イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-5
2021/07/03
WHOの発表データでイベルメクチン効果を確認
WHOは、毎週、世界中の国・地域からコロナ感染者と死亡者の数と人口10万人当りのその国の感染者数と死亡者数を集計して発表している。
6月29日に最新の集計データが発表され、筆者は昨年9月から、毎月末の発表データを分析している。アフリカでイベルメクチンを投与されてきた国と、投与されてこなかった国の間で、コロナ感染症の実情に違いがあるかどうかを見てきたものだ。
結論から言うと、イベルメクチンはコロナ感染症の予防に効いているように見えるのである。
皆さんは、これを見てどう判断されるだろうか。
直近のデータ分析の結果から報告する。
10万人当りの死亡者数でおよそ13倍以上多い
上の表で見るように、2021年6月29日にWHO発表のアフリカでイベルメクチンを投与されてきた32か国の感染者数、死亡者数の累計と10万人あたりの感染者数、死亡者数の一覧集計が左側の表である。
右側の表は、イベルメクチン不投与の22か国の同じデータである。
投与国と不投与国の一覧を見ていくと、投与国の方がどう見ても実数も10万人当りの数も少ない。死亡者数は10万人当り(32.8÷2.5=13.1)となる。不投与国は、およそ13倍以上も多いのである。これを投与国群と不投与国群に分けた累積感染者・死亡者数と10万人にあたりの数を昨年9月末からの発表データで推移を追ったものが次の表である。
疫学で検証する対象になるのではないか
このシリーズで紹介したように、この状況に最初に気がついたのは、日本のP医師であった。次いでアメリカとコロンビアの研究者が同じ仮説で論文を書いて発表しているが、投与・不投与の分け方が正確性を欠いており、論文としての価値がないことは、このシリーズの「その3」で詳しく述べた通りである。
P医師の論文内容は、ほぼ正確に事態を分析したもので、論文として非常に価値が高いと思った。しかしWHOの投与・不投与の分け方に一部不備があった。論文の結論には、ほとんど影響を及ぼさない程度のものだったが気になった。そこで過去のWHOの投与・不投与の実績に従って、正確に分析をしたいという思いが募り、ようやくこのような表を完成した。
この1年間の推移を見ると明らかなように、10万人当りの感染者数、死亡者数は、明らかにイベルメクチンを投与されてきた国の方が少ないのである。これは学問的に疫学や公衆衛生学の研究対象にならないのだろうか。
世界中の研究者で、このデータに気が付いている人が一人もいないとは考えにくい。P医師以外、特段の問題意識を示す論文も出てこないところを見ると、このようなデータは学問的にはほとんど価値を見出さないのかもしれない。
筆者が様々な意見を聞いた限りでは、WHOのイベルメクチン投与は1年に1回程度である。それだけでコロナ感染の予防になっているとは考えにくい。イベルメクチンのin vitro(試験管レベル)の研究で、コロナ・ウイルスの増殖をブロックする効果が出ていることが確定しているが、それだけではイベルメクチンがコロナ感染症の治療に効いていることを説明するのは無理があるということのようだ。
つまり作用機序からみても、この一覧表の結果からイベルメクチンがコロナ感染症の発症抑制をしているとは説明できないというものであった。
南アフリカ共和国(南ア)でもイベルメクチンの投与始まる
そうした議論とは別に、現実にはパンデミックになっている。イベルメクチン不投与国でも約6000万人の人口を誇る南アフリカは、アフリカの中でも感染者が多い国として目立っていた。
コロナ感染の予防と治療にイベルメクチンが有効だと言われていたが、国としてはイベルメクチンを治療に使用することを勧めていなかった。しかしアフリカのほかの国ではイベルメクチンの「効果」で感染数が低く出ていることから、イベルメクチンを闇で輸入して服用する人々が拡大した。
このため2020年を超えた1月には、急増する感染者数を抑えるために、国がイベルメクチンを治療・予防として使用することを許可することにした。これを見ていたのかジンバブエも、イベルメクチン使用に踏み切った。
そのような事情があったので、今の時点では投与・不投与の分け方は、あまり意味がなくなってきたと言わざるを得ない。
しかしそうした事情を入れても、2つのグループには、歴然とした差が出ているのである。
次回に続く