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NHKの欺瞞に満ちたイベルメクチン報道           イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-10

 公正性ゼロのNHKの報道番組

さる8月23日に放映されたNHKの「効くのか?効かないのか? イベルメクチン コロナ治療に効果は…」という報道番組は、一方的にイベルメクチンを否定する内容である。

「効くのか?効かないのか?」とタイトルでうたっているが、「効かない」ことをこれでもかというほどの主張を掲げて放映したものであり、著しく公正性に欠けた番組であった。

 筆者のもとに、NHKを見たがどう思うか。反論はしないのか-などの反響が多数寄せられたので、この番組を総括しておく。

 メジャーな国際機関やメルクに語らせた主張

 まず第一に「効くのか? 効かないのか?」とタイトルに掲げておいて、「効いている」とする実例と米英を中心とする医師・研究者団体の成果は一言も触れていない。

 「効いていない」ことを言わんがため、十分な証拠(エビデンス)が揃っていないとの見解をあげているWHO、NIH、FDA、アメリカの薬剤メーカーのメルクなどの言い分を羅列したものである。イベルメクチンを開発しておきながら躍起となってコロナ利用には否定しているメルクの言い分まで出している。

 メルクはいま、新たなコロナ治療薬を市場へ出す寸前になっているとされ、イベルメクチンに効果があるのでは困る立場になることは客観的に見ても明らかだ。国際的にもメルクは、この理由で糾弾されている。

 一方的な見解や主張をこうした国際的に著名な機関やメーカーに語らせて視聴者に「効いていない」ことを印象付けようとした番組編集であることは明らかである。

 イベルメクチン効果ありとする紹介はゼロ

 アメリカの救急救命の専門医らが中心になって組織したFLCCCBIRDの活動は、すべてネットで公開されており、大きな影響力を発揮している。途上国に対してイベルメクチン使用を奨励するコメントを発信し、それを受け入れている国もある。

 PLCCCによると、世界中の2万6398人を対象にした63件の臨床試験に613人の医師・研究者が参加しており、同グループな臨床試験のメタ分析を行ってきた。その結果、86%の予防効果、73%の改善効果、重症治療試験において40%の改善効果があった。61%の死亡率低下、31件のランダム化比較試験(軽症から重症者を含む)では60%の改善効果があったと報告している。

 イベルメクチン否定派が最も強調するランダム化比較試験でも、31件出ている。これに対し多分、否定派は小規模な臨床試験とか世界的に確立された臨床試験方法の「欠如」をあげるだろうが、その背景には「途上国の医師団の臨床試験」を意識しているというのが大方の見方だ。

 逆に言えば、先進国の医師・研究者しか信頼できないとする不条理な差別意識につながっている。

 NHKにそのような意識があったかどうかは不明だが、報道姿勢からは明らかにそのような視点を感じざるを得ない。

 さらに適応外使用を無視した報道

 日本ではイベルメクチンを2020年5月18日、厚労省は「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第2版」(24ページから)で、「適応外」としてコロナ治療にイベルメクチンを医師が処方することを認めている。

 「日本国内で入手できる薬剤の適応外使用」としてイベルメクチンを記載して全国に通達をしたものだ。むろん、処方すれば医師は保険請求もできる。臨床医がこれを根拠に治療に使っても違法でも不適切でもない。

 ただ適応外とは、使用にあたっては医師・患者が同意し、万一副作用などの薬害があっても救済制度の対象外とされているだけだ。

 つまり医師・患者の自己責任でコロナ治療に使用してもいいという国の判断である。この判断は、効いているという前提で出しているのであり、効いていないものや効いているかどうか全く分からない薬剤を適応外として認めたら、国は犯罪者になる。

 立憲民主党の中島克仁議員が、この3月の衆議院予算委員会でイベルメクチンの使用拡大に向けて政府に質問したとき、田村厚生労働大臣は「適応外使用では今でも使用できる。医療機関で服用して自宅待機の使用法もある」と答弁している。

 NHK番組では、このようにイベルメクチンに効果があるとする根拠に基づいて適応外使用を認めていることを一言も報道しなかった。使用することをあたかも「不適格者」でもあるような、一方的な悪意を感じさせるような内容だった。

 全国には、この適応外の制度を利用してイベルメクチンをコロナ患者に処方している医師が多数いる。代表的なのは、兵庫県尼崎市の「長尾クリニック」院長・長尾和宏医師で、約100人の患者にイベルメクチンを処方してすべて効果があったと報告している。民放テレビ番組やネット情報で多く取り上げられ社会現象ともなっているがNHKは触れなかった。

 これこそ効果があるという事例を無視したものである。

 勇気ある東京都医師会の方針

 東京都医師会の尾﨑治夫会長は、筆者とのインタビューで東京都医師会としてイベルメクチン適応外使用を推奨していることを語った。

 この報道には大反響があった。しかし尾﨑会長は推奨してもイベルメクチンがないことへの危惧を語っていた。筆者は、医師で衆議院議員である立憲民主党の中島克仁議員、同じく医師の自民党、富岡勉議員に取材したところ、お二人とも絶対にイベルメクチンを投与すべきと主張した。

 中島議員は、今も臨床医として活動しており、イベルメクチンを処方して効果を上げていると語っていた。また富岡議員は「適応外として一斉に全国で処方するとモノ(イベルメクチン)がなくなる。ジェネリックでも使用できるように緊急に制度を変えればできる。立法化などなくてもできる」と語っていた。

 NHK放映の意図は何か

 このような国内の動きを全く無視し、イベルメクチン全否定の編集方針で番組を作った意図は何か。想像するに厚労省の一部の官僚の思惑を受けて、NHKがイベルメクチンの火消しに回った可能性である。

 筆者らはそのころ、一部の政界からの要望もあって、メジャーな新聞1ページを使い菅総理に向けて「イベルメクチンの緊急確保と副作用などの健康被害には救済せよ」とする意見広告を掲載する準備を進めていた。菅総理に届いたかどうかは不明だが、菅総理が理解できるように説明した書面もある人を介して届けるように手配していた。

 そうした動きを厚労省は察知したかもしれない。ここで火消しをしないと意見広告によってイベルメクチン使用が国内に燎原の火のように広がりかねない。それはまずい。日本政府としては、自ら判断を下すのではなく、あくまでもアメリカ政府機関の判断待ちであり、それを越えて自ら判断をくだす力量も度量もなかっただけである。

 医療施策の貧困さが、はからずもイベルメクチンで露呈したと言わざるを得ない。意見広告は、菅総理の自民党総裁選不出馬という政局動向を受け、効果は極めて疑問とする判断から取りやめた。大金を使って意見を吐いても無駄と思ったからである。NHKの番組を意識したからではない。

つづく


イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-8

  インド発のデルタ株が東アジアを襲撃

  インドから出現したデルタ株がマレーシア、インドネシアを経てタイ、韓国、日本へと拡散している。コロナウイルスの特徴である変異株の猛威であり、これから何回も人類は変異株に襲撃されるかも知れない。

 ロイターによると、8月8日現在で感染者数がピークに向かっている東アジアの国は日本、韓国、マレーシア、タイであり、ピークに近い感染者数を出している国はベトナム、ラオス、メキシコなどである。

 インドから移入してきた変異株に汚染されたインドネシアは、7月上旬から地域別にロックダウンを実施し、8月になっても感染拡大に歯止めがかからない地域は厳しい外出制限や飲食店の営業規制を行っている。

 日本の人口の2倍以上のインドネシアの感染者数が、いま減少傾向にあるとはいえ平均1日、3万2000人をこえている。人口比で言えば、日本もほぼ同じだろう。

 コロナウイルスは、遺伝子が次々と変異を起こし、感染力を強くしているところが、人類との闘いの武器になっている。

 変異株ができる理屈

コロナウイルスがヒト細胞に侵入するとき、ウイルス表面にあるトゲ状の「スパイクたんぱく質」が、ヒトの細胞表面の受容体たんぱく質(アンジオテンシン変換酵素2=ACE2)に結合し、そこから細胞内へ侵入する。

細胞内では、ウイルスのRNAの情報に従って、ウイルス自身を作成するたんぱく質を合成する。RNAは大量に複製され、たんぱく質とともに組み立てが進んでいわゆるコピー・ウイルスが大量に作成され、それが細胞外へ放出されていく。この一連の過程のうち、RNA複製のときに一定の確率でミスが発生する。RNAを構成する塩基の配列が変わることがあり、この現象を「変異」と呼んでおり、変異した遺伝子を持っているウイルスを変異株と呼んでいる。

1981年、アメリカで最初に報告され、世界に拡大して人々を恐怖に陥れたエイズ(後天性免疫不全症候群)も、コロナと同じNRA型ウイルスで、次々と変異株を生み出し、欧米、アジア、アフリカなど地域によってさまざまな変異株が広がった。エイズの感染は、主として血液・体液を介するもだから予防方法もそれほど難しくなかった。

しかしコロナの場合は、空気感染であるためマスク着用、ソーシャル・ディスタンス厳守、三密厳禁など社会活動や生活に密接に関わることから、防御方法もエイズの比ではなくなった。

主な変異株は4つある

 厚労省など政府機関のこれまでの発表資料によると、国が監視を続けている主な変異株は、イギリス由来のアルファ株、南アフリカ由来のベータ株、ブラジル由来のガンマ株、インド由来のデルタ株がある。変異株が生まれると次々と従来株にとって代わるように感染をしていき、一般的に従来株よりも感染しやすく、罹患すると重症化しやすいと言われている。さらに免疫やワクチンの効果を低下させる可能性も指摘されている。

 2021年4月中旬ころから連日、1000人を越える感染者数を出した大阪府など関西地域の場合、感染力が強く致死率は従来型の1.6倍とされるアルファ株が主流になったと言われた。しかしそのころの東京・首都圏では、感染力が従来と変わらず、変異株の由来などは不明とされていた。

 このように変異株は、ある地域で広がり、別の地域ではそれほど広がらないなど感染拡大状況が変わってくる。2021年7月現在で、22個の変異株が報告されているが、この数は時間とともに増えていくことになる。海外では日本で変異をしたコロナウイルスとして「日本株」とされる変異株も報告されているが、医療関係者に聞いたところ影響は不明としている。

人種によって「弱点」があるのだろうか

  赤血球の血液型は主としてA、B、AB、O型に分けられる。これをABO血液型と呼んでいるが、白血球にもHLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)という血液型がある。白血球はいわば血液の工場である骨髄中で作られる血液細胞のことで、細菌、ウイルス、カビなどから身を守るために働いている。HLAは白血球だけでなく、ほぼすべての細胞と体液に分布していることも分かってきた。

 この白血球血液型のうちHLA-A24という血液型は、日本人のほぼ60%が持っている。変異株の中でもガンマ型のインド株に感染するとHLA-A24を認識する箇所が変異してウイルスへの攻撃力が低下してしまうとされている。

 インド株の変異を学術的に「L452R」と記述していることを各種報告資料でよく見かける。この記述の真ん中の数字の452は、たんぱく質の452番目のいみであり、アミノ酸がロイシン(L)からアルギニン(R)に変異したという意味になる。こうした変異が頻繁に起こっていると言われている。

HLA-A24は、アジア系の人種に多い白血球血液型であるため、ワクチンの効果の低下まで影響するようなら大きな問題になるとして専門家は注視している。

これとは逆に変異株の影響が確認されないものもある。今後もCOVID-19の感染が続く限り変異株と治療対応などの問題は避けられない。研究テーマとしても非常に興味深いものであり、今後の研究発展を見守りたい。

これまで確認された変異株は、イギリスの「アルファ株」が、173か国・地域で報告があった。南アフリカで確認された「ベータ株」122か国・地域に及んでいる。ブラジルで確認された「ガンマ株」は74か国・地域となっている。

そしてインドで確認された「デルタ株」は、2021年6月から世界中に急激に拡大しており、7月上旬には104か国・地域で確認されている。国立感染症研究所は、7月上旬には、関東地方ではすでに全体の30%以上をこの変異ウイルスが占めていると推定しており、世界の感染拡大が続くと予想している。

このように変異株の感染力とこれを阻止するワクチンの実施状況と関連しながら、終息に向かうのかコロナの盛り返しになるのか、うねりとなって地球を取り巻いているように見える。