を養うことや、それを子供の科学教育に役立てる話など非常に示唆に富んだ話が続き、会員に大きな感銘を与えた。

               
                               
               
             

                           

                   
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第77回21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 第77回21世紀構想研究会は、12月14日(月)開催され、中村明子・慶応義塾大学薬学部客員教授が新型インフルエンザ対策の講演を行い、そのあとで忘年パーティが開催された。

 新型インフルエンザ(H1N1)は、メキシコ、アメリカなどで確認されたもので、季節性インフルエンザとは違うタイプであるため、従来のワクチンでは効かない。
 症状は、高熱、咳、咽頭痛、倦怠感などであり、鼻が詰まったり頭が痛くなる。通常の季節性インフルエンザとよく似ているが、下痢などの消化器症状が多いと指摘されている。

 新型インフルエンザは、文字通り新型であり、ほとんどの方が免疫を持っていないので、爆発的に感染する恐れがある。

 1918年に世界的に流行したスペイン風邪と同様にパンデミック(pandemic、世界流行)となっているので、この冬は一段と警戒する必要がある。
新型インフルエンザの感染経路は通常のインフルエンザと同じように、咳やくしゃみとともに放出されたウイルスを吸い込むことによっておこる飛沫感染と、ウ イルスが付着したものをふれた後に目、鼻、口などに触れることで、粘膜・結膜などを通じて感染する接触感染が考えられているという。

 スペイン風邪のときにも全く同じこと指摘されていることを中村教授は紹介しながら、マスク、手洗いなどの基本的な予防法が重要であることを強調した。
講演の後は、懇談しながら今年の総括スピーチ・コメントがあり、お楽しみ福引もあって忘年パーティは大いに盛り上がった。

 

               
                               
               
             

                           

                   
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第76回 21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 知的財産権の職務発明や侵害訴訟などで活躍している升永英俊弁護士(ブログ)が、11月9日の21世紀構想研究会で、日本の国政選挙の選挙区割りがいかに不平等であるかを論理的に説明し、大きな感銘を与えた。

 日本では、住んでいる住民の地域によって国政選挙への1票の重みが違う。単純に言うと、田舎に住んでいる人は1票の重みがあり、都会人は軽い。民主主義は、多数決で決めると小学校の時に習ったが、その教えで言うと日本の国政選挙は民主主義ではないのではないか。

 そのことは升永弁護士が7年前に、青色発光ダイオードの職務発明をめぐる訴訟の代理人をしていた多忙なときに、ふいに頭をよぎったという。そのときから民主主義と1票の格差問題について考えるようになり、一人一票実現国民会議の運動へと発展した。

日本のどこに住居があってもほぼ平等に1人1票になるように、公職選挙法を改正するべきだ。それをするのは立法府である。しかし、政治家は、直接自分の利害に関する立法に取り組むことはしない。人情としては分かるが、政治家としては堕落である。

 ならば、最高裁が違憲立法審査権を行使して、違憲判決を出すかというと、高度な政治的な判断だとして違憲判決を避け、立法府に裁量を委ねるという「逃げ」を打つだけである。

 結局、国民だけ置き去りにされており、いつまでたっても一人一票の実現はできない。本来なら3権分立の役割からいっても、司法が明確に違憲判決を出して立法府に法律改正をさせるべきことではないか。

 総選挙のときに最高裁判事の審査を審査をすることができる。日本国憲法79条2項および3項最高裁判所裁判官国民審査法に基づいて、司法の人事に国民が関与できる唯一の国民投票であるが、この制度は一般国民の間で明確には認識されていない。

 升永弁護士がこのことに明確に気がついたのは、2か月前のことだという。この制度を使えば、違憲判決を出さない最高裁裁判官を国民審査の多数決で罷免することが可能だ。「一人一票実現国民会議」の運動は、この制度を利用して、違憲判決を出せないような裁判官は、総選挙の国民審査のときに「×」をつけて罷免しようという運動だ。

 これまで20回ほど、各種新聞などに意見広告を掲載してきたが、その掲載費用はすべて升永弁護士の個人負担でやっているものであり、高い志がなければこのような運動はできない。

 今後はインターネットを利用して支援者の輪を広げ、総選挙の時に行使できる最高裁判事の罷免権を活用する運動に結び付けたいという。この日の出席者は20人ほどだったが、共鳴する人がほとんどであり、今後の運動の発展に協力することだろう。

 

 

               
                               
               
             

                           

                   
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第75回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 75回21世紀構想研究会は、9月7日、プレスセンターで開かれ、約50人の出席者で盛大な会となった。

 まず、「アトリエの巨匠に会いに行く」と題して写真家の南川三治郎さんが講演し、シャガール、ミロ、ダリ、キリコ、リクテンスタインらとの出会いと撮影の興味深いエピソードを披露し、聴衆を魅了した。

 講演後は会員の中澤律子さん(伊勢丹フードアテンダント)が、アメリカ大統領府のホワイトハウスでもよく飲まれているシャンパンやオーストリアのワインを解説付きで振る舞い、ビンゴの景品と女性限定のワインプレゼントで盛り上がった。
 
 講演会「アトリエの巨匠に会いに行く」 南川三治郎・写真家
 南川さんは主にヨーロッパの人と文化をキーワードに取材、撮影、執筆を続けている。代表作に欧米の画家や彫刻家シャガール、ミロ、ダリ、キリコ、リクテンスタインなどの巨匠と彼らのアトリエを撮影した「アトリエの巨匠・100人」(新潮社)がある。
 また欧米のミステリー作家・グレアム・グリーン、フレデリック・フォーサイス、エド・マクベイン、マイケル・クライトンといった彼らの書斎を撮影した「推理作家の発想工房」(文藝春秋)も高く評価されている。
 これまでに500人以上のアーティストをインタビュー、撮影しているが、このような活動、実績を残しているのは世界で南川さん以外誰もいない。
 
 このほど1970年~1990年にかけて撮影した300人のアーティストの中から31人を抜粋し朝日新聞出版より新書「アトリエの巨匠に会いに行く」を刊行し大きな反響呼んだ。
 今回の講演では世界の巨匠に会うまでのドラマティックな道のりや忘れられないエピソードなどを貴重な記録を写しながら講演した。
 
 オーストリアワインで初秋を爽やかに
 今年は、日墺修好140年の年にあたる。そこで、キリリと冷えた<オーストリアワイン>を味わってみませんか・・・との趣向で、ウィーン、ザルツブルク、ドナウ河その清々しい響きのある国で造られるワインを賞味した。
 生産量が少なく、自国消費の為世界中に僅か1%しか出回っていない<オーストリアワイン>ちょっときどって<ウィーンワイン>と言っているようだ。この日はラベルもカラフルな数種類のウィーンワインを揃え、いろいろ飲み比べてもらった。
               
                               

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第74回21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

            

 

 2009年7月7日(火)、午後7時から21世紀構想研究会が開催され、自民党の小野晋也代議士が、「さらば国会議員、さらば永田町」と題して講演し、参加者と討論を行った。
  
 自民党のホープと言われ、文部科学副大臣など要職を歴任した小野晋也(おの しんや)代議士(54歳)が、次期総選挙には出馬しないと表明して各界に衝撃を与えている。愛媛3区、当選5回。政治家としてはこれから大成する人材として嘱望されていただけに、突然の「引退」宣言には驚きを隠せない。
 先日、自民党の政調会・立国調査会のヒアリングでばったり出会い、小野先生に真意を聞いたところ「政界の論理に疑問を感じた。国民の政治 への不信感は国会で活動を続けても払拭できない。今回の決断は、政界からの引退ではない。今後は在野の政治家として人材を育てていきたい」と語っている。
 代議士になりたい人は山ほどいるが、中央政界のホープとされた中堅政治家が潔く辞めていくのは稀有のケースである。

 小野代議士は、講演の中で次のように語った。

 永田町にとどまるのはよくない。在野になって政治をやる。 いまの政治をどう見るか。日本の政治は政治ではなく政治ごっこだ。 政治家のふりをしてやっているだけだ。本当の政治家になっていない。 政治は本来何をなすべきか。 3つある。

1.     大きな社会のうねり、時代のうねりを見て、政治がどう方向づけるかである。文明の大きな流れの中で、どう方向づけするか。文明の変化を論じなければならない。導かれなければならない。

2.     同 時に政治は、時代の動きについてこれない人をどうするか。変化をつかみとることができない、どうしたらいいかわからない。このような人々をどうするかが政 治である。おちこぼれに手をさし述べることだ。政治が手を打つべきことは、大勢の人をターゲットにしていることではない。これは、政治が本来するべきこと ではない。

 社会は基本的には、時代の先端をになう人と、そこについていけない人がいる。先端部分をいかにするべきか。対応できないで困っている人をどうするか。上下をきちんと政治の判断におかれると中間層はそれなりにすべて1つの中に入ってくる。これで国つくりになる。民主主義は、もっとも大勢の人を対象にするので上下には手を出さない。

 中間の人たち、先端の人に金を入れてもたかが知れている。本来きちんと政治をするなら、多少の金を出しても負担にならない。政治の原点を問い直さないとならない。

3.     いかなる時代がやってきて、どんな社会が出てきても、問題に取り組んでいるという良識と能力を持っている人材を育てることだ。人間として社会を支えていくことだ。 この3つが政治で行われているかどうかが重要だ。時代を切り開き、本気で立ち向かっているか。今の政治にはそれが足りない。

 小野晋也代議士の略歴
 愛媛県新居浜市出身。愛光高等学校、東京大学工学部航空学科卒業。同工学系大学院航空学専修修士課程修了後、1983年、松下政経塾の第1期生として卒塾。同期生には逢沢一郎・野田佳彦、横尾俊彦、岡田邦彦らがいる。
 その後、愛媛県会議員選挙に立候補して最年少で初当選。2期つとめた後、1993年、衆議院議員選挙に自民党公認で立候補し、初当選。連続5回当選。
 ロボット工学や宇宙工学を専門にしており、教育問題でもたびたび見解を表明。数少ない理系議員として存在感を示していた。
 これまで経済企画総括政務次官、自民党文部科学部会長、文部科学副大臣を務め、現在は、財務金融委員長、自民党宇宙開発特別委員長を務め、2007年8月から、自民党中央政治大学院長を務めている。 

 

               
                               
               
             

                           

                   
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21世紀構想研究会についてご紹介

                               
                 

 21世紀構想研究会

 わが国が、知的基盤の強固な研究現場と産業振興の技術革新を実現し、真の科学技術創造立国を確立するため、適宜、研究テーマを掲げて討論する場として、1997年9月26日、21世紀構想研究会はスタートしました。

 研究会の会員は、主としてベンチャー企業、行政官庁、大学、マスコミの4極から参加し、毎回、活発な議論を展開して来ました。

 研究会で得られた成果を社会に訴えて啓発をはかりながら、国の政策にも結びつくように活動するという目的も、回を追うにしたがって明確となり、政府審議会のパブリックメントなどにも積極的に発言するようにしています。

 研究会は、2000年7月に東京都から特定非営利活動法人として認められ、さらに生命科学 委員会(東中川徹委員長)、産業技術・知的財産権委員会(生越由美委員長)、環境・エネルギー安全委員会(千葉英之委員長)が下部組織として設立され、適 宜テーマを定めて活動を続けています。

 まだ世に知られていないベンチャー企業の優れた技術を、研究会を通して広く認識してもらったり、これまであまり接点がなかった中央行政官庁の官僚との交流を通じて、政策への提言をすることも活動の一つにしています。

 会員数は現在約100人であり、アドバイザーとして、荒井寿光・内閣官房知的財産戦略推進 事務局長、安西祐一郎・慶應義塾長、黒川清・日本学術会議会長、利根川進・MIT教授、吉川弘之・産業技術総合研究所理事長の方々にお願いし、適宜、活動 への助言をいただいています。

               

第116回・21世紀構想研究会の報告

                               
                 

第116回・21世紀構想研究会の報告

 

「荒井寿光さんの叙勲をお祝いし知財現場の課題について語る特別講演会」

 

2015年1月29日(木)午後7時からプレスセンタービル9階大宴会場で開催され、約40人が出席して楽しい講演と意見交換が行われました。

荒井さんの特別講演タイトルは「特許人生・知財人生 これからの知財を考える」でした。


日本でただ一人「知財評論家」を名乗る荒井さんは、特許庁長官、通商産業審議官、内閣官房知的財産推進戦略事務局長などを務められるなど、1996年から日本の知財立国のためにご尽力されてきました。

 

官界での長年の功績により、2014年秋の叙勲で「瑞宝重光章」を受章されました。今回は、21世紀構想研究会の皆さんで叙勲のお祝いをし、荒井さんにはこれまで活動してきた知財人生を振り返っていただきながら、日本の知財の課題と将来展望を提示していただきました。

 

荒井さんは1996年に特許庁長官に就任し、それまで停滞していた特許行政の改革に取り組み、日本に知財立国の実現に初めて取り組みました。講演会では長官に就任後に気が付いた特許行政の「伝統」を打ち破るために特許庁新設運動を開始。特許庁は従業員2500人、売上1000億円規模のサービス産業と位置づけ、それまでの国家権力を付与する「お上意識」を献上するように改革しました。

 

知識社会を迎えて知的財産が非常に重要になったことを啓発する多くの講演を行い、多数の著書も世に出しました。行動する長官として産業界からも歓迎され、その後、内閣官房知的財産戦略推進事務局長に抜擢されました。

 

このような経歴の中で活動した日々のことを振り返りながら、日本の知財現場に横たわっていた問題が今なお未解決、未改善のままにあることをとらえ、さらにそれを解決・改善する道筋まで示しました。

 

  

分かりやすいパワーポイントを駆使し、会場と双方向の講演であり、聴く人の興味を引き出す手腕はいつもの「荒井節」で魅了させました。話題は工業製品の特許に限らず、医療、農業、クールジャパン、模倣品対策など多角的な話題に広がりました。

 

荒井さんは近々「知財立国が危ない」という本を日経新聞から出版します。この本には、日本の知財課題を出すだけではなく、解決策を具体的に書き込んだ本です。

 

 

荒井さんのパワーポイントは、伏字がところどころにあり、フロアの聴衆も一緒に考えるように工夫しています。これがただ聴くだけの立場から一緒に考える立場になり、講演会を一層盛り上げる効果になっています。

 

講演会の後は、荒井さんの叙勲をお祝いするセレモニーに移り、記念品贈呈からお祝いスピーチなど最後まで楽しい研究会でした。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

第115回・21世紀構想研究会「忘年パーティ」報告

                               
                 

 第115回・21世紀構想研究会「忘年パーティ」報告

 今年の忘年パーティは、12月11日(木)午後6時半から開催され、多数の参加者でにぎわいました。
 第一部は、黒木登志夫先生の「パタゴニア紀行」の講演でした。すでにパタゴニアの大自然を伝える前触れを送付しておりましたので、みなさん楽しみにしていました。

 ところが黒木先生は、意表を衝いて冒頭からまったく別の話を始めました。世の中には指数関数とべき乗関則があることを説明して、地震の発生規模や戦争の死者数が指数関数に合致していることを示しました。

 続いて加齢とともにべき乗則で増加する がん、心筋梗塞、脳卒中の年齢別死亡グラフを示して高齢者の多いフロアの参加者を震え上がらせました。60歳を過ぎると急激にこの3大成人病で死亡する確率が上がっていくのです。

 黒木先生の分析によると、60歳から1年刻みで9-12%の死亡リスクが上昇するというのです。特に70歳を過ぎた人にとっては、1年間無事に生きることがどれだけ大変かという統計分析を示されたもので、人は必ず死に向かって歩を進めていることを示してくれました。

 ま、このショックも一晩寝て翌日にはほぼ忘れているので、無事にまた生きていけるのでしょうか。

 パタゴニアの自然はAricaから200km地点にある 最高地点標高4660mまでを紹介されました。途中の景色は雄大ですごいの一言でした。双子富士とか高地の動物たち、土産物屋の風景など一度は行ってみたいパタゴニアですが、簡単には行けないでしょう。

 第二部は、恒例の楽しいパーティです。黒木先生のパタゴニア紀行にちなんで、南米ワインを楽しみました。

 第三部は、これまた恒例の「合原さんちの有機野菜即売会」でした。有機野菜栽培でとれたし新鮮な野菜の数々を販売しましたが、どれもこれも好評でした。

               
                               
               
             
                                         
                               

第114回・21世紀構想研究会

                               
                 

第114回・21世紀構想研究会 

 

「どうする日本の地方再生と企業経営」

日本の価値最大化に求められる重要課題

いまそしてこれまでの延長線上に日本の未来はない

株式会社・Aurea Lotus CEO 柳下裕紀   

 学生時代、女性を輝かせてくれる社会でないように感じていたので、男女区別なくフェアな扱いをする外資系企業に入った。それから30年経ったが、日本社会はまだ女性を輝かせていないように感じる。 

 日本はなかなか変わろうとしない。息苦しさがある。アベノミクスが2012年末からスタートして13年4月に第1弾そして最近、第2弾を施策しているが、実態経済がおかしいと感じている。

 消費税の増税でインフレを実現するという。アメリカの金融緩和は日本と違う。リーマン ショックのときは、アメリカの金融機関は非常に深刻だった。モラルハザードを度外視せねばならないほど緊急だった。日本は、リーマンショックのときは金融 が重症でなかったが金融緩和してきた。

 白川前日銀副総裁のとった金融政策は教科書的にも正しい。効果がまったくなかったわけではない。 いま、企業は簡単に設備投資できない。将来的にも、設備投資は回らないと白川さんは強調していた。

 いまアメリカのFRBは金融緩和が直接経済を回復させるとは言っていない。日本は社会保障費をどうするか大きな問題だが、公共投資をしている。民間に出すべき金が、利益を出さないものに投資している。 

 株高を演出し、下品な表現になるが「シャブづけ」にしているように感じる。白川前日銀総裁 は、ちゃんと仕事をしていた。黒田総裁になってマネタリーベースを増やしても、銀行が世の中に放出するストックベースが全く増えない。日銀当座預金が増え ても貸出残高は増えていない。銀行が放出しないのでデフレを解消していない。 

 フィッシャーの貨幣数量方程式に当てはめても、日銀方針がおかしいことがわかる。(通貨の 総量)×(貨幣の流通速度)=(物価水準)×(財・サービスの取引量)=GDP この方程式の中で日銀がいくらお金を供給しても銀行にお金がたまっていれ ば、貨幣の流通速度はゼロになる。

 貨幣の流通速度や財・サービスの取引量を決めるのは国民だが、雇用に不安があり生活防衛で買い物をしなければ、この方程式はうまくいかない。  銀行がお金を出す、国民がお金を使う、そしてGDPを決めるのは国民だが生活防衛でお金を使わないのでは成り立たない。

  日銀は、短期国債を償却額の上回る金額で市場から買い入れている。マネタリーベースの増 加が政策目標なので国債買い入れが目的化している。損失覚悟で額面を上回る高い価格で落札し金融機関にプレミアムを付けている。 コストはすべて国庫納付 金から出るのでつけは国民にくる。

 日本は総事業所数の91パーセント、雇用者の84パーセントが非製造業である。輸出依存も15パーセント以下の内需大国である。この60年間、日本の輸出依存度は10-15パーセントである。円安になっても一部の輸出企業が潤うだけである。

 消費税のアップは、経営に対する中立性が欠如した弱いものいじめである。人口減少が進めばお金を使う人数が減るのだから一人当たりの使う金額を増やすために減税しなければならないのに増税している。内需の減少は、所得税、法人税など他の税収も落ち込むことになる。

 これこそ天下の愚策だ。

  かつて超円高水準の中で輸出を倍増させていた。バブルのころ42兆円でありリーマン ショックの前には80兆円台になっていた。日本の企業の競争力はものすごく強いからもっていた。 円安になったらその特質を生かす政策をしなければならな い。観光業の伸びしろはまだ大きく、外国から呼び込む観光客の総数はモロッコと同じ程度の観光産業である。これを活性化しなければならない。

  国内の旅行効果だけでも30兆円ほどあり、雇用者も460万人を生む。海外から旅行者を呼び込めば、高齢者の活用の広がりも出るし外国人の消費は国内減退の補完になる。必要な施策は規制緩和、許認可制度の改善、新規ビジネスのアイデアを積極的に採用するなどがある。

  カジノで国を救うなんて懐疑的だ。経済効果に疑問符をつけたい。日本はギャンブル大国であり24兆円の市場規模がある。カジノで4000億円の収入があっても小さい。

  世界は今カジノ離れでありマカオも不況だし斜陽産業だ。ラスベガスはカジノだけではな い。子供、家族も楽しませるデザインと洗練されたビジネスメソッドになっている。政府は経営しないでテナント料を取るだけだ。債権管理能力をどこに任せる のか。地方振興になるわけがない。

  地方再生の要諦は、外部の力や財源に頼らず、地元の人、モノ、金、文化を最大限活用する ことだ。地元を最大限活用して地域住民を巻き込むことだ。自立して稼ぐことしかない。 たとえば清酒造りは日本の風土そのものだ。日本酒造りは独自に磨き 上げられたワザである。並行複発酵は日本独特のものだ。日本人だけが麹菌を発見した唯一の民族だ。

  発酵が進むとアルコール度が高くなる。水がおいしい場所でないと酒が造れないし日本の風土とあっている。日本酒を水で薄めたりシャンパンにしたり自由度の高いお酒である。日本が伝統として持っている酒の資源を大事にすることだ。

  海外20か国に日本酒を出している桜井博志さんは、巧みなブランド戦略と明確なコンセプトで成功している。「日本酒の伝道師」である長谷川酒店の長谷川浩一社長は、全国の酒蔵200以上をめぐり、知られていない地酒を発掘し、常時800種の銘柄を取り揃えている。

  いま進行中のTPPを恐れず、外へ攻めて出ることを考えよう。円安の弊害を緩和して外へ攻めることを考えよう。良質なコメをアメリカに売り込むチャンスだ。将来の人口年齢層別分布の推移を見てもアメリカが成長することは間違いない。 

 四国には徳島県上勝町の過疎化・高齢化を強みに転換した株式会社いろどり、伊予現代町家のコンセプトで施工まで請け負う建築事務所の株式会社コラボハウスなど、多くの成功事例がある。

  愛媛の今治造船も大手海運企業、造船所、荷主、保険会社、船舶部品メーカー、銀行などと連携した独自のビジネスを築いて成功している。このような成功例を見習い、日本の再生に取り組むことが重要だ。 

(文責・馬場錬成)

               
                               
               
             
                                         
                               

第112回 21世紀構想研究会の報告 

                               
                 

第112回 21世紀構想研究会の報告   

 

 
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  第112回・21世紀構想研究会は、9月17日に開催され、科学技術振興機構(JST)特別顧問、日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)推進室長の沖村憲樹氏が「アジアからなぜ2600人の青少年を招へいするのか」とのタイトルで、さくらサイエンスプランの事業について講演した。

 

 講演後に活発な議論が行われ盛会だった。

 沖村さんは、JSTの理事長時代から中国に関心もち、将来は中国が世界の大国へと成長することを予想し、JSTに中国総合研究センターを創設した。そして中国の科学技術の文献データベースを構築し、中国との学術交流を始めた。   

 小泉政権以降の日中の友好関係は必ずしも良好ではなく、日中両国の国民が相手国への印象をよく思っていないことが、各種の世論調査でも出ている。たとえば、最近のNHK世論調査でも日本人(93.0%)、中国人(86.8%)ともに9割前後が「(相手国に)よくない印象をもっている」との結果が出ている。   

 こうした結果から、両国の特に若い世代が直接顔を合わせて交流する機会を作るべきとの考えを持つようになった。交流には国同士というのではなく、民間交流、草の根交流であるべきとの考えから、政府機関はこの交流を支援する立場で行うことにした。  

 また、当初は中国だけに特化した交流にしたかったが、下村文部科学大臣らの助言・指導もあり東アジア14カ国・地域の青年を招へいするプランに切り替え、名称をさくらサイエンスプランと付けた。   

 さくらサイエンスプラン事業は、大学や企業からの公募を採択する①公募計画コースと、JSTがすべて企画・実施する②高校生特別コースを実施している。高校生特別コースはすでに8か国の高校生281人の招へいが終了した。これらの高校生は例外なく感謝し、日本の科学技術の先端研究を評価し、将来は日本へ留学したいとの希望を持って帰国していった。  

 公募計画コースは、全国の大学・研究機関で現在進行中であり、アジア各国の大学生らが日本の大学、研究機関、企業などを訪問してセミナー、見学、実習、研修に取り組んでいる。 

 
これからの交流方法を提案する藤島昭・東京理科大学長
  

 沖村さんは、このような経過を説明しながら、さくらサイエンスプランが具体的に活動しているようすを説明した。 

  活動の交流は、次の2つのサイトから見られる。  

さくらサイエンスプラン公式HP=http://ssp.jst.go.jp/index.html   さくらサイエンスプラン応援サイト=https://www.facebook.com/sspjapan 

 沖村さんの講演後、フロアとの活発な討論が行われ、多くの出席者がこのプランの成功を喜び、今後ももっと充実したプランへと広げていくことなど前向きなコメントが次々と寄せられた。  

 

               
                               
               
             
                                         
                               

震えるほど感動した中国の高校1年生のスピーチ

                               
                 

 

 日本政府がアジアの優秀な青年を招へいして科学技術交流を展開している「さくらサイエンスプラン」で来日した中国の高校生第一陣が、1週間の見学や研修を終えて7月26日に無事帰国しました。

  1週間のスケジュールは分刻みの過密でしたが、多くの大学、研究機関、人々と科学技術交流をしました。その報告会が7月25日に開かれ、8人の高校生がそ れぞれの感想をスピーチしました。中でも北京市第11中学校1年(日本の高校1年)の李釣正君のスピーチは、堂々とした態度といいその内容といい聞いてい て感動せずにいられませんでした。

 スピーチの要旨を紹介します。

 「私たち中日は兄弟のように似た国です。中国と日本は漢字や茶の文化など、とても共通するところが多い国です。中日の言葉は似た文字を使っているし顔もよく似ています。よりよく理解するべきですが、実際にはそうではありません。

 似た民族なのにそれぞれが利益を考えて、お互いに怒りが大きくなっており争いが大きくなっています。人々を怖がらせているのが現状です。これには失望を覚えていましたが、今回、新たな希望の光を見たと思いました。

 理化学研究所には多くの中国人が研究者として活動していましたし東大にもいました。研究の成果も共有していました。しかしこれに反対する人がいるかもしれません。

  昨日(7月24日)は、東工大付属科学技術高校の生徒とお昼に交流会がありました。そのときお互いに写真をとり合い、一緒に笑いあいました。彼らは非常に 誠実でした。だから女生徒も心配することなく心を通じて握手をし、友情を素直に示すことができました。これは純粋な気持ちでした。

 30年後、ここにいる高校生は必ず社会で活躍しているでしょう。政治家や科学者になっているかもしれません。各方面で立派な社会人になっているでしょう。  あるいはその時には、国を背負っているかもしれないし、いまの純粋な気持ちが変わっているかもしれません。

 しかし昨日の友情が変わることがないと信じています。

 30年後 科学者になった人は緊密に協力し、すべての国民が純粋な協調をもって二つの国と世界のために貢献することを競い合うでしょう。これからは共同の未来を築くことです。

 それはあなたの未来ではなく僕たちの共同の未来です。」

 

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

日本一秋田工場を見学(秋田シンポジウムの後で)

                               
                 

 

 

 

 焼き鳥・うなぎ製造・販売の老舗で、21世紀構想研究会の理事を務めている染谷幸雄さん(日本一ホールディングス株式会社代表取締役社長)が経営する日 本一フード秋田株式会社(齋藤英二社長)の工場を見学した。秋田シンポジウムに参加した21世紀構想研究会のメンバーで総勢20人ほどだった。

 今年の2月に操業開始したばかりであり、ご覧のように見るからに新工場らしくピカピカ。齋藤社長ら社員の皆さんの歓迎を受けてまず工場の会議室で、新工場の経営方針などをうかがった。鶏肉を串刺しにし、冷凍して全国に出荷する工場であり従業員は61人。

 驚いたことに、60人が正規社員で、1人は本人の都合により臨時で就業しているという。染谷社長の方針で、正規社員によるこだわりの製造を実現している そうだ。焼き鳥製造の工場は、日本全国に多数あるが、従業員はほとんどが臨時雇用とかバイトである。しかしそれでは、いい品質の焼き鳥はできないというこ だわりから雇用も正規社員にしたという。

 齋藤社長は、人件費が高くなっているので経営は大変だが、「それを乗り越えて頑張っています」ということだった。工場の中に入ることになったが、そこでまたまた驚いた。 頭のてっぺんから靴まで全て帽子から白衣、マスクなどで完全衛生管理の服装。

 工場内に入る際も、手洗いからエアシャワーでの洗浄など、原発施設と同じような厳格な管理になっている。中に入ると整然と作業台に並んだ社員が手際よく 焼き鳥を串刺しにしている。完全衛生管理であり、しかも手際がいいので、あっという間にケースに入った焼き鳥が次々と冷凍保存されていく。

 その製造工程は自動化されており、手作業は串刺しの行程だけ。これとてできるだけ作業をやりやすく準備しているそうであり、自動化の各種作業設備も開発中という。作業現場の写真撮影は禁止なのでお見せできないのが残念だ。

 見学したあとで、焼きあげたばかりの焼き鳥をいただいたが、これがほっくりした味のいい焼き鳥であり、大満足の見学会だった。

 
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会社説明会では齊藤社長から焼き鳥工場の設備内容や経営方針をうかがった。
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秋田シンポジウム速報「跳びだせ世界へ秋田県」

                               
                 

秋田シンポジウム

「跳びだせ世界へ秋田県」

 

モデレーター 

橋本五郎(読売新聞特別編集委員、ニュースキャスター、21世紀構想研究会理事) 

パネリスト  

銭谷眞美(東京国立博物館館長、元文部科学省事務次官、21世紀構想研究会顧問)

吉村 昇(東北公益文科大学学長、前秋田大学学長、秋田大学学事顧問)

三浦廣巳(秋田商工会議所会頭、秋田日産自動車会長)

生越由美(東京理科大学知財専門職大学院教授、21世紀構想研究会理事)

 

橋本 先に出版された「中央公論」6月号、7月号によると、2040年までに何もしなければ日本の市町村は半分になってしまうという報告が掲載され、大きなショックを与えています。秋田県も同様の減少率で24市町村がなくなると出ています。地方の振興がいま、重要な政治課題になっている。

 

 ところで安部政権は、1年経っても支持率が下がらない。最近の内閣では非常に安定している。しかし不満がある。地方の再興という政策が成長戦略の中に入っていない。これは大きな問題だ。 

 過去の内閣を見ると、田中内閣、大平内閣でも日本の地方振興という政策を重視してきた。故郷をどうするかという視点があった。これをいま、どうすればいいのか。

 まず大事なことは、いま地方に住んでいる人たちが何かをしようという発想や行動がなければならない。地方の再生可能にするためには自分たちで考えて行動を起こすということが大事だ。

 今日のシンポジウムは、地方再生を考える一つのきっかけにしたい。この秋田に生まれてよかったとするにはどうあるべきか。そのような論議を期待したい。

 それではこのシンポジウムでパネリストの方々に秋田県を活性化する発想でそれぞれの思いを語っていただきたい。地方を活性化するきっかけにしたいと思います。銭谷さんから順にご発言をお願いします。

  銭谷 昨夜は秋田市に帰り実家に泊まった。秋田で生まれ育ったが、高校を卒業後は、秋田を離れてしまったが秋田を心から愛している。

  本日のシンポジウムのモデレーターを担当している橋本さんは、高校の先輩であり、先年、東京で50年前の秋田の映画「17歳は一度だけ」を観る会があり、 そのとき橋本さんの講演を聞いて感動した。橋本さんは、故郷を思う気持ちを語り母親の話をしたときには会場の多くの人が感動して泣いていた。そのような縁 で、本日のパネリストになった。

 

 さて、いま私は日本で一番規模が大きく一番古い歴史を持っている博物館の東京国立博物館の館長をしているが、ここには多くの国宝や重要文化財が収納されており、随時展示もしている。

 秋田県関係の重要文化財を調べてもらったところ、縄文時代の土器から始まって江戸時代の秋田城に関する文書、後三年役の絵巻物、佐竹氏の時代まで文書や資料が多く保存されていることを知った。秋田は江戸時代から交通の要衝にあり、拠点になっていたことが分かった。

 さらに当時は鉱山、油田という産業がありそれに関連する化学工業もあった。そのような歴史的な産業や古くからある文化を見直す機会を持つことが大事ではないか。

  吉村 秋 田大学学長から酒田にある東北公益文科大学学長に転出した。鳥海山を見ながら酒田と秋田を往復する生活になっているため、山形県と秋田県を比較するように なった。山形県民は、よく働き競争して活動してきたようだが、秋田は食うに困らない人が多いせいか、のんびりしている。

 

 秋田大学の歴史を見ても、意欲的に学部を増やすようなことをしなかった。秋田はほんわかした土地であるが、これを考え直す時期になってきた。東京は、オリンピック開催もありさらに一極集中が進むだろう。リニアモーターカーにしても常に東京を中心に考えている。

 アメリカは各地で栄えており一極集中にはなっていない。大震災後の復興も太平洋側が優先的になっているが、日本海側も考えてやらないと均衡ある発展にはならない。

  三浦  このシンポジウムの冒頭に橋本さんから重い発言があった。何もやらなければ、2050年には秋田県の人口が70万人になると言われている。知恵を出してや ならいとこうなってしまう。それではわれわれは、何をやるのか。秋田商工会議所でも、中小企業経営者らと現実をしっかりと認識し、いろいろな課題を話し 合っている。

  企業経営でもそうだが対前年実績を割らないことが一つの目標になっている。しかしそう簡単にはいかない。それでも最低限、これだけはやろうという目標を立 てている。それは人口減少への対応でも同じだ。秋田県の人口は100万人を割らない、減らさないという目標にこだわりを持つことが大事だ。

 

 人口が増えれば企業が増えるし雇用者が増えることは成長することだ。首都圏一極集中を解消するという構想があったが、いつの間にか消えてしまっている。首都圏に大地震が発生したら甚大な被害が出る。地方に首都圏の機能を分散してリスクを軽減するという考えがあるべきだ。太平洋戦争のときは、都会から地方へと疎開した。これを見習って企業のバックアップは地方へ持っていくべきだ。地方に分散することを考えるべきだ。

  生越 産 業史を振り返ってみると、農業社会から工業社会になりいまは知識社会へと発展してきた。社会の中心価値の変遷をみると、無形資産と有形資産の割合が劇的に 変化した。1978年には無形資産は17パーセントだったものが20年後の1998年には69パーセントになっている。

 昨日から秋田県庁などでご当地の産業や地域ブランドについて取材しましたが秋田県にはたくさんのブランドがあることが分かりました。これを生かす方策がいろいろ考えられると思います。

 

 世界競争に生き残るためのポイントの一つは、地域にしか存在しないものとか地域に行かないと味わえないもの、地域でしか作れないものなど地域の固有化が要になる。ウエブ情報でみても秋田県には多数の食文化がある。「いぶりがっきー」とか「ぷれすてなまはげ」などユニークな食品も開発されている。

  ポイントの2つ目は、価値と価格の多層化時代を認識して対応することだ。ハンバーガーも100円から2000円まであって、高くても付加価値があれば売れ る時代だ。ポイントの3つ目は、使えるものは全て使うという発想だ。曲げわっぱ、秋田八丈など名品があるので活用方法を広げたい。

 秋田には多くの強みがある。竿灯、なまはげ、かまくら、ハタハタなどや横手市増田町の内蔵など文化資本である地域資源、歴史資源、コンテンツ資源など多数ある。今後の展開によって楽しみな県である。

  橋本 大 変素晴らしいご意見をいただきました。銭谷さんからは、秋田には歴史的に古い文化の資料が多数あることが報告され改めて再認識したものです。一極集中は、 なぜそうなるのか。もう一度私たちは考える必要があるようです。新幹線もすべて東京から始まる。大震災が発生したらいったいどうするのかという課題もあり ます。

  一極集中が改められないと職を求めて多くの人材が東京に行くことになる。雇用の問題を地方で考えると大変な課題がある。いまは、大学を卒業しても正規社員 として就職できない人がかなりいる。これでは若い世代がかわいそうだ。産業界は雇用問題では自分で首を絞めているような感じもある。

  吉村  日本の発展をみると西から発展してきた。東北はどうしても遅れてきた。秋田も工業と農業しかなかった。アメリカは一極集中ではなく、歴史的に分散して発展 してきている。ボストンから始まって北から南へと発展した。シアトル、ロチェスター、ニューヨーク、デトロイトというように産業の種類によっても固有に発 展する都市が変わっていった。

  日本は東京から南へ発展した。半導体の九州、自動車の名古屋という具合だ。山形県には売上100億円以上の企業が数社あるが秋田県にはない。これからは秋 田県の企業で世界へ羽ばたくような企業を育てなければならない。その意味で大学の責任は重い。これからは産学官で連携して発展する時代だ。

  三浦 最近は企業の環境が変わってきた。本社はどこにあってもいいという時代になってきた。日本は中小企業が95%と言われている。秋田は中小企業ばかりだが、一流の技術を持った中小企業が秋田には多数ある。

  秋田はまだまだアピールが足りない。親はどうしても子供の就職先は大企業がいいと思っているが、魅力ある中小企業をアピールしてひきつけることが肝要だ。 商業地の地価を考えると、東京は秋田の36倍も高い。秋田には付加価値を付けて、よりいい地域であることをアピールしていくことが大事だ。

  橋本 今日のシンポジウムの見出しはどうなるか。「東京の一極集中を見直す」とならないか。それには地方は何をなすべきか。東京でなく自分の住んでいる地方都市の魅力を見直し、外から見ても魅力あるものに見えないとならない。

 鳥取県の知事が「わが県にはスタバはないが砂場がある」と語っていた。鳥取砂丘を砂場と言ったものだが、マイナス面と考えないでプラス思考で考えることが必要だ。

  生越 徳島では刺身のつまに使う葉っぱで収入があがった地域がある。山奥の葉っぱを生かすことで年収がみな1500万円から2000万円になった。こうなると地方に対する若い人の見る目が変わってくる。

 またブランド豚肉を売り出した平田牧場のように、豚作りで独自の産業に発展させている例がある。農業はこれからハイテク化が進むので逆転の発想と成果が出てくることが期待できる。

 

  橋本 秋田県の人口が減少すると心配しているが、秋田は100万人を維持するということにこだわるべきだ。卑近な例で恐縮だが、読売新聞は1000万部を何が何でも維持しようと目標を掲げて頑張っている。そのように目標をきちんと立てないと人口も購読者数も維持できなくなる。

  高齢化率が高いと言うが、それは長生きする率が高いということになる。マイナス思考ではなくプラス思考でいきたい。がんの死亡率は、秋田県が最も高いと言 うが、がん研究者に言わせるとそれは長生きする人が多いからだという。長生きすればがんで死亡する人が多くなるからだ。

 また地方の文化の良さもアピールして都会の人に認識してもらうことも必要だ。

  銭谷 橋本さんがいま言ったことは私も言いたかった。高齢化率日本一は長生きしているからである。子育て環境日本一にすれば、人口を100万人は維持できるだろう。米国は企業の定年制がない。これを見習っていくこともいいのではないか。

 秋田は北緯40度だが、世界地図をみると北緯40度の都市は、北京、ニューヨーク、スペインのマドリードなど世界の文明圏として重要な都市になっている。

  健康で長生きする健康寿命には、文化が重要だ。50年前に地域にいた人に来てもらい、いろいろやってもらうこともいい。秋田大学は鉱山学部からさらに発展 して国際資源学部を作った。これこそ秋田の特徴を生かしている。就職すると秋田を離れると言うが、若い学生が4年間秋田にいるだけでもいいという考えが あってもいいのではないか。

  橋本 隣の県に移った吉村さんは、秋田県を隣から見て分かる点があると思う。どこに問題があるのか。

  吉村  秋田は米に困ったことがない。これに比べ他の県や地域はたくましく生きてきた。秋田大学も昭和24年に学芸部、鉱山学部から出発した。農学部も工学部もな かなか作れなかったし、今も農学部はない。昔の学長や事務局長に責任があるということも言われているが、それはさておき秋田はゆったりと生きてきたという ことではないか。

  橋本 なるほど、秋田は豊かであるがゆえたくましさがなくなった。暮らしずらい方がエネルギーを生み出すことになるかもしれない。

 

  三浦 秋田は農業で発展してきた。だから他人と違うことはやらない。しかしこれを打破しないとならない。ベストの計画を立て事業経営者はチャレンジしないと伸びない。可能性のあるものを応援することも大事だ。

 岩手は手を引っ張るが秋田は足を引っ張るという言葉がある。秋田は人がやらないことはやらない。リセットして、おれもやるからお前もやれということにならないと可能性が出てこない。

  ベンチャー企業を立ち上げ、時間がかかるだろうが新しい企業を育てていくというように仕組みを変えていくことが必要だ。他人の邪魔をしないことだ。応援出来ない人は、静かに見守ってほしい。秋田は自分たちがプレーヤーとして頑張っていくよりない。

  橋本  行政の役割も大事なのでこれを考えてみたい。行政は積極的に秋田のいいところ魅力を見つけ、それを伸ばしていく必要がある。このシンポジウムでも秋田のい いところがたくさんでてきた。農業も大事だし秋田を高齢者の県にするというのもいい。2つとか3つに絞って施策をすることだ。

  生越 各地に行って取材をすると、リーダーはよそ者、若者、馬鹿者と言われている。たとえば宇都宮餃子は、長老がうまく育てた。行政は安心して挑戦できる環境を作ることだ。

  橋本 行政の役割の重要性が出てきた。さて時間も少なくなってきたので、最後にこれだけは言っておきたいという発言をお願いしたい。

  銭谷 冒頭にも言ったが文化と観光とは別物ではない。文化は人が来なくても育っていく。文化と観光は資源である。その良さを知ってもらうことが重要だ。

  吉村 過去からの脱却が大事だ。安いカネで大量の消費をしてきた。それをやめて日本のオリジナルを作ること、できることをやるということが重要だ。

  三浦 秋田にはいいものがたくさんある。いいもの、悪いものなどと言い訳しないで秋田のいいものを伸ばすことだ。親父の生き方を経営に生かしていくことが最も大事だ。

  生越 秋田の生活の豊かさをみんなに見せることが大事だ。日本は介護技術が遅れている。そのような産業を秋田から起こすことができないだろうか。

  橋本 外から来ないとカネが落ちない。そのためにはちゃんと自分のよさを見つけて強固なものにすることだ。秋田に行くとすごくいいというものがほしい。改めていいところを再認識してもらう。

 秋田駅に降り立つと私はちょっと不満だ。県庁所在地だが秋田だなあというもが見えない。まだ盛岡はある。隣の芝生はよく見えるというのと同じかもしれないが。

 いいところを伸ばし悪いところを逆に利用する。発送の転換だ。東京に住んでいても孫が秋田へ行きたいという時代と土地にしなければならない。

 「中央公論」で衝撃的な報告と課題提起がされたが、これを乗り越えていくことを秋田に期待していシンポジウムを終了したい。

(文責・馬場錬成)

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会の第14期総会の開催

                               
                 
 

 特定非営利活動法人21世紀構想研究会の第14期総会が、6月2日、プレスセンタービル9階の宴会場で開催され、今年度の事業計画や新役員の陣容を全会一致で承認した。

  昨年度の21世紀構想研究会は、100回記念シンポジウムの開催のほか、知的財産委員会の活発な論議と政策提言や、教育委員会の第8回全国学校給食甲子園の開催など、例年以上の事業の開催で非常に活性化した活動だった。

 総会では、昨年度の事業の報告、会計報告と今年度の事業計画と予算案が提案され、いずれも全会一致で承認された。また特定非営利活動法人21世紀構想研究会定款を改正し、理事・監事を20人以下に改正する案も承認された。これまでは10人以下となっていた。

 理事の増員は、活動を活性化させるために各界の人材を理事会に集めて、企画、実行などに弾みをつける目的がある。様々な意見やアイデア、さらに助言などもいただきながら、21世紀構想研究会の活動を発展させていきたい。

 総会後の講演は、政策研究大学院大学の永野博先生が「 次世代リーダーの養成にしのぎをけずる世界 ~第4の矢は若者への投資。理研の出来事がブレーキをかけてはならない~」とのタイトルで、日本の大学や研究機関に横たわる若手人材養成の課題を解説した。

 永野先生は、ドイツに滞在し期間が長く、たびたび欧州へも出張する機会があった。その体験からヨーロッパ学界での見聞が豊富だ。イギリスやドイツでの若 手の人材養成の実際を紹介しながら、日本が立ち遅れているとの認識を示しながら、これから日本の取り組みについても提言を行った。

 

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会・生命科学委員会の開催

                               
                 

 生命科学委員会の開催報告 

  21世紀構想研究会・生命科学委員会(東中川徹委員長)が、5月19日、プレスセンタービル9階の宴会場で開かれ、黒木登志夫先生(日本学術振興会・学術 システム研究センター・相談役、東大名誉教授、元岐阜大学学長)が、STAP細胞論文は捏造にあたるとする厳しい見解を示した。

  黒木先生のレクチャータイトルは「幹細胞研究の光と影 Hop STAP Drop」。受精卵というたった1個の細胞から、人間一人分=60兆個で出来上がっている生物個体を形成する元になっている幹細胞について学術的に分かり易く解説した。

 

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  幹細胞の研究の歴史を紹介

  これまでの幹細胞の研究の歴史とその業績、臨床研究への応用への挑戦まで多くの歴史的事実を駆使して解説した。またノーベル賞受賞者の山中伸弥博士が開発したiPS細胞の作成までの歴史も紹介した。

  そして幹細胞であることの証明は、その細胞が多分化能であることを証明しなければならないと解説。それには①培養細胞の分化、②奇形腫の形成、③キメラマウスの作成、④丸ごとES細胞マウスの作成の4つの証明が必要であることを示した。

  黒木先生が論文を精査したところ、小保方晴子さんのSTAP細胞論文は、この4つの証明をきれいに書いており、論文としてはきわめて完成度の高い内容になっていた。しかしこの論文の信じられなかった理由と信じた理由を書き分けてみたという。

  信じられなかったのは、いとも簡単に幹細胞を証明しており、信じたのはこの分野のトップクラスの研究者が共同研究者として名前が記載されていたことだった。

 STAP細胞をめぐる疑惑を解説 

 STAP細胞論文の発表直後から、「11jigen」などのネット上に論文を疑問視する指摘が相次ぎ多分化能を証明する画像の捏造を指摘されるようになる。改ざん、不審、疑問点を整理したうえで黒木先生は、小保方さんは研究者失格であるとして4つの点をあげた。

   それは①他の論文からのコピペ、②データ画像のコピペ、③スキームのコピペ、④お粗末な実験ノートである。そして「論文は自己完結でなければならないが、 STAP細胞論文はこれを著しく逸脱しており、STAP細胞存在の証明はされていない。論文は撤回するよりない」との結論を表明した。

  さらにSTAP細胞問題が日本の科学界へ波及していく懸念があることを指摘し、「日本の科学研究が生き延びるためには、むしろ小保方さんと共同研究者らのしっぽ切りが必要である」とする独自の見解を示した。

   講演は黒木先生のいつものように、ユーモアやときに皮肉を織り込んだ分かりやすい興味あふれる内容であり、聴衆が理解できるように組み立てたものであり、 このテーマの学術研究を歴史的に解説した点でも優れた内容だった。聴きに来ていた高校生も非常に感銘を受けた様子だった。 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

中尾政之教授講演「論文数・伸び悩みの理系、論文数・さっぱりの文系」

                               
                 

 

 
 

 

 第109回21世紀構想研究会は、2014年4月21日(月)にプレスセンター9階宴会場で開催され、中尾政之東大工学系研究科教授が「論文数伸び悩みの理系、さっぱりの文系」とのタイトルで講演と討論を行った。  

 就職活動では修論を語るほうが有利

 中尾先生はまず、東大をめぐる学生の考え方や就職活動、研究に取り組む姿勢などを語った。日本の大学の頂点に位置する東大でも悩みが大きいことを、さまざまな出来事や客観的なデータなどをもとに語ったもので、中でも筆者の印象に残ったのは就職活動のことである。

  筆者もかつて勤務した東京理科大学知財専門職大学院で院生の就職活動には、ずいぶん力を入れていた。企業の面接時の対応などは最も重要な準備である。中尾先生が語ったことは、「一番苦労したこと楽しかったことを語る際、旅行の話やバイト、NPO活動などを話しするよりも、卒論や修論についての苦労や楽しさ、その中身を語ったほうがはるかにいい印象を与えているようだ」ということだった。

  確かに学生生活を語る上では最もふさわしい話題であり、就職活動対応のノウハウ本では紹介されていないテーマだと思った。 また日本の大学で取得した単位は、外国の大学では等価交換できないというショッキングな話もあった。これでは日本と外国の大学間の交換学生交流などに支障をきたすことになる。

 論文数で下降線を辿る日本

 中尾先生が示した世界の国別論文数の動向を見ると、アメリカ、中国などの論文数は年毎に増加しているのに日本は近年下降線を辿っている。また大学ランキングを見ても、日本の大学のポジションは低下してきたように見える。 ここ10年間、研究資金が伸び悩んでおり、その結果を語るように、理系の論文数も伸び悩みになっているという指摘である。

 さらに、論文数を教員数で割ると、欧州の一流大学に比較するとその数が半分くらいに落ちる。それは統計の中に「論文数・さっぱり」の文系が含まれるからである。 

 ま た日本の大学の論文は、ポスドクなど任期つき研究員である非正規職の研究者がかなりの割合で執筆されていることだ。非正規職の研究者はローンを組むもこと もできず、身分不安定で研究に取り組まなければならない。このような現状も研究現場を脆弱にしているとの課題もあげた。 

 理系・文系とわけることも日本独特の文化である。最近、文系の就職が難しくなってきて、理系のほうに受験生が流れてくることは戦後始めての流れであるという。「文系の教員も英語の論文を大量生産して、海外で自論を主張する文化に変えるべきであろう」とも提示した。 

 日本の文系の研究者が英語で論文を書かないのは、その必要性を問われていないからでもある。能力がないからではなく、英語で発信するテーマが少ないと理解したい。これからは国際的なテーマを掲げて、大いに英語の論文を書いて海外へも発信することを期待したい。 

 と ころで、中尾先生の話でびっくりしたのは、東大は入学したら最後、退学や落第がほとんどないことである。極端な言い方をすれば、勉強しなくても卒業できる 大学なのである。東大は、こうした現状を変えようとしているのかどうか。もし落第学生を出すようになれば、他の大学への影響も大きくなるので、是非、東大 はリーダーになって適正な大学生指導を発揮してもらいたい。 

 また東大などエリート大学の学生は、適正検査をしてみると「反復・継続」が得意であるという結果が出ているという。 これが日本のエリートは「ミスを起こさない」という結果につながっているのではないかということだ。一面では結構なことだが、「堅実だけで発展性がない」人材になりかねない。こうした大学現場の教育課題にも言及し、会場との活発な討論が展開された。   

 

               
                               
               
             
                                         
                               

「スイカの原理を創った男 特許をめぐる松下昭の闘いの軌跡」出版祝いと松下昭先生のご健勝をお祝いする会の開催

                               
                 

 

 

 

 先ごろ日本評論社から上梓した拙著「スイカの原理を創った男 特許をめぐる松下昭の闘いの軌跡」の出版を祝い松下昭先生のご健勝をお祝いする会が、2014年2月26日、プレスセンターで開催され、多くの人たちの参加をいただき盛会だった。

 筆者がこのような形で開催したのは、出版のお祝いというよりも松下先生の発明人生を顕彰し、85歳になっても頭脳明晰、言語明瞭である先生のご健勝をお 祝いしたかったからである。発起人代表になっていただいた荒井寿光元特許庁長官はじめ、多くの支援者に囲まれ、筆者はもちろん松下先生も満足した表情だっ た。

 

 
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発起人代表でスイカカードを掲げながら松下先生の発明人生を紹介した荒井寿光さん
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祝辞を述べる藤嶋昭東京理科大学学長(左)と佐藤一雄元日本弁理士会会長

 

挨拶した馬場錬成(左)と松下昭先生

 

松下先生を囲んで記念写真

 

生島和正・21世紀構想研究会理事から記念品の贈呈

 

渡部政博さんから強力抗酸化作用のあるアスタキサンチンが贈呈された

 

美女軍団に囲まれてご満悦の筆者

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会・メタンハイドレート実用化委員会の開催

                               
                 
 

 

東京都知事選で各候補者たちは、脱原発かどうかなどエネルギー政策をめぐって激しい論戦を展開しているが、21世紀構想研究会のメタンハイドレート実 用化委員会(委員長・平朝彦・独立行政法人海洋研究開発機構=JAMSTEC理事長)が、1月29日にプレスセンターで開催され、活発な論議が展開され た。

 まず冒頭の挨拶に立った平委員長は、メタンハイドレート研究についての現在の国の取り組みの概略を説明し、今後、この委員会でも活発に論議していくべきとする抱負を語った。

 続いてJAMSTECの木川栄一海底資源研究プロジェクトリーダーが、メタンハイドレートの基礎的な知識から現在の研究開発に対する国の取り組み、さら にJAMSTECの最先の研究を分かりやすい写真や図を示して解説した。日本は研究レベルで世界の先端を行っていることにも言及し、新たなエネルギー源と して期待されているものの、過去のエネルギー開発の歴史を示しながら、実用化までには相当の歳月を要するのではないかとする見解も語った。

 続いてメタンハイドレート実用化への技術開発について株式会社みかづき代表取締役社長の杉本昭寿氏が講演した。杉本氏は、海底で採取するメタンハイド レートのシステム設計を開発して特許を取得している。今回はその特許技術に基づいた採掘現場の実際をイメージするアニメーション絵を披露し、凍結している メタンハイドレートを効率よく採集する技術を語った。

 このあと会場との討論となった。21世紀構想研究会理事長の馬場錬成氏は、「個人の見解だが」と断りながら、「大震災後に原発事故被災で深刻な事態を体 験した日本は、いまこそ新エネルギー源としてメタンハイドレートを実用化するべきだ。国家として取り組むテーマであるが、既成の原発・電力企業の消極的反 対にあって新エネルギー開発が滞っている。これを乗り越えていかなければ、日本の将来のエネルギー政策は行き詰まる」と述べた。

 また、メタンハイドレートの研究開発と商業的実用化への取り組みが、省庁別になっていたり研究現場で別れていることは非効率的だとの意見も出され、これからは国家が一本化したプロジェクトとして取り組むべきとする意見も強く出された。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

第108回21世紀構想研究会で林原靖氏が講演

                               
                 

 

第108回21世紀構想研究会は、岡山県の有力な地元企業として活動していた優良企業の株式会社林原が、実質的に倒産に追いまれた顛末について講演 し、活発な質疑が展開された。倒産に追い込まれたのは、同属経営による放漫経営であり、長い間、粉飾決算をしていたと報道された。本体の株式会社林原は、 子会社の林原生物化学研究所で研究開発した多くの成果を特許出願しており、少なくとも数千件の特許があったはずだ。

 この日の林原氏は、まず1886年の創業以来から破綻に至るまでの社歴と世界初として市場に出してきた製品の数々を紹介した。本体だけで年間350億円ほどの売上があり、年間キャッシュ獲得は100億円を超えていた。関連子会社を入れると650億円の売上だった。

 しかも破綻とされたときに、弁済率が93パーセント以上であり、知的財産権や様々な文化的な資産を計上すれば、優に100パーセントを超えていたとも語った。そのような企業がなぜ、金融機関によって破綻させられたのか。

 金融機関の事業価値の評価は、知的財産権のような無形資産は評価せず、社長の個人保証や生命保険を担保にするような非人間的な査定だったことを明らかにした。個人保証は、憲法違反とする意見もあるなど、日本の会計処理の後進性を訴えた。

  またマスコミの報道も表層的なものだけであり、「ガラパゴス状態」になっていると厳しく指摘した。ここの部分は、会場がプレスセンターであることなどから レジュメだけにして口に出さなかったが、中国銀行、住友信託銀行、大手法律事務所、マスコミの3極によって押し潰された実体を詳細に語った。

 林原氏が書いて出版した「破綻 バイオ企業・林原の真実」(WAC)は10万部を超えるベストセラーになっており、すべて実名で書いたものである。書か れた金融機関や法律事務所からクレームが来てもおかしくないと思われていたが、これまでクレームは1件もきていないという。

 また、粉飾決算とされた内容について質問が出たが、林原氏は売上の過大計上が30年間に300億円ほどあったが、年々これが減少しており、破綻とされた 時点で先の見通しがあったとも語った。一挙に計上して正常決算にする道もあったが、そうすると税金が過大にかけられてくる心配があり、徐々に減らす方向で 努力していたともいう。このあたりの事情は、講演会後の打ち上げ会で語ったものだ。

 いずれにしても林原は、約700億円で長瀬産業に「身売り」され、事業はほぼ引き継がれているという。創業一家が追い出され、蓄積してきた実績がそっく り他人の手に渡ったことになる。また、多くの美術品や土地、建物など林原グループとその一族が所有していたものは、二束三文で処分されてしまい、この倒産 劇では、まるでハゲタカのように利得を手にしていった人たちもいたことになる。

 個人資産を債務にあてるなど日本の未熟な制度は、産業の進展に大きな妨害要因として残っており、今後は社会問題として制度を見直す方向へ行かなければ、競争力のある国家や企業はできないし、ベンチャー企業も生まれにくくなる。

 そのような問題意識を確認して活発な講演と討論を終了させた。

 

               
                               
               
             
                                         
                               

第4回知的財産委員会の開催

                               
                 

 

 今後の知財制度の改革を論議する21世紀構想研究会の第4回知的財産委員会(荒井寿光委員長)が、12月19日、プレスセンター会議室で開催された。

 この日はまず、経産省知的財産政策室の川上敏寛室長が「営業秘密の保護」とのタイトルで講演し、その後に出席者らと討論を行った。川上室長の講演内容 は、営業秘密保護のこれまでの取り組み、営業秘密をめぐる近年の情勢、営業秘密をめぐる国際情勢、営業秘密の今後の方向性など豊富な情報を報告したもの だった。

 この中で、海外拠点からの技術流出、サイバー攻撃による技術流出、技術提携先からの技術漏洩など最近の動向を解説した内容を知って、出席者の視点が大きく広がったように感じた。特に韓国ではすでに技術流出に関する保護法律を実施しており、その迅速な対応には感心した。

 筆者の感想を言えば、日本は技術流出の現状と課題が分かっており、これに対応する法制度など枠組みをどのように実現するかがまだ見えない。その手順を進 めなければ漏洩の被害を食い止めることはできない。特に中国に流出した日本企業の技術で製品が製造され、日本を含む世界に輸出されている実例もある。

 国内法の整備を早急にしなければ、技術垂れ流しが常態化していくことになる。この日の委員会の後半は、日本の技術漏洩防止に関する法整備について具体的 に論議し、営業秘密保護法の試案も発表された。 今後この試案については修正しながら政策提言などの取り扱いについては荒井委員長に一任することで了承した。

 次回・第5回知的財産委員会は、1月28日(火)に開催する。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

第106回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第106回・21世紀構想研究会は、科学技術振興機構(JST)・中国総合研究交流センターの上席フェロー(元JST理事長)、沖村憲樹氏の講演で盛り上がった。

 講演タイトルは「日本の科学技術は中国に抜かれた」というショッキングなものである。沖村氏は、中国の巨大大学群を築いた戦略的な大学・研究現場の統計データを示し、さらに世界に例がないハイテク・テーマパークの現状を紹介した。

 さらに中国の最近の研究水準が、欧州・日本に接近してきたこと、これに伴って産業技術力も急速に向上していること、宇宙、原子力など巨大プロジェクトで も日本に並び、あるいはぬき去っていった実情を報告した。中国の科学技術政策は、強力な政策遂行体制で推進しているものであり、政策決定と実行に時間がか かる日本の各種データと統計の比較なども随所で示した。

 この日の講演内容は、これまで一般に示されていなかった中国の科学技術の客観的なデータや現状を紹介して、日本の科学技術政策遂行に刺激を与えるためとも受け止められるものだ。また、中国の科学技術の現状に対する正しい日本人の視点を提起したものでもある。

 講演後の質疑応答では、次のような質問が出た。中国のハイテクパークは、不動産投資と外国企業や技術を呼び込むものであり、言われるほどの効果は上がっ ていない。それほど大きなインパクトはないのではないかとか中国は近未来、国が崩壊するのではないか。あるいは、中国の模倣品は世界中にばら撒かれている 現状を憂慮する意見なども出された。

 沖村氏とこの日、出席していた共同研究者の中国センターのスタッフなども加わって、こうした観測や見方に対する意見交換と討論を行い、実のある講演・討論の時間だった。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会で伊勢神宮を正式参拝

                               
                 

 21世紀構想研究会の活動報告をし、これからの社会貢献の決意を誓う伊勢神宮正式参拝が10月25日に行われ、19人の会員が厳かな中で参拝した。

伊勢神宮はさる10月2日、20年ごとに繰り返されている式年遷宮が滞りなく行われた。内宮は参拝が再開され、21世紀構想研究会としてご神体が移されたばかりの新正殿に参拝することを計画した。

本研究会会員の南川三治郎氏が、20年に一度催行される式年遷宮の写真記録を続けており、月刊「文藝春秋」10月号、「週刊文春」10月17日号(http://shukan.bunshun.jp/articles/-/3204)のグラビアで、「遷御の儀」として写真とともに原稿が掲載された。

今回は南川氏の尽力で伊勢神宮への正式参拝が実現したもので、10月25日は、堀川宗晴氏(元神宮徴古館館長)の案内で新正殿の中に進み出た。服装は全員ダークスーツという正装に威儀をただし、堀川氏の説明に聞き入った。

 

当日は折しも台風27号の接近による暴風雨が心配されたが、「台風接近決行」で行われたものの、参拝する時刻には台風も沈静化して雨もなく、靄の中で煙るようにうっそうと茂る森林と大雨の水を集めて流れる五十鈴川の景観を見ながら、緊張した面持ちで正殿へと進んだ。

 

 

 

参拝者の氏名などはすでに登録しており、代表者記名などの手続きを経たうえで玉砂利の中を正殿前に導かれた。正殿の前に出るとさすがに心が洗われる気 分になる。ヒノキの香りが辺りを支配する中で弐礼弐拍壱礼という儀式にのっとり、無事、参拝を済ませた。 参拝後は、相差海岸花の小宿「重兵衛」に宿泊 し、楽しい歓談を行った。

翌日の10月26日は、マイクロバスで伊勢と鳥羽の間にある朝熊山・金剛證寺へと向かった。金剛證寺は、西暦572年に即位したとされる欽明天皇の時代に、暁台上人が草庵を建て修法したことに始まった寺院である。

その後、825年には弘法大師(空海)が真言密教の道場として、この金剛證寺を建立したとされる。

金剛證寺は、神仏が一体となった神仏習合の教えから伊勢神宮の鬼門を守る寺として、また霊場として伊勢神宮と並んでこの時代から信仰の対象とされてきた。

 この参拝でも南川氏の配慮で特に寺院の内部にまで入ることができ、寺院の祭壇の奥に祭ってある「天照大神」の神霊祭壇をも参拝できた。厳粛な気持ちの中で神道と仏教が融合する日本の歴史を実感した。

この金剛證寺には国宝が9点、国の重要文化財指定が5点あり、平安時代から桃山時代までの歴史の変遷を学び充実した気持ちで帰途についた。

  
               
                               
               
             
                                         
                               

知的財産委員会の開催

                               
                 

 

21世紀構想研究会の知的財産委員会の第1回会合が、9月30日、プレスセンタービル9階の会議室で開催され、多くの知財改革への提言を討論した。

 この委員会は、従来からあった産業技術・知的財産権委員会を発展的に改組し、新たに出発したものである。新委員会の委員長には、荒井寿光さん(元内閣官 房知的財産戦略推進事務局長、元特許庁長官)に、副委員長に佐々木信夫さん(元特許庁特許技監)、事務局長に生越由美・東京理科大学知財専門職大学院 (MIP)教授が就任した。

 議題は、知的財産制度への提言をまとめることである。2002年の第一次知的財産制度改革から10年余を経て、知財制度にもほころびが出ている。中国、韓国など近隣諸国が着々と知財制度を構築しているのに比べ、先行していた日本はむしろ追い越された点もある。

 また模倣品対策などはもっときめ細かく、かつ迅速にしないと日本の技術流出が続き産業競争力が低下していく。こうした現状を考えれば制度改革は喫緊の課題である。

 この日の委員会では、出席者の立場から多くの意義のある意見が出され、討論された。模倣品が日本に入らないように水際で阻止する制度などでも不十分になっていることや、営業秘密保護法制定の必要性などの意見も出された。

 今後も論議を重ねて提言をまとめ、いずれ政府に提出することも視野に入れている。

 

 

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

第104回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第104回・21世紀構想研究会は、岩本沙弓先生をお招きして「これからどうなる日本経済」とのタイトルで講演をお願いした。当日はオープン参加としたため60人以上が参加して盛会だった。

 岩本先生は、100回記念シンポジウムのパネリストの1人として経済関係の見解を発表していただいたが、当日は時間の制約があって十分な発言には至らなかった。このため、この日の講演で存分に語ってもらう機会とした。

 講演ではまず、日銀の異次元金融緩和によって金利が低下するのかどうかを2008年からの米国10年もの金利のデータを基に解説を行った。日本の10年 もの国債については1981年からの金利の推移を示し、80年代の8パーセント代から1パーセント以下に低下していった経緯を解説した。

 金利急騰は4.6年に1回発生することを示しながら、過去の国際的な経済状況と連動する金利推移を解説し、日本国債の市場価格が下落することで日本経済、金融システムが破たんするというような論調は行き過ぎであると指摘した。

 消費税引き上げによる景気動向でも見解を表明したが、その中で非関税障壁としの消費税の在り方の例として、消費税のないアメリカの事情を解説した。これ は岩本先生の研究テーマの一つであり、これまでマスコミなどでもほとんど触れられていないテーマだけに非常に面白かった。

 日本の税の配分では、うまく機能していない日本の税の仕組みを指摘したが、OECDの所得再分配後の可処分所得の各国比較を見せられると、確かに日本は 分配がうまく機能していないように思えた。 税の仕組みについては、先月号の月刊「文藝春秋」でも、岩本先生は自民党野田税調会長らとの座談会で見解を語っている。

 アベノミクスの総括では、3本の矢のうち第2、第3の矢はこれからの政策であり、物価上昇の目標よりも日本経済力の増強がメインとなるべきだと指摘した。成長戦略についても具体的な内容はまだ出ておらず、国土強靭化にとって日本経済の死角はエネルギー問題であるとした。

 日本の強固な経済ファンダメンタルズにも言及した。支払能力の指標となる経常黒字、対外純資産、外貨準備高などは、いずれも世界のトップクラスであり、10年もの国債の利回りも世界の中で日本が最も低い事実も示した。

 いま、株式市場はきわめて神経質に上下を繰り返しており、直近のトレンドは東京オリンピック招致決定もあって上昇している。しかし株価は、為替相場と連動しており、米国の大統領選と株価・為替の推移とオバマ大統領の再選後の為替政策は転換する可能性を示した。

 岩本先生は、いまドル高材料になっているシェールガス革命に言及し、米国が本当に世界一の産油国になるのか、革新的技術改革が実体経済に浸透するまでのタイムラグを示しながらオイルバブルのリスク要因なども指摘した。

 グローバルな経済状況を歴史的なデータを俯瞰しながら自らの見解を披歴し、現在と近未来の経済を読み解いて解説した講演であり、参加者に大きな感銘を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会・100回記念イベント打ち上げ会

                               
                 

21世紀構想研究会・100回記念イベント打ち上げ会の開催

 

 

さる4月から続いていた21世紀構想研究会・100回記念イベントの最後を飾る「打上げ会」が、7月19日、プレスセンタービル9階で開催され、50人を超える参加者で盛会のうちにイベントを閉幕した。

この日は、100回記念イベントの講演を行った、加藤紘一・日中友好協会会長(元自民党幹事長)、記念シンポジウムのシンポジストになった藤嶋昭・東京理 科大学学長、岩本沙弓・大阪経済大学客員教授、本会アドバイザーの荒井寿光・元特許庁長官ら多くの人が参加して楽しい宴となった。

打上げ式に先立ち、本会会員で曹洞宗の名刹・霊巌寺住職、秋尾常民師が「遊び心と禅」のタイトルで講話を行った。多くの仏教語を出しながら、その深遠 な意味と現代人の行動様式を引合いに出しながら、思い遣りや気配り、時代が変遷しても変わらぬ物事の価値観などについて思索する話をして参加者に感銘を与 えた。

 

 

 

                     講話をする秋尾常民師

 この後で日本酒を賞味しながら日本酒文化の国際的な広がりを語り合う「日本酒を国酒に!」とする打上げパーティを行った。

 この日は本会会員である伊勢丹本社フードアテンダントの中澤律子さんが、特別に調達しきた12種類の銘酒を飲みながら、日本酒を堪能する会となった。

 

 

 

 

乾杯の挨拶をする加藤紘一先生(左端)、真ん中が筆者、右端は中澤律子さん。

 

 

 

ずらり並んだ銘酒と特製の升とお猪口も準備万端。


次々と銘酒を味わい、連日続いた猛暑を吹き飛ばした。

 まず乾杯には「八海山」(新潟)スパークリングシャンパンと同じ製法で作られた発砲酒である。まるでワイン趣向の乾杯に参加者も大喜びだった。さらに次々と開けられた銘酒を特注のお猪口や特製の升(本会会員・井上善男氏の寄贈)で飲みながら楽しんだ。

堪能した銘酒は次の通りである。

*  新千歳(福井) さくらロック お酒の概念を変えてアルコール度数を氷でお好きなように。

*  小左衛門(岐阜) ゆず酒  香りとほのかな甘味を楽しんで。

*  古酒(福島) 流転 ワインのようにヴィンテージを楽しむ大人の味わい。

*  萬乗酒造(愛知) 醸し人九平次 三ツ星レストランのワインリストにも掲載される世界の酒。

*  大村酒造(秋田) 福小町 通の大吟醸 オリンピック招致のレセプションで出されました。

*  南部酒造(福井) 花垣 日本酒をオーク樽につけてバニラ香を楽しむ新しい日本酒。

*  宮坂醸造(長野) 真澄 ワインに近いアルコール度数を12度に抑えた優しい創造酒。

*  出羽桜酒造(山形)出羽櫻 100年前以上前から鑑評会に出ている地酒の雄といえる酒。

*  菊水酒造(新潟) 菊水 酒造米ではなく魚沼産コシヒカリで醸した柔らかい味わい。

*  勝山酒造(宮城) 勝山 貴腐ワインのような味わい チーズやショコラとのマリアージュも。

*  大七酒造(福島) 大七生もと 最高級の雫原酒の選りすぐり サミット乾杯酒にも採用!

 

               
                               
               
             
                                         
                               

100回記念シンポジウムの報告(その4)

                               
                 

100回記念シンポジウムの報告(その4)

 

 記念シンポジウムは、「希望ある日本のために何をなすべきか」をテーマに、5人のパネリストによる意見発表のあと、橋本五郎氏をモデレーターに討論を行った。

 

 橋本五郎氏

 それではこれからディスカッションをしたい。論点を私なりに絞って、パネリストの先生方から話をお聴きしたい。

 最初に岩本先生からアベノミクス後の株式、債券市場の乱高下の話があった。これは最も切実な問題であり神のみぞ知るとあったが、まさに政治では制御不能という状況ではないか。岩本さんの指摘を踏まえてもう少し考え、分析を試みたい。塩崎先生はいかがでしょうか。



塩崎恭久氏

 株式、債券などのマーケットは近視眼的に動き過ぎる。たとえば不良債権を処理しようとなった時、次に何をやろうかと いうときにマーケットの動きが大きくなることがあった。今回の株の乱高下のようにナーバスになっているときは、何か変化が起きるときであり、政治が制御不 能だからではない。いずれ市場は落ち着いていくことだろう。

 毎日動いていることに一喜一憂しないで、トレンドとしてどうなっていくのかを見るべきだろう。株価ではなく本当の経済実態を見ることだ。日本はいい方向 ヘと向いているのであり、基本的にアメリカも同じだ。アメリカの金融引き締めは、景気がよくなっていくからそうするのであり、マーケットは賢くないと思 う。

 政治が不能なのではなくマーケットとはこんなものだ。時間が経てば一つの方向に向かっていくのであり、むしろトレンドとしてどうなるか、本当のところを見ることだ。日本はいい方向へ向かっているし、アメリカは経済もよくなっている。

 

橋本五郎氏

 大きなが流れとしては、成長戦略がきちんと実行できるようにならないといけないとよく言われるが、岩本さんは如何でしょうか。

 

岩本沙弓氏

 日本経済は、エネルギーの問題を抱えており貿易収支は赤字である。原発は止められ原油の輸入価格が上がっているので赤字が続いている。海外にエネルギー を頼っている場合には一方的に円高がいいのではなく、やはり円安もいい。円高はエネルギー源を安く調達できるのでいいかもしれないが、円高・円安のどちら がいいとか悪いとかの問題ではない。これまでは円安がいいのではないかという論調もあったが、ここはバランスを取ってニュートラルに考えるべきだろう。

 

塩崎恭久氏

 為替は双方向だ。これまではどう考えても円高が強すぎたかもしれない。しかしこちら側が決めることではなく、相対的なことで決まることだ。金融政策でど こまで変えられるかという問題があったが、今回、政策でこんなことができることが分った。あとはどのくらいがいいのか考えながらやることだ。

 

橋本五郎氏

 さて経済の問題はこのくらいで、次にリーダーはどうあるべきか、リーダー像をどう思うかというテーマに移っていきたい。藤嶋さん如何でしょうか。

 

藤嶋昭氏

 橋本さんがイギリスのサッチャー首相や大平首相についてのリーダー論を語った。これを聴いて、いま本当に真のリーダーが必要だなと思った。それがいま一番欠けているように思う。

 

橋本五郎氏

 大学の現場ではどうですか?

 

藤嶋昭氏

 大学は使命をきちんとわきまえて活動することが大事だ。日本が生きていくためには、資源がないから科学技術でしか生きていけない。今までは自動車、カメ ラ、電気製品とか工業製品でリードしていた。それがどんどん中国などに追い上げられてきた。こうなると日本は、ブレークスルーをやっていくよりない。私た ちもその使命を担って次世代の素晴らしい技術を開発するよりない。大学としてはそれよりない。

 

橋本五郎氏

 中曽根内閣のときにがん撲滅10か年計画という政策を打ち出した。何年計画というのは、やはり必要ではないか。柳澤さんは、これをどう理解するか。

 

柳澤幸雄氏

 自分は環境問題が専門だ。中曽根政権の打ち出したがん撲滅10か年計画では、確かに人材の基礎が出来上がった。研究の基盤を作り若い人を育てるというの は、短期間では意味がないので10年規模くらいの期間で人の基盤を作っていくことが重要だ。いくつかの分野でやるべきだ。人が育っていく土壌を作る必要が ある。

 

橋本五郎氏

その点で塩崎さんはいかがでしょうか?

 

塩崎恭久氏

 今回の成長戦略でも長期計画は見ている。ただ10年は長い気もする。例えばGNI(gross national income=国民総所得 )を増やすとか、名目3パーセント成長を目指すとか、10年目標でやっているが、しかしもっと短期間になるべきこともある。

 政府も今回、高低を付けて停滞から次の10年、再生の10年と言っている。10年は長いと思うが、他に短くていいものが多数あり政府も一つ一つに目標を定めてやることが重要だ。

今回のアベノミクスの特長は、総理が絶対ぶれない意志を持っていることが伝わっている。第1弾で農業とか医療とか雇用とかの課題でオンゴーイングするんだということだ。

 

 岩本沙弓氏

 アベノミクスを肯定する立場というわけではないが、私はディーラーとして、いい状況があれば必ず悪い状況もあるはずだという常にリスクを考える仕事をし てきた。アベノミクスの最大の問題は、日本の経済状態の好転はアベノミクスだけなのか、ちょっと俯瞰して考える必要がある。 

 国内だけの要因ではなく海外特に米国の事情もある。アメリカはシェールガス革命になっている。たまたまアメリカ経済が立ち上がってきた、日本も一緒に立ち上がる状況になってきた。

 ドル・円レートでも、円だけの要因で動くのではなくドルの要因でも動いている。双方の要因がオーバーラップしていくことを分析して見ることが重要だ。アベノミクスの一番のリスク要因は消費税である。これまでも消費税を導入した後にさまざまな状況が派生的に起きている。

 

 塩崎恭久氏

 97,98年の金融危機は、消費税が主因ではないと思っている。不良債権問題があり、借りたけど返せない状態になった。不動産屋さんだけでなく、そうで ないところも同じになった。産業構造の転換がうまく言っていなかったという構造の問題があったからあのようなことが起きてしまった。

 それには金融機関も責任あったし、監督する当時の大蔵省にも責任があった。課題解決を先に送ってきた。みんなで先送りした。

 今回の消費税は合計5パーセントあげるのだから、これには備えて行かなければならない。財政で勝てるかとなると、それだけではなく国際競争で負けてきたという問題がある。

 どうもうまくいってなかったし、日本は負けてきた。その根本のところを日本はどうするのかが大事だ。景気が上がったら反動が必ずある。これをどうするかが大事だ。

 社会保障の先行きに不安を持ちならが、財政にも赤字垂れ流しでいくのでは経済健全化にならない。財政はある程度の方向性を出すべきだろう。

 

橋本五郎氏

 経済を議論したが教育の問題に移りたい。藤嶋さんが示した753を864に変えるには。いったいどこに問題があるのか。教師にあるのかそれとも文部科学省にあるのか。どこに問題があるのか。

 

藤嶋昭氏

 いま一番の重要なことは小学5,6年の理科教育をきちんとやることだ。小学5,6年生の理科はかなり難しい。小学校の教師は大体文系だ。これで全科目を やらないとならない。そこで5,6年の理科を専任の教員かあるいは理科に強い先生が教えてくれて、理科の面白さを子供たちに伝えることが大事だ。

 

橋本五郎氏

教師たちはどう思っているのか。

 

藤嶋昭氏

 小学校の先生は全教科をみるのだが、大体は文系の先生だ。理科の難しいのを教えるのは難しい。実験の面白さからやってもらうようにしないとならない。観察とか実験をやるだけなら簡単だ。それ以上のことをやることが難しい。そこをうまく教えることが重要だ。

 

橋本五郎氏

 現場では苦心のしどころだろうが、それではどういう風にやるべきか。柳澤さんいかがでしょうか。

 

柳澤幸雄氏

 理科をきちんと教えることはものすごくお金がかかる。さきほど、藤嶋先生はコンパクトな実験を見せてくれた。そのような実験を子供たちがやるには一人だけではできない。実験助手が必要になってくる。

 理科の専任の先生と同じ人数だけ助手が必要になってくる。そうするとその人たちの給料が必要になる。理科の教室の設備も含めてお金がかかる。

 たとえば枕草子を読むだけならお金はかからない。そころが、ある現象を教育するにはお金がかかってくる。これをどうするかが大きな課題だ。

 

橋本五郎氏

 退職された先生をバイトで雇うことはできないか。辞めたが一日中、家にいるのでは奥さんが一番困るだろう。それを敏感に察知した男性は、朝飯食うと公園 に出かけて静かに時間をつぶしているらしい。これをバイトで雇えば元気が出てくる 学校では余り教え子に近づけたくないのだろうか。昔の話ばかりするから かなとも思う。

 

藤嶋昭氏

 東京理科大学は歴史的に数学と理科の教員を多数世に出している。いい先生を出すには学生のうちに指導することが大事だ。この教員の育成には、校長先生を やって家にいると困る人にお願いして指導者になってもらっている。理科大ではボタンティアに近い形でやってもらっている。

 

 橋本五郎氏

 理科だけでなく、大学を出たばかりの若い先生がすべてに対応できるわけがない。一線を退いた人をうまく使うことは資源のリサイクルになるのではないか。もうちょっと積極的にやるとうまくいくのではないか。

 

塩崎恭久氏

 世界の100の大学のランキングを見ると日本の大学では東大と京大しか入っていない。 韓国は3つ入っている。自民党は10年内に10大学を入れることを目標にしている。

 そのために何をやるか。たくさんやることがある。3年前に成長戦略を作った時に、指標は実は国際化で負けている。しかし科学という指標でいくと上に行くがトータルで行かないとダメだ。日本の大学は外国の先生が少ないし、外国の学生も研究者の少ない。開かれていない。

 留学生の話もあった。希望する人が優秀なら全員、留学できるようにやりたいし逆に来てもうこともオープンにするべきだ。小中高といろいろ問題が出ている が、入試にも問題もある。日本では自分の大学で入試問題を作ってやっている。この形式は先進国ではあまりない。みんな共通テストでやり、後は論文とかアド ミッション方式でやっている。日本は大学入試制度を変えないとダメだ。

 高校生が入試を目標にやると、大学入試後は燃え尽きた学生になりがちだ。入試の点数が高いからいいというものではない。それでは決まらない。高校でどう いう社会貢献をしたのか、大学がアドミッション方式で取るときに評価の基準を作ればいい。そうすると高校生は、自分が地域で何をしたのか何を貢献したのか を考えるようになる。

 そのように入試を改革することは、とても大きな課題であると位置づけている。小学1年から英語を教科にしようとしたら、時の文部科学大臣が日本語もできないのに英語をやるのはダメだと反対した。結局、小学5年生からになった。

 英語をただ読んだり書いたりではなく、英語でコミュニケーションができる人を育てないとならない。コミュニケーションができないのでは社会に出ても伸びない。大学改革が大事だ。

 学長は選挙で選ばれるのではなく、理事会とか選考会が指名するなど大学のガバナンスを高める必要があるのではないか。教授会が学長の足を引っ張ったりすることがないようにするために、教授会の位置づけを本来の学長の諮問機関とするべきだ。

 選挙で学長を選んでいるとなかなかうまくいかないのではないか。我々国会議員も選挙で選ばれていると、あっちににこにここっちににこにこしないと選挙に当選しない。これでは大胆な改革などできない。

 ノーベル賞級の学者がなぜ日本で教えられないのか。逆になぜ、日本でノーベル賞を取った人が外国へ出ていくのか。そういうことを考えると大学のありかた、ガバナンスを考える必要がある。リーダーシップをとれる大学に期待している。自民党は改革のメニューを入れている。

 

橋本五郎氏

 大学は一見、民主主義的にやっているようだが結構無責任だ。恨みと嫉妬だけはある。政界とかなり似ているところもある。弾が後ろから飛んでくることもある。藤嶋さん、これはどうあるべきか。

 

藤嶋昭氏

 やはり理事会がリーダーシップを持って確固たる方針をもってやるべきだ。そうするとついてくる。堂々とやることが大事だ。さっきの大学のリーダーが必要だということと同じだ。

 

橋本五郎氏

 日本で最初にノーベル賞をもらった湯川秀樹博士の自伝の中で、父親は兄弟の中で一番ダメだと言われたという。ところが学校の先生は一番可能性があると見抜いて、ちゃんと大学に行かせるべきだと進言したという。

 先生が子どもをちゃんと見ている。そのことで一生が左右される。そうなると先生の役割は最も大切だと思っている。この世の中で、それぞれの一生を決めて しまうほどの役割がある。そうなるとそのような体制になっているのかという問題もある。東大に行くのも一つの指標かもしれないが、長い一生を決めるにあ たっては、先生がその役割を担っていることは非常に大事だ

 

柳澤幸雄氏

 子供が生まれて誰に育てられるのか。時系列で考えると生まれてすぐは親だ。幼稚園から小、中、高校と先生が関与する。そして思春期になると友人の影響が非常に大きくなる。

だからどういう生徒集団、どういう学生集団を作るか、その中でどういう形でお互いに切磋琢磨するのか。

 それを教員が持っていないと、時間的に持っていないとダメだ。教員は教室で知識を教授するだけではない。ものの考え方人格の形成に大きな影響を発揮するべきだ。また、友人関係をどう意識するのか、それを意識させる学校運営が大事だ。

 

 橋本五郎氏

 藤嶋さんは時代の雰囲気が非常に大事だと言った。昔、末は博士か大臣かと言ったが、あれは結構いいキャッチフレーズだ。いまはそれに代わるものがない。この雰囲気をどうやったら作れるのか。

 

藤嶋昭氏

 それは一人では無理だ。複数の同じ考えの人が集まって、なんかやろうとなるときにできる。やはり2,3人の同じ考えの人が来るというのが最も大事だ。明治時代もいろんな芸術でも同じ分野の人が集まって雰囲気を作って大きな力になった。

 

橋本五郎氏

 非常に大事だ。気持ちが国民全体の中に回ることが重要だ。宇宙探査機「はやぶさ」のときもそうだった。知識を血に対することだ。

 

藤嶋昭氏

 本を読もうという運動をやったきっかけは、川崎市の教育委員を10年やった経験からだ。教員採用試験をしたとき、面接者にこの1年間に読んだ本を言ってくださいと質問したら誰1人読んだ本を言えなかった。

 受験勉強の本を読んでいても一般の本を誰一人読んでいない。その人たちがみんな先生になる。これはひどい。自分を高めないとダメなので本を読もうというキャンペーンを始めた。

 大平正芳元首相はすごい読書家だった。あーうーと言っているが、一番の読者家だったのをみんな知っている。自分を高めることをしている人はみんな分かっている。

 

橋本五郎氏

 アメリカの元大統領のリチャード・ニクソンが、指導者とは、偉大な政治家とは、偉大な読者家であったとも言っている。塩崎さんいま政界を見ていて如何ですか。

 

塩崎恭久氏

 ま、人それぞれだと思います。今回まとめたものに知恵に対する話があったが、中間提言のなかで総理の科学顧問を設けよと提案している。英米では、チーフサイエンスアドバイザーがいる。

 政治家が科学をどのくらい受け入れる心を持っているか。原発事故が発生したとき、海水注入をやめろとか、あるいはベントを早く命令するとか、大きな声を 出した総理大臣もいた。イギリスの人に聞いたら、イギリスの政治家はそのような科学的な判断に口を出す人はいませんと言っていた。原子炉の中の問題につい ては、独立性をもってやならいとならない。

 下手な科学者の判断よりも政治家の方が判断は正しいと思い込んでいる政治家が多いのではないか。サイエンスアドバイザーを日本でもおけと言っている。しかし文部科学省が反対している。総合科学技術会議があるではないかと言っている。しかしこれは人を置くことだ。

 イギリスにはほとんどの役所にサイエンテフィックアドバイザーがいる。国務省にもいる。深い科学者として考えを持った人が科学的判断を提供している。そ してそれを受け入れる人がいる。事務官にも政治家にもいる。向こうでは専門的なアドバイスを受け入れることが事務官にも役所にも政治家にもある。

 

橋本五郎氏

 専門家が十分に機能を果たしているのか。そこだと思う。それぞれの立場もあるし意見もあるのだろうが、日本で言えるのは、みんな自信なげである。そう やっていままで原発をやってきたのかとなる。ここは藤嶋さんに聞きたい。専門家がこうやるべきだ、素人が口を出す問題ではないと言わねばならないのに、国 民の目線になっているようだ。専門家がこれではどうするんだとなるがいかがでしょうか。

 

藤嶋昭氏

 それについてコメントするのは難しい。大体、原子力の専門家は同級生にいるが、あのときは優柔不断というか決断をちゃんと言わなかったように感じる。それが一番問題だ。 専門家はちゃんと言わないとダメだ。

 

塩崎恭久氏

 国会の事故調査委員会で問題になったことは、規制のとりこになっていたことだ。専門性があまりに高いので、専門性の規制のされる側にとりこになった。

 原子力安全基盤機構があって、専門家として組織を統合して、かつての保安院は基盤機構に下請けに出して作ってもらっていた。事故のとき基盤機構に100くらい提案あるとしていたが、保安院にいくと10くらいしか理解できなかった。官邸には1くらいしか届かなかった。

 これを解決するには、1つにまとめてこれを専門性のある力のあるものに変えていかないとならない。統合することに法律で決めている。しかし一部政府の人 たちは熱心にしていない。早くやらないと原子力規制に対する信頼はいつまでたってもできない。能力がないと言われてはダメだ。

 

橋本五郎氏

 高校のときからいい人材を作っていくことが大事だ。大学でなく高校のときからということが大事なことでしょう?

 

柳澤幸雄氏

 英語、数学、国語という科目が入試にある。抜けていることで典型的なことがある。たとえば国語で漢字をよく知っている。教養があると思われている。数学がよくできる。この人は頭がいいと思われている。英語がよくできる、この人はスマートな人と思われている。

 日本の場合、大学で文系と理系に分ける。高校でも分けている学校がある。開成高校は分けていない。大学に行くとき、数学が苦手だから文系に行くという人が非常に多い。そうすると仕事に入った時にも数学的な素養が不足し、損をすることになる。

 高校で言うと、入学試験は教育の大きな流れを決める非常に大きな要素だ。小学、中学、高校とも指導要領に縛られているが、生徒は学校だけでなく塾でも勉 強をしている。そうすると大学の入試はこういう問題である。それに合わせて子供たちは勉強している。莫大なエネルギーがそこに使われている。

 大学がどのような入試問題を出すかというのは、大学の社会的に存在する自分たちのメッセージなっている。いま入試改革が言われている。そのとき日本の入試では生徒自身が自分を評価しているというメカニズムがない。

 TOEFLなどは何回も受けられる。最大で7回受けられる。自己評価とその試験の評価の一致をはかることができる。何度も受けることができると自分はもっとできるのに点数が悪い。それならもっと勉強するとなる。また受ける限界かなとか判断できる。高校時代に判断できる。

 そのように生徒自身が判断できる。自己判断ができることが大事だ。是非とも入試改革をするべきだ。

 

 

橋本五郎氏

 最後に株価はいったいどうなるのか。買ったらいいのか買わない方がいいのか。ということは受験勉強と何も関係がない。スポーツのあり様と株価のあり様とどう関係があるのか。

 

岩本沙弓氏

 難しいですね(笑)。大阪経済大で教えているが大阪には堂島という取引所がある。先物取引所がある。この取引を世界に先がけて開発したのは日本人である。

 実は日本人は市場経済に非常に敏感な国民である。大阪と京都にいち早く伝える旗振り通信、火の見やぐらを作って伝えた。旗振りの中継所は4か所ある。そこで旗振って伝達していた。

 大阪から京都まで旗振りで伝える中継地点が全部で4つある。旗を振るだけだが、どのくらいの時間がかかると思うか?

 

橋本五郎氏

?・・?・・、3時間くらいだろうか。

 

岩本沙弓氏

 実は4分でできていた。旗を振り、双眼鏡で眺めて情報を収集した。いまNTTで電波通信は旗振り通信だと言われている。日本人は創意工夫する国民だ。相場も、もともとそうだった。

 いわき市にカンガルーという会社がある。大震災で100パーセントダメになってから1か月で回復させた。底力のポテンシャルがある。底力があるのだから、もう少し自信をもってやると全然変わると思う。

 

橋本五郎氏

なるほど。そのポテンシャルに期待してこのシンポジウムを終わりたい。

 

 

馬場錬成・21世紀構想研究会理事長の閉幕挨拶

 5人の先生方の専門性の高い思索からの意見が述べられ、一時は話が発散してどうなるかと思いながら聴いていた。アベノミクス、財政金融問題、そして広く教育問題へと話題は広がり、日本のためにどうするのかというフォーカスでは一致していた。

 5人の先生方が明確にそのようなメッセージで語ったわけではないが、私なりにそのように感じた。ご発言の中で共通だったことは、日本にはリーダーが不足している。今こそ確固とした信念をもった専門性の高いリーダーが必要だ。

 国を建てるのは教育である。教育は教師の在り方、教育制度の在り方、入試のありかたなどで各論が出ていたがリーダーといい人材を育てていく教育が一番重要であることを5人の先生が角度を変えて発言していた。

 日本と日本人は、この150年間に世界でも稀有な進歩を遂げた。日本と日本人はきわめて優れた民族の1つだ私は考えている。これまでの実績と民族の資質 を認識し、これからも誤りなきように歩いて生きていきたと思う。世界に貢献できる人類の福祉に貢献できる日本と日本人でありたいと思う。

 21世紀構想研究会100回記念シンポジウムは、実り多い討論に終始して終了した。5人の先生方に篤くお礼を述べ、改めて盛大な拍手で謝意を表したい。

 有難うございました。

(文責・特定非営利活動法人21世紀構想研究会事務局)

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会・100回記念シンポジウム報告(その2)

                               
                 

 冒頭に21世紀構想研究会の歴史と活動を紹介

 シンポジウムの冒頭、21世紀構想研究会の馬場錬成・理事長から、1997年9月の創設から今日までの研究会の活動実績を報告し、今後も社会貢献を目指して討論や政策提言を目指す決意が語られた。

  まず、21世紀構想研究会の設立目的は、時代の変革で続出してきた課題を提起、討論する場を作ったことだった。IT(情報科学)の進展によって国、企業、 社会のあらゆる場面での変革を予見し、知的基盤の強固な研究現場と産業振興の技術革新の実現をしなければ、日本は真の科学技術創造立国を確立できない。

 そのような課題を認識し、適宜、研究テーマを掲げて討論し、そこで得られた成果を社会に訴えて啓発しながら国の政策にも結びつくように活動する方向を目指して出発した。

 会員は現在およそ100人。主として有力なベンチャー企業、政府機関、大学・研究機関、マスコミの4極から集まっている。

 

 

 

  

 21世紀構想研究会の歴史と活動を紹介する馬場錬成・理事長

 

 下部組織として4つの委員会が活動

 21世紀構想研究会には現在、産業技術・知的財産権委員会(生越由美・委員長)、生命科学委員会(東中川徹・委員長)、教育委員会(銭谷眞美・委員長)、メタンハイドレート実用化委員会(平朝彦・委員長)が活動を行っている。

 それぞれ時代の要請を見ながら研究会を通して課題を認識し、政治、行政に対して成果を伝え、働きかける活動につなげている。過去の実績では、本会アドバイザーの元特許庁長官、荒井寿光氏を中心に度々、知財立国への制度改革や現場の課題を報告し、政府にも政策提言を行ってきた。

 また中国にも2回訪問し、中国社会の急速な進展と日系企業の現地での活動を視察した。さらに東日本大震災の前後には東北電力女川原発を視察し、原発の実情を学び、大震災の被災の現場を見る機会があった。 

 会員企業の栄枯盛衰

 21世紀構想研究会の会員は、有力なベンチャー企業の創業者に参加を求めたところに大きな特徴があったが、会員となった企業は成長するとは限らず、厳しい競争社会の中で大きな試練に立っている現状を知った。

 会員企業の中で、業績が順調に伸びた企業と事実上倒産した企業が交錯している。業績を伸ばした代表的な会員企業は次のような企業である。

 武蔵エンジニアリング株式会社、株式会社日本一、株式会社ガリレオ、株式会社発明通信社、株式会社高速屋、株式会社みかづき、株式会社グッドバンカー、株式会社ホトロン、ユーヴィック株式会社、株式会社東京大学TLO、バイオジェニック株式会社などである。

 会員になった多くのベンチャー企業は、特許など知的財産権を多数取得し、独創的な技術を武器に市場へ打って出たものであり、順調に業績を伸ばして上場した企業も3社ある。一部上場まで果たしたのが荏原実業株式会社である。

 その一方で上場した後に事実上倒産した企業が2社出ている。株式会社YOZANとシコー株式会社である。また知的財産戦略をもとに活動を続けるも業績不振で事実上倒産した会員企業が5社出ている。

 株式会社 YOZANは、第3世代携帯電話(W-CDMA)用の集積回路の設計・開発を行い国際的にも脚光を浴びて2000年9月1日に株式をJASDAQに上場し た。その後、半導体開発では安定的な成長が望めないとして電気通信事業者へ業態転換を行ったがうまくいかず事実上の倒産となった。

 シコー株式会社は、振動モーターを発明して携帯電話機のマナーモードを世界中に広げたものだが、円高、中国での人件費高騰、デリバティブ差損などの逆風に持ちこたえることができず、わずか3億9千万で中国の名もない中小企業に買収されていった。

 このような実例を知ることによって、21世紀構想研究会は国際的な技術開発競争、ビジネス経営の難しさを知り、分析・研究を行い、研究成果の一部は2011年度の日本知財学会で発表した。 

 「たかが学校給食と言うなかれ」

 また、食育推進事業の一環として始めた「全国学校給食甲子園大会」は、2013年に第8回目を迎えることになり、全国の学校給食現場では知らない人がいないくらいに有名なイベントになった。 

 

 

  第7回学校給食甲子園大会に優勝した愛知県西尾市立西尾中学校
学校栄養職員・冨田直美さん、調理員・三浦康子さん
 

  昨年の応募校は、全国から2271校(センターも含む)あり、年々参加校の数が増えている。これは単に学校給食の調理コンテストではなく、一般の人々にあ まり知られていない学校給食の理解を高め、日本を背負っていく次世代の児童・生徒の栄養と健康を見守り、重要な使命を帯びて日夜頑張る栄養教諭、学校栄養 職員、調理員を顕彰する大会にするのが主たる目的である。

 また、地場産物を供給する生産者、流通業者、保護者らとの交流促進にも役立て、食文化が一国の文化と密接につながっていることを理解しながら学校給食の重要性を社会に向かって啓発しているイベントである。「たかが学校給食」と言うなかれというのが私たちの主張である。学校給食は、食育推進の観点から、次のようなキーワードで研究を進めることができる。

  子供 栄養 健康 躾 教育 生活 地域 社会 国家 文化

 学校給食から見えてくる課題は、国家観にまで広がっている。  

 これからの21世紀構想研究会活動にご支援を

 世 界的な産業構造の大変革の中で、日本はどのような国作りをし、どのように産業構造を変えていくのか。そのために知的財産戦略をどのように策定し推進するの か。これは国家だけではなく企業、大学・研究機関など日本全体の課題である。産業技術・知的財産権委員会では、近く知財改革の討論を開始し、日本の近未来 の産業構造や知財戦略の再構築を模索しながら政策提言できるような改革案を作成したいと考えている。

 私たちは時代認識を明確に意識した社会啓発活動を続けていく決意である。

 これからもご指導、ご支援をお願いしたい。

 

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会・100回記念シンポジウムの開催(初報)

                               
                 

 

テーマ:希望ある日本のために何をなすべきか

モデレーター 橋本五郎(読売新聞東京本社・特別編集委員)

パネリスト 

岩本沙弓(大阪経済大学 経営学部 客員教授) 

塩崎恭久(自民党衆院議員、元内閣官房長官) 

藤嶋 昭(東京理科大学学長、東大特別栄誉教授) 

柳澤幸雄(開成中学・高校校長、東大名誉教授)

 

 21世紀構想研究会の100回開催記念のシンポジウムが6月11日午後6時半から、東京・内幸町の日本記者クラブ10階のプレスセンター大ホールで開催された。 

 冒頭、筆者は21世紀構想研究会の理事長として、第1回の研究会開催から今日までの歴史を簡単に説明し、これまでの活動実績や今後の活動方針について報 告した。この後、「希望ある日本のために何をするべきか」をテーマに、モデレーター、パネリストの5人が冒頭にコメントを述べ、そのあとで討論を行った。

 今回の報告では、全体の印象を筆者なりに示したいと思う。まず第一印象は、自分たちが主導で決めたパネリストの人選であるが、多方面の分野からの代表と いう形になり非常によかった。(自賛) 将来の首相候補として最も近い距離に立っている塩崎先生は、さすがに政界事情を巧みに勘案した発言をしていたが、 基本的に「実現可能な政策」という視点に立っていたことは政治家として一定の評価をしたい。

 岩本先生は経済学者、特に直近の為替変動、金融政策、株価乱高下を日々解説する立場に立っているので、冒頭は株式市場の解説を歴史的なデータを示して行っていた。これは冷静な視点を示したもので非常にためになった。

 藤嶋先生は、最近取り組んでいる青少年の読書運動と理科離れへの歯止め運動から教育全般にまで広げた話題は面白かった。「空はなぜ青いか」と問いかけ、その理屈を解説し、しかも持参したペットボトルに懐中電灯を当てて青空の理屈を見せてくれたのは、鮮やかな手法だった。

 柳沢先生は、東大進学断然トップという有名高校の校長らしく、開成高校の卒業式での式辞の話からこれから人生を歩む若い世代に告げるメッセージを披露しながら、親や社会人の果たすべき責務について考えさせるメッセージを発言していた。

 モデレーターの橋本先生は、膨大な蔵書を抱える読書人らしく、昔の偉人たちのエピソードを適宜に織り込みながら、地方の疲弊、少子化問題など現代の重要 課題を国民の目線で考えることを提起しながら深く思索するように示唆した。さらに4人のパネリストを巧みに束ねて2時間の論戦を仕切った手腕はさすがだっ た。

 5人の討論の内容については、この後で詳報を掲載していきたい。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会・100回記念イベント第3弾で生島和正氏が講演

                               
                 

 

 21世紀構想研究会の100回記念イベントの第3弾は、武蔵エンジニアリング株式会社の生島和正社長が「我が社の事業とその経営哲学について、または、これからの世の中を確かに生きていくために -若者に捧ぐー」とのタイトルで講演を行い、会場と熱い討論を展開した。

 生島社長はまず、液体を超細密に制御するハイテク技術で世界トップの技術力とマーケット支配をしている活動を分かり易い映像データなどを使って説明した。

 経営哲学とする基本理念には、幸田露伴の「努力論」と二宮尊徳の「報徳訓」の思想を取り入れた「露伴・尊徳ism」を確立し、独自の経営理念で活動して いることを熱く語った。具体的な行動様式としては、誠実、挑戦、独創性の3本の柱を掲げていることを説明したが、この中でも特に誠実という企業姿勢を明確 に打ち出していると語った。 

 さらにビジネス社会は競争ではなく闘いであるとし、企業が強くなるためには技術力、製品力、販売力、組織力、仕事力、人間力をあげ、もの作りに取り組む経営は「美学」であるとする独自の経営観を語った。

 さらに「これからの世の中を確かに生きていくために -若者に捧ぐー」として、世の中の見方、考え方について独自の歴史観と世界観を披歴し、感銘を与えた。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会「100回記念シンポジウム」の開催案内

                               
                 

 21世紀構想研究会は、設立から15年目の2013年6月、100回開催記念のシンポジウムを開催します。

 是非、参加をお待ちしています。無料です。

特定非営利活動法人21世紀構想研究会100回記念シンポジウム案内

 開催日時:2013年6月11日(火) 午後6時半~9時

テーマ :希望ある日本のために何をなすべきか
 

モデレーター 橋本五郎(読売新聞東京本社・特別編集委員)

パネリスト 

岩本沙弓(大阪経済大学 経営学部 客員教授) 

塩崎恭久(自民党衆院議員、元内閣官房長官) 

藤嶋 昭(東京理科大学学長、東大特別栄誉教授)

柳澤幸雄(開成中学・高校校長、東大名誉教授)

  橋元五郎氏

 1946年生。1970年、慶應義塾大学法学部政治学科卒、読売新聞社入社。政治部、論説委員、政治部長、編集局次長などを歴任。読売新聞編集委員を経て現在同特別編集委員。日本テレビキャスター(「ジパングあさ6」「ズームイン!!朝!」)、東京大学経営協議会委員、NHK中央放送番組審議会委員、東日本大震災復興構想会議委員などに就任。 読売新聞紙面でタイムリーなテーマで論評を執筆して多くの「橋本ファン」を作った。現在、読売テレビ「ウェークアップ!ぷらす」コメンテーターなどを務める。著書に『新聞の力』(労働調査会)、『総理の器量』(中公新書ラクレ)、『「二回半」読む』(藤原書店)、『範は歴史にあり』)など多数。

 岩本沙弓氏

  1991年東京女子大学卒。同年から日・米・加・豪の大手金融機関にて外国為替(直物・先物)、短期金融市場を中心にトレーディング業務に従事。日本経済新聞社発行のニューズレターに7年間、為替見通しを執筆。金融機関専門誌「ユーロマネー誌」のアンケートで為替予想部門の優秀ディーラーに選出される。 現在、為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院特別委員会にて参考人として出席するほか、政党関連の勉強会等の講師にも招かれる。大阪経済大学経営学部の客員教授を務めている。主な著作に「新・マネー敗戦」(文春新書)、「最後のバブルがやってくる」(集英社)など。最新刊「バブルの死角」(集英社新書)は2013年5月発刊。

 塩崎恭久氏

1950年(昭和25年)生。1975年、東大教養学部教養学科アメリカ科を卒業して日銀に入行。1982年にハーバード大学行政学大学院を修了、行政学修士号を取得。1993年、衆院議員選に出馬して初当選。以後、衆院議員6期、参院議員1期を務める。金融危機に伴う1998年の金融国会では、金融再生トータルプラン、金融再生法の策定に奔走し、政策新人類と呼ばれ注目された。衆議院法務委員長、外務副大臣を経て2006年の第1次安倍内閣で内閣官房長官・拉致問題担当大臣に就任。2011年3月の福島第一原発事故を機に「国会事故調査委員会」(憲政史上初めての国会内調査委員会)を立ち上げ、「原子力規制委員会」の創設を主導し原発・原子力問題に全力傾注。現在は、自民党政調会長代理・日本経済再生本部本部長代行として日本経済のデフレからの早期脱却に向けて鋭意取組み中。

 

 藤嶋昭氏

 

 1966年、横浜国立大学工学部卒業、71年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。神奈川大学工学部講師、東大工学部講師、助教授を経て教授、同大学院工学系研究科教授。東京大学特別栄誉教授。2003年4月より財団法人 神奈川科学技術アカデミー理事長、08年科学技術振興機構・中国総合研究センター長。2010年1月より東京理科大学学長。酸化チタン光触媒の原理を発見した業績で世界的に知られる。日本化学会賞、紫綬褒章、日本国際賞、日本学士院賞を受賞。2010年文化功労者。 学術的な専門書を数多く刊行したが、最近は子供の科学啓発教育に情熱を燃やしている。「時代を変えた科学者の名言」、「科学も感動から」(いずれも東京書籍)、「太陽と光しょくばいものがたり」(偕成社)など著書多数。

 

 柳沢幸雄氏

   1947年生、東大工学部化学工学科を卒業。コンピュータ会社のシステムエンジニアとして3年間従事後、東大大学院で大気汚染を研究し博士号取得。東大助手を経て、84年よりハーバード大学公衆衛生大学院に移り、研究員、准教授、併任教授としなる。1993年より、財団法人地球環境産業技術研究機構の主席研究員を併任。1999年東大大学院・新領域創成科学研究科教授、2012年東大名誉教授。主要研究テーマは、空気汚染と健康に関する研究。2011年より母校の学校法人開成学園・中学校、高等学校校長に就任。社団法人大気環境学会副会長、室内環境学会会長、臨床環境学会理事、NPO法人環境ネットワーク文京副理事長などを歴任。主な著書に「化学物質過敏症」(共著、文春新書)、「CO2ダブル」(三五館、1997)など多数。
               
                               
               
             
                                         
                               

永野博氏が読売新聞・論点欄で若手人材育成の国家戦略について提言

                               
                 

 

 元文部科学省国際統括官、政策研究大学院大学教授などを歴任した永野博氏が、2013年5月1日付け、読売新聞論点欄に「研究リーダー養成必要」との論文を発表した。

 世界主要国、後発国ともに、若手の人材育成に力を入れて多くの政策を遂行しているが、日本の人材育成はこれでいいのか。世界の現状を調べて分析し、日本の国家戦略として若手の人材育成をどう取り組むべきか。

 その視点を明快に提起している論文である。是非、読んでほしいと思った。

 

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会・100記念イベントで佐々木信夫先生が講演

                               
                 

 

 21世紀構想研究会の100回記念イベントが進んでいるが、4月24日には第2弾として佐々木信夫先生(元特許庁特許技監、株式会社特許戦略設計研究所 代表取締役)が講演し、日本に横たわる知財戦略の課題を分析して指摘し、これから取り組むべき戦略について多くの示唆に富んだ提言を行った。

 佐々木先生は、1998年に特許技監を務めたが、そのときの特許庁長官は荒井寿光氏である。この日は荒井氏も出席し、往時の長官・技監の名コンビで講演の後の討論を盛り上げた。

 佐々木先生の講演内容で筆者が印象に残ったのは、アジア・中国を中心に広がっている巧妙な特許模倣システムの広がり、欧州特許庁の停滞ぶり、日米特許対 話の流れなどである。また、自身の手がけている具体的な特許・ビジネス戦略について、ケーススタディの形で披露し、日本の特許戦略と産学連携の現場に横た わる様々な課題をあげた。

 安倍政権の掲げる「三本の矢」政策の最大の課題は、失われた20年で現出していたデフレ経済を脱するために成長戦略を見直して具体化し、速やかに実現す ることだ。そのために佐々木先生は、知財の保護ルールの国際的な共通化をあげた。TPPの知財保護ルールの共通化、日中韓のFTA交渉の知財保護ルールの 共通化、日欧のEPA交渉の知財の保護ルールの共通化などである。

 また国内の知財政策では、グレースピリオド1年の制度化、超早期審査の制度化、18か月以内の特許取得手続きの制度化などをあげ、そのためには特許紛争 実態の調査と監視の励行や無審査実用新案法の根絶などをあげた。これは中国で急増する実用新案出願と特許出願は、中国独自の制度が権利意識を突出させてお り、こうした実態を国際的な共通システムに改めていかないと公正な競争にならないことを指摘したものである。

 そのほかにも重層多岐にわたる国際的な課題提起と日本のとるべき戦略は極めて重大なものばかりであり、今後、佐々木先生の提起した課題を整理し、安倍政権に政策提言できるよう論議を成熟化していく方向を確認してこの日の講演は終了した。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

加藤紘一氏(日中友好協会会長)が日中問題について21世紀構想研究会で講演

                               
                 

 

 元自民党幹事長の加藤紘一氏(日中友好協会会長)が、4月19日、21世紀構想研究会で講演し、緊迫する日中問題について核心に触れる解説を行った。こ の中で加藤氏は、2012年9月9日、ロシアのウラジオストックで開催されたAPECで、中国の胡錦濤国家主席が野田総理と非公式ながら30分ほどの会談 を行っていたという新たな事実を披露した。

 日本では、日中の2人の首脳が立ち話をした程度として伝わっているが、立話以外に日中2人のトップが部屋に入り、通訳を交えずに片言の英語で語り合った 内容が問題であったと推測できる中国側の動きと情報を元に、これまで伝えらていない日中外交問題の齟齬について大胆な解説を行った。

 また1984年 - 1986年に、中曽根内閣の国務大臣防衛庁長官をしていた時代に、日本海を舞台に日中で緊迫した事態が勃発した秘話、尖閣紛争を原因とした日中の武力衝突 の可能性、レアアースを巡る日本の報道とその真相、中国共産党の若い指導層の仕事ぶりと近年の日本の官僚の考えと仕事ぶりなどについて見解を述べた。

 加藤氏は元外務官僚であり中国語語学研修で鍛えたチャイナ・スクールの系譜にある人である。中国語が堪能なので中国の指導層、要人とも個人的な太い人脈 がある。この日の講演でも、中国に関する豊富な情報量を感じさせる多くの話が語られ、真の日中関係を理解するうえで非常に役立った。

 また、膠着している日中問題を打開する手だてについて加藤氏は、日本の政治家の中でいま中国側と最も太いパイプを持っているのは安倍首相であると解説 し、安倍総理自ら動くことが重要であるとの見解を述べた。第一次安倍政権誕生後の中国との外交を振り返りながら、先月下旬、中国側が安倍首相に期待をかけ ている動きを見せたが、日本側がそれに対応しなかったとのいきさつを語った。

 この膠着状態を打開するのは政治問題として取り組んでも困難なので、民間が積極的に様々な交流を進めることが重要なカギになるとの見解も語った。

 またこの日の研究会には、在日中国大使館の李纓(Li Ying)公使も出席して熱心に加藤氏の話を聴いていた。研究会後半のフロアとの質疑応答では、フロアから李公使に中国の経済問題や科学技術問題で質問す る人も出たが、李公使は流暢な日本語で率直な意見を述べて参加者に感銘を与えた。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

加藤紘一先生(日中友好協会会長)と懇談

                               
                 

 

元自民党幹事長で同党の重鎮である加藤紘一先生と2月28日、東京・六本木でお会いし、直近の様々な話題で意見交換した。

 加藤先生は先の衆院選で山形3区で14選を目指したが前坂田市長の阿部寿一氏に負けて落選した。この日、久しぶりの出会いだったが元気な様子であり、健啖ぶりは相変わらずで安心した。

 最近の加藤先生は、緊迫する日中関係の改善に貢献したいという意欲を持っている。それは、外務官僚時代から中国通として活動し、中国の要人にも太いパイプを持っているからだ。現在も日中友好協会会長として中国との関係改善に動いているという。

 そこで、100回開催記念イベントを行う21世紀構想研究会の特別講話として、来る4月19日午後7時から、プレスセンタービル9階の宴会場で、特別講話をしてもらうことにした。

 演題は「中国第6世代が考える日中未来志向」と決まった。第1世代・毛沢東、第2世代・鄧小平、第3世代・江沢民、第4世代・胡錦濤、第5世代・習近平と続き、次の中国共産党のリーダー候補が第6世代となる。

 いわば中堅幹部として活動する中国の第6世代は何を考え日中対応にどのように動こうとしているのか。日中戦争勃発寸前という緊迫した状況もあるだけに加藤先生の分析と解説を注目したい。

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

第98回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

第98回・21世紀構想研究会は、2013年1月25日、プレスセンターで開催され、「大丈夫か日本の大学の産学連携活動」のタイトルで、株式会社東大TLO社長の山本貴史さんの講演と討論で盛り上がった。

 山本さんは、日本の大学TLOの必要性を1990年代から主張し、時代の先駆けを行った人である。それはアメリカの産学連携の最初のシステムを構築したニルス・ライマース氏に私淑し、そのイロハを教えてもらい、日本にその文化を導入した。

 産学連携など日本ではほとんど話題にならなかった時代に、次世代の風をかぎ取って活動を始めたという点で非常に価値ある活動であった。

 日本の産学連携は、まだ道遠しであり、軌道にのるのに、あと10年かかるだろう。山本さんは、東大への国からの莫大な資金投与と高度資質の人材とこれまでの研究インフラがあるから成功していると思いがちだが、そうではない。

 この日の講演でも、マーケティングを最重要課題に掲げ、営業努力があって初めて成功している企業活動であることが分かった。外国の企業が東大の発明成果 に素早く群がってくるという報告は、日本の企業文化、官僚文化がいかに世界の潮流に遅れているかという現実を報告していた。

 いま、日本で最も遅れている点は、決定までに至る道筋と時間である。官僚の世界でも企業でも大学でもあらゆる世界で即決即断ができない。それは日本の文化であり、それがいい時代もあった。しかし今は違う。競争の世界では後れを取ることが少なくない。

 産学連携の話を聞いていて、産業競争力と政治、行政の現状に思いが至った。日本はやはり国のカタチを変えなければならない。そのためには、若い世代のエネルギーを使って年寄りたちの知恵を現代の社会に生かさなければならない。

 産学連携の話は、実は日本の社会構造変革の課題の取り組みを語っていることに気が付いた。産学連携の成功事例が多数出てきたときに、日本は再び日のいずる国として世界の羨望を浴びるだろう。

 

 

 

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

21世紀構想研究会 忘年パーティの開催

                               
                 

 

 21世紀構想研究会の忘年パーティが12月10日、東京のプレスセンタービルで開催した。会員の合原亮一氏(株式会社ガリレオ社長)が長野県上田市で展開している有機野菜の実際を語る講演があり、収穫した野菜の即売会も行った。

 驚いたことに日本の野菜は、年を追うごとにビタミン類などの含有量が少なくなってきたという事実だ。有機野菜の必要性を知って本当にためになった。

 最後に一人一票実現のために、来るべき総選挙での最高裁裁判官の国民審査では、心を鬼にして現在の最高裁判事にバッテン(×)を付けることで司法にカツを入れ、立法府にも影響を及ぼして日本に真の民主主義国家を建設しようと盛り上がった。

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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構想研100回記念委員会の開催

                               
                 

 

1997年9月に創設された21世紀構想研究会は、来年4月ころに100回開催の記念日を迎える。その節目の開催を記念するイベントや研究会をどうするか。

 このほど100回記念委員会(合原亮一委員長)が設置され、その第1回委員会が11月21日、プレスセンタービルで開催され、シンポジウムなどの開催について意見を交換した。来年4月ころの日本全体の動きを今から想定するのは非常に難しい。

 間もなく衆院選挙が公示され投票が行われる。比較第1党は自民党が予想されるが、そうなれば安倍内閣の発足となる。2回目の首班指名となるが、右翼志向の強い内閣ができると中国との関係がさらに緊迫することになる。

 第1党になっても他の会派と組まなければ首班指名は難しだろう。そうなると組む相手の政策とのすり合わせで外交、経済問題がゆがんでくる可能性もある。 政府原案の予算案は年内には無理だとすれば、来年1月中に作成し、通常国会に急ぎ提案して年度内に成立させなければならない。

 こうしたスケジュールも考えると、21世紀構想研究会の100回記念開催時には、日本全体が緊迫した動きの真っただ中にあることも想定される。そのような状況も考えたテーマのシンポジウム実施となると、開催直前までテーマを決められない可能性もある。

 そのような意見を踏まえながら、いまは広くテーマを設定し、直前になって的を絞る方向でさらに検討することでこの日の委員会は終わった。21世紀構想研 究会の今後の活動方針、社会貢献、政策提言集団としての役割など再考する懸案があるので、この委員会は将来展望も踏まえた討論を重ねることになるだろう。

 

 

 

 

               
                               
               
             
                                         
                               

第96回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 

  インターモダル社社長の園山玲子さんが講演

第96回21世紀構想研究会は、10月30日に開催され、インターモダル株式会社代表取締役社長の園山玲子さん(本研究会会員)が「知られざる世界-航空貨物の現場 どうする日本」をテーマに語ってもらった。

  園山さんは航空コンサルタントとして格安航空を手がけるなど航空ビジネスのエキスパート。アジアで急成長する格安航空社の誘致を目指す地方関係者が頼りにする強い味方である。 長年の外資系企業勤務で培った人脈と行動力・交渉力で世界を奔走。中国の空港公団の重鎮が相手でも、一歩も引かずズバズバ物を言える。それでいて険悪な雰囲気にはならない。交渉の巧みさに大手商社マンも舌を巻くという。

 航空貨物の動向は産業構造と連関している 

 この日の講演では、航空貨物の状況が産業構造の変化と密接不可分にあることを示して参加者たちを驚かせた。例えば輸出入貨物の取扱量と金額の推移を見ると、日本の製造業が海外へ移転して国内産業が空洞化してきた現状が統計に表れている。いまの状況を端的に言えば、輸出する貨物が急激に少なくなってきたということだ。

 これまでの機械、部品、 化学製品などに代わって高級果物や生鮮食品などが新たに存在感を見せ始めている。このような物流は温度管理をして輸送することになるので、輸送手段も空港 の設備も運搬する方法もすべて温度管理に適したものでなければビジネスにはならない。航空輸送の構造改革が始まっている。

 国際的な物流、航空貨物現場の遅れなどをしてきた園山氏は「世界は物流からモノの価値が生まれる時代になっている。国際物流の出入り口である空港は、いつでも必要なときに離発着が可能でなければ新しいビジネスは獲得できない」という。

 韓国の仁川空港に後塵を拝する日本 

 

 たとえば成田空港は、午後11時から午前6時まで発着はできない。空港周辺住民の騒音規制からだが、このままにしておけば日本は産業競争力で大きなデメリットを持つことになるという。韓国の仁川空港は24時間の発着を許可しており、何よりも年間の1機当たりの着陸料が成田のほぼ3分の1程度になる。空港の上屋賃借料は成田5分の1強、ハンドリング料も成田のほぼ3分の1である。

 

 韓国は東アジアの航空貨物のハブ空港を目指し、国ぐるみで取り組んでいる。さらに航空貨物の設備と運用を売り物に、途上国などの貨物空港ターミナル建設の受注を目指して積極的に攻勢をかけており、仁川空港は航空貨物の中心に育てる戦略が着々と実現しているという。

 

 これはシステムのノウハウであり、知的財産権でもある。このようなビジネスは戦略がなければ成功しない。日本はこの面でも劣化してこないよう国家的な戦略がほしいのである。

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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第95回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第95回21世紀構想研究会(http://www.kosoken.org/)は、9月18日にプレスセンタービルで開催され、東京理科大学の坂口謙吾教授から「バイオ発電」について語ってもらった。

 バイオ発電とは、グルコース(ブドウ糖)を原料にする発電で、よく言われているバイオマス発電とは違う。坂口教授は、人類が地球上に登場して以来、どのようにエネルギー消費が変転したかを説明し、化石燃料を使い続けているといずれ人類は破たんすることを示した。

 そのあとでエネルギー革命を起こすにはバイオ発電しかないとして、その具体的な実現方法について学術的な根拠を示しながら提示した。日本にとってバイオ 発電は、十分な電力を安定的に生産でき、原料は海外に依存することなくクリーンで何よりも高い電気料金にならないということだ。

 ただ今の状況では政府も研究機関も及び腰で、この構想は賛成しても実現に取り組む姿勢が見えないという。それならば、世界の大金持ちに投資してもらい、実現の研究を広げる方法があるのではないか。そのような視点での討論だったが、非常に盛り上がった講演会だった。

 

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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荒井寿光氏の講演

                               
                 

 

 第94回21世紀構想研究会が7月9日(月)に開催され、多くの参加者で盛り上がった。

 今回の講師は元特許庁長官、内閣官房知財戦略推進事務局長、通産省通商産業審議官、21世紀構想研究会アドバイザーでもある荒井寿光氏(中小企業投資育成投資株式会社代表取締社長)である。

荒井寿光氏は、1996年に特許庁長官になると矢継ぎ早に知財改革に着手し、産官学の知財意識に変革を求め特に企業の知財戦略を変えることに成功した。そ の後、通産省通商産業審議官を経て民間に転進したが、小泉内閣の知財戦略本部の設置とともに内閣官房に設置された知財戦略推進事務局長として采配をふる い、知財推進計画を策定して多くの実績をのこした。

しかし小泉政権終了後、知財改革は停滞期に入り、くるくる変わる歴代内閣の知財政策も存在感が薄くなってしまった。
  その間、中国、韓国が知財改革を急進的に推進させ、両国の産業競争力の増強ともあいまって知財政策でも日本を凌駕し始めている。米欧も知財政策を着々と進めており、日本の停滞が際立ってきた。
 荒井氏は、直近の世界の知財動向を分析しながら日本の知財改革への道筋を提言し、知財再構築への提言なども行った。

 講演後の質疑応答では、多くの人が意見を陳述したり討論を行い、日本の知財の将来展望について今後の取り組みを語り合った。

 

 

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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第91回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

第91回・21世紀構想研究会が2月1日、東京日比谷のプレスセンターで開催され、研究会のアドバイザーでもある銭谷眞美・東京国立博物館長が「東京国立博物館ーその歴史と今年開催のハイライト」と題する講演をおこなった。

 トーハクの呼称で親しまれている東京国立博物館は、日本で最も古い歴史を持つ博物館であり、国宝だけで137点を所蔵しているという。明治5年(1872年)に創設されて以来、幾多の所管の移転と災害をくぐり抜けて今日のトーハクにつながっている。

 来年は創立140周年を迎えるという。その記念のイベントも盛りだくさん用意されている。今年は、現在開催されている「北京故宮博物院200選」に続いて、3月20日からボストン美術館が所蔵する日本美術のコレクションを披露する特別展が開催される。

 この日の講演ではトーハクの歴史とその活動内容など興味あふれる話が続き、参加者との質疑応答、意見交換も活発に行われた。日本の伝統的な美術は、世界の中でも異色なものであり、世界に発信する力を強くすることも必要だろう。

 デジタル、インターネット時代だからこそ、芸術活動や美術鑑賞の世界が価値観を持つ時代になったと受け止められる。そのような感慨を持ちながら銭谷館長の講演を聞いて楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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21世紀構想研究会の忘年パーティを開催

                               
                 

 21世紀構想研究会の忘年パーティが、12月7日、プレスセンターで開催され50人を超える参加者でにぎわった。

 この日のゲストスピーカーには、藤原歌劇団団員ソプラノ歌手の砂川涼子さんが来てくれた。21世紀構想研究会の会員である永野博・(財)日本オペラ振興会理事長が、自分とオペラとの関わりについて講演し、そのあとで砂川さんのトークと会場との質疑応答となった。

 

 この日の演題が「心おどるオペラの世界へようこそ」となっているので、砂川さんの歌唱を期待して出席した会員もいたようだが、会場のこの部屋では唄うことは禁止されているので、砂川さんと永野さんのトークだけとなった。

砂川涼子さんのプロフィール

http://www.gotoh-mf.jp/show/0074_16_opera_ryouko_sunakawa.php

 

 

 オペラの観劇というと敷居が高いようだが、意外と21世紀構想研究会の会員の皆さんも観劇している人がおり、興味もあるようだ。オペラの魅力について語る砂川さんのお話で、すっかりオペラファンになり、劇場に足を運ぶ人も出てきそうだ。

 

 

 

 トークショーのあとは、恒例のパーティとなり、異分野の人の飛び入り参加もあって楽しい懇談の場となった。21世紀構想研究会へ入会した井上リサさん、 福間智人さん、三和圭二郎さんの3人が挨拶を行い、21世紀構想研究会も新しい人々の輪が広がっていくことを期待したい。

 

 また、本研究会の最年少である33歳の小林憲人さんが挨拶に立ち、埼玉県ふじみ野市の市会議員として活動している様子を語って拍手を浴びていた。

 この忘年パーティで、21世紀構想研究会は90回を迎えており、2013年には100回を迎えることになる。今からその記念開催に向けて準備に入ることになる。

 

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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メタンハイドレート委員会の打ち合わせ会

                               
                 

 

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 21世紀構想研究会のメタンハイドレート実用化研究委員会(平朝彦委員長)の打ち合わせ会が、10月27日、東京・内幸町の海洋研究開発機構(JAMSTEC)東京事務所のセミナー室で開催され、平委員長を囲んで当面の研究動向について討議し、情報交換を行った。

 この日の打ち合わせ会ではまず、高知県の杉本昭寿氏から最近の研究動向が発表され、今後の展開について話し合った。東日本大震災がもたらした東電福島原発の事故を見るまでもなく、新エネルギーに対する開発と取り組みは非常に重要な課題になっている。

 その中でメタンハイドレート(MH)の実用化開発をどうするのか。国の開発戦略は、必ずしも挑戦的なものでなく、企業の開発参加も重要ではないか。国際 的な開発動向とMHの世界の埋蔵分布による戦略も俯瞰する必要があるだろう。そのような話題を話し合いながら委員会の開催に向けて今後の活動を模索した。

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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山下俊一教授が21世紀構想研究会で講演

                               
                 

 

「私たちは、発がん物質の海の中を泳いでいる」と語ったのは、杉村隆・国立がんセンター名誉総長である。ことほど左様に環境中には、発がん物質があふれており、がんへのリスクに日常的にさらされて私たちは生活している。

 海外へいくために長時間、フライトすれば宇宙からの放射線を浴びるし、健康検診でCTスキャンを受ければこれまた大量の放射線を浴びることになる。単に発がんリスクを語れば、タバコ、高塩分摂取、肥満、運動不足などいくらでもある。

 先の東電福島原発の事故で、福島県民はどのくらいの放射線リスクにさらされているのか。それを科学的に検証して説明し、いたずらに怖がるのではなく「正 しく怖がろう」と説明するのが福島県立医科大学副学長の山下俊一教授である。山下教授は長崎大学医学部で放射線医学の第一人者として国際的な活動をしてき た。

 この日の21世紀構想研究会の講演でも、広島・長崎の原爆被爆者の膨大な疫学データや、チェルノブイリ原発事故後の科学的なデータを示しながら、諄々と説明した。

 山下先生の解説では、「放射線を100ミリシーベルト以上浴びると発がんのリスクが上がるが、それ以下の低線量被爆者の健康被害の確定的なことは分かっていない」としている。ただ福島県民の人々で100ミリシーベルトを超える線量を受ける危険性はないという。

 山下先生が強調しているのは、政府の発信するデータへの信頼回復とメディアの正しい報道、さらに被ばく医療の専門家が住民に丁寧に説明することだとい う。一部の週刊誌や出版物で、科学的に未確定のことをあげて危険性を主張する論述がある。こうした報道がいたずらに国民に不安感を植え付けないようにする ことこそ大事なことである。

 山下先生の解説をバッシングする風潮も出ているようだが、自身の信念に責任を持って語ることの重要さをこの日の講演で受けたもっとも重要なことだった。

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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東北電力女川原発を見学

                               
                 

 

 東日本大震災で被災しながらも津波の被害を受けず、原発サイトにある体育館を避難住民に提供した東北電力・女川原子力発電所を8月25日、21世紀構想研究会の一行が見学訪問した。

 一行は女川原子力発電所の渡部孝男所長らの案内で所内を見学し、まず原子力発電の状況を見学した。いま同原発は定期検査と今回の震災後の点検で3機とも安定した冷温停止状態にあるが、そのメンテナンスの状況の説明を受けて、原発が稼働するメカについて勉強した。

 また、原子力技術訓練センターでは、想定された大地震発生の瞬間から緊急に対応する訓練を見せてもらった。中央制御室のモックアップの前での臨場感あふれるきびきびした書員の対応は、いかにも訓練を重ねてきたという感じが出ており、見ていて参考になった。

 
中央制御室のモックアップで訓練する所員

 今回の見学の説明で東電・福島原発との比較で分かり易かったのは次のような数値である。まず津波襲来の想定推移であるが、女川では、9.1メートルとしていたが、福島では5.7メートルだった。

 続いて原発サイトの敷地の高さだが、女川は13.8メートルに対し、福島は、10メートルだった。さらに津波の高さは、女川が13メートル福島も同程度 の高さを想定していた。しかし福島は、敷地の高さが10メートルであるから、最高の津波が来たらもろに超えてくるのは設計上でもわかっていたはずだ。

 女川の敷地を海岸の隣接状況を見て、その高さが津波からの決定的な防御になったことがよくわかった。

 また、女川町に隣接する石巻市の被害の状況を、東北電力石巻営業所の山形安生所長と引地宗範副所長の案内で見ることができた。まだ被災地は津波の爪痕が 残っている地域が多く、その惨状を目の当たりにしてびっくりした。引地副所長が被害直後から被災地をつぶさに見てきた話を聞きながら、津波の恐ろしさとそ の被害にあった人々の不幸を思って暗澹たる気持ちだった。

 

 

              津波被害の惨状が、まだいたるところに見られた。

 

 
 
 

被災者の鎮魂のモニュメントには、献花する人々が絶えないという。石巻の1日も早い復興を願わらずにはいられなかった。

 

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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21世紀構想研究会の法人会を開催

                               
                 

 

 21世紀構想研究会の法人会の集まりが、7月25日、赤坂の「ふきぬけ」で開催され、これからの構想研究会の在り方などで意見交換をした。

 「ふきぬけ」は、本会理事で法人会員である染谷幸雄さんの企業、株式会社日本一が経営するうなぎのレストランで、有名な老舗である。この日は高知県の杉本昭寿さんと渡辺望稔さんらも加わって、楽しい懇談の席となった。

 21世紀構想研究会の研究会は、今年で90回を超えて、2年後には100回を迎える。継続は力なりであり、ここまで続いているのは法人会からの支援によ るところが大きい。大震災では、2回にわたって緊急報告・討論の会を開催したが、これからもタイムリーなテーマで研究会を開き、社会への喚起や政策提言で 存在感を出していきたい。

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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第88回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

第88回・21世紀構想研究会は、7月7日に日本記者クラブで開催され、「大震災の報告その3」として、 東北電力女川原発の報告と原発に関する課題について活発な討論が行われた。

 この日の講師は、東北電力東京支社の宮本保彦副支社長、大渕正和同副支社長で「東北地方太平洋沖地震による女川原子力発電所の状況について」と題して講 演を行った。女川原発の現場には、高さ13メートルの巨大な津波が押し寄せたが、運転中の3基の原発はいずれも自動停止し、冷温停止に至った。

 東電福島原発の惨状と比べると余りの違いにびっくりするが、その原因がよくわかった。女川原発は、海面から13.8メートルの敷地に建設されていたために、津波が押し寄せることはなく、海水をかぶって電源を失うこともなかったのである。

 それでも地震の揺れで重油タンクが倒壊して油が漏出したり、地下に埋設してあった潮位計の上蓋が押し上げられて海水が入り込んだりしたが、それほどの被 害もなく無事に収拾した。女川周辺では津波の被害をもろにかぶってすべてを失った住民も多く、被災者たちを原発敷地内に誘導して緊急の避難所として提供し たことも分かった。

 東電と女川の決定的違いは、原発サイトの建設敷地である。津波が来ても届かない敷地を選択した女川とそのような考えもなく防潮堤も低かった福島原発で は、天地の差が出てしまった。また東電は、災害が発生した後の処理はミスがあったとしか考えられない不手際が続き、取り返しのつかない事態へとつながって いった。

 この大災害は、たとえて言えば戦争に匹敵する国難である。指揮系統、判断力、決断力など人知の総力をあげて取り組んだ結果が今日の体たらくということ は、危機管理が全くできていなかったということにもなる。女川原発は対照的に非常にうまく危機を潜り抜けたことになり、3基の原発はすぐに冷温停止となり 以来、安定している。

 研究会の論議では、再生可能エネルギーによる発電などの推進策も出たが、GDP世界3位、家庭では何不自由なく使い放題の電力を使い、工業国として世界 有数の生産力を誇る日本のすべての電力をまかなうことを考えると風力、地熱、太陽光などのエネルギーでは到底間に合わない。

 もちろん、節電効果も考える余地はあるが、しかしこれは限度がある。それでは日本のエネルギーはどのようにして確保するのか。海底に眠るメタンハイドレードの利用を含め、再生可能エネルギーの推進策もあるが、もっとも重要なことは国民の意識改革だろう。

 ことはエネルギー問題だけではない。これからの日本をどのような国家として建設するのか。国民の価値観と生活様式、文化まで考える必要がある。エネル ギー問題は、単に経済的な問題ではなく国家と国民の意識と文化にまで広がってきている。そのようなことを意識させた研究会だった。

 

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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第87回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第87回・21世紀構想研究会は、5月31日に日本記者クラブで開催された。この日は2011年度の総会も開かれ、昨年度の活動報告と決算内容が満場一致で承認された。さらに2011年度の活動計画と予算案についても承認され、近く東京都に届け出ることになった。

 総会のあとは、「東日本大震災の報告会その2」をおこなった。この日の講師は、内閣府参与の広瀬研吉氏である。本会の会員でもあるが、広瀬氏は元原子力安全保安院院長として、いま首相官邸と原子力安全保安院、原子力安全委員会の連絡調整役という重要な任務を行っている。

 講演では、福島原発の事故について時系列に従って事故の概要を説明した。原子炉に制御棒が入って炉心の反応が停止したあとに津波の被害を受けて電源を失い、冷却システムの立て直しに至る過程を整理して示した。

 広瀬氏は、現在の立場と任務があるので個人的な見解は全くせず、すべて公表されてきた内容に基づいて整理したものを示したものだが、改めてこの事故の流れを知って問題の整理をすることができた。

 講演の後は質疑応答と見解の発表、意見交換などであったが、非常に活発な意見交換会だった。今後の日本の原子力防災と取り組みについても建設的な意見か ら原発撤退という厳しい意見まで一通り出されたが、まだ原発サイトの冷温システムは確立されていないだけに心配する声も多かった。

 筆者もいくつかの見解を述べたが、特に今回の大地震とよく似た平安時代の貞観地震の学術的な検証と行政対応についていくつかの疑問点をあげた。このテーマについては、これから多くの検証が行われるだろう。

 

 

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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第86回21世紀構想研究会は大震災の報告会

                               
                 

 

 第86回・21世紀構想研究会は、4月25日、プレスセンターで開催され、「東日本大震災の緊急報告会」を行った。

 報告者は、宮城県南三陸町で大震災に被災した佐藤門哉さん、災害発生後から日夜報道をしてきた読売新聞東京本社科学部の柴田文隆部長、野依英治科学部記者、伊藤崇科学部記者の4人である。

 津波の被害を受けて九死に一生を得て助かった宮城県南三陸町の佐藤門哉さんが、まず被災した当日の模様を語った。有線放送で流れてきた津波情報は、高さ 6メートルという警告であり佐藤さんはこれなら防波堤を超えてこないだろうと軽い気持ちで自宅裏の高台にのぼったという。

 その時のビデオ映像と写真をもとに報告した内容には、息をのむような場面が多数あった。逃げ遅れて津波に呑み込まれようとしている人々の姿には何とも言えない痛切の気持ちだった。

 取材記者として巨大地震のメカニズムを追い求め、津波の被害を見るために現地を取材した記者たちの仕事は、現場と読者の間に立ち、媒体としての役割を果たしている活動がよくわかった。

 福島原発のトラブルについては、柴田部長が報告したが、政府、東電側の説明と発表内容に幾多の矛盾が見られ、国民に対する報告義務に欠けているのではないかと思わせる原子力安全委員会の活動などについて言及した。

未曽有の災害に遭遇した菅政権は、ある意味で政権浮上の絶好のチャンスを得たにもかかわらず、国民の信頼を得られなかった。政権浮上を意識したときに 守りの意識に入り込んでいったのではないか。日本の最近の政治活動の貧困さを浮き彫りにするような出来事だったのではないか。

 いずれ今後の歴史の検証で明らかになっていくだろう。

 

 

 

 

 

 

                     
                               

第84回・21世紀構想研究会の開催

       
第84回21世紀構想研究会 

第84回21世紀構想研究会は2月22日(火)に、東京駅丸の内の創英特許法律事務所のセミナー室で開催され、約40人が参加して有意義な時間を過ごした。

今回の講師は、ベンチャー企業を立ち上げて東証1部上場まで育てあげた株式会社モリテックス創業者の森戸祐幸氏が、内紛に嫌気をさして創業した同社を惜しげもなく売却、再び起業家として身を投じました。

そして、その体験から得た日本の企業文化、日本の社会、日本人の精神文化を鋭利に分析して語ってもらいました。

講演後の質疑では、感銘を受けたというコメントが寄せられ、翌日になっても反響が続いている。

                                

ベンチャー企業で果敢に市場に打って出る森戸祐幸氏を訪問

                               
     

東証1部上場企業の株式会社モリテックの創業者として知られる ユーヴィック株式会社社長の森戸祐幸氏を訪問し、活動状況を取材した。

 森戸さんは、昭和39年、日本はまさに高度経済成長期に差し掛かったころ、東京理科大学理学部応用化学科を卒業して丸紅に就職。その後、自ら商社企業を興しやがて光ファイバー関係の製造業へと転進した。ベンチャー企業の走りである。

 創業したモリテックスは右肩上がりに業績を伸ばし、東証1部上場にまでのし上がった。しかしその後、経営方針で企業内部でトラブルが発生し、嫌気した森戸氏は創業会社を辞めて別天地へと転進した。それが光触媒関連のユーヴィック株式会社である。

 森戸さんは、60歳過ぎてからベンチャー企業を興しているので、これをシニアベン チャーと名付けているが、その飽くなき技術開発への挑戦は、その方針を聞いている方も胸が躍るような話である。2月22日には21世紀構想研究会で下記の ような講演をする予定であり、今から楽しみである。

第84回21世紀構想研究会 

 第84回21世紀構想研究会は2月22日(火)に開催いたします。

 今回の講師は、ベンチャー企業を立ち上げて東証1部上場まで育てあげた株式会社モリテックス創業者の森戸祐幸氏が、内紛に嫌気をさして創業した同社を惜しげもなく売却、再び起業家として身を投じました。

 そして、その体験から得た日本の企業文化、日本の社会、日本人の精神文化を鋭利に分析して語ってもらいます。 

 8421世紀構想研究会

日 時:2011222日(月)19:00

 場:創英国際特許法律事務所セミナールーム

演 題:「シニアベンチャー企業を立ち上げる」   

  ~あくなき挑戦 魅力ある人生を求めて~

 講 師:森戸祐幸氏(ユーヴィックス株式会社代表取締役社長、株式会社モリテックス創業者、元同社代表取締役会長)

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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メタンハイドレート実用化について高知県知事と会見

                               
                 

 メタンハイドレートの実用化で内閣官房の総合特区に申請している21世紀構想研究会の代表である筆者と平朝彦・メタンハイドレート実用化研究いい回委員長らメンバー及び高知県の黒岩県議らは、12月24日、高知県庁を訪問し、尾崎正直知事と会見した。

 まず、筆者から21世紀構想研究会の自己紹介をした後、平委員長からメタンハイドレートと高知県の関連について説明し、今後のメタンハイドレート実用化には県も全面的に協力体制を整えてほしいとの要請を行った。

 これに対し知事は、メタンハイドレートの実用化についての意義を理解し、これから高知県がどのようなメリットがあるかなどを検討し、このプロジェクトに 前向きに取り組むことを検討したいと表明した。県がどのような体制で参加してくれるかはまだ決まっていないが、知事と出席した県幹部の方々も好意的に受け 止めたように感じられた。

 これから地元産業界などにも働きかけ、東京の21世紀構想研究会のメンバーと一体となってこの実用化戦略を推進したい。

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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高知市でメタンハイドレート研究会を開催

                               
                 

 

 メタンハイドレート実用化研究会が12月23日、高知市のホテルで開催され、地元の産業界、行政、各種団体、市会・県会議員ら約40人が参加して、今後の産業化へのプログラムについて意見交換を行った。

 この研究会は、21世紀構想研究会が内閣官房が公募している総合特区制度に提案したメタンハイドレート実用化についてのプロジェクトの具体的な取り組みについて、地元高知県で初めて趣旨説明と今後の支援を依頼するために黒岩県議らが奔走して開催したものだ。

 まず、平朝彦・独立行政法人海洋研究開発機構理事が「海底資源研究開発と高知県の役割 -特にメタンハイドレート研究開発を例としてー」の講演を行った。これは総合特区に提出した申請書に描かれているプロジェクトの内容について理解を求めたものだ。

 ついで筆者が、21世紀構想研究会がこの提案に至った経過を説明し、高知県の皆さんと東京のグループが一体となって総合特区のプロジェクトに採用されるように頑張りたいとの決意を表明した。

 さらに21世紀構想研究会の渡邉望稔弁理士が、メタンハイドレートを海底から汲み出す技術で特許出願をしている杉本昭寿氏の技術内容と今後の展望について説明し、地元の方々の賛同と一体化となって活動することを訴えた。

 出席者の多くは、このプロジェクトの趣旨や内容については初めて触れる人が多かったようだが、この研究会後に開催された懇親会の席上でも、大半の参加者がプロジェクトに賛同しており、今後の取り組みに積極的に参加する意志を表明した。

 

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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第84回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第84回・21世紀構想研究会が12月21日、プレスセンターで開催され、忘年会もかねた楽しい宴で今年の活動に区切りをつけた。

 この日は、21世紀構想研究会のメンバーだけでビジネスを立ち上げているVOXMOL方式の発表会を行った。この方式は、21世紀構想研究会のメンバーである関口博司さんが発明者した技術であり、それを長谷川芳樹弁理士が特許権利化した。

 その技術開発の話を聞いた筆者が、メンバーの株式会社ガリレオ社長の合原亮一氏に実用化戦略で検討を依頼し、ガリレオが実用化の開発を手がけて、市場へ出すまでになった。つまり、21世紀構想研究会の4人がそれぞれの立場で力を発揮して、市場に殴り込みをかけているものだ。

 開発したのは、英語、中国語など外国語のリスニング学習をする場合に音声再生プレ イヤーに応用する技術である。リスニング学習をしているとき、「再生されたところをもう一度聴き直したい」と思ったときに、適切な位置に戻す技術である。 ガリレオでは「spirivio」として市場に出した。

 関口さんが以前に開発したリンガマスター方式をさらに進化させ、人間の発声と呼吸 との間合いをうまく取り込んだ方式になっている。教材はインターネットにある音声ファイルである。たとえば教材となる英語の音声ファイルをサーバで区切っ て位置データを作成し、その区切り位置をもとに元の音声を再生する。 サーバで提供される音声ファイルの区切り位置データは日々追加することも可能だ。

 最初は無償で提供し、後で有償にしていくというビジネスメソッドであるが、この方法がビジネスとしてうまく軌道に乗るかどうか。関口氏のリベンジ開発であり、ガリレオの新規市場開拓として成功するように支援したい。

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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メタンハイドレート実用化研究委員会の開催

                               
                 

 

 21世紀構想研究会の第2回メタンハイドレート実用化研究委員会(平朝彦委員長)が、12月6日、東京・内幸町の海洋研究開発機構(JAMSTEC)東京事務所のセミナー室で開催され、約20人が参加して活発な討論を展開した。

 この日の委員会ではまず、平委員長が「海底資源探査の現状と将来」と題する基本的な情報レクチャーを行い、続いて鈴木朝夫氏(高知市在住、東工大、高知工大名誉教授)が、杉本昭寿氏の発明したメタンハイドレート採取工法について説明を行った。

 この技術は、海底数百メートルから1000メートルにあるメタンハイドレートを採取する際に、海底の現場でエネルギー源を作り、そのエネルギーを利用し てガス化して海上へと汲み上げる方法である。特許出願もしており、この技術をメタンハイドレート採取の標準化までできないかとする夢を持っている。

 続いてメタンハイドレート開発について東大工学研究科の増田昌敬・准教授がカナダで実施された日加共同プロジェクトの成果を紹介した。これは永久凍土下 の地層中にあるメタンハイドレートを減圧方式と言う技法によって分解してガスを汲み上げるもので、実用化になるだけの生産もできた。しかしメタンハイド レートの分解に伴って地層中の砂が産出するという現象も確認され、これをどう処理するかという新たな課題も出てきている。

 このような課題解決には、技術開発で相当の時間がかかりそうだ。天然ガスのコストより下回り、安定して供給できるようになるためには、まだいくつもの難問を突破する必要があるだろう。

 杉本氏の発明した特許技術がどのように実証されて実用に利用できるようになるか。その期待も大きいが、まだ実証もできていない技術だけに未知数である。 しかしこうした技術の実証実験を通して高知県の地域振興に活用したい意気込みもあり、東京グループと連携しながらエネルギー改革への波紋を起こしていきた い。

 

 

               
                               
               
             
                           
                   
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第83回21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第83回21世紀構想研究会が11月22日、プレスセンターで開催され、約40人の参加者が活発な論議を展開した。

 この日の研究会では、まず林幸秀氏(元文部科学省文部科学審議官)が、日本に横たわる科学技術をめぐる課題を洗いざらい整理して提示した。これは先ごろ 刊行した「理科系冷遇社会」(中公新書ラクレ)で提示した課題をまとめたものであり、科学技術創造立国を国是としている日本は果たして、そのような国創り になっているかどうか疑問視するデータを多く示した。

 この基調講演のあと、会場との質疑・討論に入ったが、安西祐一郎・慶応義塾大学理工学部教授は「日本はあらゆる階層の人々が、本気になって科学技術創造立国に取り組んでいない」とする主旨の発言をしたが、その通りであると筆者は感じた。

 時の政権は、都合のいいときだけ科学技術を標榜するが、日ごろから政策の課題としてはほとんど視野に入れていない。法学部卒が主体の財務省官僚は並べて 科学オンチであり、科学技術を語るときは予算緊縮など数字的な裁量をするときだけのようである。これは多くの技術官僚の感想である。

 政治家もまた、ほとんどが科学オンチであり、2代続いた理系総理大臣には、科学技術創造立国を前面に出すような言動は何もなく、科学技術に関する国家的な戦略は自民党政権から続いて依然として不明である。

 日本から科学技術を取り除いたら、何が残るのか。借金だけではないか。デジタル産業革命によって世界は時間差がなくなり距離感もなくなった。その時代の変革に迅速に対応する国家戦略の中では、科学技術が最も重要なテーマである。

 この日の討論でもその課題に集約する発言が相次いだ。

 

               
                               
               
             
                           
                   
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メタンハイドレート実用化戦略のミーティング

                               
                 

 

 内閣官房が公募している総合特区制度への提案に、21世紀構想研究会からメタンハイドレート実用化戦略について提出した。政策提言であり、採用されればメタンハイドレート実用化への大きな刺激になると期待される。

 11月15日、このプロジェクトの中心になりリーダーになっている平朝彦先生の事務所に集まり、メタンハイドレートを海底から回収する技術を発明して特許出願している杉本昭寿氏からその特許技術について解説を受けた。

 民主党政権の新成長戦略「元気な日本復活のシナリオ」として総合特区制度が創設されるが、「メタンハイドレート実用化に向けた戦略」が採用されれば、日本をエネルギー大国へと転換させることも夢ではなくなる。

 今回応募した内容をさらに討議して熟度を高める必要があり、12月6日には21世紀構想研究会で第2回のメタンハイドレート実用化研究委員会を開催する。

               
                               
               
             
                           
                   
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第82回・21世紀構想研究会の開催

                               
                 

 

 第82回の21世紀構想研究会は、9月17日、東京内幸町のプレスセンタービルで開催され、60人というかつてない参加者が熱心に聴講した。

 この日の講師は、平朝彦先生(独立行政法人海洋研究開発機構理事)で、 演題は「ちきゅう」号による新しい地球像の探求 ~ メタンハイドレート 熱水鉱床 地下生命圏 ~」
   
 海世界トップの性能を誇る地球深部探査船「ちきゅう」が探査する巨大地震発生のしくみ、地球規模の環境変動、生命の起源と海底に広がる新しい生命観、新しい海底資源などについて最新の情報を解説した。

 暗黒の海底は、想像を絶する生命体やエネルギー源であふれているようであり、特にメタンハイドレートの広がりには、大変、興味を持った。
 メタンハイドレートとは、簡単に言うと海底1000メートル付近にたまっているシャーベット状になっているメタンである。海底1000メートルは100気圧になるので、メタンガスにならないでシャーベットになっている。

 これを地上にくみ上げると約160倍の容積のメタンガスになり、これを燃料に使ったり、化学製品の原料にする。埋蔵量は、高知県沖合いなど日本列島のすぐ近くに眠っているメタンハイドレートだけで、日本の天然ガス消費量のほぼ100年分とされている。

 これを実用化しようという「メタンハイドレート実用化委員会」が21世紀構想研究会に設置され、委員長に平先生が就任した。また、内閣官房で公募している地域活性化プロジェクトに応募することも決まっている。

 このプロジェクトには、21世紀構想研究会会員である、高知県の杉本昭寿氏の発明した特許技術を活用しようとするものだ。その杉本氏の発明を特許 化している渡辺望稔弁理士も会員である。こうした人的ネットワークをフルに動員して、高知県の地域活性化だけでなく、日本をエネルギー大国にしようと言う 野望である。

 メタンハイドレートの実用化は、世界の誰かがやるエネルギー革命である。日本が世界の先導役にならなければ意味がない。なぜなら日本近海に眠っているメタンハイドレートを利用しないてはないからだ。

 大きなプロジェクトのスタートで、21世紀構想研究会の会員の中にも活気がみなぎってきた。是非、形あるものにしたい。

               
                               
               
             
                           
                   
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メタンハイドレート実用へ取り組む4人が来訪

                               
                 


 写真は左から黒岩直良高知県議会議員、渡辺望稔弁理士(元日本弁理士会副会長)、鈴木朝夫東工大名誉教授(高知工科大名誉教授)、杉本昭寿株式会社みかづき代表取締役。

 日本を世界有数のエネルギー大国にしようと考えている4人の活動家が、8月27日に馬場研究室に訪ねてきた。21世紀構想研究会で新たな委員会を設置することも決まっており、近く内閣官房が公募している国際戦略総合特区への応募を予定している。

 来訪したのは、写真で見るように黒岩直良・高知県議会議員、渡辺望稔弁理士(元日本弁理士会副会長)、鈴木朝夫・東工大名誉教授(高知工科大名誉教授)、杉本昭寿・株式会社みかづき代表取締役の4人。

 4人の方々は、メタンハイドレートを実用化するために並々ならぬ情熱を持っており、この日は21世紀構想研究会で政策提言テーマにしてほしいとの熱い思いを語るための来訪だった。

 日本近海には、膨大な量のメタンハイドレートが眠っている。 
 メタンハイドレートとは、簡単に言うと海底1000メートル付近にたまっているシャーベット状になっているメタンである。海底1000メートルは100気圧になるので、メタンガスにならないでシャーベットになっている。

 これを地上にくみ上げると約160倍の容積のメタンガスになる。これを燃料に使ったり、化学製品の原料にするが、メタンは非常に使い勝手のいい化学原料とされており、実用化への期待が大きい。

 埋蔵量は、高知県沖合いなど日本列島のすぐ近くに眠っているメタンハイドレートだけで、日本の天然ガス消費量のほぼ100年分とされている。これを実用化に成功すれば、日本は世界有数のエネルギー資源国になる。

 すでにカナダでは海底から汲み上げて実用化に着手しているが、汲み上げたときに海底の砂も一緒に地上へ汲み出すので、新たな環境問題が出てきている。
 そのような課題を解決する技術を考えたのが、発明家でもある杉本昭寿氏である。すでに2件の特許を出願しているが、そのほかにも多くのアイデアを練っているようだ。

 杉本氏は独創的な水の浄化装置を発明し、代々木のオリンピックプールなどにも採用されている。そのほかにも様々な特許技術を編み出している発明家であり、その特許出願、取得で支えているのが渡辺望稔弁理士である。

 このお二人は、21世紀構想研究会の会員でもある。さらに鈴木朝夫先生もメタンハイドレート実用化推進の共鳴者であり、地元の有力者である黒岩直良高知県議も加わってプロジェクトチームを結成している。

 21世紀構想研究会では、エネルギー安全委員会を衣替えして、メタンハイドレート実用化研究委員会とし、委員長には平朝彦先生(独立行政法人海洋研究開発機構理事)に就任することになっており、近く政府に対する政策提言へ向けて活動を開始したい意向である。

               
                               
               
             
                           
                   
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創英国際特許法律事務所の移転

                               
                 




 新事務所の入り口で長谷川所長(左)と光野文子所長補佐が出迎えてくれた。

 特定非営利活動法人21世紀構想研究会の理事をしている長谷川芳樹所長の創英国際特許法律事務所が東京・銀座から丸の内に移転した。
 旧明治生命ビルに隣接した近代的なビルの9階に移転したものだが、早速表敬訪問すると、ロビーは移転お祝いの花に埋もれていた。

 オフィスの窓からは、皇居を眺望できる素晴らしいビューポイントがあり、職場の人たちも生き生きした様子で働いている。周辺は丸の内のビル街であり、近代的な垢抜けした雰囲気が漂っていた。

 創英国際特許法律事務所の移転先は下記の通りです。

〒100-0005 
東京都千代田区丸の内二丁目1番1号 
丸の内 MY PLAZA(明治安田生命ビル) 9階
TEL 03-6738-8001 (代) FAX 03-6738-8004 (代) 

 

               
                               
               
             
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