PEACE BOATで世界一周の旅ーその36
2024/06/10
動く地球表層の岩盤(プレート)の上に立つ
氷河と火山の国、アイスランドの首都・レイキャビクへの上陸は、寒空の中で始まりました。首都としては世界最北の北緯64度8分です。この日の日の出は午前3時3分、日の入りは午後10時24分ですから白夜です。
アスランド旅行が日本人に人気があると聞いていたのですが、筆者には大きな関心事が2つありました。一つはプレートテクトニクスの現場が地上に露出しているのをこの眼で見たいという願望と、世界で最も男女平等を実現している国の現実を見てみたいというものでした。
プレートテクトニクスは、地球の表面を覆っている厚さ数十キロの岩盤(プレート)が常に移動しており、その岩盤が地球の地表に10数枚あるというのです。プレートがぶつかり合う場所で地震が発生し、アイスランドと日本は地震国・火山国・温泉国として共通の運命にあるのです。
プレートが露出している場所に行くバスツアーに参加しました。噴火した溶岩でできたレイキャネス半島の荒れ果てた荒野の中でバスを降りて歩いて行きました。奇妙な橋が見えてきました。その橋こそ、北アメリカプレートとユーラシアプレートを結んでいる橋なのです。
何十億年という地球の表面の岩盤の移動で北アメリカプレートとユーラシア大陸プレートがこの地で出会い、それが地上にそのまま露出して、今なお年間2センチの移動をしているというガイドの説明に興奮を覚えました。
冷たい風を避けた防寒具を着込んで、プレートテクトニクスの「現場」に立ちました。
筆者が立っている写真の向かって右の岩盤が北アメリカプレートで、左の岩盤がユーラシアプレートです。その裂け目をつないだ橋がバックに見えます。両方のプレートが押し合っているのでしょうか。ユーラシア大陸プレートをたどっていけば、日本列島を載せているプレートにつながっているはずです。
こんなプレートの出会いの現場に立つとは夢にも思っていなかったので興奮しました。1970年代になってからプレートテクトニクス論が日本でも盛んに紹介され、それを知った筆者は多くの文献を貪るように読みました。今ではすっかり忘れてしまいましたが、その興奮がよみがえったのです。
女性大統領が当選したばかり
今月1日、アイスランドでは大統領選挙がありました。投票率は約80%。12人が立候補し半分が女性です。女性候補で投資会社経営者のハトラ・トーマスドッティルさん(55)が当選して8月1日に就任するそうです。アイスランドでは2人目の女性大統領です。最初の女性大統領は、1980年に当選したビグディス・フィンボガドッティルさん(94)で、世界で初の女性大統領として話題になったそうです。
アイスランドの国会議員は、男女ほぼ同数ずつです。世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ報告書」で初版の2006年から14回連続1位になっています。世界で最も男女平等に近い国として知られているそうです。
ツアーのガイドさんの説明では、アイスランドには専業主婦はいないので、子育てや家事も男女平等でやります。育児休暇は、夫婦できちんと取ってお互いに助け合って子育てします。教育費と医療費はタダ。ただし給与のほぼ半分が税金でもって行かれるので、物価高の中での生活はそれほど楽ではないと言います。とはいうものの、日本に比べれば遙かに優れた福祉国家になっています。
人口僅か38万人の国ですが、悩みはそれなりにあるのでしょう。そのひとつがアルコール依存症が比較的多いと言うのです。長くて暗い冬の期間、アルコールに走る人が多いと言います。ネットで調べてみるとたいしたことではなく、年間のアルコール一人摂取量は、世界の国々では真ん中あたり。日本よりは多いですが、韓国、アメリカなどよりは少ない現状でした。
アメリカ大陸の発見者はコロンブスではない!
今回のツアーで最初に行ったのは、丘の上に立つハットルグリムス教会でした。アイスランドのランドマークタワーとして象徴的な建物で、遠くからはまるでアメリカのスペースシャトルの形にも見えました。そばまで行ってみると高さ74.5メートルある重量感に圧倒されました。ミサが始まるので中には入れませんでしたが、この教会の前に大きなブロンズ像があります。これはアメリカ大陸を史上初めて発見したアイスランド人のレイフ・エリクソンの像で、教会を背にして眼下に広がる市街地を見下ろすように屹立していました。
アメリカ大陸発見は1492年のコロンブスと知られていたはずですが、今では985年ころにエリクソンが最初に発見したと史実が書き換えられたというガイドさんの説明でした。日本の小中学校の教科書にも書いてあると言うことでした。エリクソンは、グリーンランドを発見して住み着いたバイキングの末裔であり、グリーンランドとアメリカ大陸を行き来していたとも聞きました。
このブロンズ像は、アイスランド建国1000年を祝って1930年にアメリカから贈られたものと言うことです。強い逆光で正面からは撮影できないので、後ろから撮りました。
博物館の巨大画面でオーロラを見ました
ペルトラン博物館の巨大画面では、オーロラを見せてくれました。オーロラ見物のために日本からも多くの観光客が来るそうですが、運が良ければ見られるという自然現象です。こうして実際の光景を見る気分で巨大スクリーンで見るオーロラは迫力がありました。
アイスランドのエネルギー源は、地熱発電や風力発電だけであり、自然エネルギーだけで国が成り立っています。電車や地下鉄はなし。バスはすべて電気自動車です。電力は余っているので海中ケーブルでイギリスに輸出しているのです。この国の産業は、①観光、②漁業、③アルミ加工というのです。アルミ加工は電気を食うので、外国企業が、電気代の安いアイスランドに進出して経営していると言うことでした。
遠くから見た地熱発電所。この国は森は少なく、荒れ地のような平原が広がっていました。
年金平均70万円だが・・・
ランチに出てきたタラのムニエルも美味しかった。写真を撮るのをうっかりして食べてしまいましたが、タラ漁業が大きな輸出産業になっていました。
リタイア後の年金は、平均で毎月70万円相当と言うことにびっくりしましたが、かなりの物価高で生活は思ったほど楽ではないようです。ランチに3千円から4千円。夜のレストランの食事はワインを楽しんで一人2,3万円ということです。
お土産ものを物色しましたが、ちょっと大きめのチョコレートが1枚2000円、コースター枚1500円。ちょっと魅力的なストールは4万円と言う値札でした。一緒にツワーに参加したご婦人たちもこの値段には驚いて、財布は出てきませんでした。
アイスランドの一日だけの上陸ツアーは、盛りだくさんの見聞の中で白夜は暮れていきました。
絶対に行く!と決めたところです。
投稿情報: 楊 威 | 2024/06/16 13:45