PEACE BOATで世界一周の旅ーその45
2024/06/29
年中気温30度を超える熱帯雨林の国へ
中南米の大西洋・カリブ海と太平洋を隔てている南北アメリカ大陸の細長い陸地の中で、最も狭い地点にいわば穴を開けて船舶の通過を可能にしたのがパナマ運河です。その運河を目指して航海が続いていました。目指すはパナマ運河の玄関口である、パナマ共和国のクリストバルです。
港が近づくにつれて大きな船舶が、海上に点々と列をなして停泊しているのが見えます。巨大なタンカー、コンテナ船、鉱石船などで、いずれもパナマ運河を通過する順番を待っているのです。運河については、後述します。
接岸と当時にすぐに上陸が許可されました。オプショナルツアーに参加して、首都パナマシティへ向かいました。旧市街カスコ・アンティグア地域は、世界遺産に登録されたコロニアル建築のきれいな街並みが続いています。東西に細長い国で、面積は北海道よりやや小さめで、人口は440万人。
歴史的にカトリック系の信者が多く、立派なカテドラルが目に付きます。気候は熱帯雨林地帯であり、雨期と乾期が交互に来ます。いまは雨期にあたり、はっきりしない曇り空が続いていました。道路の周辺は深い熱帯の森が続いており、色鮮やかな野鳥が見えます。港のバスターミナル付近は、ちょっとした自然公園になっており、ここには放し飼いなのか、はたまた自然に集まったのか分かりませんが、リスなど小動物やクジャクなどがそこここに姿を見せ、楽しませてくれました。
海岸線に沿って椰子並木のある海浜公園が続き、パナマ運河で働いた人のモニュメントがいくつも建っていました。
初めて知ったパナマ運河の構造
旧市街観光の翌日は、早朝から運河を渡る準備が始まり、船内放送でいよいよ運河に入ることが予告されました。運河は海と海の間の陸に、溝のような回路を作り、その回路を船が通過するものと思っていました。ところが、ここまで来て初めて知ったのですが、パナマ運河は船が陸に上がって山を越えていく独特の構造で出来ているすごい運河でした。関心を持って調べることをしなかったので、ここに来て興奮することになります。
グーグルマップによると、パナマ運河の広域図と拡大図は次のようになります。
大西洋と太平洋を結ぶ長さ80キロの運河は、難工事を経て1914年に開通しました。運河は大西洋側・カリブ海のコロンから太平洋側パナマ市まで続いており、ここを通過するにはほぼ8時間かかるというのです。
いよいよ運河に突入です
パナマ運河が近づいてきました。前述したようにパナマ運河が閘門(コウモン、ここでは水門と表記します)と次の水門に閉じ込められて水位を変え、徐々に上に上がって山を越え、そしてまた同じ方法で山を下って向こう側の海に出て行くというものです。
パナマックスという言葉を初めて知りました。
|
全長 |
全幅 |
喫水 |
パナマックス |
366 |
49 |
15.2 |
PEACE BOAT |
261 |
32.3 |
8.1 |
パナマックススとは、パナマ運河を通過できる船舶の最大サイズを言うものです。PEACE BOATの「パシフィック・ワールド号」は、そのいずれもパナマックスより下回っているので通過できるのですが、世の中にはもっと巨大な船舶が多数あることを知って驚きました。
言葉で分かっても、7万7千トンの巨船が、実際にどうやって山を越えるのか。興味津々でした。前方の巨大な水門が徐々に近づいてきますが、全幅33メートルもある船が入るような場所ではありません。ところが、船はとても入れないと思っていた隙間を目指してゆっくりと巨船は進み、船を突っ込んだあたりでエンジンを止めました。そこからは運河に沿ってレールが走っており、船をロープで引っ張る動力車がゆっくりと船を引いて水門と水門の間に閉じ込めます。そして頂上にあるガトゥン湖から淡水を入れて水位を上げて持ち上げていくのです。
自分が乗っている船の状況は、自分ではカメラで撮影できないので分かりませんが、多分、遠目にはまさに陸の上に登る船に見えるのではないでしょうか。
運河は、写真のように2列の水門回路があります。右側の水門がこれから船が入っていく水門です。手前にぐるりと船上から見学する乗船客が取り巻いています。船の上は広々としていますが、下に向かって船体は急激に細くなっていくので、写真のような狭く見える水路でも浮かんだ状態で進めるのです。ただし、水路の壁と船の間は、数センチ程度にしか開いていないそうです。すれすれで水路をそろりそろり進んでいきます。
実際に船が徐々に上に行く様子が、周囲の景色を見ていると分かります。「上がってる、上がってる」という声があちこちで飛んでいました。簡単に言えば、洗面器に小さな船を浮かべ、周囲から水を足してやれば船は上昇していきます。あのアルキメデスの原理で船が安定して浮かんでいる状態を利用して、周囲の水かさをあげて船を上にあげるのです。アルキメデスの原理を彼が考えついたのは、お風呂に浸かっているときだと子どものころ習いました。ほんとかなあ・・・。
そんなくだらないことを思い出しているうち、上下26メートルもある水位差を水門の構造を利用して3か所で上に上げ、頂上部分にあるガトゥン湖に出て航行し、太平洋側の入り口の湖岸に来ると今度は反対に船を下げる水門を利用して太平洋の水位に戻し、広い海に進入していきました。全長82キロを渡るのに8時間かかりました。まさに巨船が山を越える。これは人間の英知でしょう。
太平洋側に出てみると、こちら側にもパナマ運河を渡って大西洋へ出る船が、多数、海上で待機していました。
上下26メートルを水門の構造を利用して3か所で上に上げ、頂上部分にある湖を航行して太平洋側の入り口に来ると、今度は反対に船を下げる水門を利用して太平洋に進入していきます。
運河の最終地点に差し掛かると、向こうに大きなアメリカ橋が見えてきます。この橋を通過すると太平洋へと出ます。
パナマ運河は、スエズ運河をつくったレセップスの手で開発に着手されました。しかし難工事とマラリアの蔓延などで工事は中断され、その後アメリカが水門方式の運河を開発。10年の歳月をかけて1914年に開通しました。マゼラン海峡、ドレーク海峡などを回りこまずにアメリカ大陸の東海岸と西海岸を船舶が行き来できるようになったのです。
2000年1月1日から、運河はアメリカからパナマに返還され、その後はパナマ共和国のパナマ運河庁が管理・運営しています。
毎年の運河通航隻数は、13,000隻から14,000隻です。 通航料以外の運河関連収入を含めると、2020年の総収入は34億ドルとなります。しかし液化石油ガス(LPG)の価格上昇を受けて通航料も急上昇を続けているといわれ、かつての2倍になっているとも聞きました。世界の物価高の影響をもろに受けているようです。
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