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イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-7

インド弁護士会が、イベルメクチン使用禁止を発信したWHO幹部の刑事訴追も辞さず

  インド弁護士会(IBA)は、さる5月25日、世界保健機関(WHO)の主任科学者であるスミヤ・スワミナサン博士に法的通知(LEGAL NOTICE)を送付し、イベルメクチン使用を拒否する言動をやめるように「警告」した。通知文書ではイベルメクチンの治療・予防効果に関する多数の科学論文を根拠にあげ、スワミナサン博士の刑事訴追も辞さないとする強いメッセージである。送付と同時に世界に向けてこの警告書を公表した。

弁護士会写真インド弁護士会のHP

通知文書は、51ページにわたってイベルメクチンの科学的論文や解説を紹介し、これを無視もしくは批判的に語ってきたWHOの前事務局次長で現在、チーフサイエンティストの役職にあるスワミナサン博士を痛烈に批判した。

同博士はインド生まれの女性で、小児と成人の結核、疫学と病因、およびHIV関連疾病を専門とする臨床医である。2017年10月からWHOの事務局次長の要職を務め、2019年3月からチーフサイエンティストになり、WHOの科学的な見解の発信や政策を決定する際に大きな影響力を出していた。

 同通知で取り上げているイベルメクチンに関する解説は、アメリカの医師団(FLCCC)やイギリスのイベルメクチン推奨開発団体(BIRD)などの論文を根拠としてあげており、そこで報告されている科学的根拠に対しスワミナサン博士は「意図的に無視してきた」として痛烈に批判した。

弁護士会法定文書送付された法定文書

 

 WHOの立場を悪用して影響を誇示

 同文書で列記しているスワミナサン博士への批判は、次のような内容だった。

  • 2021年5月10日にツイッターで「安全性と有効性はどんな薬でも、新しい適応症に使うときには重要です」とし、メルク社が2021年2月4日に発表したイベルメクチンを使うことをけん制したステートメントにジャンプするように設定した。このツイートは、現在、削除されているが証拠は確保している。
  • 2021年5月16日にYouTubeチャンネル「MOJO STORY」に出演し、「エビデンスに基づいた指導と治療、そして予防が重要だ。WHOで試みていることは、新しいデータに基づいて、できるだけ頻繁にガイダンスを更新している」と語った。さらに「ヒドロキシクロロキン」「ルピナビル」「リトナビル」「インターフェロン」「イベルメクチン」「レムデシビル」は、「いずれもその使用を支持するものではありません。SARS CoV-2(新型コロナウイルス)感染者に広く使用することはできません」と語った。これは非常に良心に反し誤解を招くものであり、下心と意図的な思惑で出したものだ。

スワミナサン会見記者会見するスワミナサン博士

  • WHOのチーフサイエンティストとしての立場を悪用して、医師や科学者を含む人々に悪影響を与えるために、WHOはCOVID-19の予防や治療にイベルメクチンを使用することを支持していないという事実を人々に押し付けようとした。自分の目的を達成するために、意図的に人々に死を選ばせている。
  • 刑事訴追の十分な根拠であると指摘し、後日、テドロスWHO事務局長も「同罪」であるとして「法定通知」を送付したと発表した。

スワミナサン博士の言動は、WHOの公式見解であり、2021年5月10日にイベルメクチンの使用に反対するような同博士のつぶやきは大きな影響を与えた。つぶやきの翌日の5月11日に、インドのタミルナドゥ州がイベルメクチンをプロトコルから取り消している。

タミルナドゥ州はスワミナサン博士の出身地であり、地元に対し大きな影響力があったと推測されている。弁護士会はこの事実をあげて、つぶやきは「効果をもたらした」と指摘している。

 そのころインドでは、コロナ感染者が急増し、有効な治療薬もなく、治療装置も決定的に不足し、押し寄せる患者の対応に医療現場は修羅場になっていた。そんなとき、一縷の望みをかけて国が使用禁止をしていたイベルメクチンにすがりついた。効果も出していたとき、WHOの禁止発言は人道的に許されないというのがインド弁護士会の主張である。

メルクステートメント日本のメルク社から出されたイベルメクチン「反対」ステートメント。

アメリカ本社からの同じステートメントは2か月前の2月に発信されている。

 

さらに同文書では、インドを始め多くの国でイベルメクチンを使用することに抵抗があるのは、WHOのチーフサイエンティストが、「イベルメクチンの有効性を証明する膨大なデータを故意に無視し、薄っぺらな理由でイベルメクチンの使用に抵抗」してきたからだとし、「スワミナサン博士の悪意と下心を証明している」と言及している。

 また、「パンデミックへの対応における惨めな失敗のために、WHOの信頼性と誠実さは日を追うごとに衰え続けている。WHOが発行する報告書は、ますます偏ったものと見なされるようになっている。品質、信頼性、合理的なアプローチを全く欠いていると見られるようになってきている」と糾弾した。

 同文書の後半では、世界の医療界、医師、科学者らは、一部の製薬企業やそれに連なるロビー活動に引っ張られてイベルメクチンの有効性のニュースを抑圧し、治療に使ってきた薬剤の多くが長時間かかって無効であったことを確認するはめに陥ったと指摘した。

 最後に患者の利益を第一に考えるヒポクラテスの誓いを語り、イベルメクチンを積極的に使用してCOVID-19治療・予防に闘ってきた多くの医師の名前を列挙している。

 この文書の写しは、インド大統領・首相・全州の知事と行政機関の長ら15人に送付したとしている。

 イベルメクチン使用で感染拡大を阻止

 今年になってからインドで、COVID-19感染症が急増し、国民を恐怖に陥れてきた。インドの中心的な医療組織であるAIIMS(All India Institute of Medical Sciences )は、在宅の軽症患者に対して「体重1キロ・グラムあたり1日0.2ミリ・グラムのイベルメクチンを3~5日間投与することを推奨する」との治療指針を出していた。

ところがインド政府は、イベルメクチンを治療薬として承認していなかった。そこでインドで最大の2億400万人の人口を抱えるウッタル・プラデーシュ州(Uttar Pradesh)は、州政府がイベルメクチンの使用の承認を公布し、即座にCOVID-19の治療に使用されるようになった。同州では4月中旬のピーク時の感染者数約4万人から5月16日には、1万505人まで減少した。

Desert review報道

イベルメクチン投与によって感染者激変を伝えるThe Desert Review」

インド・コインバトゥール工科大学(防衛工科大学)の招聘講師をしている桂秀光・博士によると、インド国内でイベルメクチンの投与が始まった地域では、急激に患者数が減少に向かったと報告している。

アメリカの「The Desert Review」によると、インドのゴア州では、州内の全ての成人にイベルメクチンを投与する政策を実行した。これを5月10日に発表したが、その日の感染者数は3124人だったが、5日後には1314人に急減した。

また、首都圏のデリーでも4月20日に2万8395人だった感染者数が、イベルメクチン使用後に急落しており、5月15日には6430人まで減少したと報道した。

次号に続く

 


イベルメクチンとコロナ感染症の世界の動向-6

  投与国と不投与国を分けた根拠

アフリカ諸国でイベルメクチンが投与された国と不投与の国は、どのような選定手順で行われたか。

日本の外務省を始め国際機関の多くは、アフリカ大陸の主権国家は54か国としている。モロッコとモーリタニアが領有権を主張して紛争国になっている西サハラは国家としては認めていない。ソマリランドは、国際的に国家と承認されていない。この事情にならってこの調査・分析でも54か国を対象とし、イベルメクチン投与・不投与の実態をWHOのまとめをもとに調べた。

 熱帯地方に蔓延していた感染症(写真はいずれも大村博士提供)

 北里大学の大村智博士が土壌の中に生息する微生物から発見したエバーメクチンは、最初は家畜動物に投与する動物抗生物質だった。この薬剤は動物抗生物質として売り上げ20年間トップを走る記録的なヒット薬剤となった。

その後メルク社のウイリアム・キャンベル博士との共同研究でエバーメクチンの誘導体のイベルメクチンを開発し、熱帯地方に蔓延するオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症を治療する薬剤開発につながった。

WHOが熱帯病撲滅のために最初に大掛かりに取り組んだのは、赤道ベルト地帯に蔓延していたオンコセルカ症(河川盲目症)の撲滅戦略である。河川に生息するブユを介在して線虫に感染すると、猛烈なかゆみと痛みを伴う皮膚病変を起こす寄生虫感染症である。体内に入った線虫が網膜に棲みついて繁殖し、盲目にする感染症として恐れられていた。

Image1イベルメクチンの投与でオンコセルカ症から救われた子供たちに取り囲まれて歓迎を受ける大村博士(2004年9月、ガーナ共和国アズベンデで)

 APOCとLF‐MDA戦略の展開

 WHOは1995年から、オンコセルカ症の撲滅を目指して「アフリカ・オンコセルカ症対策計画(African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)」を展開し、23か国にイベルメクチンを無償で提供してきた。

 この戦略は大きな効果を上げ、WHOの専門家は「これまで熱帯病に投与されてきた薬剤の中でもイベルメクチンは、けた外れに効果がある薬剤だった」と高く評価してきた。

 さらにWHOは、蚊を媒体として寄生虫がヒトのリンパ系に入り込んで重篤なむくみ症状やリンパ系に障害を起こして死へつながるリンパ系フィラリア症(象皮症)という熱帯病の撲滅のために乗り出した。

「リンパ系フィラリア症集団医薬品管理戦略;LF-MDA」であり、29か国を対象にイベルメクチンを始めアルベンダゾール、DEC(クエン酸ジエチルカルバマジン)などの薬剤を無償で投与してきた。

このようなWHOの熱帯病撲滅作戦を報告するサイトを示して、筆者の作業に有力な助言をしてくれたのは、八木澤守正・北里大学客員教授だった。八木澤先生の示唆でこの作業は大きく進展した。

象皮症の脚象皮症になった患者の患部

(2004年9月、ガーナ共和国アズベンデで)

 WHOが①APOCおよび②LF-MDAの熱帯病撲滅戦略でイベルメクチンを投与してきた国は次の通りである。

 このうち、両方の戦略に参加した国と2つの戦略のうちどちらかに参加した国がある。この2つの戦略でイベルメクチンを投与された国は、合計32か国となった。

 

イベルメクチン投与国

APOC
(23)

LF-MDA
(29)

人口
(100万人)

1

アンゴラ

31.03

2

ベナン

 

12.15

3

ブルキナファソ

 

20.91

4

ブルンジ

 

11.88

5

カメルーン

26.55

6

中央アフリカ

4.83

7

チャド

16.43

8

コンゴ

90.79

9

コートジボアール

26.96

10

コンゴ民主共和国

4.68

11

赤道ギニア

1.41

12

エチオピア

97.18

13

ガボン

2.11

14

ガーナ

30.78

15

ギニア

 

13.97

16

ギニアビサウ

1.82

17

ケニヤ

48.69

18

リベリア

4.69

19

マラウイ

20.87

20

マリ

 

19.66

21

モザンビーク

31.99

22

ニジェール

 

24.21

23

ナイジェリア

206.14

24

ルワンダ

 

12.67

25

サントメ・プリンシペ

 

0.22

26

セネガル

 

16.75

27

シエラレオネ

7.98

28

南スーダン

 

13.78

29

スーダン

 

44.35

30

トーゴ

 

8.29

31

ウガンダ

41.22

32

タンザニア

58

 

合計

23

29

952.99

 イベルメクチン不投与国

 WHOの熱帯病撲滅戦略に指定もしくは参加しなかった国は、アフリカ54か国の中で22か国となった。そのリストは、次の通りである。

 

イベルメクチン不投与国

 

人口(100万人)

1

  アルジェリア

44.23

2

エジプト

100.88

3

  エスワティニ

1.13

4

  エリトリア

3.55

5

  カーボヴェルデ

0.56

6

  ガンビア

2.42

7

  コモロ

0.9

8

  ザンビア

18.88

9

  ジブチ

1.11

10

  ジンバブエ

15.19

11

  セーシェル

0.1

12

  ソマリア

15.05

13

  チュニジア

11.9

14

  ナミビア

2.53

15

  ボツワナ

2.35

16

  マダガスカル

27.58

17

  モーリシャス

1.27

18

  モーリタニア

4.15

19

  モロッコ

35.95

20

  リビア

6.64

21

  レソト

2.06

22

  南アフリカ

59.62

 

合計

358.05

 以上のように、WHOの熱帯病撲滅戦略の中で、イベルメクチンを投与されてきた

32か国と投与されてこなかった22か国が確定した。

 この2つのグループが、COVID-19感染はどのようになっているかを調べた結果がその5までに報告した通りである。

次号に続く