馬場研4期生の記録

馬場研5期生の記録

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 馬場研5期生として飛び入りで北京から入ってきた王蕾が、このほどめでたく中国科学院から博士学位を取得した。

 王蕾は、中国科学院自然科学史研究所の博士課程に進み、途中で1年間、筆者のこのブログが縁で馬場研に研究生として所属した。研究のテーマは、日本の科学リテラシー向上への歴史的な過程を調べ、中国の科学リテラシーの今後に生かそうというものである。

 日本では、東京理科大学の北原和夫教授ら多くの科学リテラシー研究の専門家から取材し、科学技術振興機構では、「Science Window」誌の編集長をしている佐藤年緒氏のもとで取材・編集の実際を研修した。さらにシンポジウムやセミナーなどにも積極的に参加して、日本の科学政策や研究動向を調べた。

 北京に帰ってからさらに中国での研究も積み上げ、博士論文をまとめた。論文タイトルは「日本国民の科学素質の育成の歩みに関する研究」であり、博士論文発表会では、「最優秀点」をもらった。これは発表者の中ではトップだったからだ。これからはさらに研究を積み上げ、今度はポスドクの資格で日本での研究を希望している。

 馬場研5期生は、中国人の楊威を級長に5人の女性研究者がいたが、そこに途中から王蕾が加わり6人となった。その中で1年間、楽しく研鑽して研究業績を着実に伸ばしたことは誠に喜ばしい。これからの王蕾の成長をさらに期待したい。

 

中国科学院の王蕾が馬場研を訪問

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 馬場研5期生の6女である王蕾が、12月12日、門仲まで来てくれ、楽しい宴となった。王蕾の友人のパン媛は、重慶大学を卒業後に東大の博士課程に留学中。今回は王蕾の東大への再度の留学の可能性も検討しながら、これからの研究について北原和夫東京理科大学教授に相談にきたものだ。

 いつものように元気な姿で楽しく話し合ったが、パンさんと王蕾は写真で見るように髪型がそっくりであり雰囲気が似ている。パンさんは料理が得意だそうで、故郷の四川料理ができるという。また麻雀もできるとのことなので、中国総合研究センターのスタッフとの麻雀大会に参加することになった。

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 この2人は、いま博士課程で勉強中であり、いずれ3年内に2人とも学位を取得するだろう。取得したら日本で就職したいという希望を持っており、優秀な中国の人材が日本へ来ることは歓迎である。このような人的な交流は日中間の学術交流にもなるだけに、これからも研究に一層取り組んで初期の目標を果たしてほしい。

 

 

  

 

  純美の右後ろに見えるカエル人形は、末っ子サーヤが調達したもの。馬場研5期生のシンボルだった。

 森戸記念館での新しい仕事についてまだ慣れていない時期だが、5期生の次女・石橋純美さんが歴代の馬場研では一番で来訪してきた。神奈川県の小田原市在住だが、都心部に用事があって出てきたもので、相変わらずの元気のいい声で近況報告をした。その後筆者らはプレスセンターへと移動した。

 プレセンでは、佐々木信夫先生との会見があり、医学の基礎研究の話だったので、純美も興味があることから会見のご相伴となった。佐々木先生は相変わらず精力的に新しい研究開発の推進と知財戦略に取り組んでおり、いつお会いしてもエネルギーがほとばしっている。

 今後の研究開発資金についての戦略と国際的な研究動向の解説はいつも参考になる。宿題も与えられたので、積極的な対応でいい結果に結び付けたい。

 純美とは、修士論文の取り組みの話やその後の論文投稿などの話、今後の生き方や方針などで大いに話題が盛り上がった。

 

 

馬場研5期生は素晴らしい5人姉妹だった

 共通認識で共に研鑽した日々の成果

  2010年度の馬場研メンバー5人は、全員女性という前代未聞のメンバー構成となった。東京理科大学知財専門職大学院(MIP)の中でも精鋭の集まりであり、修士論文のテーマ設定から調査研究・分析・取材活動まで共通認識に立った研鑚の雰囲気を終始保持し、論文執筆に取り組むにふさわしい研究室であった。

 この5人の女性たちに囲まれた私は、彼女たちへの敬愛を込めて長女から五女まで自分の娘たちという位置づけで呼ぶことにした。

 人生は長い。長い人生の途中には幾多の壁が立ちはだかってくる。世界は1990年代後半から劇的な変革期に入った。ITをツールと手段とした産業革命がはじまり、変革の波は先進国を駆け抜け、あっという間に後発国、途上国へと広がった。

 世界の知的財産権の登録数は急進的に増加し、どの国も研究開発でしのぎを削る競争となった。その一方で技術移転が進んだために、モノ作りはコスト競争の場へと転換してしまった。IT産業革命の波は、個人の生活から社会、国家に至るまで、前途を容易に予期させない波乱を含んだ時代を作り上げていくだろう。

 その荒波を超えていくとき、逆境に立たされたり予期せぬ事態に巻き込まれて立ち往生することも出てくるだろう。その時はMIPで研鑽した日々を思い出し、若き日の友情と感激を思い出し、新たなエネルギーを創出して切り抜けてほしい。努力した日々の成果は、諸君の力強い味方になるだろう。

 ここに5人の娘たちの成果を講評してはなむけの言葉とする。 

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      長女・楊威は、中国人留学生から日本社会に活動の場を移し、持ち前のおおらかな性格で日本の社会によく馴化し、人生の岐路を迎えた時にMIPに入学してきた。中国と日本の社会と文化をよく理解している特長を生かし、日中の意匠の実務についての研究に取り組んだ。

 前半は株式会社発明通信社との共同研究で中国の意匠の現状を研究し、日本知財学会ではその実務的な現状の課題を検証して発表した。学会の発表は初めてであり、しかも外国人というハンデキャップをはねのけて堂々と発表したその態度は、素晴らしい出来栄えであった。

 後期になってからは、中国の北京銘碩国際特許事務所に研修で一か月滞在し、中国の改正専利法と日本の意匠法の理論的な違いと実務上の違いを検証し、中国意匠の実務上の問題点を洗い出した。そしてその解決策としていくつもの具体的な実例を盛り込み、さらに中国意匠の特性を生かした日本企業の商標・意匠戦略に言及した論文を完成させた。日常活動では、中国語会話の教師として多忙な日々に追われた。

 それをものともせずに切り抜けながら、未知の学問として取り組んだ知財の様々な知識の吸収と研究に没頭してオリジナルの高い論文を完成させた。 

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 次女・純美は、臨床検査技師の資格を持っている社会人であり、生物、医学分野にそれなりの知見を備えてMIPに入学してきた。持ち前の明るい前向きの姿勢で研究室の運営でも常に先導的な役割を果たした。修士論文では、2000年後半から中国と東南アジアや中東でにわかに氾濫してきた日本食品の模倣品に焦点を当て、その現状の分析と模倣品の対応策について取り組んだ。

 工業製品の模倣品の現状と対応策については多くの報告書が出ており、被害にあった企業は模倣品対策でそれなりの成果も出してきたが、食品分野については政府機関が小刻みに調べた現状報告しかない状況であった。そこでこれまでの調査結果の分析から模倣品の類型別の形態を独自に分類し、食品の模倣品マップを作り上げた。

 次に、消費者の知覚によるブランドイメージについて取り組み、消費者の「食の五感」という視点を提唱した。そしてこれを踏まえたブランド価値の評価方法、模倣品対応とその効果にまで広げて研究し、食品企業の模倣品対策の考え方を『食の五感品質マネジメント』として提示した。

 これは食品模倣品をテーマにしたオリジナルのあるユニークな論文であった。研究室のセミナーでは、まとめの朗読と議事録作成で貢献し、次女らしいふるまいで研究室を賑やかに仕切ってくれた。

  

  

   四女・景子は、多忙な特許事務所のスタッフとして日常の仕事に取り組みながら、夜になると分厚い文献類をカバンの中に入れて大学院に通ってきた。論文のテーマは、携帯電話の中で流通するデコメ絵文字の現状を検証し、その知的財産権の問題点を整理して解決策を提示するという大変ユニークなものであった。

 携帯電話のやり取りの中で流通する情報は、携帯電話の利用者固有のものであり、その情報の大部分は瞬時に表出されて消えるバーチャルの世界の出来事である。その有様の全貌は誰も知らない。そこで使用されているデコメ絵文字は、数万種を超えると予想されており、誰が作成してどのように流通しているかを調べ上げるという作業に着手した。

 知的財産権の侵害にあっていると思われる企業にアンケート調査を実施し、回答のあった企業の責任者・担当者を訪問して聞き取り調査を行うことによって、この問題点の本質を浮かび上がらせた。そして知財教育という観点で社会全体が取り組むべき課題であるとの視点で論述し、オリジナルにあふれる論文を完成した。

 週末に行われるセミナーには、頭上にまんじゅう型に結った髪形を載せて現れ、急がないのんびりした性格で成果を開示し研究室の場を和ませた。 

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  末っ子・ サーヤこと沙矢香は、必ずしも万全でなかった体調に負けずに乗り越え、得意の漫画を研究室の白板に描きこんで訪問者を楽しませた。論文テーマは、喫煙者の健康問題で逆風の中にあるたばこ企業のブランド戦略を分析し、独自の戦略を提示した特異なものであった。

 たばこ産業の歴史はそれだけで世界史の一端を示すものであり、日本でも全盛期には専売公社として国が経営するものであった。しかし健康被害が医学的に証明され、多くの国や機関がたばこを忌避する時代となり、たばこ産業は大きな転機を迎える。

 そのような時代背景とたばこ企業が展開しているブランド戦略を分析し、日本たばこ(JT)が海外で展開している活動とブランド戦略を検証した。

 世界の大手たばこ企業は、先細りにあるたばこ産業から徐々に離脱しながら異業種に転進を図っているものの難航している。JTの今後の異業種への戦略では、浸透度の高いプロダクトブランドと必ずしもそうではないコーポレートブランドとを抱き合わせて消費者に浸透させ、抵抗感を軽減させたうえで他業種に転進する提言を行った。逆風を乗り越えるブランド戦略を示した点で意表を衝く視点であり、読み応えのある論文を完成させた。

 末っ子らしい奔放な振る舞いと生家の長女らしい分別のある性格を併せ持った面を見せて成長の過程を楽しませた。

      2011319日  馬場 錬成     

 

  修了式の打ち上げで喜びを発散

 

 苦しいことも楽しいことも今となってはかけがえのない思い出である。語れば尽きない時間を共有しながら、馬場研5期生は神楽坂界隈で楽しい時間を過ごした。

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長女・楊威と次女・純美に挟まれて

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関口亨祐・嗣畝子夫妻は特筆すべき頑張りだった。

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四女・景子と記念撮影

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思い出のC1教室で喜びを発散するMIP5期生の面々

 

 

修了証書を手にして馬場研5人が勢揃い

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 修了した馬場研5人は、MIP入口で記念撮影をした。2年間、この入口を通って教室に通い、知的財産権の様々なテーマで勉強した。仕事や家事などで苦しい日もあっただろう。それだけに、その成果をこのような形で手にしたことは、大きな自信につながっただろう。

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 学位記を手にした5期生の顔は、晴れ晴れとしていた。おめでとう5人娘。

 

5期生の修了式が挙行される

 2010年度の院生の修了式が、2011年3月19日にMIPのC1教室で開催され、修士学位の修了証を授与された。

 東日本巨大地震からまだ1週間であり、交通機関の影響などから授与式に出席した院生はほぼ4割という寂しい式典だった。しかし馬場研の5人は、それぞれ2年間の感慨を胸に秘めて修了証書を受け取り、知財の研究生活に区切りをつけた。

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東日本巨大地震の影響で学位記授与式は半分以下という出席者だった。

 

 

 全員発表会で馬場研メンバーが大健闘

 2010年度の最後を飾る東京理科大学知財専門職大学院(MIP)修士論文の全員発表会が、2月19日開催され、馬場研メンバー5人が別表のようなタイトルで発表を行い、存在感を示した。

 この発表会では、2008年、09年ともに馬場研の級長が第1位になり、MIPシンポジウムで院生代表で発表する栄誉を獲得している。また、上位10以内にも半数近くが毎年入る健闘を見せているが、今年もその期待を背負って全員がメリハリの利いた発表を行った。 

石橋 純美

実効性のある食品分野の模倣品対策への提示
鈴木 景子 知的財産権を侵害していると思われるデコメ絵文字の研究
関口 嗣畝子 ブランド保護の視点からみる商標法と不正競争防止法における著名商標の保護範囲の拡大に対する提言
鳥海 沙矢香 たばこ業界における生き残りをかけたブランド戦略の検証と提言
楊   威 中国の意匠出願実務の研究及び日本企業の中国での意匠戦略についての提案

 石橋純美は、最近、中国とアジア諸国・地域で広がっている食品の模倣品について分析し、その対応策を検討した。そして独自の模倣品マップを作成し、被害額の算出方法も提示し、工業製品の模倣品対策とは一味違った対策を提言した。

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 鈴木景子は、携帯電話上で流通しているデコメ絵文字の現状を精査し、著作権侵害などの状況を明らかにした。そのうえで被害にあっている企業のアンケート調査と聞き取り調査を行い、デコメ絵文字の実態は単に知財侵害という簡単な図式ではなく、被害者側にも黙認する風潮があることを初めて明らかにした。

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 結局、違法性の高いデコメ絵文字の流通に歯止めをかけるには、子供たちへの著作権教育が重要であることを提示し、文部科学省が行っている知財教育を検証してその実効性について提言を行った。

 関口嗣畝子は、ブランドの保護が必ずしも十分でない現状を検証し、その法的な保護の在り方を整理した。商標法と不正競争防止法による保護を示しながら、抜けている部分を指摘し、ブランドの十分な保護を提示した。

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 そのためには、ブランドをコーポレートブランドとプロダクトブランドに分けて保護するべきとする新し視点を示し、オリジナルのある発表を行った。

 鳥海沙矢香は、たばこのブランド戦略について検証した。たばこは健康被害が指摘されて逆風の時代になっているが、プロダクトブランドは圧倒的な強さを持っているものもある。しかしそれが必ずしもコーポレートブランドに直結していない現状を明らかにした。

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 たばこ企業が異分野に進出する際には、プロダクトブランドからコーポレートブランドへと展開して十分にブランドを浸透させ、そのうえで異分野に進出するべきというオリジナルな提言を行った。

 最後に発表したのは5期生の楊威である。中国の意匠と日本の意匠の制度上の違いを整理した。さらに中国の意匠は、世界標準になっていない現状を整理し、中国で登録される意匠でも日本では登録されない実例を出した。

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 しかし中国では商標を組み込んだ意匠登録が可能であり、意匠で権利を固定して商標の権利まで主張できる現状を明らかにし、中国で活動する日本企業の意匠戦略と商標戦略への有効な方法を提言した。

 5人の発表は、他の研究室の発表に比べて明らかにメリハリの利いた内容になっており、今年も上位に食い込むことは間違いないだろう。

 

馬場研最後のセミナーを開催

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 修士論文全員発表会を翌日に控えた3月18日、実質的に最後となる馬場研のセミナーがC1教室で開催され、発表内容について最後の詰めを行った。

 すでに数回にわたって検討を重ねてきた人もいるし、いまになってもまだ模索中の人もいる。それぞれ温度差がある内容だったが、それでも過不足なく、まとめる方向でセミナーを打ち上げた。

 3月19日は、朝10時から各研究室単位で発表会が開催されるが、馬場研のメンバーは午後2時過ぎから始まる。例年、上位に名前を連ねる伝統を誇ってきたが、今年はどうなるか。

 この日は、3期生の駱玉蓉さんが見学に来てくれ、セミナー終了後に5期生と楽しい交歓を行った。

 5期生の修士論文が完成

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  馬場研5期生の修士論文(知財プロジェクト研究論文)が完成し、それぞれ大学に提出した。論文タイトルは次の通りである。

 楊威 「中国の意匠出願実務の研究及び日本企業の中国での意匠戦略についての提案」

 石橋 純美 「実効性のある食品分野の模倣品対策への提示」

 関口嗣畝子 「ブランド保護の視点からみる商標法と不正競争防止法における著名商標の保護範囲の拡大に対する提言」

 鈴木 景子 「知的財産権を侵害していると思われるデコメ絵文字の研究」

  鳥海 沙矢香 「たばこ業界における生き残りをかけたブランド戦略の検証と提言」 

  いずれも大学院生としては高いレベルで論述したものであり、内容は評価したい。

 2月19日には、東京理科大学知財専門職大学院の修了生全員の論文発表会があるため、その発表会に向けてのピアレビューが2月5日に行われた。 論文を仕上げた直後であり、パワーポイントの成熟度はまだ熟していなかったが、今後の方向性をつかんだだけでも収穫があった。

 

 2010年最後の馬場研5期生ゼミ

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 馬場研5期生の今年最後のゼミが、12月17日に開催された。研究生の都合で、1週間前の12月10日のセミナーと2回に分けたものだ。

 17日のセミナーでは、北京の北京銘碩国際特許事務所のインターンシップから帰った楊威、食品模倣品でブランド価値まで踏み込んでいる石橋純美、そして中国科学院からの留学生の王蕾がそれぞれの進捗状況をパワーポイントなどを使って発表した。

 まだ熟度はあがっていないが、構成がかなり固まってきており、後は論文執筆に取り組むだけになっている。後1ヶ月の間にどれだけ価値ある修士論文に仕上げるか、各自の努力にかかっている。頑張ってほしい。

 

 第13回馬場研セミナーの開催

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 馬場研セミナーが、久しぶりに11月5日、開催された。この日は、王蕾が初めてセミナーに出席したが、級長の楊威が北京の北京銘碩国際特許事務所に研究に出かけたために欠席。三女の嗣畝子は、家庭の事情で欠席となり、やや寂しいセミナーだった。

 発表はまず、四女・景子が携帯の世界で流通するデコメ絵文字のやりたい放題の世界を見せ、この違法性の文化をどのようにとらえ、またどのように対応するべきか非常に問題意識の高い論文に取り組んでいることを報告した。

 続いて末っ子サーヤが、逆風にあるタバコ業界のブランド戦略はどうしているのかそれを検証しながら、他の業界のブランド戦略に応用できないかというユニークな視点で取り組んでいる状況を報告した。

 最後に次女の純美が、食品業界の模倣品の取り組みについて報告し、模倣品による損害算定の方法を作成するという展望を語った。

 この日、初めて出席した王蕾は、北京から持ってきたお土産を馬場研メンバーに手渡した。王蕾は末っ子のすぐ上に割り込むことになった。これで2010年度馬場研ファミリーは6人姉妹になり、ますます賑やかになりそうだ。

 セミナーのあとは、中華料理店に繰り出し、王蕾からネックレスをもらった面々はたいそう嬉しそうに首にかけ、ここではお見せできない記念写真で楽しいひと時を過ごした。

 修論を本格的に書く時期になっており、今年の大晦日までにドラフトを仕上げる目標を確認してこの日のセミナーはお開きとなった。

 

第17回日中知能材料学会の開催

 

  「第17回日中知能材料学会SIEMME'17」が、9月24日から、北京の北京航空航天大学で開かれた。参加したのは、酸化チタン光触媒などを研究している日中の研究者ら約300人が主体になっている。

  この日はまず、開会式のセレモニーがあり、北京航空航天大学の懐進鵬学長は、藤嶋昭・東京理科大学学長、橋本和仁・東大教授の二人のこれまでの業績を紹介しながら、この学会が17回を迎えてますます発展していることを称えた。懐学長は北京航空航天大学から、藤嶋学長、橋本教授に名誉教授の称号を授与した。

 その後、藤嶋学長が記念講演を行い、酸化チタン光触媒の原理とその実用化について説明し、世界中に広がってきた実用の例をいくつか紹介した。特に最近の研究成果としては、橋本教授らが取り組んでいる殺菌効果についても報告した。

 さらに橋本教授、中国科学院化学研究所の趙進才教授ら日中の3人の研究者が、直近の学術成果について講演を行った。  講演の後、3つのセッションに分かれて、研究成果を発表した。筆者は、中国科学院自然科学史研究所の王蕾さんと共同で研究した光触媒関係の日中の特許および実用新案の出願・登録動向を分析した結果を、ポスターセッションで発表した。

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 発表したポスターを前に左が王蕾さん。右は中国科学院化学研究所の只金芳教授。

只先生は、光触媒に関する中国の標準化の権威であり、中国の標準化については、馬場研3期生の清水至弁理士がご教示を受けた。

 これは、日本の特許分析企業である発明通信社が管理している日本特許庁と中国特許庁(中国国家知識産権局)の特許および実用新案の文献情報から同社が構築したデータベース「HYPAT-i」から、光触媒関係の出願・登録案件の分類検索とキーワード抽出を行い、その結果を筆者らが分析したものだ。

  光触媒関係の研究は、中国でも非常に盛んであり、年々、特許出願数が増加の一途をたどっている。特に日本では、光触媒を応用した分解・脱臭に関する特許出願が増えており、続いて殺菌・抗菌作用、さらに汚染防止、防曇などに広がっている。

  中国でもこの研究動向はほとんど同じであることが分かったが、今回のデータベース検索では、中国と日本の検索キーワードの相違から、中国での正確な統計を抽出することはできなかった。今後の研究課題となっている。

  また中国の知財活動の特長は、実用新案の出願件数がこの数年、急増している現象だ。これは、中国の電機機器メーカーの正泰集団とフランスの電機メーカーのシュナイダー・エレクトリック社が、ブレーカーに活用されている、1件の実用新案の侵害をめぐって損害賠償支払いを争った結果、一審判決は原告の正泰集団の勝訴となり、約50億円の支払いをシュナイダー社に命じた。

  この勝訴によって、中国では実用新案の重要性が再認識されたもので、今後も増える傾向が続くだろう。日本では制度が変わったために2004年から光触媒に関する実用新案出願はゼロになっている。そのような実態についても報告した。

 

中国人留学生の王蕾さんと初対面

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 中国科学院自然科学史研究所の博士課程2年、王蕾(ワン レイ)さんと、9月23日、北京の唯実国際文化交流センターで初めて対面した。
 王蕾さんと筆者はこれまで半年間、メールで交流しており、すでに日中の様々な統計データを分析したり、情報交換してきた。そのような交流があったので初対面とは思えない。すぐに今後の研究内容について話し合った。
 
 王蕾さんは、この10月から馬場研に所属する留学生であり、馬場研5期生の5人に加え、6人目の院生となる。ただ、彼女はすでに修士課程を修了している。来年度に博士論文を仕上げるために、馬場研に留学してくるものだ。

 博士論文のテーマは、「日中科学技術政策比較論」(仮題)としているが、今後の研究によっては、方向性や内容が変わっていくこともあるだろう。

 筆者は、9月24日から開催される「第17回日中知能材料学会 SIEMME'17」に参加するためにこのセンター付属のホテルに滞在している。この機会に王蕾さんが駆けつけてきたもので、光触媒関係の日中の特許、実用新案の出願・登録動向について、9月24日に筆者と王蕾さんが共同で発表する予定である。

 

馬場研5期生の夏合宿

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 馬場研5期生の夏合宿が9月4日、5日の両日、茨城県大子町にある東京理科大学大子研修センターで行われた。

 初日の4日は、飯田橋から東京駅へと移動しながら大子町へと向かった。途中、袋田の滝を見学したり、大子町近隣の名所を見学しながら研修センターに到着。このセンターは、学校校舎に近代的な施設を増築した構造をしており、中に入ってみると教育施設としては大変、充実している。

 四人一部屋に分かれている宿泊施設も多数あるので、人数もかなりの人を収容できそうだ。何よりも清潔感がありゆったりしたセンターになっており、研修するには最高の施設である。

 研修室は、大きな教室ほどの収容面積があり、パワーポイントのプロジェクターなど必要な設備も整っているので大変、使い勝手がいい。

 早速、馬場研5期生の修士論文の要約について、簡単な発表があった。後期に入ると時間はあっという間に過ぎてしまう。9月中に構想を固め、10月からは論文執筆に取り組まないと間に合わなくなる。

 5期生の論文構想は、いずれも魅力あるテーマなので、今年度もまた馬場研院生はMIPの中でも目立った成果を発表するだろう。
 食事後のセミナーでも、政府の知的財産推進計画2010について、石橋純美が要約版を発表し、特に世界の標準化戦略などについて討論が行われた。

 2日目の9月5日は、地元の観光名所をめぐるエクスカーションとなったが、4期生の参加者らとの懇談はお互いに啓発することが多く、大変収穫の多い夏合宿だった。


袋田の滝は、清涼感のある美しい瀑布であり、暑さを吹き飛ばす涼感を十分に満喫して英気を養った。

 夏合宿に参加したのは、5期生4人と4期生の3人、3期生の1人に筆者を含めると合計9人となった。5期生の1人が連日の猛暑の影響か、体調を崩して急遽不参加になったのは非常に残念だった。

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 夜は好例のバーベキューをしながら、お互いに近況報告をしたり、知財の様々なテーマで意見交換した。

 

恒例の特許ステーキ・セミナーで前期打ち上げ

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 馬場研5期生の前期の最後を飾る恒例の特許ステーキ・セミナーが、7月17日に白鬚橋のレストラン「カタヤマ」で開かれ、馬場研OBやゲストも参加するなど10人のメンバーで賑やかに前期を締めくくった。

 この日は、長女・楊威、次女・石橋純美、三女・関口嗣畝子、四女・鈴木景子、五女・鳥海沙矢香が勢ぞろい。さらに4期生の永井武、小林憲人にゲストの関口亨祐、児山久美子も参加した。
 レストラン経営者の片山さんご夫妻ら従業員も大歓迎してくれ、名物のダビンチ特許ステーキ260グラムを堪能した。

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 レストランの待合室には、馬場研の記録写真も掲示されており、このお店を紹介してくれた宗定勇先生の写真や記録が多数、掲示されてあった。写真は、その待合室で撮影したものだ。

 馬場研の前期の活動は、まず日本知財学会での発表に取り組み、全員が参加・発表しただけでなく、4期生からも4人が発表を行い、中国の北京銘碩国際特許事務所からの共同発表も加えると、11本という発表本数になった。

 また、発明通信社との、共同研究でも大きな成果をあげ、今年の前期はダイナミックな活動ができたと思う。その慰労会もかねた特許ステーキのセミナーだった。
 ステーキを賞味した後は、これまた恒例になっている足立共生病院長の中原保太郎院長の自宅にお邪魔して、おいしいスイカと葡萄をいただきながら、楽しい団欒に花が咲いた。

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第8回馬場研ゼミの開催

 第8回馬場研ゼミは、7月3日午後7時から開催され、今後の論文取り組みや夏休み対策を話し合った。

 日本知財学会では、それぞれの研究成果を発表して目標を達成した。それは努力の成果であり大変よかった。今後は、この成果を学術論文として発表したり、修士論文としていかに完成品に仕上げていくかにかかっている。

 まだ模索の段階であるが、それでも論文に仕上げていく意欲を示しているメンバーもいるので楽しみである。
 また、夏休み合宿は、9月4日(土)、5日(日)の1泊2日で開催することも決定した。千葉県・御宿の合宿が第1候補にあがっているが、場所はこれからの検討事項とすることにした。

 なお、7月17日(土)が前期の最後のゼミになるが、恒例の特許ステーキで英気を養うことに決まった。

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 ゼミ終了後に談笑するメンバーたち

5期生の発表の様子

 

 5期生の級長の楊威は、中国特許法の改正後の意匠戦略について、判例やケーススタディを織り交ぜながら発表した。中国の意匠権は、無審査登録制度であるため、日本では登録できないものも権利化されているなどその実情を報告し、今後の日本企業のあり方で提言した。

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 石橋純美は、最近、中国などで増えてきた食品の模倣品の現状を検証し、これからの日本企業の取り組み方について提言をした。この中で今月発表された財団法人・食品産業センターのまとめた「模倣品防止に取り組むための手引書」を紹介したり、食品企業へのインタビュー結果などを踏まえた対応策を提示した。

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  鈴木景子は、いま携帯電話サイトなどで流通しているデコメの中に、有名キャラクターを勝手に改ざんしたものが多数あることを映像で示し、被害にあっている企業の考え方や社会的な対応策を発表した。作成している人は、高校生などの若い世代が多いと見られているが、これを放置していると知財軽視の風潮になりかねないことになり、知財教育観点からも課題があるとする見解を発表した。
 
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 鳥海沙矢香は、4コマ漫画を使った知財教本の作成について発表し、聴衆者の関心を集めた。これは立教小学校教師との共同研究を進めており、漫画だけでなくクイズと解説を連動させた面白い教本を目指しており、完成すれば大きな関心を呼ぶだろう。ただ、この制作には相当のエネルギーが必要であり、沙矢香の今後の頑張りに期待したい。

 

第8回馬場研ゼミの開催

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 日本知財学会を1週間後に控えた6月12日、最後の学会発表練習を兼ねた馬場研ゼミが開催された。

 今年の馬場研からは、楊威、石橋純美、鈴木景子、鳥海沙矢香が発表する。関口嗣畝子は楊威との共同研究者として発表に加わることになる。また、筆者の馬場錬成も北京銘碩国際特許事務所のスタッフらとの共同研究を発表する。

 最後の練習には、今年修了した原孝英君も駆けつけて、ベンチャー企業の国際的な活動についての課題と提言をパワーポイントで提示して、意見交換をした。また小林憲人君も出席して、後輩の発表内容について助言を行った。

 この日の予行演習でほぼ完成に近づいており、学会の当日はすべて順調に行くだろう。楽しみである。

 

第7回馬場研ゼミの開催

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 第7回馬場研ゼミが、6月5日午後6時半から開催し、引き続いて知財学会の発表内容について各自がパワーポイントで提示した。  内容については予稿原稿に沿っているので問題ないが、パワーポイントを使うことによって理解度を高め、聴衆に訴える力をつけることでまだ課題を残しており、さらに磨きをかけることになった。

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  発表練習をしているときにひょっこり、3期生の清水至氏(ソニー知財本部勤務、弁理士)が顔を見せた。MIPへ立ち寄ったついでにセミナーを見学に来たもので、一同と記念撮影してあわただしく退去していった。

 

第6回・馬場研5期生ゼミの開催

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 第6回の馬場研ゼミが5月29日に開催され、2週間後に迫った知財学会の発表の準備を行った。この日は、メンバーのうち4人が出席し、それぞれの発表内容について、パワーポイントで予行を行った。

 まだ、全体的に未熟な点が散見されるが、出だしから結語に至るまでの流れは、かなり出来上がってきている。今後、2回の予行演習を経て、学会当日は堂々として研究成果の発表にしたい。

 

第5回・馬場研5期生のゼミを開催

 第5回の馬場研ゼミは、知財学会の準備を発表する予定だった。ところが、予定者の1人である楊威が、過労で倒れて欠席となり、筆者も入れてたった4人の参加者という寂しいゼミだった。

 またこの日、あらましを発表する予定だった石橋純美も、準備不足から発表の流れを確認するにとどまり、全般に盛り上がりに掛けたゼミとなった。

 ただ一人発表を行なった筆者も、出来はまだ80パーセントであり、改善点を残している。
 今後、関係に向けてそれぞれ準備を重ねるが、発表の冒頭に研究の狙いと目次を示すことで聴衆の理解度を高めようという点で、メンバーの意見が一致した。
 近く筆者がその雛形を作って、馬場研メンバーに配信する予定。

第4回馬場研セミナー開催

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 第4回馬場研セミナー開催

 今年度の第4回馬場研セミナーは5月15日(土)午後6時30分から、東京理科大学知財専門職大学院・C3教室で開催され、吉田太郎氏による「日本人の思想構造~知財の基盤になる日本人の思考構造を考える~」の講演を聞き、討論を行なった。

 この日の出席者は、楊威(馬場研5期生・級長)、石橋純美(5期生・議事録作成・朗読)、鈴木景子(同)にゲスト出席者として、関口亨祐(MIP5期生)、熱田達彦(MIP6期生、日立マクセル株式会社コンシューマ販売事業部)、児山久美子(MIP6期生、元USPTO審査官)。
 さらにMIP第1期生の満岡 顕(MIP1期生OB、神奈川県企業庁企業局事業計画部経営課)、佐津暢一(MIP1期生OB、スタンレー電気株式会社知的財産室)が加わった。
(敬称略)

 この日の講話では、欧米の思想構造と日本人のそれとはどのように違うのか。たとえば創造性の根源にある思想構造は、哲学的思索そのものであり、日本人から創造性のあるアイデアがあまり出ない背景を吉田氏は独特の哲学で説明した。

 それは日本人の一次元思想構造と欧米人の二次元思想構造の違いによるものである。日本人の思想構造は、現象を眺めるその視座は、その人間自身の視座のものであり、あくまでもその人間が基準となる。

 したがって人間が尺度となって思考が生まれ、認識や判断が生まれる。等身大の視座に立ち、ここから現象をあるがままに見ることになる。経験的に見るという思考の目でとらえので、経験的、類推的に解釈することになる。

 これに対し欧米人の二次元思想構造とは、現象の裏側に隠された唯一絶対の神の意志、たとえば原理を汲み取るという発想の基盤が存在することにある。たとえばキリスト教は、この世はすべて神の創造によると仮定する。

 それによって、すべての現象の裏側には、神の意志が存在することになる。目的や意志を持たない創造は存在しないからである。人間は人間の視座で見たまま、感じたままを、そのままの感覚や経験の次元で受け取り、これを真実とすることはしない。キリスト教の精神ではそのようには受け取らない。

 現象は神の意志によって生み出されるものであるが、神の意志は目で見ることが出来ず、手で触れることが出来ない。五感の外にあって、いわば人間には隠されている。隠されているが、それを見出さなければならない。

 そこで、現象の裏側にある神の目的と意志を見出そうという思考が働く。そうしなければ、被造物として造り出され、人間として特権を与えられ、そこに存在させられている目的を知ることが出来ないからだ。自分が何者で、どう生きればよいか知ることこそ、神の意志のもとに存在させられている人間の義務である。

 このような違いを論述したあと、明治初期にお雇い外国人として来日したエルウイン・ベルツの演説を引き合いに出しながら、欧米人の思想構造と日本人の思想構造との違いを際立たせる論法で説明した。

 実はこのベルツの言葉は、吉田氏が1997年に筆者の主宰する21世紀構想研究会の討論の中で初めて持ち出した論法であり、その後、出席していた多くの人々が引用するようになる。

 時代とともに日本人の文化も文明も欧米化され、思想構造にも欧米化されたものが入り込んでいる。しかし根本的な哲学、思索が民族的な構造の中に根を下ろしていることになれば、容易に変わることはない。

 ではどうしたらいいか。教育も一つの方法だろう。実はこの日の吉田氏の論述はほんのささやかな視点を話したに過ぎず、この課題の論争は数十時間を費やしても話題が絶えないほど奥が深く興味が尽きない。

 この日の講和は、その考えるヒントを出したに過ぎないものであったが、出席者に感銘を与えたようだ。

 次回からはしばらく、知財学会の発表について討論を行う予定である。

矢崎茂樹先生が研究室に来訪

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 鳥海沙矢香の描いた4コマ漫画を見せながら、漫画を教材にした教育について語る矢崎茂樹先生
 
 立教小学校・理科教諭の矢崎茂樹先生が、4月27日、研究室を訪れ、鳥海沙矢香が取り組んでいる研究テーマ「子供の発明心を啓発する知財教育への提言」について、指導・助言を行った。

 取材者である沙矢香は、急用でインタビューが出来ないというハプニングが発生したが、代わりに筆者がインタビューを行い、大変示唆に富んだ初等教育の理念と実践について話を聞くことが出来た。

 矢崎先生と筆者は、20年前から学校の理科教師でネットワークを作った環境運動のボランティア活動を実践してきた仲であり、今回の共同研究の申し出にも快諾していただいた。

 沙矢香は、得意の4コマ漫画を使いながら、知的財産という一般には馴染みのないテーマを子供にも理解できるような本を制作することを目指しており、本音は子供だけではなく、子供の両親、大人をも巻き込んだ一般啓発本の完成をもくろんでいる。

 6月の知財学会でも、これまでの成果をまとめて発表することにしているが、就職活動もあってなかなか進まない。そこで、初等教育、特に理科教育で実績を上げている矢崎先生からご教示を受けて研究の視野を広げようという目的のインタビューだった。

 矢崎先生からは、子供たちが課題に対して考える思考ロジカルを解説していただき、さらに4コマ漫画作成の考え方を指導していただいた。
 この日は、不運にして沙矢香は不在となったが、次のステップでも矢崎先生からの助言と指導をお願いしており、この共同研究を発展させることが楽しみになってきた。

知財学会の発表準備でインタビュー

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 携帯電話で流通しているデコメ絵文字の中に、企業や個人の商標、商号などを改ざんしたり模倣したものが多数あり、権利者も知らないでいるケースが多い。

 こうした現状を調べ、その対応策はどうなっているかを企業などの権利者に聞いて分析し、課題を提起する目的で研究を始めた5期生の鈴木景子が、業界の担当者たちへのインタビューを開始した。

 4月13日はその最初のインタビューで、株式会社サン・アールアンドピイ代表取締役の砂守皓多郎氏にお願いした。

 砂守氏は、多忙の中を貴重な時間を割いてインタビューに協力していただき、パラマウント、ソニー・ピクチャーズ、MGM、20世紀フォックス社、ドリーム・ワークス社など世界的なコンテンツ企業のライセンス・エージェントを展開している現状の解説をしていただいた。

 その上で、ネット上を流通している改ざんしたデコメ絵文字の現状に触れていただき、このような状況をどのようにして改善していくかご意見をいただいた。
 その見解や現状の対応などについては鈴木が研究論文にまとめ、知財学会で発表する。

第3回馬場研セミナーの開催

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 第3回・第5期馬場研セミナーが4月10日(土)午後6時からC2教室で開催され、第6期生の児山久美子(元USPTO審査官)がゲストで出席し、「USPTOでの審査官生活とアメリカの知財事情」のタイトルで講和を行った。

出席者(敬称略)
楊威、石橋純美、関口嗣畝子、鈴木景子、鳥海沙矢香、児山久美子、馬場錬成 (議事録作成及び朗読:石橋純美)

 児山さんは、日系米国人だが日本語がネイテェブであり、大変ためになる内容だった。アメリカでの審査官の勤務は、ポイント制度による客観的で開かれたノルマシステムの中で行われており、日本の勤務状況とはだいぶ違うように感じた。

 また、出願代理人と審査官とのやり取りやインタビューなどにも様々な事情があるようで、特に出願代理人が補正を行う際の権限には、日米間で大きな差があることも知った。

 その原因は、代理人を選定するときに生じるものなのか、代理人そのものの権限にあるものか、その実態を見極めてみたいと思った。
 児山さんの率直な講和内容に、セミナー出席者全員が大変感銘を受けた。

 この後、理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格についてその後の説明、第8回日本知財学会その後の進捗状況について簡単な進捗状況の報告があった。

 さらに 情報提供として筆者から、知財戦略論の第1回目の講義で使用した「中国の知財活動の現状と動向」の資料をもとに簡単なレクチャーを行った。

日本知財学会の発表テーマが決まる

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 第8回日本知財学会は来る6月19日(土)、20日(日)の両日、東京工科大学・蒲田新キャンパスで開催されるが、馬場研関係者らが10の演題で発表することが決まった。

 4月3日に開かれた馬場研第1回5期生セミナーで、発表の概要が発表者から説明した。

 5期生からは、別表のように4人が発表する。楊威は日中の意匠法の比較論と中国での意匠戦略について、関口嗣畝子、発明通信社のスタッフとの共同研究として発表する。
 石橋純美は、最近中国などで被害が広がっている食品関係の模倣品の現状とその対応策について調査をして発表する。

 鈴木景子は、携帯デコメで横行する著作権侵害の疑いのあるキャラクターについて調べているが、これまでの調べだと被害にあっても知らないでいる企業が多いようだ。

 その現状と対応、さらに海賊版キャラクターは若年層で広がっていると思われる現状から知財教育にまで広げた内容を準備している。

 鳥海沙矢香は、知的財産権という一般になじみの薄いテーマをいかに分かりやすく理解してもらうかをテーマにした知財教育の在り方について、4コマ漫画を使った方法を研究している。

 また、共同研究を行っている北京銘碩国際特許事務所の韓明星所長、朴木理華さんとの共同発表では、実用新案の中国での戦略と特許明細書の記載についての最新研究を発表する。

 さらに4期生からも4人が発表する。
 永井武は、中小・ベンチャー企業の知財戦略について、原英孝は中小・ベンチャー企業の国際企業活動について、史可は中国での塔基階層を視野に入れたブランド戦略について、小林憲人はインターネットで横行する著作権の間接侵害についての考察と提言を発表する。

第2回・第5期馬場研セミナーの開催

  2010年度馬場研の第5期生・第2回セミナーが4月3日(土)午後5時からC1教室で開かれ、今年度のスタートを切った。

 出席者(敬称略)
 楊威、石橋純美、関口嗣畝子、鈴木景子、鳥海沙矢香、関口亨祐、児山久美子、馬場錬成 
 (議事録作成及び朗読:石橋純美)

 セミナーの冒頭に馬場研第2期生で弁理士の押久保政彦さん(下坂・松田国際特許事務所・弁理士)が「MIPでの研究生活と最近の知財現場の課題」のテーマで講和を行った。
 
 押久保さんは、この4月からイノベーション専攻科博士課程に進学しており、またも同じキャンパスで学ぶ学友となった。この日は、知的財産推進計画2010の策定方針を解説し、MIPでの活動の2本柱になる知財学会での発表、修士論文の構成から執筆、完成までの心構えなどを講義して大変ためになった。

 そのあとで今年の知財学会での発表者がその内容を簡潔に説明し、お互いに共通テーマとして共に楽しく学ぶことを語り合った。

 今年の馬場研は、学外に出て視野を広げる活動もやる予定であり、企業や研究所見学、研修、夏休み合宿などで研鑽し見聞を広げる。
 また毎年恒例になっている「特許ステーキの賞味会」も5月には開催する予定である。

 次回は、この日ゲストとして参加した児山久美子さんが、「米国特許商標庁(USPTO)での10年」(仮タイトル)でUSPTOの審査官として活動した内容と米国の知財現場について講義する。

発明通信社と共同研究を開始

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 知財調査で実績を誇る発明通信社と馬場研が、2010年1月から共同研究を行うことが決まり、1月19日に最初のミーティングを行った。写真は、その初会合である。

 発明通信社は、特許の新規性調査、無駄な出願を排除するため特許出願前に出願しようとする発明の有効性を判断するための資料調査、審査請求前に出願した発明の有効性を判断するための資料調査、権利範囲・抵触性調査、異議申立するための資料調査、特許を無効にするための資料調査など幅広い調査で実績を積んでいる。

 このような知財調査は、技術や市場の動向をいち早く知ることで要素技術の抽出・マップ化を行うことで有効な発明を生み出す素地を構築することになる。

 また、同社は特許庁が平成21年度に行った「特許出願に関する先行技術調査の支援制度」事業の委託調査機関に指定された。これは中小企業・個人からの依頼に応じ、無料で先行技術調査を行い調査の結果を依頼者に報告する。これによって依頼者は、審査請求を行うか否かの見極めに役立てる。

 これから馬場研と始める共同研究は、中国の意匠に関する動向調査であり、馬場研からは楊威さんと関口嗣畝子さん、筆者がこのチームに加わり、日中間の意匠権に関する動向を調べることになった。

 研究の成果は、発明通信社と共同で知財学会で発表したり、学術誌で発表することを目標にしている。今後の成果にご期待下さい。

2010年度の馬場研初顔合わせ


 2010年度の馬場研のメンバーが、1月16日(土)、初顔合わせをした。来年度は、5人というメンバーだが、全員女性ということは椿事である。

 10年度の級長には、初めて中国人が就任するが、当然、女性であり馬場研としては初めてである。女性と年寄りだけでは何かと不用心(?)ということになりかねないので、セミナーや研究会には男性のフェローにも加わってもらうことにした。

 馬場研のモットーは、何よりも楽しく研究をすることだ。苦しみながらいやいやながらやっても、ろくな成果は得られない。その点では来年度のメンバーは、面白いキャラクターがそろっており、研究も多彩なテーマで取り組めそうだ。

 6月に開催される知財学会では、全員が発表することで意欲を燃やしており、メンバーの研究テーマがほぼ決まっており、取り組みにも意欲十分だ。
 伝統を引き継いだ楽しいチームとして1年間活動したい。

馬場研の伝統を構築する

 馬場研の伝統は社会活動を通じで知財の世界に貢献することである。1期生から09年度の4期生まで26人のMIP院生が所属して、知財学会や修士論文の取り組みで実績をあげてきた。

 馬場研に所属した諸君がその活動スケジュールとして取り組むことは、まず日本知財学会での全員参加の発表である。例年4月上旬には、学会の抄録集の締切が来るので馬場研所属予定者は、前年の暮れから学会発表のテーマと内容の調査研究に追われることになる。

 学会で発表するテーマがそのまま修士論文に発展する場合もあるが、必ずしもそう決まっているわけではない。学会での発表を一つの区切りにするだけであり、修士論文はまた別のテーマとして取り組む人も多い。

 伝統の第2は、柔軟性をもった修士論文への取り組みである。柔軟性とは、臨機応変と理解してもいい。1990年代のIT産業革命以降、世界の動きは非常に速くなった。国際的な情勢も国内情勢も社会も学会もスピード感のある変革を求め、実際にそのような展開となっている。

 筆者は、「時代認識」という言葉を強調している。いま私たちが生きているこの時代は、どのような時代なのか。明確に認識することが非常に重要だ。ITのツールと手段の普及によって、モノ作りの現場から日常生活に至るまで、この10年間で激変した。

 私たちが常時身につけ日常的に自由に使っている携帯電話は、1万件以上の知的財産権に囲まれているハイテクツールである。このような精鋭的なツールをほぼ万人が持参し、使いこなしていることを考えてみても人類史上初めての経験である。そこに新しい文化が生まれ、新しい価値観が生まれ、犯罪が生まれるのは必然的な流れである。

 修士論文のテーマも最初に決めたことが最後まで動かないというような硬直化した考えにとらわれず、知財や社会の動きに応じて変えていくことが必要だ。ここにも時代認識という発想がなければ、いい論文は書けない。柔軟な考え、行動、調査、研究こそ現代に求められる社会活動の主要要因なのである。

 それは筆者が社会活動に最も求めている、迅速な思考・行動とつながっている。社会人として最も求められる要因を1つ考えよとするなら、それは「迅速な行動様式」なのである。

  馬場研は、時代認識を明確に持ち、実行力の伴った人材に育つことを最大の目標にするものである。

                         東京理科大学知財専門職大学院教授  馬場 錬成

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