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沖縄返還交渉の密使・密約の書籍を上梓しました

沖縄本写真2020年5月2日

 この本の著者として訴えたいと思います

 いまから50年前の1972年5月15日、沖縄の施政権がアメリカから日本に復帰しました。その節目に、返還交渉のときに佐藤栄作総理は、どのようなことをしていたか検証した本です。

 返還から20年を経過したころから、アメリカで公文書公開が始まり、沖縄返還交渉の全貌が分かってきました。その文書をみると、佐藤政権が国会で説明していることは嘘が多く、国民も国会も知らない交渉条件で返還が実現していました。米軍の沖縄基地の自由使用と有事の核持ち込みを日本側がアメリカに保障していました。密約です。

 国民・国会に嘘をついてまで返還されたことが原型となり、今の米軍への「思いやり予算」の原型を作りました。ウクライナ戦争によって、ロシアの核使用が現実として語られる時代になりましたが、核使用の戦争に拡大したら、日本はどのような対応をするのか。日米安全保障では、どのような約束になっているのか。

 佐藤総理は、自民党総裁任期中に沖縄返還を実現するために、公式に返還交渉している外務省にも相談せず、勝手に民間人の密使を使って密約を結び、国会と国民に嘘で固めた国会対応をしていました。そのことを日本では、政治の場でもメディアでも学会でもきちんと総括されたことがありません。まして多くの国民はよく理解しないままに放置されてきました。

 民主国家が日本で育たない重要なケースとしてこの本を書きました。同時に佐藤総理は、任期が切れる直前には、別の民間人密使を使って中国との国交正常化を目指す交渉を香港を舞台に極秘裏に進めていました。

 日中復興でも北京と密使外交を展開

 沖縄復帰と日中国交正常化という50年前の大問題を、外務省を蚊帳の外に置き、総理直轄の民間人の密使を使って密約を結んで実現しようとした「手口」は、先進国とは思えず、議会制民主主義国家の体裁もしていませんでした。密使に依頼するときには、官房機密費から200万円、300万円の「餞別」を手渡していました。

 ニクソン大統領と極秘で署名を取り交わした「有事の核持ち込み」を保障した議事録は、佐藤栄作私邸にそのまま保存されており、一方のアメリカは国務省に国家機密文書として保管されていました。国家の命運を決めるかもしれない外交折衝の議事録が、日本では元総理の私邸に保管されたままであり、今なお日本政府も外務省も「承知していない」というスタンスでお茶を濁しています。

 このように、国家としてのたたずまいをしていない状況を国民はもっと真剣に考えるべきと思って、この書籍を上梓しました。多くの人に読んでいただきたいと思っています。