07 中国関連

自民党の最リベラリスト・加藤紘一氏の死去に想う 最終回

 政界引退につながった病気と落選

 2012年12月に行われた総選挙で山形選挙区から立候補していた加藤紘一先生は、接戦の末敗れた。選挙中から体調がすぐれなかったのは、選挙直前に軽い脳こうそくに見舞われたからだった。

 ややしゃべりはもつれるが話はできる。ゆっくりだが歩行もできる。しかし政治家にとってこれは致命的だった。落選もやむを得なかったと筆者は思った。

 当選13回を重ね、首相の座に最も近い位置にいながら政局の読みとタイミング、政界に渦巻く利害得失と嫉妬、派閥力学などの渦に呑み込まれ加藤政権は泡となって消えた。

加藤先生13年2月28日DSCN8910顔色もすぐれお元気だった加藤先生と(2013年2月28日)

 落選から年が明けた2013年2月、筆者はお見舞いがてら加藤先生に電話をすると、赤坂のいつものレストランで食事でもしようと誘われた。

 お会いすると顔色もすぐれ落選の失意もまったくなく、相変わらず科学技術の話で持ちきりとなった。話は2004年5月26日に衆院文部科学委員会で質問し、今でも語り継がれている日本の研究現場の欠陥と課題についてであった。

圧巻だった加藤先生の国会質問

 ニュートリノ天文学を創設してノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士とゲノム解読で世界の先端を走りながら行政と学界の希薄な問題意識の中で頓挫し、手柄をすべてアメリカにさらわれた和田昭允博士を従え、日本の科学研究現場の問題点を浮き彫りにして今後に役立てようとする質問だった。

 かなり専門的な内容にまで踏み込んだ質問であり、国会議員の中でこのような質問ができる議員は加藤先生だけだったろう。

 その質疑の政府側の答弁者の一人だった当時の文部科学省生涯学習政策局長の銭谷眞美氏(その後事務次官、現東京国立博物館長)は「今でも鮮明に覚えています」と言う。

  成功した小柴博士と失敗に終わった和田博士の事例を対照的に引き出して、「日本の研究現場の欠陥を考えさせようとしたものでした。今でもあの議事録は参考になると思います」と語っている。

 その議事録は、次のサイトから読むことができる。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009615920040526022.htm

 

第6世代の中国を語りたい

 話が弾んでいるうち、自然と中国の問題へと移っていった。安倍政権になってから日中間は日増しに悪くなっていく。その現状を憂いながら加藤先生は「これから中国と付き合うのは第6世代という考えがなければ未来志向にならない」と語った。

 第1世代・毛沢東、第2世代・鄧小平、第3世代・江沢民、第4世代・胡錦濤、第5世代・習近平であり次のリーダーが第6世代となるという意味だった。

 加藤先生は、中堅リーダーとして中国共産党の次期リーダーと目されている多くの人々と親交があった。若き中国のリーダーとの交流を通じて、肌で感じた中国の第6世代リーダー候補たちの考えを分析する必要がある。

 そのような考えであり、日中間に横たわる目先の課題にとらわれずに未来志向で行けば日中にはまた新しい歴史が作られるという考えだった。

 筆者はこれを聞いてすぐに、21世紀構想研究会での講演依頼を持ち出し、加藤先生も喜んで受けてくれた。

こうして2013年4月19日、プレスセンター9階記者会見場で「中国第6世代が考える日中未来志向」のタイトルで90分の講演を行ってくれた。

加藤先生21世紀構想研究会DCIM0034第99回・21世紀構想研究会で講演する加藤先生

 これが加藤先生の21世紀構想研究会の講演では最後になった。その中身は中国との将来展望について深く考えさせたものであり、その3か月後に筆者は、加藤先生と訪中することになる。

その報告は前回のその3で報告した。

 科学技術と中国を語って止むことがなかった加藤先生の生涯を偲びながら、心から哀悼の意を表して筆をおく。

終わり


自民党の最リベラリスト・加藤紘一氏の死去に想う その3

歓迎ムードで終始した加藤訪中団

  2006年8月15日の終戦記念、山形県鶴岡市の加藤紘一先生の実家が放火されて全焼した。犯人は加藤先生が中国との友好関係で活動することに反発する右翼だった。

 筆者が放火事件を心配して加藤先生にお見舞い電話をすると、動ずる雰囲気もなく「そんなことより、また科学技術の討論会をしましょう」と語った。

 東大理1に進学したかった加藤先生は、年を取るにしたがって理系への憧憬を強めているような印象を持った。

  中国を敵対する第二次安倍内閣が発足し、日中関係が緊迫していた2013年7月1日から1週間、日中友好協会会長だった加藤先生を団長に、経済界の人々など10人ほどで編成した訪中団が北京空港に降り立った。筆者は加藤先生のいわば「かばん持ち」として参加を許された。

1*7月2日中日友好協会の昼食会1中日友好協会の昼食会での記念写真

  空港から加藤先生はVIP待遇で歓迎ムードにあり、そのときから帰国までスケジュールは歓迎行事で埋まっていた。歓迎昼食会、夕食会が続き、中国の要人が出席して、安倍政権の硬直化する日中関係を憂慮して打開することを双方で模索し合った。

 討論する会話の中で直接、打開するというような言葉は出なかったが、会談の雰囲気はいかに友好関係を保持するかという双方の思いが伝わり、最後はいつも「カンペイ、カンペイ」の大合唱で終わった。 

 北京から瀋陽市に移動し、関東軍が南満州鉄道を爆破して勃発した満州事変時代の歴史的記録を展示する「瀋陽九・一八事変歴史博物館」を見学した。北京から移動するとき、筆者は加藤先生が中国と関わった歴史を聞いた。

 加藤先生は、東大法学部公法学科を卒業し外務省に入省した。それから台湾大学に留学し、中国語を研修語とした外交官を目指す「チャイナ・スクール」に入った。中国語をマスターして香港副領事からアジア局中国課次席事務官となり父親の死後、政界へ転じる。

 外務官僚時代にハーバード大学に留学し、「蘆溝橋事件が起きるまでの一年」と題した論文で修士号を取得した。後年、加藤先生がハーバード大学で講演するとき、MITから利根川博士が駆け参じた。アメリカの学生との質疑応答は、時として辛辣な場面になることを心配したが、利根川博士は「加藤君はそつなくこなして、英語力もあるなあと感心した」と語っている。

37月3日夕食会1円卓加藤訪中団を歓迎する中国の晩餐会

木寺大使取夕食かい

木寺中国大使主催の歓迎晩さん会で(右から2人目が木寺大使、その左が加藤先生)

 中国の新幹線の中での筆者とのインタビューの中で、加藤先生は「アジアと中国の歴史を研究し、日本の近代史を自分なりに見直した」と語った。

 加藤先生が北京市郊外の盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館を見学したことがある。そのとき「亜州歴史的真実只有一個(アジアの歴史の真実はただ一つ)」と記して記念館の館長に献じたと語った。

 筆者もその記念館を見学したことがあるが、中国から見た日中戦争の記録・展示内容を見て、自身の歴史観を見直すきっかけを作った。淡々と話をする加藤先生の言葉を聞きながら、先生も同じ思いだったのではないかと感じた。

 「日中不再戦」と揮毫した加藤先生

0*7月3日1の9・18 (2)

 「瀋陽九・一八事変歴史博物館」の見学の最後に、館長が硯を持ち出して加藤先生に揮毫を願い出た。加藤先生は筆を持つと「日中不再戦」と一気に書き上げた。それを見守っていた人々から拍手が起きた。

 北京に戻る道々、加藤先生は「日中が科学技術で協調したら、世界の科学技術研究のリーダーになれる。日本はもっと歴史を学ばなければならない」と語った。

 筆者が加藤先生との交流の中で確信した印象は、「科学技術」と「中国」という2つの言葉に凝縮される。

 自民党と政局という混沌とした激動の中で「加藤の乱」が語られることが多いが、加藤先生の政治信条の骨格には、「科学技術」と「中国」というキーワードもあったのだ。

 そのような政治家の実像を語るため、この追悼文を書こうと思い立った。

(つづく)


「中国の科学技術は日本を抜いた!」  急進的に拡充する中国の先端研究戦略

 「中国の科学技術は日本を抜いた」と訴えているのは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)特別顧問の沖村憲樹氏である。沖村氏は先ごろ、日中の科学技術交流推進に貢献した功績で、中国政府から「国家国際科学技術協力賞」を授与された。この賞は中国で最高の科学技術の国際叙勲であり、行政官として初めてという異例の表彰で、外国人受賞者7人のうち序列2位で授与された。

 日本の官僚の中で中国の科学技術研究現場に最も詳しい人である。筆者は2006年に沖村氏が設立したJST中国総合研究交流センターに関わってから、同氏と共に日中の科学交流を推進する仕事をしてきた。その体験から見た中国の科学技術政策と研究動向を分析して報告する。

 「日本を抜いた」という意味

沖村氏が「中国は日本を抜いた」という意味は、次のような観点から語っているものだ。

  • 中国の研究者の中で、世界トップクラスに躍り出てきた人が次々と出ている
  • 国家をあげて科学技術政策に取り組む制度の拡大が急伸している
  • 研究投資額が急増しており、世界水準の巨大大学群の研究エネルギーが半端ではない
  • 選択と集中で政府が研究投資する実績が着実に広がっている

こうした現状を総合的に見ると、もはや日本を抜いて行ったと理解してもいいという意味だ。

研究現場に人材を供給する中国の大学群、研究機関群の拡充ぶりが急進展している。大学の数は日本の4倍を超えておりこれからも増え続ける。学生・院生の数も急増し、現在の高等教育就学率は30%(2012年)。これを2020年までに43%に引き上げる計画だ。大学の在学者数は1494万人から2158万人に膨れ上がる。

中国の大学生の60パーセント近くは理系専攻である。これは日本の大学の文系・理系の色分けとは、ちょうど反対になっている。中国は、建国以来一貫して、「科教興国」を国の最重要政策として掲げ、科学技術の振興、教育の充実を強力に推進してきた。それがこの10年内に実を結び急激に拡大している。

世界最高水準に近づく高等教育機関を目指すことを目標にしており、グラフで見るように研究投資を急拡大している。

このように中国は、なんでも世界一を目指すという国家目標が明確に打ち出されていることからも、中華思想は脈々と生きていることを実感する。 

日中高等教育機関の教育経費推移注:中国の経費は、OECD購買力平価により計算されたものである。また、教育経費は公的経費と学校の収入を含む。「文部科学統計要覧」2005~2014年、「中国統計局国家統計データ」2005~2014年を基に作成

注:中国の経費は、OECD 購買力平価により計算されたものである。また、教育経費は公的経費と学校の収入を含む。「文部科学統計要覧」2005~2014年、「中国統計局国家統計データ」2005~2014年を基に作成

また、主要国の研究開発費の総額(購買力平価換算)の推移を見てみると、中国だけがこの10年で急激に増加している。

出典:文部科学省「科学技術要覧 平成27年版」

出典:文部科学省「科学技術要覧 平成 27年版」

グラフで見るように、中国は年平均20%あまりで増加しており、4年で倍増のスピードである。2009年に日本を抜き世界第2位になり、2013年には35兆円規模となり日本のほぼ2倍になった。

次々と打ち出した選択と集中の投資

1978年の改革開放前の中国の大学は、古びた校舎、研究施設も満足になく文献類も研究情報も貧困だった。そのころの大学研究者は、やることがなくて「毎日、カードゲームで遊んでいた」と苦笑する。

解放後は、こうした遅れを取り戻そうと、大学は最先端の設備機器を備えた世界一流の研究開発型大学に変貌しようという掛け声で国が投資を続けてきた。

 1993年には、「211プロジェクト」という名称の科学技術政策を発表し、21世紀までに世界レベルの大学を生み出すための集中投資政策を掲げ、中国の112の大学を選定して投資した。

特別投資(一般の教育経費以外)として1996年-2005年の10年間に約2兆8千億円、さらに2006年-2015年の10年間に約3兆6千億円を投資している。

続いて1998燃には「985プロジェクト」政策を発表した。この時も一層の集中投資を行い、世界一流、国際的知名度の高い大学を生み出すため39の大学を選定した。

この政策でも特別投資(一般の教育経費以外)として1999-2004年に6840億円、2005-2009年に6328億円、2010-2015年には、1兆2177億円を投資し、研究設備では世界のトップクラスに劣らない状態になってきた。

この10年、中国の経済状況が一挙に上昇し、余裕が出てきた資金の多くを未来のために研究投資をするという中国の戦略が着実に実行されてきた。科学と教育で世界トップになるという国家戦略が着実に進展していることがうかがえる。

「海亀政策」で打ち出した人材確保

中国の大学を訪問すると、日本と決定的に違うことはどの大学でも学長の年齢が若いことだ。大半の学長は、英語、日本語、ドイツ語、フランス語など流ちょうな外国語を話す人が多い。

10年ほど前までは、中国から外国に留学した優秀な人材は、そのまま留学先にとどまって帰国しない人がほとんどで、国の経費で留学しても戻ってこない研究者が多かった。中国の研究者は「これは違法行為だから、今さら帰国すると捕まると思っていた」と告白する。

そこで政府は「海亀政策」を打ち出した。海亀と同じように生まれ故郷に戻ってくるように呼び掛けたもので、戻ってきた人には違法性は不問にするという柔軟な政策だ。

それどころか戻れば待遇はもとより、専用住宅の用意、配偶者の仕事の面倒、子弟の教育の手配など、聞けば聞くほど至れり尽くせりの制度を作った。外国にいる中国人研究者の論文が「ネイチャー」や「サイエンス」などメジャーな科学ジャーナルに掲載されると、中国の政府機関や大学から好条件で戻ってくるように誘いが来るようになる。

その政策に乗って、多くの人材が帰国した。欧米の研究スタイルを身につけ、欧米とネットワークをもった若々しい大学指導者が、中国の研究機関や大学に次々と出現していった。

「211プロジェクト」に選定された112大学の年齢構成を調べたのがこのグラフである。日本の国立大学の学長の年齢は55歳から59歳まではたった5パーセントであり、残りの95パーセントは60歳以上である。中国は60歳以上の年代がたった10パーセントしかいない。日本の真逆である。

 中国大学(211プロジェクト)学長の年齢構成と留学歴(2013年12月時点)

 出典:211プロジェクト各認定大学のHPを基に作成

 

イギリスの大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ社(Quacquarelli Symonds :QS)」が2009年から毎年公表しているアジアの大学のランキングをみると中国の大学の躍進ぶりがよくわかる。

  中国の大学(香港を含む)

 

  日本の大学

1

清華大学(25位)

 

1

京都大学(38位)

2

香港科技大学(28位)

 

2

東京大学(39位)

3

香港大学(30位)

 

3

東京工業大学(56位)

4

北京大学(41位)

 

4

大阪大学(58位)

5

香港中文大学(51位)

 

5

東北大学(74位)

5

復旦大学(51位)

 

6

名古屋大学(120位)

7

香港城市大学(57位)

 

7

北海道大学(139位)

8

上海交通大学(70位)

 

8

九州大学(142位)

9

浙江大学(110位)

   

10

中国科技大学(113位)

 

11

香港理工大学(116位)

 

12

南京大学(130位)

 

出典:QS World University Ranking 2015-2016

QS社の大学ランキングによれば、2015年に200位以内に入った日本の大学は8大学、中国は香港を含めると12大学がランクインしている。

QSランキングが始まった2004年では、トップ200にランクインした中国の大学はわずか5大学であり日本は11大学あった。しかしその後中国は躍進し、日本が停滞したことは明らかだ。

日本の大学は戦前から今まで、旧帝国大学が人材を供給する高等教育機関とみなされてきた。中国人の研究者から見ると「日本の大学は、旧帝大に投資が集中しており、大学の発展も競争も硬直化していて魅力に乏しい」(日本に留学した中国科学院の教授)と語っている。

「サイエンスパーク」という中国独自のシステム

中国の大学は社会貢献することが義務付けられており、産学連携が活発だ。その分、基礎研究がややおろそかになっているが、これは70年代までの日本の大学とよく似ている。日本は産学連携とは言わなかったが、大学研究者と企業の密着はよく知られていた。

中国で設置されたのが大学と産業界が共同で研究開発を展開する「国家大学サイエンスパーク」と呼ばれるイノベーション創出機関である。産学連携によるベンチャー企業の育成、インキュベーション事業の推進を目的にしている。

いくつかの大学のサイエンスパークを見学したが、大学の研究機関とは一味違う企業の研究開発部門にも見えるし、大学の応用研究現場にも見える。

また、中国のトップクラスの大学は、世界のトップクラスの企業と研究開発の連携を組むことが拡大している。北京の清華大学サイエンスパークを見学に行ったときに聴いた話では、サンマイクロシステムズ、P&G、トヨタ、東芝、NECなど日米の企業と連携しており、そのほかヨーロッパなどのIT、光学機器、バイオ製薬、金融など世界一流企業が研究室を設立していた。

浙江大学と富士電機の産学連携活動もよく知られている。ほとんどの大学で産学連携活動は活発であり、特許の出願、管理制度も驚くほど整備されてきた。数年前まで大学の特許出願・管理についてはあまり活発でなかったが、急激に知財意識が目覚めてきた。

特許技術の移転だけでなく大学発ベンチャー企業(中国では校弁企業と呼ぶ)、国家技術移転センター、インキュベーターなどの設立、運営、教育訓練、仲介サービス、地域振興など多様な活動を各地で展開している。

中国教育部科学技術発展センターによると、2010年には中国の552大学が5279のベンチャー企業を所有している。売上高のトップは北京大学が経営する方正集団有限公司で売上高は約1兆7700億円(OECD購買力平価により計算)、清華大学の同方股份有限公司の約9892億円(同)が双璧になっている。

このように拡大するサイエンスパークは、将来どのように進展していくのか。浙江大学の教授に聞いてみると「中国の企業は、伝統的に研究開発部門が貧弱なので、サイエンスパークは大学の技術力を借りて中国全体の企業の開発部門を担当するようなものだ」と言う。

そして「10年先、今のようなサイエンスパークはなくなるか、まったく別の組織と目的に変化しているだろう」とも語っている。時代の変革に合わせて自ら進化していく中国の産学連携と大学のたくましい姿を垣間見るようなコメントだった。

個別の研究レベルを精査すると

 それでは個別テーマの中国の研究レベルはどの程度になってきたのか。JST研究開発戦略センター(CRDS)が、日本の最先端研究者356人からヒアリング調査した結果を見てみよう。

 最先端科学技術分野とは、①電子情報通信、②ナノテクノロジー・材料、③先端計測技術、④ライフサイエンス、⑤環境技術、⑥臨床医学の6つである。

 この6分野の「研究水準」「技術開発水準」「産業技術力」の3つのカテゴリーで評価をしてもらった。

 その結果、世界の水準から見て中国が非常に進んでいると評価された項目は次の通りである。

電子情報通信で、産業技術力で非常に進んでいるとされたものは、 集積回路(高周波、アナログ)、光通信、光メモリー、ネットワークシステム、情報通信端末技術である。マルチメディアシステムは、研究水準、技術開発水準で非常に進んでいると評価されている。           

ナノテクノロジー・材料では、ナノ空間・メソポーラス材料、新型超伝導材料、単分子分光が研究水準で非常に進んでいるとされ、国際標準・工業標準では、取り組み水準が非常に進んでいるとされた。

先端計測技術」では、Ⅹ線、γ線(分光分析法)で技術開発水準、産業技術力で非常に進んでいると評価された。

ライフサイエンスでは、環境・ストレス応答(植物学)が産業技術力で非常に煤でいるとされた。

それ以外では、全体的にみて、米国が圧倒的に進んでおり、欧、日がそれに続いており、中国は、欧、日に急速に追いつきつつあると結論付けている。

 圧倒的に強くなった宇宙開発

 分野別に見ると圧倒的に存在感を出しているのは宇宙開発である。軍事開発最優先として核兵器、ミサイルの開発と一体になって最も力を入れて進められてきたもので、いまや米、露に次ぐ宇宙開発水準を達成している。

有人衛星「神舟」を打ち上げた「長征2F」(低軌道打ち上げ能力8.4トン)、静止衛星打ち上げ能力5.2トンを有する「長征3B」は、日本のH2Aと同水準であり極めて高い性能である。

現在開発中の低公害新型エンジン「長征5」の最強モデルは、静止衛星14トン、低軌道衛星25トンの打ち上げが可能とされ、欧米をはるかに凌ぐ性能である。2016年末に打ち上げる予定となっている。

ロケット打ち上げ回数と成功率を見ても、「長征」シリーズは1970年から約200機打ち上げ成功率は94.36%である。米、ロ、欧、日の成功率は91%以下だから中国が最も高い成功率となる。最近10年間の打ち上げを見ても一度も失敗がない。こうした事実は、日本ではほとんど報告されたり語られることがない。

 日中科学技術政策の決定的な違い

 中国の科学技術の水準と研究現場のレベルが急速に上がってきた理由はどこにあるのか。ここで紹介したことからも中国は常に世界一を目指し、大胆な国家目標を掲げていることで現場の士気があがっていることだ。

中国は一貫して科学技術は、最重要政策と位置付けてきた。沖村氏は「共産党・国務院・行政各部が一体となって政策立案し、実行する体制が出来上がっている」とし「国務院直属のトップダウンで横断的政策を実行する組織、シンクタンクが充実している」と語っている。

さらに沖村氏は「研究現場がチャレンジ精神で取り組むように、国家が指揮しているように見える。科学研究にはイデオロギー色がないので国際的にも公正に評価を受けられることが研究者にとっては最大の魅力であり、研究者の士気を高めている」と語っている。

科学技術創造立国を国是として掲げている日本が、国家としての科学技術政策と目標と将来戦略が、国民や研究現場にまで明確に伝わってこないことは政治、行政、学術現場の最大の課題である。

 


上海点描・・変貌する中国社会・・下

上海QCAC

  変貌する調査会社の受託業務

 冒頭の写真は、上海の調査会社QCAC駿麒国際諮詢有限公司(略称・QCAC)を訪問した際の写真である。中央がQCACの藩総経理、左が安達孝裕・日本部担当部長、右が陸傑・事業推進部長である。同社は、主として日本企業のコンサルタント業務を受託しているが、特に模倣品調査と摘発では多くの実績をあげてきた。

 筆者とは10年以上前からのお付き合いであり、東京理科大学知財専門職大学院の教員時代には、藩総経理が研究室を訪ねてきたこともある。今回の取材で感じたことは、同社の業務が中国の産業構造の変革に合わせて拡大してきたことだ。

 これまでは模倣品摘発と調査に重点が置かれていたが、これを幅広く企業経営のサポートをすることに拡大してきたことだ。知財関係の調査に重点があったが、それを経営マネジメント、人事管理、人材調査などより質の高い業務に広げてきた。

 同社の得意は各種の調査である。たとえばある特定の人物調査、ライバル社の特定人物の行動調査、自社の人事管理などに必要な調査などである。中国社会で日本企業が経営するのは想像を絶するような局面を乗り越えていく必要がある。筆者な多くのケースを聞いてきた。

 QCACは、日本企業向けの業務を主体にしており、近く東京にも事務所を構える方針という。QCACの活動を見ていると、中国社会の変貌ぶりが見えてくる。

 不死鳥のようによみがえった白木学さん

 携帯電話のマナーモードを世界に広げた人物として知られる白木学さんは、かつてはアメリカのアップル社の携帯電話に格納したカメラの自動焦点用のモーターを100パーセント受注するなどこの世界では知らない人がいないほどの有名人だった。

 シコー株式会社をジャスダックに上場し、売り上げも100億円をうかがうまでに発展した。それが暗転したのは金融機関の勧めるデリバティブに手を出したためである。超円高が進んで多額の返済額が膨らみ上海に従業員1万人弱を抱えていたオートフォーカス、小型ファンモーター製造工場は立ちいかなくなり、ついに2012年12月に3億7400万円で上海の企業に譲渡された。

 ありていに言えば、経営が経ちいかなくなり倒産したということだ。筆者は、シコー株式会社の倒産までの3年間ほど、非常勤監査役として経営実態をつぶさにみてきたので、そのあらましは理解していた。経営トップの白木さんをはじめ、同社の経営陣の奮闘ぶりは涙なくして語れないほど壮烈な状況だった。

 どれほど努力しても為替の動向や、その為替を反映した金融商品への対応は、どうすることもできない。どこにも不満をぶつけることができない国際金融動向は魔物であった。一敗地にまみれた白木さんは、あれから2年余を経て、再びよみがえっていた。

白木

上海の工場で実験に取り組む白木学さん

 上海市松江区の、かつて大工場を構えていた同じ工場地域の一角に間借りして、小さな工場の経営を始めていた。製造するのは小型モーターである。これまでは、小型と言っても携帯やスマホに内蔵するような超小型モーターだったが、今度は自走車、ロボットなどに使うようなモーターであり、それなりに大きいものもある。

 その開発に取り組み、ついに従来からのモーターの性能をはるかに超えるモーターを発明して特許を出し始めている。すでにいくつかの企業からも引き合いが来ており、製品を納品した実績も出し始めている。工場を訪問すると、多数の機械に取り囲まれた場所で、白木さんは黙々と実験に取り組んでいた。

 白木さんがまた新しいモーターを引っさげて実業界に復帰する日を楽しみにしている。

 元気に活動するユニ・チャームの清水亘さん

 東京理科大学知財専門職大学院(MIP)1期生の清水亘さんが、ユニ・チャームの中国知財担当で活動しているので久しぶりに懇談する機会があった。筆者の宿泊したホテルから歩いて7分ほどに屹立するインテリジェントビルに入っていた。

 清水さんと変貌する中国社会と業界の事情、模倣品現場の話などを聞いて情報交換をしたが、やはり中国での企業活動の厳しさを感じた。

 帰国直前になって、不思議な体験をした。上海の知人に手紙を書いて投函したいと思い、宛先を書いた封筒をホテルのレセプションに持参し、切手を貼って投函したいと申し出た。普通、ホテルでは切手代を徴収して発送はやってくれるのだが、このホテルの従業員は、切手代すら知らなかった。

 国内に郵送する封書の切手代を知らない。3人ほどのスタッフが顔を寄せ合い話し合っているが分からない。郵便局へ行ってほしいという。言葉は丁寧だったが、あきれてものが言えない気持ちだった。それがまだ続いた。

 切手を貼らない封書を持参し、そのまま忘れて空港まで来てしまった。ANAの搭乗口まで来てから思い出し、搭乗口のスタッフの女性の中国人に切手代を出すから貼って投函してほしいと申し出てみた。そのとき「手数料」も含めて10元(約200円)を出した。

 若い女性は、まず封書の国内の切手代がいくらかを知らなかった。ホテルと同じようにその辺のスタッフに聞いていたが分からない。10元はしないという。もちろん、10元はしないが、ま、手数料も含めてという気持ちで封書と一緒に10元札を出した。

 しかし女性は、1元以下と思うので自分で負担するから10元は要らないと返してくる。どうしても10元札を受け取らないので、それではと筆者は1元札に変えて、せめてこれくらいは受けて取ってと懇願した。結局女性は、1元札を快く受け取り、封書は切手を貼って間違いなく投函すると言ってくれた。

 無事に帰国して知人にメールで問い合わせたが、1か月過ぎてもついに封書は届かなかった。あの空港の女性が、投函しなかったとは考えられない。中国の知人に聞いたところ、中国では手紙が届かないことはよくあることだから、その程度のことだろうということだった。

 また、中国社会の一面を見た思いだった。

 

 

 

 


驚異的に進化する中国社会

 家族付き合いの中国人の友人 

 今から15年前に知り合った中国北京の旅行業者の邢鋼さんとは、親戚付き合いである。北京に行けば私の大好きな水餃子のお店でゆっくりと懇談し、東京へ来れば居酒屋へ繰り出して楽しい懇談になる。

 15年前、北京に行ったときは、道路建設、ビル建設が始まったばかりであり、街中が混とんとしていた。世界のブランド品のデッドコピーが、これ見よがしに店頭に積みあげられ、観光客はニセモノ買いを楽しんでいた。筆者もニセモノツアーなるものを企画して、30人ばかり引き連れて北京を歩き回った。

 混とんとしていた中国は、あっという間に追いついてきた。進展したものでもっとも顕著なのはIT関連のツールと手段の使用である。インターネットモールは、世界トップの規模に成長し、携帯、スマホ、メールが驚くほど進化した。

 中国版ラインの威力を実感

 本日、邢鋼さんと懇談したが、中国のラインと言われているWeChatアプリを教えてもらい、すぐに交信した。ラインとまったく同じ機能をもったインターネット交信ツールである。アプリをダウンロードしたらすぐに、東京理科大学知財専門職大学院当時の教え子で中国と台湾、日本にいる中国人、台湾人らから多数のメールが来た。

 これには本当に驚いた。邢鋼さんの解説によると、中国人の多くがこのアプリで日常的に交信しているそうで、中国に行ったらこれで不自由なく情報交換できるという。中国でラインはつながらないが、その代わりWeChatはつながる。中国の国策に違いないが、その戦略には舌を巻く。

 このようにIT関連技術の普及は、中国社会をあっという間に先進国を追跡し、追いつき、追い越そうとしている。中国社会が成熟し、生活レベルが上がっていくことは、日本にとってもいいことである。

 

 1週間で一人平均100万円の爆買い

 邢鋼さんは今回、30人ほどの中国人ツアー客を引き連れて来日し、日本の観光を先導しているのだが、今年中に中国から300万人を超える観光客が来日するという。邢鋼さんが引き連れている中国人観光客はかなりの裕福層だが、1週間の滞在中に一人平均100万円を日本で使っているという。驚きである。

 経済的に成功した裕福層は、中国社会の進化の側面になっている。科学技術も大学の産学連携も知的財産制度も中国はあっという間に追いついてきた。筆者は15年前から60回ほど中国に渡航して中国社会の変転ぶりを見てきたが、過去を振り返って今を見ても驚きの一語である。

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 写真は、邢鋼さんからのお土産である。このようなお菓子類も、甘さ控えめになり日本の味に近づいてきている。中国の空港で売っている高くてまずいお菓子類、お土産類は、間もなく売れなくなるだろう。空港の免税店は利権とワイロの巣窟と聞いたことがある。日本人観光客が最大のカモとも聞いている。だから筆者は、空港では買ったことがない。

 

 日本の実態を知らない中国人の若い世代

 もう一つ、中国側の課題は、若い世代が日本を理解していないと邢鋼さんは嘆いていた。中国で垂れ流されている反日ドラマを信じ込んだ若い世代は、日本嫌いになっている。しかし来日して様々な体験をすると日本を見直し、たちまち日本ファンになっていくという。

 これは日中間の政治的な摩擦が生み出しているひずみだろう。それを超えていくのは民間交流である。そんなことを邢鋼さんと話し合い有意義な飲み会だった。

 

 


加藤紘一団長の日中友好訪中団の報告ーその1

                         

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 想像以上に悪化していた北京の空

 加藤紘一・日中友好協会会長(元自民党幹事長)を代表とする日中友好訪中団の一行は7月1日の正午過ぎ、北京空港に降り立った。

 北京空港に着陸した飛行機の窓から見た北京の空は、深いスモッグに覆われていた。北京には20回ほど来ているが、これだけ曇っている大気と空は初めてである。北京の大気汚染が想像以上に悪化していることを初めて実感した。

 環境浄化で日本の技術を中国に持ち込もうとする活動が活発だが、環境浄化は技術では成功した。行政施策がなくして環境浄化はできない。技術より行政施策。これは筆者の取材体験からきたものだが、今回の訪中でもこの視点で発言した。

 王蕾との再会で誕生祝い

  ホテルに落ち着くとすぐに、馬場研5期生の王蕾に電話をした。王蕾は筆者のこのブログを見て直接アクセスしてきた縁で、1年間東京理科大学で留学生生活を 送った。帰国して中国科学院で博士学位を取得し、いまポスドク研究員として清華大学で日本の科学歴史や科学普及活動の研究を続けている。

 

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  電話をするとすぐにホテルに駆けつけてきた。早速、隣の北京飯店の喫茶店に行って近況報告会。往時の馬場研の仲間たちの消息を報告した。話をしているうちに王蕾がこの日誕生日であることが判明。早速、誕生祝にすぐ近くにある北京随一の繁華街・王府井に繰り出した。

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 王蕾に何か気の利いたプレゼントをしたいが、女性のブティックはどれ もこれも垢抜けしない。それでも王蕾のファッションは、どう見ても10代の女性っぽい。たまたま見つけた帽子屋さんで可愛い帽子をプレゼント。ついでに若 い女性用のお店でいかにも王蕾が好みそうなひらひらのついたブラウスを発見。これもプレゼントして大いに盛り上がった。

 中日友好協会招待の夕食会

 加藤会長が北京空港に着くとすぐにVIP室に案内された。そこで待っていたのは、堀之内秀久公使ら在中国日本大使館のスタッフだった。いま、日中間は尖閣諸島問題で「冷たい関係」が続いている。加藤紘一先生の友好訪中団に期待する雰囲気を感じた。

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 夕刻から王秀雲・中日友好協会副会長主催の夕食会である。関立彤・中日友好協会秘書長、程海波・中日友好協会理事、府博・中日友好協会交流部スタッフなど多くの中国人と一緒に楽しい歓談の夕食会だった。

 夕食会では、「尖閣諸島」という言葉にはお互いに触れない。しかし「いま日中間の交流が細くなっている異常な状態を民間交流で打開したい」という日中双方の思いが会話の端々に出ている。雰囲気は友好的なムードで和気あいあいだった。

 しかしこの時の会話と雰囲気から、いま硬直化している日中間は容易には溶解しないことを感じた。それは誰もそのことを言わないが、言葉の端々から、打開策が容易ではないという雰囲気が伝わってくる。

 今回の硬直化は、かなりの期間続くだろう。日中の要人の会話には、そのような文言はなかったが、筆者は肌で感じた。その感じは、瀋陽、大連市でも同じだった。 

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写真は夕食会で出ていた筆者の名札。中国漢字に「錬」という字はないので、

このような字になります。「錬」は日本人が作った漢字だったようです。

 

日中友好代表団の一員として訪中

 加藤紘一・日中友好協会会長の代表団が、7月1日から北京、瀋陽、大連での友好交流で訪中した。筆者もその一員として随行し、初日の北京で直近の日中交流について意見を交換した。

 冒頭の写真は、北京空港の午後12時過ぎの空模様である。飛行機が着陸すると、まるで濃霧の中に着陸したように視界がどんより曇っている。天候は曇りと いうことだが、夕方の日暮れのような光景である。大気汚染の状態は、昔の日本のそれに比べるとやはり相当に深刻ではないかと思った。

 宿泊先の北京貴賓楼飯店は、北京飯店の隣りにある高級ホテルであり、中日友好協会が手配した素晴らしいホテルである。すぐ近くには北京随一の繁華街「王府井」があり、散歩がてら行ってみると観光客で大混雑である。欧米からの観光客が多いのに驚いた。

 馬場研に留学してきた中国科学院の王蕾に連絡し、ホテルで再会した。北京飯店の喫茶ルームでコーヒーを飲みながらしばし互いに近況を報告しあった。王蕾は、中国に帰国後、中国科学院で日本の科学普及活動をテーマに博士学位論文を書いて学位を取得した。

 いまはポスドクの身分で清華大学日本文化センターで研究をしている。日本に再びわたって、日本の科学普及の歴史を研究したいが、なかなかチャンスがない。そんな話をして喫茶ルームを出るときにびっくりしたのはコーヒーの値段である。

 ホテルの何の変哲もない喫茶店だったが、2人のコーヒー代が日本円で約3200円だった。日本の5倍程度の値段にびっくりしたが、北京ホテルは中国で最高級のホテルだけに、これくらいはとるのだろうが、それにしても中国の高級ホテルの物価高には驚いた。

 夜は、中日友好協会の王秀雲副会長主催の歓迎夕食会に招かれ、中国風西洋料理というユニークな晩餐を楽しんだ。この夕食会では、日中の文化の共通項や食文化などについて話題が広がり楽しい懇談だった。

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 下の写真は、王蕾と久しぶりに再会しての記念写真である。北京飯店の正面玄関前で撮ったものだが、話をしているうち、本日7月1日は王蕾の誕生日である ことが分かった。そこですぐに王府井へ誕生祝いの買い出しに出かけた。限られた時間だったので、帽子とひらひらのついた王蕾好みのブラウスをプレゼントし た。

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 下の写真は、誕生祝いにプレゼントした可愛い帽子とブラウスに「お色直し」をしたところである。時間がないので急いで着替えて記念写真となった。王蕾 は、この日の誕生日でいくつになったのか。本人は言わなかったが筆者は分かっている。ヒントは、馬場研5期生の6人娘のうち下から2人目の歳である。

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 つかの間の王蕾の近況報告と楽しい誕生祝い、そして中日友好協会の歓迎夕食会と続いて北京での一日はあっという間に過ぎて行った。

            

                               

麻生晴一郎氏の講演「中国の草の根を見つめる・・・日本観、市民社会、日中民間交流」

                               
                  
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 科学技術振興機構(JST)中国総合研究交流センター(CRCC)の中国研究サロンが、5月24日、同センターで開催され、ノンフィクション作家の麻生 晴一郎氏が、草の根運動の実態を紹介しながら、将来に向けた前向きの日中交流について多くの示唆に富んだ講演を行った。 講演後には聴衆と麻生氏が飲み物を傾けながら、意見交換を行う交流会を行った。

 麻生氏の体験談は非常に興味深いものだった。地方の人々と会話をしてみると、日本のことをほとんど知らない人が多い。日本が過去の戦争で日本が謝罪した ことがないと認識している人も多いという。また、日本の中には古代の中国の歴史や文化に興味を持つ人が多いこともまったく認識していない人も多い。

 日本に対するイメージは、抗日戦争ドラマの域を出ないのが普通だ。こうした体験は若い世代との交流で感じたものだというが、中国人のお年寄りは日本について話をする機会がほとんどないことも若い世代の日本知識貧困に結びついているようだ。

 沿海部で日本のサブカルがいかに人気であっても、反日になるとあえて日本を擁護することはやりにくくなる。 一方で日本に対する評価もそれなりにある。礼儀正しくマナーがいいことなどを評価するが、日本に対して怖いという印象も出ている。これを日本の団結心とか 愛国心と結びつけて評価する中国人もいるようだ。しかしこれは日本人に対する悪意と隣り合わせになることもある。

  政府と民間の距離は状況によってさまざまだが、地方政府に不満を持つ人でも、徹底した社会主義を目指す人と民主化を目指す人と2つのタイプに分かれると分析している。この2つの階層が、脱政府的な意見階層として市民社会層を作っている。

 日本はとかく中国の草の根民衆とのふれあいや内陸部との交流を軽視しがちだが、これからは個人交流も含めたこうした民間交流が重要であるとの見解を示した。

 地方から沿岸部の大都市部など広範囲に中国の民衆と交流のある麻生氏は、体験談から基づいた中国人の対日観を語った。これまであまり語られていなかった 内容や分析であり、非常に興味ある話だった。 講演のあとは懇親会が開かれ、麻生氏を囲んで中国観について討論と意見交換が続いた。

 

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袁堂軍先生の講演「どのような企業が中国から離れるか?」

                                                

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 尖閣諸島問題をきっかけに日中間の交流が冷え込み、かつてない停滞期になっているが、この状況の中で日本の企業は中国とどのように付き合うべきか。5月 16日に開かれたJST・中国総合研究交流センター主催の研究会で、日中の企業活動の状況を調査して分析した結果を復旦大学アジア経済研究センター長で国 際金融報研究院学術院長の袁堂軍先生が講演を行った。

  中国の最近の人件費の上昇はすさまじい勢いである。袁先生の示したデータによると、縫製業ではすでに月収2500人民元(約4万円)から3000元(約4 万8000円)に達しているという。ベトナムは500元(約8000円)、インドは250元(約4000円)、カンボジアは300元(4800円)であ る。 さらに人民元の切り上げ、外資系企業に対する優遇措置の撤廃などが続き、中国でのビジネスリスクが高くなってきた。

 さらに袁先生らの調べで、他の新興国と中国とをビジネスリスクで比較をしたところ、次のような点が浮かび上がってきている。

 中国は「法制度が未整備であり運用に問題がある」、「知的財産権の保護に問題あり」、「代金回収上のリスクがある」、「政情リスクに問題がある」などの 項目で、他の国々に比べてかなり高い率で指摘されているという。こうした状況から中国ビジネスに参入しないか離れる理由として、①生産コストなど製造面で 他の国・地域より劣る、②法律や規制が整備されておらず運用も不安定だ、③カントリーリスクが高いなど安定的な工場操業や店舗の営業にリスクを伴う-など が指摘されている。

 その一方で中国でビジネス展開する魅力は、日本の大企業や中小企業にとって、中国は市場規模が大きいことや成長性から考えてビジネスが拡大できると袁先生らは考えているようだ。

 それでは日本企業はどのような戦略で中国ビジネスを考えるべきか。袁先生は次の3つの道筋を示した。第1が中国プラスワンである。中国をメインの投資・運営先とするがリスク分散でもう1つの拠点を東南アジアに設立する。

 第2の戦略は、中国・パッシングである。完全に中国から撤退するものであり、日本企業にとってはsunk cost(事業に投下した資金のうち、事業の撤退・縮小を行っても回収できない費用)が大きくなる。他に転用ができない事業ほど埋没費用は大きくなること になる。しかしこれは中国にとっても打撃となる。

 第3の戦略は中堅・中小企業は果敢に参入するべきとする戦略である。こうした状況と戦略の選択は、企業のサプライチェーン、バリューチェーンをどう位置付けるかにかかってきているとした。

 これは生産工程の国際分業化の深化をどのように企業経営に取り入れて有利なビジネスを築いていくかにかかってきている。日本企業は、中間財、サービス、 最終財の輸出先をアメリカから中国に大きくシフトしてきている。その状況を大まかに言えば、中国貿易では電機、金属、化学などの中間財輸出が急増し、電 機、繊維、食品などの最終財輸入が急増した。相対的に対米貿易は、2005年ごろから急激に減少したことになる。

  しかし国際分業の深化によって、中間財の生産が日系企業も含めて現地生産が拡大し、中国やアセアン諸国が部材供給国として台頭してきた。相対的に日本からの輸出が減少した。「日本がFTAやEPAの分野で大きく出遅れたことにも起因している」と袁先生は指摘した。

   このような状況を考えると袁先生は「日本企業はむしろこれから、中国とのビジネスチャンスにある」と提起した。それは生産拠点として依然として中国の魅力 は変わっていないこと、中国の人的資本、熟練労働者が蓄積されてきていること、物流やインフラなどが整備されてきたことなどをあげている。

 特に大企業の下請けで成長してきた日本の中小企業は、技術力が高いので中国の様々な資源と「合わせ技」にもっていけば、利益を享受できるとの主張を展開 した。さらに付加価値として中国の消費者は、「イデオロギー主義」から「合理的な消費者」に変化してきており、消費者として日本製を評価する時代になって いる。消費者の選択が「量から質」に変革してきたもメリットがあると指摘している。

 日本企業が中国から東南アジアに移行している反面、中国の内需市場に狙いを定めて二次産業から金融やコンサルティングなど研究開発も含めた三次産業に移行していることを指摘し、中国は依然として日本にとっては主要な投資対象国であると結論付けている。

 袁先生の見解は、一つの見方でありこれが切り札になるとは思えない。というのは政治的な状況は不安定であるが、それとは無関係に国際ビジネス環境は激変の道を歩いている。つまり経済活動は止めようがない環境の中で速度を速めている。

 袁先生の分析と見解は簡潔に整理された内容であり素晴らしいものだった。この見解が実現することを筆者は熱望する。是非、日中の友好関係を取り戻したいと思う。

 

中国総合研究センター・アドバイザリー委員会の開催

                                                

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 科学技術振興機構(JST)中国総合研究センターのアドバイザリー委員会が3月25日、東京市ヶ谷で開かれ、今年度の活動総括と次年度の活動計画について討論が行われた。

 今年度は、昨年9月に開催予定だった「第3回日中大学フェア&フォーラム」が、尖閣諸島問題に延期となり、大きな打撃を受けた。

 しかし今月、中国の北京・上海で開催された「中国国際教育巡回展」と「上海地域大学サイエンスパーク・イノベーションフォーラム」への参加で、交流の打開ができ、大きな実績となった。この中国でのイベントに日本の40の大学が参加して、中国の学術関係者に感銘を与えた。

 これはJSTが費用補助をしながら、中国総合研究センターのスタッフが日本の大学と中国当局への働きかけが功を奏したもので、日中大学交流の全面再開に向けた第一歩となる活動となった。

 こうした活動の報告のほかに、次年度からの積極的な活動展開を提示し、アドバイザーの委員から多くの注文と期待するコメントをもらった。

蔡成平氏の講演「中国マスメディアの実態と微博革命」

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中国のメディアは、中国当局の厳しい締め付けの中でも本来のメディアの役割を目指して頑張っている様子を新浪財経日本支局長の蔡成平氏が講演した。

 3月21日に開催されたJST中国総合研究センター(CRC)の研究会で講演したもので、特にインターネットによる情報交換の実態は世界一の規模で独特の発展をしている様子が分かった。

 中国当局が考えている中国のマスメディアとは、中国共産党と政府の「喉舌(代弁者)」であり、場合によっては党の路線に対する反応を探るための「耳目」の役割も担っているという。つまり、マスメディアは、党と政府の都合のいい宣伝機関でしかない。

 新聞の発行は、新聞社の登記と発行認可の規定の中で行われている。中国の新聞記者は、西側先進国の記者に比べて質が悪いという評価を聞くことがあるとい うが、蔡支局長によると「中国の記者は当局からの重い圧力の中で、読者が知りたいものを報道している」とし、むしろ質が高いのではないかとの見解を語っ た。

 党の機関紙「人民日報」の発行部数は急速に減少しており、「青年報」「経済日報」などの専門紙や庶民に密着したニュースを掲載する各地の夕刊紙、海外の情報を転載する「参考消息」などが、急激に読者数を増やしているという。

 中国全国各地で発行している新聞各紙は、発行部数の急増と共に売り上げも伸ばし、競争が激化して弱小新聞社は経営悪化から整理統合になる社も少なくない ようだ。こうした中で、当局の締め付けをくぐり抜けるように巧みな表現方法で真実を伝えようとする新聞や週刊誌も出てきている。

 たとえば都市報ジャンルでトップとされている「南方都市報」は、2011年のノーベル平和賞を劉暁波氏が受賞した際には、一面に空席の椅子とタンチョウ (丹頂鶴)の写真を掲載した。中国語で「鶴」は「賀」と同じ発音であることから、劉氏の受賞をお祝いする無言のメッセージを伝えようとしたようだ。

 中国政府は、劉氏の平和賞受賞に反発していたため、中国の報道機関はこの受賞をほとんど前向きに報道しなかった。このような動向の中で南方都市報は、祝意を表現しようとしたものだが同社は「他意はなく、過度の解釈をしないように望む」との見解を示したという。

 また、「南方人物週刊」では、2010年10月18日付けで「あなたが知らない石原慎太郎」との特集を組み、石原氏は「反中国ではなく反中共だ」という大胆な報道をしたという。

 総じて南方のメディアは、反政府的な視点で報道する姿勢が見えるようで、北京に近い北方系のメディアはどうしても腰が引けているか当局のコントロール下で活動せざるを得ないようだ。こうした中で最近、急速に発展してきたのがネットメディアである。

 ユーザーがインターネットで自由に発言することができ、情報発信の役割もある。当局の管轄下にある新聞、テレビ、ラジオなどとは違って、中国国民に自由 な発言の機会を与えるようになってきた。現在、中国の4大ネットメディア・ポータルサイトは、テンセント(騰訊)、シーナ(新波網)、ソーフー(捜狐)、 ネットイーズ(網易)でこの4社でポータル市場の4分の3を占めている。

 このようなポータルサイトは、当局の意に沿わない発信や活動があれば、ただちに当局がサイトに介入してくるので、市場化、産業化と規制の狭間の中で活動 せざるを得ない。また最近、中国版ツイッターと呼ばれる「新浪微博」 が、人気急上昇しているという。このミニブログサイトは、ツイッターとフェイスブッ クの両方を併せ持っているようなサイトで、2012年3月時点で3億2千万人以上のユーザーがいるという。

 経営する新浪公司の総資産は36億ドルとされ、そのうち新浪微博の資産価値は23億ドルという。ほぼすべてのメディア会社が登録しており、微博は中国ビ ジネスに不可欠のツールになっている。蔡支局長は、インターネット時代を迎えて時々刻々と変化する中国のメディアの動向から目を離せない実態を報告した。

 

袁堂軍先生の講演「どのような企業が中国から離れるか?」

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 尖閣諸島問題をきっかけに日中間の交流が冷え込み、かつてない停滞期になっているが、この状況の中で日本の企業は中国とどのように付き合うべきか。5月 16日に開かれたJST・中国総合研究交流センター主催の研究会で、日中の企業活動の状況を調査して分析した結果を復旦大学アジア経済研究センター長で国 際金融報研究院学術院長の袁堂軍先生が講演を行った。

  中国の最近の人件費の上昇はすさまじい勢いである。袁先生の示したデータによると、縫製業ではすでに月収2500人民元(約4万円)から3000元(約4 万8000円)に達しているという。ベトナムは500元(約8000円)、インドは250元(約4000円)、カンボジアは300元(4800円)であ る。 さらに人民元の切り上げ、外資系企業に対する優遇措置の撤廃などが続き、中国でのビジネスリスクが高くなってきた。

 さらに袁先生らの調べで、他の新興国と中国とをビジネスリスクで比較をしたところ、次のような点が浮かび上がってきている。

 中国は「法制度が未整備であり運用に問題がある」、「知的財産権の保護に問題あり」、「代金回収上のリスクがある」、「政情リスクに問題がある」などの 項目で、他の国々に比べてかなり高い率で指摘されているという。こうした状況から中国ビジネスに参入しないか離れる理由として、①生産コストなど製造面で 他の国・地域より劣る、②法律や規制が整備されておらず運用も不安定だ、③カントリーリスクが高いなど安定的な工場操業や店舗の営業にリスクを伴う-など が指摘されている。

 その一方で中国でビジネス展開する魅力は、日本の大企業や中小企業にとって、中国は市場規模が大きいことや成長性から考えてビジネスが拡大できると袁先生らは考えているようだ。

 それでは日本企業はどのような戦略で中国ビジネスを考えるべきか。袁先生は次の3つの道筋を示した。第1が中国プラスワンである。中国をメインの投資・運営先とするがリスク分散でもう1つの拠点を東南アジアに設立する。

 第2の戦略は、中国・パッシングである。完全に中国から撤退するものであり、日本企業にとってはsunk cost(事業に投下した資金のうち、事業の撤退・縮小を行っても回収できない費用)が大きくなる。他に転用ができない事業ほど埋没費用は大きくなること になる。しかしこれは中国にとっても打撃となる。

 第3の戦略は中堅・中小企業は果敢に参入するべきとする戦略である。こうした状況と戦略の選択は、企業のサプライチェーン、バリューチェーンをどう位置付けるかにかかってきているとした。

 これは生産工程の国際分業化の深化をどのように企業経営に取り入れて有利なビジネスを築いていくかにかかってきている。日本企業は、中間財、サービス、 最終財の輸出先をアメリカから中国に大きくシフトしてきている。その状況を大まかに言えば、中国貿易では電機、金属、化学などの中間財輸出が急増し、電 機、繊維、食品などの最終財輸入が急増した。相対的に対米貿易は、2005年ごろから急激に減少したことになる。

  しかし国際分業の深化によって、中間財の生産が日系企業も含めて現地生産が拡大し、中国やアセアン諸国が部材供給国として台頭してきた。相対的に日本からの輸出が減少した。「日本がFTAやEPAの分野で大きく出遅れたことにも起因している」と袁先生は指摘した。

   このような状況を考えると袁先生は「日本企業はむしろこれから、中国とのビジネスチャンスにある」と提起した。それは生産拠点として依然として中国の魅力 は変わっていないこと、中国の人的資本、熟練労働者が蓄積されてきていること、物流やインフラなどが整備されてきたことなどをあげている。

 特に大企業の下請けで成長してきた日本の中小企業は、技術力が高いので中国の様々な資源と「合わせ技」にもっていけば、利益を享受できるとの主張を展開 した。さらに付加価値として中国の消費者は、「イデオロギー主義」から「合理的な消費者」に変化してきており、消費者として日本製を評価する時代になって いる。消費者の選択が「量から質」に変革してきたもメリットがあると指摘している。

 日本企業が中国から東南アジアに移行している反面、中国の内需市場に狙いを定めて二次産業から金融やコンサルティングなど研究開発も含めた三次産業に移行していることを指摘し、中国は依然として日本にとっては主要な投資対象国であると結論付けている。

 袁先生の見解は、一つの見方でありこれが切り札になるとは思えない。というのは政治的な状況は不安定であるが、それとは無関係に国際ビジネス環境は激変の道を歩いている。つまり経済活動は止めようがない環境の中で速度を速めている。

 袁先生の分析と見解は簡潔に整理された内容であり素晴らしいものだった。この見解が実現することを筆者は熱望する。是非、日中の友好関係を取り戻したいと思う。

 

中国総合研究センター・アドバイザリー委員会の開催

                                                

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 科学技術振興機構(JST)中国総合研究センターのアドバイザリー委員会が3月25日、東京市ヶ谷で開かれ、今年度の活動総括と次年度の活動計画について討論が行われた。

 今年度は、昨年9月に開催予定だった「第3回日中大学フェア&フォーラム」が、尖閣諸島問題に延期となり、大きな打撃を受けた。

 しかし今月、中国の北京・上海で開催された「中国国際教育巡回展」と「上海地域大学サイエンスパーク・イノベーションフォーラム」への参加で、交流の打開ができ、大きな実績となった。この中国でのイベントに日本の40の大学が参加して、中国の学術関係者に感銘を与えた。

 これはJSTが費用補助をしながら、中国総合研究センターのスタッフが日本の大学と中国当局への働きかけが功を奏したもので、日中大学交流の全面再開に向けた第一歩となる活動となった。

 こうした活動の報告のほかに、次年度からの積極的な活動展開を提示し、アドバイザーの委員から多くの注文と期待するコメントをもらった。

 

蔡成平氏の講演「中国マスメディアの実態と微博革命」

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中国のメディアは、中国当局の厳しい締め付けの中でも本来のメディアの役割を目指して頑張っている様子を新浪財経日本支局長の蔡成平氏が講演した。

 3月21日に開催されたJST中国総合研究センター(CRC)の研究会で講演したもので、特にインターネットによる情報交換の実態は世界一の規模で独特の発展をしている様子が分かった。

 中国当局が考えている中国のマスメディアとは、中国共産党と政府の「喉舌(代弁者)」であり、場合によっては党の路線に対する反応を探るための「耳目」の役割も担っているという。つまり、マスメディアは、党と政府の都合のいい宣伝機関でしかない。

 新聞の発行は、新聞社の登記と発行認可の規定の中で行われている。中国の新聞記者は、西側先進国の記者に比べて質が悪いという評価を聞くことがあるとい うが、蔡支局長によると「中国の記者は当局からの重い圧力の中で、読者が知りたいものを報道している」とし、むしろ質が高いのではないかとの見解を語っ た。

 党の機関紙「人民日報」の発行部数は急速に減少しており、「青年報」「経済日報」などの専門紙や庶民に密着したニュースを掲載する各地の夕刊紙、海外の情報を転載する「参考消息」などが、急激に読者数を増やしているという。

 中国全国各地で発行している新聞各紙は、発行部数の急増と共に売り上げも伸ばし、競争が激化して弱小新聞社は経営悪化から整理統合になる社も少なくない ようだ。こうした中で、当局の締め付けをくぐり抜けるように巧みな表現方法で真実を伝えようとする新聞や週刊誌も出てきている。

 たとえば都市報ジャンルでトップとされている「南方都市報」は、2011年のノーベル平和賞を劉暁波氏が受賞した際には、一面に空席の椅子とタンチョウ (丹頂鶴)の写真を掲載した。中国語で「鶴」は「賀」と同じ発音であることから、劉氏の受賞をお祝いする無言のメッセージを伝えようとしたようだ。

 中国政府は、劉氏の平和賞受賞に反発していたため、中国の報道機関はこの受賞をほとんど前向きに報道しなかった。このような動向の中で南方都市報は、祝意を表現しようとしたものだが同社は「他意はなく、過度の解釈をしないように望む」との見解を示したという。

 また、「南方人物週刊」では、2010年10月18日付けで「あなたが知らない石原慎太郎」との特集を組み、石原氏は「反中国ではなく反中共だ」という大胆な報道をしたという。

 総じて南方のメディアは、反政府的な視点で報道する姿勢が見えるようで、北京に近い北方系のメディアはどうしても腰が引けているか当局のコントロール下で活動せざるを得ないようだ。こうした中で最近、急速に発展してきたのがネットメディアである。

 ユーザーがインターネットで自由に発言することができ、情報発信の役割もある。当局の管轄下にある新聞、テレビ、ラジオなどとは違って、中国国民に自由 な発言の機会を与えるようになってきた。現在、中国の4大ネットメディア・ポータルサイトは、テンセント(騰訊)、シーナ(新波網)、ソーフー(捜狐)、 ネットイーズ(網易)でこの4社でポータル市場の4分の3を占めている。

 このようなポータルサイトは、当局の意に沿わない発信や活動があれば、ただちに当局がサイトに介入してくるので、市場化、産業化と規制の狭間の中で活動 せざるを得ない。また最近、中国版ツイッターと呼ばれる「新浪微博」 が、人気急上昇しているという。このミニブログサイトは、ツイッターとフェイスブッ クの両方を併せ持っているようなサイトで、2012年3月時点で3億2千万人以上のユーザーがいるという。

 経営する新浪公司の総資産は36億ドルとされ、そのうち新浪微博の資産価値は23億ドルという。ほぼすべてのメディア会社が登録しており、微博は中国ビ ジネスに不可欠のツールになっている。蔡支局長は、インターネット時代を迎えて時々刻々と変化する中国のメディアの動向から目を離せない実態を報告した。

 

日中知財情報交換会を開催

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 上海で知財関係の調査会社、IPフォーワード社(IPF)を経営する分部悠介弁護士を囲んで、2月7日、プレスセンターで日中の知財情報交換会を開い た。IPFは、中国を拠点にアジア地域など広範囲の知財調査を展開しており、分部社長は中国社会の事情やビジネス環境を熟知している。

 この日参加したのは、中国の雲南省で元従業員が会社の秘密情報を盗用してコピー工場を建設した被害者であるバイオジェニック社の部長、中国の大手特許事 務所である北京銘碩国際特許事務所日本代表、東京税関幹部職員、ソニー知財センターのスタッフ、日本司法支援センター職員など多彩な人々が集まった。

 中国での模倣品被害は一向におさまらない。最近は、会社乗っ取りに近いコピー工場の建設や特許、実用新案、商標などの権利を先取りし、その権利を主張して損害賠償金を請求する事件など、不正の手口が進化してきている。

 中国では、こうした調査や行政・司法・公安などへの働きかけ、様々な中国当局への対策費(いわゆる賄賂)などで使う費用は、「必要経費」と考えるべきと 思っていたが、分部社長も全く同じ意見だった。中国で経営する日系企業で日常的に起きている様々な話を聞いていると、中国社会が成熟するのは無理ではない かと思うことがしばしばある。

 これは学歴とか頭脳の良し悪しとは無関係だ。一国の文化であり、民族のDNAでもある。日本と日本人が特に優れているわけではないが、民族の差、社会の差は歴然と存在するものであり、その前提に立った対策や経営をしなければビジネスは成功しないという感慨を持った。

 

 

忘年・麻雀大会で今年も締めくくり

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 科学技術振興機構・中国総合研究センター(CRC)のメンバーらと、恒例になっている今年最後の麻雀大会と忘年会を開催した。麻雀は、中国ルールで行ったが、これが独特のルールで面白い。 実力というよりも運が左右するが、運だけでもない。

 いつものことだが勝ち負けよりも、自分と他人の浮き沈みを楽しみ、その過程を楽しむ。日本人と中国人がお互いに勝手なことを言い合って、ま、だまし合い。そしてこの日に出し物は、秘伝の味噌で作ったちゃんこ鍋。

 これは大相撲の羽黒花親方が発明した秘伝の味噌で、親方が亡くなってから女将さんから特に伝授されたものだ。その作製方法は、女将さんとの約束で誰にも教えることはできない。しかし、作った味噌は、希望者に少しだけおすそ分けしている。

 おいしいちゃんこ鍋を食べて、楽しい麻雀大会をして、今年も無事に締めくくった。波乱の2012年も間もなく暮れようとしている。

中国総合研究センターの忘年会の開催

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文部科学省・科学技術振興機構(JST)の中国総合研究センター(CRC)の忘年会が、12月18日、東京・麹町の中華レストランで開催し、今年の日中の諸問題について総括を行った。

 この日は、日本人、中国人のスタッフが集合して、今年一年を振り返って一番よかったこと、一番よくなかったことなどを各自披露してこの一年を振り返った。

 CRCにとって最も残念だったのは9月27日、28日に開催予定だった、「第3回日中大学フェア&フォーラム」が尖閣問題で延期になったこと だ。この開催には、CRCの日中のスタッフが心血を注いで準備してきただけに、延期と決まったときは半ば放心状態だった。このハプニングは、全員がそれぞ れ今年一番の出来事として受け止めていた。

 しかし、11月29日には、これに代わるイベントとして「中国の新体制下での日中関係」をテーマに掲げたシンポジウムを開催し、本音で語る日中の未来志 向について討論を行った。歴史も民族も思考方法も価値観も政治体制も全く違う日中両国がどうすれば未来志向で向き合えるか。

 このシンポジウムでは、中国の新体制下の政策や日本の政局なども視野に入れながら忌憚のない意見が出て大変面白かった。その内容については、このブログでも報告している。

 忘年会では、尖閣問題などは論議を尽くした話題であるため話に出なかったが、国際的な男女交際から結婚問題、そして日常の業務の不満と愚痴など、どこの国でもどこの組織でも出てくる諸問題が最も熱く語られることになり、それはそれで実りある忘年会だった。

 筆者にとって面白かったのは中国のヤクザと日本のヤクザの違いを語り合ったときだ。中国のヤクザは、例外なく刺青を入れているそうで、中国で刺青の人を 見かけたらヤクザ?と思ったほうがいいのだろうか。ただ、ヤクザの思考とその価値観とやり方は日中とも同じようなもので、どうもマフィアとかヤクザという 人種の思考過程は万国共通のようだということで話は一致した。

 このような一見、他愛のない会話のようだが、日中のスタッフがお互いの立場を超えて和気あいあいの中で話し合うことで共通の楽しい時間を持つことができた。 その機会と時間が最も貴重なことだと思った。

 

中国新体制下の日中関係で緊急シンポジウム

   尖閣諸島の領有権問題をめぐって日中関係はかつてないほど悪化しているが、その一方で先ごろ開かれた中国共産党大会で習近平氏をトップとする中国の新しい体制がスタートした。

 このような状況を踏まえて独立行政法人科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター(CRC)は、11月29日、東京のイイノホールで「中国の新体制下での日中関係」と題する緊急シンポジウムを開催した。

 習近平氏の新体制の下で、どのように日中関係の再構築を図るべきか。中国の状況をよく知る専門家の提言とパネルディスカッション行い、今後の日中関係再構築への有意義な討論と提言が出された。約500人が参加して盛会のうちに閉幕した。

 「中国の新体制下での日中関係」シンポジウム 

挨拶 

有馬朗人(JST中国総合研究センター アドバイザリー委員会委員長)

基調講演1

「党大会後の中国政治と日中関係」 高原明生(東京大学大学院教授)

基調講演2

「日中経済関係の新局面と日本企業の対応」 服部健治(中央大学大学院教授)

基調講演3

「転機の中国経済と日本」 大西康雄(JETROアジア経済研究所新領域研究センター長)

パネルディスカッション

モデレータ 加藤千洋(同志社大学大学院教授)

パネリスト

大西康雄(JETROアジア経済研究所 新領域研究センター長)
柯 隆(富士通総研経済研究所主席研究員)
川口 清(敏実集団有限公司執行董事)
瀬口清之(キャノングローバル戦略研究所 研究主幹)
服部健治(中央大学大学院教授)

 冒頭の挨拶に立った有馬朗人氏は、日中の文化交流の歴史を振り返り、日本と中国の歴史的背景と科学分野での学術交流などで多大な実績があったことを紹介した。

 さらに最近の中国の科学技術の活動を紹介し、世界最先端の科学技術の成果を出す一方、基礎研究の分野でも先進国と肩を並べるまでになっている中国の学術活動を紹介した。

 このような歴史と現在の中国の学術活動を考え、これからは東アジアの共同体として両国は一層の学術交流が重要であると主張し、一日も早く日中の交流を従来の形に取り戻すべきであると主張した。

 基調講演 

 基調講演では高原明正氏が、「党大会後の中国政治と日中関係」とのタイトルでまず日中両国の「戦略的な互恵関係」を打ち出した経緯を説明した。そして今回の中国の指導部の交代がどのような権力構造の中で行われたかを様々な情報や報道を分析して説明した。

  さらに反日プロパガンダによるナショナリズムの高揚は、中国社会の不満層の眼をそらす効果がある一方で不満のはけ口が中国政府に向かってくることと表裏の 関係になる危険性も指摘した。そして日中が相互に発展するための道筋をどのようにするべきか重要な時期であることを指摘した。

 最後に日本が中国と付き合うことで最重要なこととして、先の戦争で日本が中国国民に迷惑をかけたことを決して忘れてはならないと主張した。

  続いて服部健治氏は、「日中経済関係の新局面と日本企業の対応」とのタイトルで、様々な資料を示して今後の対応策を提示した。尖閣問題で反日デモが発生し て日系企業が襲撃されたり略奪された。政治問題でこのような圧力をかける手法は許されないこと、暴力行為を容認する中国政府のあり方はWTOの理念に違反すると総括した。

 また中国社会に報道の自由はなく、中国国民は暴力デモや略奪行為をTVや新聞で見ていないのではないかとし、日中の情報の非対称性を指摘した。 しかしこのような緊迫した状況になっても、日中の経済活動は相互に深く連関し、日系企業は中国社会の発展のために頑張っているのであり、金儲けのためだけで企業活動をしていないとの企業理念をはっきりと表明することを薦めた。

  またこれからの中国での経済活動のあり方は長期的視点で戦略を練ることや中国人幹部の養成と現地適応技術の開発など持続的な発展を目指す方向を示した。最 後に今回の事件を契機に日本の学校では戦争の責任のあり方をきちんと学ばせ、中国を侵略した事実を率直に国民全体が認めて共通認識にするべきこと、中国政 府には政経分離を要請することなどを主張した。

 最後に大西康雄氏は「転機の中国経済と日本」とのタイトルで、中国経済の成長について歴史的な過程を分析して紹介した。著しい成長は輸出主導型であり、賃金の急上昇、人民元の為替レートの上昇、労働力の枯渇などの課題も提示した。

 そして今後20年間の課題をあげてその対応策を提示し、日中の今後の経済活動のあり方を提言した。その中で日本が必要とするものと中国が必要とするものを分析し、日中の今後の経済交流について提言した。

  最後にパネルディスカッションが行われた。

 柯 隆氏は「ポスト胡錦濤政権の中国の政治経済見通し」とする中国の経済政策の新たな動きと所得分配の公正化などについて意見を述べた。

 川口清氏は、中国で経済活動をしている現場で感じた尖閣問題後の体験から、中国市場の動きを説明し特に日系企業の活動について提言をした。

 瀬口清之氏は「中国経済の構造変化と今後の日中経済関係」について分析し、中国は2005年から輸出投資主導型経済から内需主導経済型へと転換を進めていることを主張した。

 そして中国国民の所得が上昇している現在と今後の動向を分析し、質のいい日本製品がこれから中国市場で伸びる可能性を示唆し日本企業の取り組み方について提言を行った。

  パネルディスカッションでの論点は、日中の経済、文化、学術交流などがきわめて重要であることが語られ、特に日中の相互互恵関係の重要性が認識された。経 済で大きく成長して自信を深めてきた中国が今後も、対日強硬策を発動する可能性が危惧されるが、こうした中国政府の政策は中国の経済、文化にも影響が出て くることを指摘し、互恵関係をさらに成熟化させることで意見が一致した。  

  

 

中国総合研究センターアドバイザリー委員会の開催

                               

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 日中間の学術、産学連携活動の交流を促進するために活動を広げているJSTの中国総合研究センター(吉川弘之センター長)のアドバイザリー委員会(有馬朗人委員長)が、3月14日に開催され、今年度の活動内容と次年度の活動予定について討議を行った。

 同センターの活動は年々幅を広げており、昨年は第2回日中大学フェア&フォーラムで日中の大学の交流を促進した。今年は9月27日、28日にイノベー ションジャパン大学見本市との同時開催を予定しており、日中国交回復40周年記念の年でもあり、いまから大きな期待がかかっている。

 また昨年からは、日本の現状を中国に中国語で発信する「客観日本」を中国センターンのウエブサイトで公開しているが、最近、アクセス数が急激に上がって きており、日本の情報を求める中国人が着実に増えているようだ。アドバイザリー委員会の委員で中国大使館の李公使は「客観日本の記事は非常にいい。日中双 方に役立つし、友好発展のためにも長期的に続けることが意味がある」とのコメントもあった。

 これからも、日中間の大学や研究現場の情報交換の場として役立つよう積極的な活動が期待されており、高校、大学生の交流促進にも力を入れるようにとの意見も出された。

 

中国に向けた情報サイト「客観日本」発信から1年

                     

 中国の政治、経済、社会の動向は様々な情報によって日本に入ってくるが、日本の動向が中国に正確な形で伝わっているとは限らない。そこで中国総合研究センターは、中国への情報発信を強化するために、中国向けポータルサイト「客観日本」を平成23年3月31日(木)から一般公開した。

 それから約1年になるが、最近になってようやく中国の人たちにも広がったようで、アクセス数が増加してきた。本サイトは、「科学技術」、「教育」、「文化」、「経済・産業」、「社会・生活」、「日中交流」、「日本百科」など幅広い日本の情報を中国の人々に伝え、日本への理解を深めてもらうことを目的としている。

 「客観日本-日本情報プラットフォーム」というサイト名をつけたのは、偏った見方や情報発信ではなく客観的な見方、情報を発信することを目標としたからである。

 中国の多くの人々に利用してもらうために、発信する全ての情報を中国語にし、ニュース、写真スライドショー、動画、漫画、ゲームなどさまざまな形で提供しているのが特徴だ。

 日本に在住する中国人、中国本国にいる人たちに是非、このサイトを知ってもらいたいと思う。

 

中国中央民族大学の張華ご夫妻と懇談

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北京の中央民族大学歴史文化学院教授の張華先生と奥様の李今玉先生と東京・銀座で懇親会を開催し、最近の日中学術交流などを話し合った。

 張教授は、現在、学習院大学東洋文化研究所から招聘されて研究を行っている。研究テーマは、日本の環境政策や取り組みの歴史的な過程を調べ、中国の環境 対策に役立てようとする研究である。中国は現在、高度経済成長期にあって、大気汚染、工場排水などによる河川、海水汚染など環境が悪化している。

 日本も1970年代の高度経済成長期には同じように環境汚染を招き、環境浄化のための技術開発や政策で国ぐるみの取り組みをやってきた。張教授は、その歴史的な取り組み過程を調べるものであり、中国の環境保護にどのように対応するべきかを研究しているものだ。

 奥様の李先生は、同じ大学の生命と環境科学学院実験センターの管理者をしており、大学の学生、大学院生らの実験を指導している。今回は、春節の休みを利用して来日したもので、ご夫妻の訪問を受けての懇談会となった。

 今後の日中の学術交流でもお互いに人脈を活用して発展させることで意見が一致、これからの活動が楽しみだ。

 

中国総合研究センターの定例会

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日中の学術交流、文化交流を推進しているJSTの中国総合研究センターの月例会議が、1月24日に開かれ、昨年開催された日中大学フェア&フォーラムの総括などを論議した。

 日中大学フェア&フォーラムは、日中の大学や研究機関が一堂に会して交流を推進しようとするイベントであり、日中から100を超える大学などの参加があった。参加大学・研究機関の率直な意見・感想を聞き、今後の開催に役立てる準備が始まっている。

 筆者もその推進者の一人として模索しているが、日中の大学人の考え思惑は当然ながら違うものである。一国の経済状態、文化、国民性などを考えれば当然であるがそれをどう乗り越えていくかが最大の課題だろう。

 今年は第3回のフェア&フォーラムの開催が予定されており、成功させるために筆者も活動を開始したいと考えている。このイベントへの支援を期待している。

 

中国総合研究センター運営会議の開催

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 JSTの中国総合研究センターの運営会議が12月6日に開かれ、先月開催された第2回日中大学フェア&フォーラムのアンケート調査について討議を行った。この調査はまだ集計・分析の途上にあるが、日中の大学関係者から多くの貴重な意見が寄せられている。

 このような日中の大学の交流は、これまでに実施されたことがないため、初めての体験による反省点もあるし思わぬ収穫もある。この日の会議でも、大学関係者から出されている率直な意見を分析して今後の開催時に生かすことなどが話し合われた。

 いずれこのアンケート調査は公表されることになっており、そこからまた新たな意見が出され、次回開催への参考になれば幸いである。

 

日中大学フェア&フォーラムの打ち上げ会

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 入場者がおよそ1万人でにぎわった「第2回日中大学フェア&フォーラム(FF)」の関係者が反省会と慰労を兼ねた打ち上げ会が、10月19日に東京・四谷で開かれ、真摯で楽しい打ち上げ会となった。

 FFは、未来型のイベントなので、反対する人、疑問視する人など様々だが、時代の趨勢を見ればこのイベントが間違っていないことは明らかだ。これからの 日中の関係がより深まることがあっても後退することはない。特に科学技術分野を中心に、学術的な交流は深まる一方になる。

 それはこのFFに参加している中国関係の人々の言動を見ていると、間違いなく未来志向であることを確信する。沖村憲樹JST顧問の強力なリーダーシップで始まったものであり、今後もこのイベントは続ける必要がある。このような交流は、継続して初めて価値が出る。

 イベントの実施方法も、スポンサーを付けるなど様々な形態が予想されるし、ブースをセットしてあれだけの面積と人を動員するなら、別のやり方が模索出来かもしれない。今は自由な発想で模索を繰り返しながら、次の開催へ向けて関係者の理解を深めていくことが重要だろう。

 ともかくも、日中のスタッフのエネルギーが結集して、初めてできたイベントであり、この日の打ち上げでも反省しながらも大いに盛り上がった。

 

日中大学フェア&フォーラム2日目の開催

             

  日中の大学間の新たなパートナーシップの構築に向けて開催されている「第2回日中大学フェア&フォーラム」2日目の10月10日は、東京・池袋のサンシャイン文化会館で引き続き開かれ、1000人を超える入場者でにぎわった。 

 2日目の午前中は、「海外企業の中国進出戦略と大学連携」をテーマに講演会が開かれ、大競争時代を背景として生産拠点のみならずR&D拠点がグローバル化していく中で、中国における産学連携の現状についての報告が相次いだ。 

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  講演した人は、次の通り。

 アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)グローバルリサーチセンター日本代表の浅倉眞司さん

 ドイツのシーメンス(Siemens AG) Corporate Technology, Chief Technology Office, Innovation Strategy  

 旭化成株式会社CSR室長 高見澤正さん  

 オムロン株式会社執行役員常務 技術本部長 荒尾眞樹さん  

 ジャパンローヤルゼリー株式会社代表取締役会長 山口喜久二さん

 双葉電子工業株式会社執行役員 経営企画部長 有馬資明さん  

 三菱重工株式会社執行役員 技術統括本部副本部長 児玉敏雄さん  

 講演内容についての詳細は後日まとめるが、全体の要旨は次のようなものだった。

  講演企業のすべてが中国を単なるマーケットとはとらえていない。グローバルな事業展開におけるR&D拠点の1つとして位置付けている。 R&D拠点としては大学連携があり、企業の研究・開発の関心分野に応じて人的なつながりにおいて大学が選ばれている。これは中国の大学に置ける産 学連携思考との合致するものと考えられる。

   また、「中国のイノベーションを牽引する産学連携の仕組み」については、中国のサイエンスパーク、ハイテクパーク、大学発ベンチャーは中国経済成長を牽引する原動力となっている現状について講演があいついだ。講演者は次の通り。

中関村サイエンスパーク協会常務・副会長 劉卓軍さん

清華大学サイエンスパーク常務副総裁 李志強さん

方正株式会社社長 管祥紅さん

呉中サイエンスパーク蘇州呉中管理委員会主任 馬立恒さん  

 講演の後に会場から質問が出され、質疑が行なわれた。 

  一方、午後2時前から行なわれた特別講演の加藤嘉一さんの会場は、参加希望者であふれ、椅子が足りないために床に座り込んで聴く人たちが多数出た。

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 最初に加藤さんの基調講演の要旨は次のようなものだった。

 自身の生い立ちから高校卒業後に北京大学に留学し、中国語をマスターしながら中国市民との交流を深めていった体験と大学で多国籍の留学生と交流することで国際的な視野と考えが自然と備わっていった過程を語った。

 日中の若者たちの考え方の相違を埋めるために、東大・北京大の学生が英語で討論する交流を行い、それぞれの考えを述べて理解することを学んだ。 中国の若者や学生は、自ら海外へと出ていくことを望み、多くのハンデを乗り越えて実現しているが、日本の若い世代は内向きであり、保守的、閉鎖的ではないか。もっと外国へ出て行く気概が必要だ。

 日本は戦後、高度経済成長からバブル崩壊、失われた20年まで60年間の体験を踏んでいるが、中国はまさに日本の60年間を同時に直面しているように感じる。中国をウオッチすることは同時に日本を振り返ることになる。

 日本人の若者が海外へ出て行くことはローリスク・ハイリターンである。中国では、ビザの問題、費用の問題など多くの課題があるがそれを乗り越えて出て行く。日本の大人は若い人が行動することに邪魔しないようにしてもらいたい。

  この後、会場との質疑討論が行なわれた。フロアから発言した人は、中国人が半数、日本人が半数で男女も半数だった。中国人で日本へ留学している若者からは、加藤さんが北京で当初感じたように、中国に抱いている日本の若者の違和感を訴える内容が多かった。

  こうした状況をどのように理解して立ち向かうべきか。そのような意見を求める人もいた。また、中年のご婦人からは過去20年間に中国、香港、台湾などで生 活し教育し自身が学んできた体験談を語った。その体験に照らして見ると、いつの時代もその時代の状況によって様々な体験が生まれ、交流が行なわれ歴史がつ づられていくことを示唆したもので、加藤さんも共鳴する意見をのべていた。

 講演と討論の時間はあっという間に予定の時間を消費してしまい、日中の若者世代の考えと行動、歴史を考えさせる充実した時間だった。       

 

第2回日中大学フェア&フォーラムの開催

       日中の100を超える大学、研究機関が一同に会して新たなパートナーシップを築く「第2回日中大学フェア&フォーラム」が、10月9日、東京・池袋のサンシャイン文化会館で開催された。 

 10時の定 刻になるとオープンを告げるテープカットが行なわれた。中川正春文部科学省大臣、程永華中国大使、有馬朗人・武蔵学園園長、白章徳中国留学服務中心主任、 安西祐一郎日本学術振興会理事長、遠藤勝裕日本学生支援機構理事長、藤嶋昭東京理科大学長、中村道治JST理事長、吉川弘之CRCセンター長がそれぞれ テープを手にしてカットし、会場をオープンした。  

 このあと、中川大臣、程大使らが大学のブースの並ぶ会場に入り、熱心に見学しながらブースの係員らの説明を聞いたり活動について質問するなど楽しい見学の時間となった。 

   11時からは、北京大学を皮切りに大学アピール大会が開催され、この日は中国の48大学がそれぞれの特色をPRするアピールを行なった。2日目の10日は、日本の大学と研究機関が43のアピールを予定している。

 

 展 示会場の一角で人気を集めていたのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、旭化成グループなど11の機関と企業が展示している先端技術展示である。二足歩 行ロボットを展示している株式会社アールティ社には多くの見物人が取り囲み、人間の動作を真似て動くかわいらしいロボットに感嘆の声をあげていた。

   また宇宙探査をして地球に帰還した「ハヤブサ」の搭載カプセルとイトカワの模型を展示しているJAXAのコーナーにも日中の若い人たちが立ち寄り、宇宙活動の様子を見学していた。

 

   この日の特別開催プログラムでは、中国の科学技術・高等教育の推進に重要な役割を果たす各政府機関から、中国独特の社会経済的背景の下で進められる産学連携、地域連携、イノベーション促進活動や人材活用方策などについて紹介する講演を行なった。

 

 講演機関と講演者は次の通りである。

中国科学技術部・タイマツセンター副主任 修小平中国科学院・院地合作局 副局長 孫殿義中国教育部・留学服務中心投資処 処長 戴争鳴 

   午後か らは、パネルディスカッション行なわれた。テーマは、「中国の大学における産学連携の取組み」である。このパネルディスカッションの目的は、日本の企業が 中国へビジネス展開を進めるに当たって、中国の大学が重要な役割を果たすが、中国の大学は日本の大学と比べ、極めて多様かつ強力に産学連携活動を進めてい る。

 

  そこで、パネルディスカッションでは、中国の大学の現役トップからそれぞれの大学の産学連携の取組み、経験、成果などを紹介し、会場のご質問にも答えて議論を行なった。講演機関及び講演者は次の通り。

モデレーター:【大阪大学】理事・副学長 馬場章

パネリスト:【華東師範大学】副学長 範軍【東北電力大学】 学長 李国慶【大連理工大学】 学長補佐 李俊傑【西北工業大学】副学長 翁志黔コメンテーター:【琉球大学】理事・副学長 佐藤良也  

 

洪水のように出回るデッドコピー

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 上海の知財調査会社のQCACを訪問した際に、ゼブラ株式会社の秋山守雄氏(前同社知的財産部担当部長)と出会う機会があった。秋山氏は、いま洪水のように出回っている同社のデッドコピーの摘発をQCACとともに進めているという。

 写真は前列右が藩徳山QCAC社長、左が秋山氏、後列左がQCAC知財部・日本部の張麗麗マネージャー、右が同業務担当の江藤真愛さんである。

 先の報告で中国での模倣品は、第3世代に入ってきたとしたが、デッドコピーなどの第1世代も依然として中国で出回っている現状を聞いて、やはり模倣品被害はまだ深刻な状況にあることを認識した。

 下の写真で見るように真正品(上)と模倣品(下)とを見比べても、一見しては見分けが非常に難しい。よくよく見れば、真正品のデザインや印刷文字に違いがでていることが多いが、消費者の目からは同じものに見えるだろう。

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 摘発する際に中国の公安当局へ持ち込むが、その際には模倣品である証拠をそろえる必要がある。ボールペンやマーカーなどの場合は、インクを分析すること になるが、これは手間も費用もかかる。秋山氏は「市場を調査して模倣品を発見し、インクなどを分析して証拠を揃えてやっと摘発への準備が整うのでそれなり に時間も費用もかかる」と語っている。

 秋山氏は、日本ー中国を往復しながら模倣品根絶に取り組んでいるが、このように粘り強く取り組まない限り、市場から模倣品を追放することは難しい。最近の模倣品動向について、もう少し掘り下げた分析とその報告が必要なことを痛感した。

 

上海の知財調査会社のQCACを訪問

              

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  中国の模倣品の手口はさらに進化をしてきた。第1世代を商標やブランドマークのデッドコピーを主体としたものとするなら、第2世代は特許技術、意匠の模倣である。さらに最近になって「先取り権利」の手口などが出てきた。第3世代と位置付けたい。

  といっても商標ブランドと製品のデッドコピーがなくなったわけではなく、製造技術が進歩してきたこと、模倣品製造業者が当局の取締りの網の目をくぐるノウ ハウを身につけてきたことなどから、手口がさらに複雑化して被害企業をてこずらせている。これもまた第3世代の模倣品の動向と位置付けられるだろう。

 筆者は7月20日、上海を拠点に模倣品調査と摘発を手がけているQCAC駿麒国際諮詢有限公司(QCAC=Quick Commodity Agency Corporation)を訪問して藩徳山社長らに最近の模倣品調査活動の動向を取材した。

 QCAC社は、設立してから13年経つが、その間多くの模倣品調査を摘発してきた実績を持っており、今年からは新たに法律事務所も設立し模倣品摘発の法的対応と刑事事件立件への強化をはかっているという。

 最近の摘発実績を聞いてみると、文房具、農薬、医療機器、自動車、スポーツなど多彩な分野にまたがっている。傾向として増えているのは日本の中小企業からの摘発依頼が増えてきたことだという。

 大企業はこれまで多くの模倣品被害にあい、その摘発と防衛手段では様々な手を打ってきた。その効果は徐々に浸透してきており、従来のような被害は減少してきているが、模倣品業者が手口を進化させてきたため、新たな対応に迫られるケースも出ている。

 たとえばデッドコピー製品を大量に製造しても、摘発を警戒して一箇所に模倣品を貯蔵しないようにしたり夜間の監視を強化して、当局の摘発をいち早く察知する方策も備えるようになってきた。

 藩社長は「こちらの尾行、監視なども模倣品業者の警戒が強くて以前のようにはいかなくなった。工場に関する聞き込みもずっと難しくなっている。しかし、こちらも摘発手段を進化させているので問題はない」と語っている。

 これまでの摘発で、行政処分による罰金はなんら効果がないことも分かってきたため、刑事摘発して模倣品業者を逮捕して有罪に持ち込む手段に切り替えてきている。そのためには調査に時間もかかるし依頼企業の経費もかかる。

 しかしケースによっては、公安当局の捜査よりもずっと手厚い内定調査によって証拠を固めることもある。裁判所で軽い刑にならないように十分な証拠をそろえて提出することを重点的な取組みにしているという。

 さる6月29日と7月1日には、JETRO主催の「中小企業のための中国模倣品対策セミナー」にQCAC社の国際部マネージャー張麗麗さんが調査活動について講演するなど日本企業の模倣品被害について重点的な取組みをPRしている。

 

中国科学院と日本の学術交流の講演

                                     

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 科学技術振興機構(JST)の中国総合研究センター(CRC、吉川弘之センター長)の研究会が7月5日、東京・麹町のJST会議室で開かれ、中国科学院国際合作局の邱華盛・副局長が「中国科学院と日本の学術交流・提携内容」とする講演をおこなった。

 邱華盛副局長は、知日家として知られている方で、中国科学院の組織から活動内容までよくまとまったパワーポイントで説明した。中国科学院の組織構造は、 行政機関、研究機関、大学院などが統合されている世界的に見ても例がない巨大な研究拠点であり、国際的な知名度は抜群である。

 特に目を引いたのは、最近の国際的な連携と活動状況である。学術活動も急進的に高まっており、特に産学連携による社会貢献の実績が大きくなってきた。中国科学院が経営している有限公司が経営に参加している企業は33社にのぼっている。

 材料、バイオ、IT関連などの分野で実績をあげており、資産総額は2010年で1470億元(約2兆円)にのぼっているという。また、株式を保有している企業の売上高は、合計で2004億元(約2兆6000億円)にのぼっている。

 国際交流でもアメリカ、欧州各国と急速に広がっており、日本の存在は近年、かすんでいるように見える。今後の友好交流は、政府間だけでなく大学、研究機関など民間ベースも非常に重要になってきており、日中学術交流は新し時代を迎えていることを感じさせた。

 

中国総合研究センターの研究会

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 科学技術振興機構(JST)の中国総合研究センター(CRC、吉川弘之センター長)の研究会が、6月30日、JSTの麹町オフィスで開かれ、李志東・長岡技術科学大学教授が「低炭素社会に向けた中国のエネルギー戦略の動向」とするタイトルで講演をおこなった。

 李教授は、中国が2006年から経済成長至上主義から持続可能な発展へと大きく戦略を転換したことを紹介。2009年には、低炭素社会を目指す総合戦略 を確立したことを示した。そして2011年から始まった「第12次五か年計画」では、低炭素社会構築に向けた取り組みの強化策について解説した。

 中国は確かに低炭素政策では積極的に取り組んでいるが、省エネ技術などでは日本に比べればまだ遥かに遅れている。制度の枠組みができたからとてすぐに実効性があるわけではない。そのような現状を分析した内容も発表された。 

 中国の技術開発が急速に発展しているのは事実だが、まだ工業化で進めなけらばならない課題を多く抱えている途上国であるだけに、低炭素社会の構築が見え るまでには、まだ20年はかかるだろう。長期戦略で日本が中国を手本にする施策が出てくるかどうか。日本がもたつく間に追いつくということもあるかも知れ ない。

 

中国総合研究センターの定例会議

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  科学技術振興機構(JST)の中国総合研究センター(CRC、吉川弘之センター長)の定例会議が、5月24日に開催され、今年度に実施する調査研究の内容について検討を行った。

 調査研究のテーマは3つある。①中国の基礎教育の現状と動向、②中国の産業分野におけるイノベーション調査、③マクロに見る中国の留学交流の現状と動向であり、どれも注目度のあるテーマになっている。

 特に教育状況は、一人っ子政策になってからは教育にお金をかける風潮が強くなり、中国はいまや先進国を上回る受験国家になっている。筆者の知人の子弟も、小学校から大学の教員の家庭教師を付けられ、受験で実績のある塾通いで子供たちは忙しい日々である。

 教育制度の調査でも、単に制度の調査だけでなく、こうした受験戦争の副産物として生まれている資質の高い教育の現状も報告してほしいと思う。また中国の産業分野でのイノベーションの調査もどのような内容で整理されるか興味がある。

 

中国総合研究センターの研究会を開催

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 科学技術振興機構(JST)の中国総合研究センター(CRC、吉川弘之センター長)の研究会が、5月19日に開催され、富士通総研経済研究所の柯隆氏が「ポスト胡錦濤の中国経済の行方ー日本企業にとってのチャンスとリスク」とのタイトルで講演をおこなった。

 柯隆氏は先ごろ「チャイナクライシスへの警鐘ー2012年中国経済は減速する」(日本実業出版社)との本を出版したばかりであり、大きな反響を呼んだ。この本についての書評は筆者が担当し、中国総合研究センターのホームページに掲載している。

 この日の講演でも、著書で示したように中国経済の実体を数字で示しながら、金融政策、人民元の為替相場、不動産バブルが助長する土地価格上昇、GDPの今後の伸び率などについて論評した。

 そして中国では、第一次産業と第3次産業の構造的な転換が必要であることを主張し、農村からはみ出す人材の受け皿はサービス業であることを強調した。ま た中国国内大都市の経済規模、経済効率、人材、産業基盤など9つのテーマについて競争ランキングを示したが、非常に参考になった。

 さらに短期、長期の中国政府の課題に触れ、これからの日本企業の活動についても戦略を示唆した。

 

中国総合研究センターのアドバイザリー委員会の開催

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 日中の科学技術振興を促進するために発足した科学技術振興機構(JST)の中国総合研究センター(CRC、吉川弘之センター長)の2010年度アドバイザリー委員会が、3月31日に開催され、今年度の事業の評価と来年度の計画について活発な論議が行われた。

 CRCは2006年4月に創設された機関で、日中の科学技術交流や情報交換、相互の研究振興を促進しようというセンターである。筆者も初代のセンター長 として、主として日中間の交流の糸口に尽力した。当時は十分な予算もスタッフも不足していたが、それなりの成果は出したと自負している。

 それから5年間を経てCRCは大きく変貌した。日中の有能なスタッフを抱え、中国の科学技術や知的財産の現状を日本向けに分析したり報告し、日本の科学技術情報を中国向けに発信してきた。また今年度から「客観日本」という中国語のポータルサイトを開設した。

 5年前に中国を視野に入れ、科学技術をキーワードにした学術交流の機関を立ち上げたのは、当時、JSTの理事長だった沖村憲樹氏であり、これからは中国という時代認識に立った優れた判断と行動だったと思う。

 アドバイザリー委員会では、今年度の事業成果である様々な報告書や動向調査を評価する意見が相次ぎ、来年度に向けた更なる取り組みで意見が出された。

 日本は今まさに巨大地震と津波被災、原発トラブルで大きな試練に立たされている。中国の原子力安全政策は万全なのか。関心はどうしてもそちらに向いてし まう。中国に精通している委員が多いだけに、具体的な意見も出されたが、中国では優れた人材が原子力関係に関与しており、原発運転ではそれなりのレベルを 保っているとする意見が多かった。

 CRCは今年10月9日から11日まで、池袋のサンシャインシティや大手町サンケイプラザなどで第2回日中大学フェア&フォーラムを開催する計画であ り、日中の若い人材の交流は大きく盛り上がるだろう。今年は、日中の留学生の交流、産学連携の振興などで具体的なイベントが開催される予定であり、今から 楽しみである。

 

CRCシンポジウム「日中科学技術協力の新展開」の開催

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 大発展する中国と日本の科学技術交流を促進することを目的とした中国総合研究センター(CRC)の国際シンポジウムが、3月2日、国連大学のウ・タント国際会議場で開催され、約300人の参加者のもとに活発な討論が展開された。

 吉川弘之センター長の開会挨拶に続いて、日中双方の関係者が来賓として挨拶し、ジョン・ボイド元駐日英国大使、張傑・上海交通大学学長、仲尾功一・タカラバイオ代表取締役がそれぞれ基調講演を行った。

 そのあと2つのパネルディスカッションが行われた。第1のテーマは「中国と日本の新しい競争・協調関係 ~ものづくりの現場から~ 」とのテーマを掲げ、有本建男氏をモデレーターに次のパネリストで進められた。

■朝比奈 宏・・・東芝メディカルシステムズ株式会社 上席常務
■梶原 巡・・・株式会社大塚製薬工場 専務取締役
■木村 昌平・・・日産自動車株式会社 執行役員
■高橋 理佳・・・株式会社資生堂 技術企画部海外技術企画室 室長
■富高 忠房・・・ソニー中国研究院 院長

 2つめのテーマは「第12次五か年計画と日中科学技術協力の新展開」として、角南篤氏をモデレーターに次のパネリストによって行われた。

   穆 栄平・・・中国科学院科技政策・管理科学研究所所長 兼 創新発展研究センター主任

   松見 芳男・・・伊藤忠商事理事、伊藤忠先端技術戦略研究所長

   有本 建男・・・パネル1のモデレータ

   角南 篤・・・JST中国総合研究センター副センター長

 筆者は、最初のパネルディスカッションでは、日産の木村さんとソニーの冨髙さんに対して、中国で開発された特許技術の管理について質問した。お二人とも 核心に触れる回答ではなかったが、いずれにしても中国で開発された技術も日本、アメリカ、ヨーロッパなど世界への出願を行っていることを示唆した。

 日本の多くの企業の中国での知財管理は、現地主義ではなく中心になっているのは日本の本社知財担当であることが多く、戦略としてこれがいいかどうかよく 議論されている。模倣品の発生が多発している中国では、迅速性からも現地に相当なる権限を与える必要があるが、その点はまだ未整備になっている。

 第2のパネルディスカッションでは、特に穆 栄平先生に対し、中国での農業イノベーションについての展開と国家の方針を聴いた。日本の工業は、プロセスイノベーションで高度経済成長を実現したが、そ の間、農業は補助金漬けにしたため、結果的に隔離された農業政策になり国際競争力にも遅れることになった。

 中国では技術のイノベーションが声高に言われているが農業の道筋が見えない。農産物は日本への輸出も年々上昇する時代であり中国の農業は日本にとって大 きな関心ごとである。穆先生の回答は、時間的な制限もあって十分なものではなかったが、それでも国家五か年計画でも農業の重要性は触れているという回答 だった。

 穆 栄平先生とは旧知の間なので、いずれ北京に行った折にでも詳しく聴いてみたい。

 

中国総合研究センターの国際シンポジウムの案内

       「日中科学技術協力の新展開」をテーマにした中国総合研究センターの国際シンポジウムが、3月2日(水)に東京・渋谷区神宮前の国連大学ウ・タント国際会議場で開催される。 

 参加申し込み、開催の内容、アクセスなどは、国際シンポジウムのお知らせにあります。 

 開催趣旨は、2001年の21世紀の幕開けとともに、世界的に広がっている途上国を主体としたIT(情報技術)産業革命は、大きなうねりとなって巨大なエネルギーを発散しています。

 特に中国では、2000年代に入ってから科学技術の研究が急進的に進展し、国際的な水準の企業も数多く生まれてきました。

 今回のシンポジウムでは、元駐日英国大使であるジョン・ボイド氏による基調講演、中国の産学連携活動と研究開発でトップクラスとして評価されている上海交通大学の張傑学長、及び日本の最先端科学技術を担うタカラバイオ社の仲尾功一社長による基調講演が続き、日中の科学技術の現状認識をお話していただきます。

 続いて中国で活躍している日本産業界の方々から中国との技術協力、技術提携の在り方に関する具体的なお話をしていただき、それを踏まえて、かつて産業力、技術力で世界に貢献した日本が今後新しい国際貢献をするための取り組みについて広く議論を展開することにしています。 

 開催要項

日 時 2011年3月2日(水)午前10時~午後5時

会 場 国連大学ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区神宮前5丁目)

主 催 科学技術振興機構 中国総合研究センター

定 員 300名参加費 無料

言 語 日英中同時通訳付き

 

中国総合研究センターの定例会議の開催

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科学技術振興機構(JST)・中国総合研究センターの今年最初の定例会議が、1月18日、麹町のJSTで開かれ、来る3月2日に開催される中国総合研究センター国際シンポジウムの開催要項や、今秋開催される第2回日中大学フェア&フォーラムの企画案、中国向けポータルサイトの整備状況などで意見を交換した。

 中国総合研究センターは、日中の科学技術の交流を大きな柱にしているが、科学技術だけでなく日本の情報を広く中国の人々に知ってもらうことも重要だ。こ のような幅広い日本の情報を中国語で発信しているサイトはないので、今進行中の中国向けポータルサイトの実施には大きな期待がかかっている。

 またこの日の会議では、平成22年度の中国の科学技術に関する調査内容について報告があり、その進捗状況と今後の調査方法や内容についても討議された。

 3月2日開催のシンポジウムについては、別途、案内をしたい。

 

中国総合研究センターの定例会議の開催

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 科学技術振興機構(JST)・中国総合研究センター(CRC)の定例会が、12月7日、東京・麹町のJSTで開催され、来年秋に開催する第2回日中大学フェア&フォーラムなどについて討議を行った。

 日中大学フェア&フォーラムは、中国の大学側からの希望も多く、どのような開催内容にするかすりあわせが続いている。開催会場もほぼ固まってきており、会場施設などの点検を行っている。

 また平成22年度のCRC国際シンポジウムの骨格も固まってきた。開催日は、来年3月2日で決定しており、会場は東京・青山の国連大学ウ・タント国際会 議場になる。基調講演とパネルディスカッションが予定されており、日中の科学技術交流や産学交流について未来志向のシンポジウムが予定されている。

中国総合研究センターの研究会

    
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 科学技術振興機構・中国総合研究センターの研究会が、10月22日開催され、剣豪集団株式会社の鄭 剣豪取締役会長が「日本の中小製造業は中国市場に活路を見出すことができるか」として豊富な実例による講演と討論を行った。

 この日の講師は、剣豪先生と呼ばれている熱血経営者であり、日中の企業活動についてコラムも多数書いている。先日も日本の中小企業経営者は老齢化 していることを書いた剣豪先生のコラムを題材に、筆者が東京理科大学知財専門職大学院で行っている授業「科学技術政策論」で、受講者らと一緒に考える時間 をもったばかりである。

 この日の研究会では、中国の産業界の現状と日本企業の中国社会での活動状況など豊富な事例をもとに話が展開された。その話そのものは、多くの示唆に富んでおり、楽しくためになる内容が多かった。

 しかし、中国で2000年から始まった急進的な産業現場の発展と日本の企業が中国で成功したり失敗する要因については、明解な分析が示されていなかった。筆者はいま、その明解な要因について大きな興味を持っており、筆者の「見解」も持っている。

 この日は剣豪先生とその点で討論する時間がなく、今後、意見交換する場を持とうと約束した。

   

中国大使館の公使参事官・阮湘平氏が離任

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 写真の向こう側の3人のうち、真ん中が離任する阮公使参事官、その左が新任の李参事官、右は苗書記官。

 中国大使館科学技術処の公使参事官・阮湘平氏がこのほど離任することになり、9月14日、中国総合研究センターに離任の挨拶に来訪した。代わって参事官に就任したのは、李纓氏である。

 阮公使参事官は、5年間にわたって日本大使館に勤務し、日中の科学技術の協力関係に尽力した。特に小泉内閣当時、日中間はぎくしゃくとしていたが、阮公使参事官は終始友好的に対応し、両国の科学技術の振興に貢献した。
 
 代わって就任した李参事官も、阮公使参事官と同様、大変日本語が堪能であり、この日の離任・新任挨拶の来訪では約1時間に渡って日中の科学技術から文化、政治、経済など広範囲に意見交換した。

 いま、釣魚島海域での中国漁船をめぐる問題が勃発しているが、こうした事案にも冷静に対応しながら両国の科学技術の振興に互いに協力し合う関係を 保持することが重要だろう。この日は、この問題にはいっさい触れず、終始和やかに談笑しながら今後の学術交流や科学技術振興策について率直な意見を出し 合った。

 阮公使参事官は、北京に帰任後は国際交流センターの責任者になる予定と聞いており、今後も日本との縁は切れないだろう。これからもお互いに協力関係を保ちながら日中の友好関係を深めたい。

               
     

中国総合研究センターの定例会議

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 JST・中国総合研究センターの定例会議が9月14日開催され、9月29日(水)にホテルニューオータニで開催される「第4回・持続社会を目指した科学技術に関する日中円卓会議」の開催要項などが報告された。

 また、来年2月ー3月に開催予定の国際シンポジウムは「日中科学技術力の新展開 ~産業の視点から~」とのテーマで開催するべく準備を進めており、その進捗状況が検討された。

 日中大学フェア&フォーラムについても開催検討が続いており、中国側との折衝や会場の設定などで準備が始まっている。

 また「中国向けポータルサイトの構築」の具体的な検討にも入っており、夏場を過ぎてからスタッフの活動が活発になってきたようだ。

  

JST中国総合研究センターの研究会

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 JST中国総合研究センターの研究会が、6月24日開催された。この日の講師は、東大社会科学研究所の丸川知雄教授で講演タイトルは「移動通信における中国の自主イノベーション第三世代とゲリラ携帯」だった。

 丸川教授によると、携帯電話はいま、アジア、アフリカ、中南米などで爆発的に普及している。先進国の普及は頂点に達しており、伸び率はほとんど見られないが、中国、インド、アフリカ諸国、中東諸国などではものすごい勢いで普及している。
 その多くの携帯電話は、中国で製造されて輸出されているという。中国はいつのまにか、世界最大の携帯電話の生産拠点になっていた。

 丸川教授はまず、世界と中国での携帯電話の技術の進化について、第1世代から3世代までを検証した。中国は国家の方針と思惑から、携帯電話のメー カーや技術開発の変遷が非常に複雑になっており、第3世代の携帯電話の実用化を実現したものの、その普及率は非常に低く、何のための第3世代への取り組み だったか理解できないと指摘した。

 さらに中国ではゲリラ携帯が次々と現れてきた。パソコンの「インテルICプラス台湾マザーボード」という製造方法を真似て、携帯電話の基板にIC を組み合わせて携帯電話を製造するものだ。中小零細メーカーでも製造できるようになったため、中国ではおびただしいゲリラ携帯が普及してきた。

 こうした携帯電話は、端末のFTA(full-type approval)の認証を受けていなかったり、中国の付加価値税を脱税する製品だという。しかしこの製品普及には歯止めがかからず、中国だけでなく世界に輸出されるなど燎原の火のように広がっているようだ。

 ゲリラ携帯には、着信すると発光ダイオードが全面に光るようにつくったものや、二つのSIMカードを収納できる携帯電話を製造するなどゲリラ携帯の中でイノベーションを起こしており、中国らしいたくましい現状を報告した。

 筆者は、こうした現状は中国当局がある程度黙認しているのではないかと考える。広東省では携帯電話の製造だけで100万人の雇用を生んでいると言 われており、正規品の携帯電話であろうとゲリラ携帯電話だあろうと、もはや中国の産業界では無視できないほどに成長してしまった。そのスピードはまさに第 3次産業革命そのものである。

 産業振興、雇用創出、輸出振興と外貨獲得などを考えると、これに代わる産業はとても見つからない。またゲリラ携帯などは、他社の模倣品やデットコ ピーも出回っているが、当局がこれを取り締まるのは無理だろう。というのも、これまでの電子部品、自動車部品から日用雑貨類、食品まで広がっている模倣品 の取締りで、工商行政管理局、質量技術監督局などの行政当局は手がいっぱいだろう。

 中国の模倣品は、技術革新とともに絶え間なく進化していることを示しており、そのことにも驚いた研究会の報告だった。

               
     

中国の原子力関係報告の研究会の開催

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 中国の原子力活動の現状を報告するJST中国総合研究センターの研究会が、4月8日に開催され、近未来の中国のエネルギーを感じさせる報告会だった。

 中国の原子力発電は、いま11基が運転中であり、総出力は908万キロワットである。世界では11位である。中国では、一人当たりの電力消費量が欧米先進国の4分の1から6分の1程度である。

 ところが、消費生活の向上によって電力消費量も急増しており、中国政府は将来のエネルギー対応策に、原子力発電を利用する方針を明らかにしている。

 現在、建設中の原子力発電所は16基あり、計画中は189基にのぼる。2030年の世界の原子力発電設備容量を見ると、おそらく米国を抜いて世界トップになるとの予測も出ている。

 原子力発電所の稼働率を見ると、日本の65パーセントに比べて中国は現時点で87パーセントであり、日本よりもずっといい稼働率だ。かつて日本は、優良施設と人材によって高い稼働率を誇っていたが、いまや韓国、中国にも抜かれている。

 中国のエネルギーインフラにはあまり関心がなかったが、こうした報告を聞くとやはり世界の大国に向かって着実に歩いているように見える。

      

中国の科学技術力についての講演会

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 急速に発展している中国の科学技術は、本当のところどのくらいの力量にあるのか。
宇宙開発など国家を挙げて取り組んでいる科学技術は、すでに日本を追い越しているように見える。産業技術の中でも突出している分野もある。

 しかし、全体的に見た場合、中国の科学技術の力量はどの程度なのか。JST中国総合研究センターの特任フェローで、宇宙航空研究開発機構副理事長 をしている林幸秀氏、文部科学省科学技術政策研究所の阪彩香研究員は、3月18日、「中国の科学技術力についての分析結果」を報告した。

 中国の研究開発費、研究人口、研究論文数、特許出願数などいずれも急速に増加している。しかし、分野ごとの米国、日本、欧州、中国、韓国を比較した発表を見ると、中国の科学技術力はまだ、先進国に相当の距離がある。

 たとえば、電子情報通信分野では、米国が圧倒的に強く、次いで日本と欧州が肩を並べている。韓国も相当に追いついてきたが中国はその韓国とも差がある。
 中国には、華為という世界トップの通信機器メーカーがあるが、全体的なレベルではまだ相当に距離があることを示した。

 ナノテク・材料分野では、日本が米国より優位に立っているがその差はほとんどない。欧州もすぐ背後にいる。韓国はまだ相当に距離があり中国もその背後にいる。先端計測技術分野では、米国の強さが際立ち次いで欧州、日本と続き韓国、中国は相当に差がある。

 日本得意の環境技術分野では、日本がかろうじてトップになっているが、米国、欧州もほとんど差がなくなってきた。韓国はまだ相当の差があり、中国に至っては存在感があまりない。
 ライフサイエンス、臨床医学は、米国が圧倒的に強く、次いで欧州、日本となるが、韓国、中国はかなり差がある。

 このように先端技術でみると、中国の科学技術力はまだ途上にあることがうかがえるが、部分的に突出してくるテーマが出てくる気配はある。また研究 開発につぎ込む国の予算も、年々増加しており、海外で実績をあげた研究者の帰国も相次いでおり、中国の上昇機運はまだ当分、続くだろう。

 しかし、将来、たとえば10年後に、中国はどのくらいの科学技術力になるか。筆者の予想を言えば、韓国を抜いてアジアでは日本に次ぐ科学技術力を誇るようになるだろう。

 

中国総合研究センターの研究会で講演

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 科学技術振興機構・中国総合研究センターの第26回研究会が、3月11日開催され、「中国の知的財産権制度と運用および技術移転の現状」のテーマで講演と質疑応答、意見交換が行われた。

 中国の科学技術の研究開発は、2000年以降、急進展している。それと歩調を合わせるように知的財産権に対する意識も短期間で驚くほど変革した。

 この日の研究会ではまず、「中国の知財活動の現状と動向」のタイトルで筆者が最近の中国知財事情を講演した。90年代から始まったIT産業革命によって、モノ作りの現場は世界的に標準化され、時間差と距離感がなくなった。

 そのためモノ作りのツールと手段を手に入れた中国は、作るものがないため国営企業も巻き込んでニセモノ製造に走る現象が広がった。

 しかしこれは一過性の問題であり、過渡期にあるいま、中国でも先進国と肩を並べる知財活動を活発に行う企業が出てきた現状を報告した。

 さらに昨年話題となった、正泰集団とフランスのシュナイダー社との実用新案1件をめぐる紛争は、中国側の全面的な勝利となり、日仏特許紛争が決着した経緯を説明し、中国ではこれから実用新案戦略が非常に大きな課題になるとの認識を示した。

 また筆者は、10年後の中国の研究開発現場と知財現場がどのように変革しているかを大胆に予想する見解も発表した。

 続いて「中国の知財制度の概要と商標権をめぐる日中間の紛争について」とのタイトルで、羊建中・中国弁護士(中国専利代理(香港)有限公司日本代表処長、中国弁護士、中国商標弁理士)が講演を行った。

 羊弁護士は、中国の知財制度を解説した後、「先取り商標」のケーススタディを発表した。これは日本企業の商標を中国人や中国企業が先に中国で商標登録し、日本企業の営業活動にストップをかけて多額の値段で買い取りを迫ってくる案件だ。

 中国で製造し日本だけで販売する場合でも、中国の税関で商標権利者から船出のストップをかけられ、日本への持ち込みが出来なくなるケースがある。商標を先取りした中国の権利者が、権利をたてにして輸出を阻止するからだ。

 先取り商標をしている中国人は、商標を商品として扱っているものであり、登録した商標を高く売りつけようとする狙いがある。羊弁護士は、こうした 場合にはダミー企業などを使って相手を自分たちのペースに引き込み、価格を引き下げたり有利な条件で決着を図る方法を提示した。

 また模倣品対策には、行政機関の利用と司法機関の利用を効率よく使う方法を提示した。講演の後は多くの質問が出され、日中の知財制度の違いを確認したり、中国での知財戦略について意見を交換した。

 

中国総合研究センターのアドバイザリー委員会を開催

              中国総合研究センターの第4回アドバイザリー委員会が3月8日開催され、中国とアメリカからの委員も参加して今後の活動などについて活発な論議を行った。

 まず最初に平成21年度中国総合研究センター活動状況を報告した。

 中国総合研究センターでは、中国の科学技術動向を日本に伝えると同時に、日本の科学技術動向を中国に伝え、日中の科学技術に対する相互理解促進に寄与することを目的とした活動を行った。
 平成21年度においては、具体的な活動としては、中国の科学技術に関する調査及び基本的データセットのアップデートの実施、日中科学技術動向に関する情 報発信機能の強化、日中大学フェア&フォーラムの開催、各種研究会開催、中国文献データベースの構築及び拡充、日中科学技術分野における人的ネットワーク の構築・強化等を行った。
 
1.中国の科学技術に関する調査及び基本的データセットのアップデートの実施
1.1 「中国における技術移転の現状と動向調査」                     
1.2 「中国高等教育の現状と動向調査」                           
1.3 「中国の環境・エネルギー分野における現状と動向調査」
1.4 中国科学技術力について」 
                            
2.日中科学技術動向に関する情報発信機能の強化
2.1 「サイエンスポータルチャイナ」の拡充と更新
2.2 中国科学技術月報の発行                             

3.日中大学フェア&フォーラムの開催                          
4.研究会開催、共催
4.1 研究会の開催
1) 中国科学技術分野別動向シリーズ
2009.5.14   「中国の原子力開発」
日本テピア株式会社・テピア総合研究所 副所長 窪田秀雄
2009.6.11   「中国のライフサイエンス及びナノテクノロジー・材料分野の研究現状」
日本テピア株式会社・テピア総合研究所 副所長 胡俊傑
               研究員 坂野 ももこ
2009.6.25   「中国電子情報通信および製造技術の研究現状」
     日本テピア株式会社・テピア総合研究所 研究員 鄧 納
     上海太比雅総合研究所 主任研究員 金 徳万
2009.7.9 「中国の環境・資源・エネルギー分野および社会基盤分野の研究現状」
日本テピア株式会社・テピア総合研究所 副所長 窪田秀雄
上海太比雅総合研究所 研究員 曹 雪飛
2009.7.23 「中国宇宙開発分野およびフロンティアサイエンス分野の研究現状」
日本テピア株式会社・テピア総合研究所 副所長 窪田秀雄
北京太比雅総合研究所 研究員 盧 蕩

2) 中国経済シリーズ
2009.8.6   「中国経済の現状と課題-世界的金融危機を乗り越えて-」
    野村資本市場研究所シニアフェロー 関 志雄
2009.10.8   「金融危機に立ち向かう中国経済-政策と課題」
    富士通総研経済研究所 柯 隆
2009.11.19   「中国における内需拡大について」
   京都大学経済学研究科 劉 徳強
2010.2.10   「中国が日本を救う
-中国の成長を取り込むために中国への対応はいかにあるべきか-」
   株式会社インフォーム代表取締役 和中 清
2010.3.11
(予定)   「中国の知的財産権制度と運用および技術移転の現状」
   中国専利代理(香港)有限公司日本代表処長 羊 建中
   東京理科大学知財専門職大学院教授 馬場 錬成

3) 環境・エネルギーシリーズ
2009.12.3   「ポスト京都を巡る中国の動きと今後の展望
-中国の低炭素戦略とCOP15への対応-」
立命館大学政策科学部教授 周 瑋生

4) 中国科学技術力シリーズ
2010.3.18
(予定)   「中国の科学技術力について」
   宇宙航空研究開発機構副理事長 林 幸秀
   文部科学省科学技術政策研究所研究員 阪 彩香
   JST研究開発戦略センタフェロー 岡山 純子

 4.2 研究会の共催・後援
2009.11.18    「中国におけるアントレプレナーシップ教育」講演会
2010.3.24
(予定)  「特別企画ワークショップ-留学生の就職問題を考える-」

5. 中国文献データベースの構築及び拡充

6.日中科学技術分野におけるネットワーク構築に関する各種活動
6.1 中国からの訪問団受入

2009.8.28   科学技術信息研究所
2009.10.8   上海交通大学
2009.10.15   中国青年訪日代表団
2009.10.27   国家自然科学基金委員会
2009.11.26    重慶大学

6.2 中国関連機関への訪問
2009.6.18-19   上海交通大学
2009.6.24   中国留学服務中心
2009.6.25   中国教育国際協会
2009.8.18   国家自然科学基金委員会
2009.9.19   北京大学、北京航空航天大学、中国科学院
2009.9.25   中国シンセンハイテクパーク
2009.9.28   東北師範大学
2009.10.19   北京大学
2009.10..20  中国科学院科技政策・管理科学研究所、科学技術信息研究所
2009.12.14  中国科学院科技政策・管理科学研究所、科学技術信息研究所
2010.1.4  中国留学服務中心

    

中国総合研究センターの第25回研究会

                               

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 JST・中国総合研究センターの第25回研究会が、2月10日開催され、株式会社インフォームの和中清氏が「中国が日本を救う」とのタイトルで講演を行った。

 和中氏はまず、巨大な人口と国土を持っている中国の実情を、日本人が正確にとらえる難しさを説き、社会主義市場経済とは、社会主義と市場経済を切り離して考えるべきとの見解を説明した。

 また中国の都市と農村とのさまざまな格差を統計で示しながら、中国の農村の成長が農村の周辺に加工基地を作り、農地の流動化、農業戸籍の非農業戸籍化が新しい需要を呼び、中国の按手につながっていく方向性を示した。

 筆者の分析でも中国は、いま大きな流動期を迎えている。都市と農村の格差は不安定な要因を含んでおり中国政府もその点を熟知して対応策を次々と講じている。
 中国の中産階級と下層階級の底上げによる需要喚起が、中国の成長路線を継続的に支えることになるが、そのためには西部・内陸地域の発展が欠かせなくなっている。

 科学技術の先端分野でも中国は、急進的に発展しており、それを成長路線の先導役としていかに活用するべきか。このテーマについては、いずれ私見を述べたいと思う。

 

中国の知的財産権制度の特集報告書

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 中国の知的財産権を研究する学者と企業の知的財産権担当者14人が書いた「中国の知的財産権制度と運用および技術移転の現状」が、中国総合研究センターから発刊された。

 1985年に近代中国の特許法(中国専利法)が施行されてからまだ25年しか経ていないが、その間に中国の知的財産権は急速に制度も運用も変革してきた。この報告書は、現在の中国を代表する知的財産権の研究者が書いたものである。

 2009年10月1日から、第3次中国専利法の改正後の施行が開始されて、新たな中国の知的財産権の活動が始まっている。産業現場では、中国との連携が進んでおり日中間の貿易も増加の一途である。

 この報告書は、時代を反映した知的財産権の現状を知るためのテキストとして有力な資料になるだろう。

     
    現在の中国の知財制度と知財現場の課題などを特集した「中国の知的財産制度と運用および技術移転の現状」が、中国総合研究センターのHPにアップされた。

 執筆者は、現代中国の知財研究を代表する14人であり、中国でこの数年、特許出願数でトップを維持し2008年の特許協力条約(PCT : Patent Cooperation Treaty)の国際特許出願数で世界トップに躍り出た華為技術有限公司の知財部長が寄稿するなど興味ある論文で埋まっている。

 中国は、火薬、印刷技術、羅針盤、紙を発明した国である。清の時代の1898年(明治31年)には特許法が制定され、1904年(明治37年)には商標法、1910年(明治43年)には著作権法が公布されている。

 日本も明治維新までは先進国だった清国に学んでいたが、欧米に後れを取っていることに気が付き、清国からの文化をすべて捨てて欧米一辺倒になっ た。その後の中国は、騒乱と外国からの侵略によって混乱を起こし、社会主義国家の建国に成功したが社会制度に後れをきたし、1978年の改革開放によって 再び生気を取り戻した。

 1980年に世界知的所有権機関に加盟し、1983年から商標法の施行、1985年に中国特許法の施行、1990年に著作権法の公布をして知財の近代化に向かっている。

 今回の論文では、こうした歴史的な経過も含めて現代の世界の知財潮流から中国の制度整備までの現状と課題を網羅したものであり、読みごたえのある論文集となっている。

   

日中の学術交流について意見を交換

    日中の学術交流について意見を交換
 
 2009年9月26日から中国・長春で開催されている「第16回光電知能材料・分子電子学シンポジウム」(SIEMME’16)に出席している藤嶋昭・ JST中国総合研究センター長、橋本和仁東大教授、魚崎浩平北大教授、及川英俊東北大教授、劉忠範・北京大学教授、江雷・北京航天大学教授らが、日中の学 術交流について話し合った。

 このシンポジウムのテーマになっている光触媒を中心とした光関係ナノ材料学の世界では日中の交流が非常に活発に見えるが、40歳代以下の若手の研究者らはあまり交流をしていないことが浮かび上がった。

 劉教授は「ナノ材料などの研究は、この10年間で中国の研究者のレベルが非常にアップした。というものの全体的には、アメリカ、日本にはまだ及ばないが、日中の40歳代以下の若手の交流がないのが非常に悩みだ」と打ち明けた。

 劉教授はまだ47歳代の若さだが、交流している日本人研究者は50歳代、60歳代がほとんどであり、世代間にギャップがあることを心配した。また 劉教授によると「40歳以下の中国の研究者は忙しくて、学会やシンポジウムに出るのも興味がないようだ。日本の若手研究者が何をしているのか中国側も分 かっていない」と語り、双方に問題点があることを指摘した。

 劉教授は、47歳の若さだが、北京大学で材料関係の部門の研究者の年齢では上から2番目の「長老」だと言う。来年、先輩研究者が定年で大学を去る と一番の「長老」になる。このような現象は、中国の研究現場ではよく見られる。文化大革命の時代に研究現場から追われた人々の年代が空白になっているため に起きている現象である。しかし見方によっては、時代の変革の激しい現代にあっては、中国のように本当の長老がいなく、働き盛りの研究者があふれているこ とは、若いエネルギーがあるので活性があることにもなる。

 江雷教授は「日中の若手同士が研究交流することは非常に大事だ。われわれ中国側の研究者が日本の研究者で交流しているのは年配の先生ばかりだ。年下はあまりいない。もう少し若い世代に輪を広げたい」と言う。

 こうした意見に対し、日本側の研究者は、日中の若い研究者が知り合う機会が少ないので、これを目的にした交流助成などのプログラムが必要ではないか。今後、日本政府にもこの視点で訴えたいと言う。

 シンポジウムに出席している栄永泰明・慶応義塾大学理工学部准教授は「私は37歳だが確かに若手の日中の学術交流はあまりない。中国と共同で研究 をするのはいいが、中国の研究者と知り合う機会がない。欧米で開かれる国際的な学会に出ても、中国の研究者は余り来ない。論文は時々いいものを読むが、論 文だけでコミュニケーションがないように思う」と課題を提起しており、日中双方の課題を解決しながら、今後の交流を活性化する道筋を考え出すことで意見は 一致した。

 近く具体的なプログラムを策定し、政府側に提案する動きにつなげたい。

                                           

中国人留学生が感動のコラムを発表

    文部科学省・科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター(CRC)のホームページにある「日中交流最前線」で、東京理科大学知財専門職大学院の2人の中国人留学生が感動的なコラムを寄稿して、話題になっている。

 先月は、2年生の史可君が書きました。

 【09-004】"車到山前必有路"~進めば必ず道は開く~
 そして今月は、1年生の楊威(ヤン・ウエイ)さんが寄稿しました。
 【09-005】天国からの感謝
 いずれも感動的な内容であり、中国総合研究センターでも評判になっています。またこのコラムを読んだ多くの日中関係者が感動したとの感想を寄せてきています。
 
 
               
                                                   

中国の科学技術の現状と動向

                                             

 ファイルをダウンロード 中国の科学技術の研究開発は急進的に展開しており、その現状を知るためのデータブックを、中国総合研究センターが まとめた。  

 

 この本は第1部・中国の科学技術における施策の現状と動向、第2部・中国の科学技術の分野別活動の現状と動向からなっている。日本で言うと科学技術白書 と各種科学技術統計を収録したものであり、中国の科学技術の研究開発状況を知る上で大変、参考になるデータブックである。

 中国は1981年以来、国家科学技術計画を5年ごとに策定してきており、現在は2006年から始まった「第十一五時期科学技術発展規画」になる。技術イ ノベーション誘導プロジェクト、科学技術基礎的特定プロジェクトなど四つの柱で推進しており、経済発展と合わせるように研究開発現場も活性化している。

  いずれの統計を見てもすべて右肩上がりで推移しており、化学、材料など中国得意の分野の動向が出ている。また研究者数も多いので、各分野の論文数ではす でに世界トップクラスが出ており、研究の中身も年々専門性を高めている。

  いずれにしても、中国の科学技術の発展は日本にも好影響をもたらすことは間違いなく、日中の学術交流はますます深まっていくだろう。

                                 

 一方、中国では大学入学者数の急増、政府による各種重点化施策等に対応し、財務、人事、教育研究のシ ステム全般に関し、先進的な制度を取り入れようとする動きが顕著となっている。 
 
 このような時代を迎えて、日中の大学が一堂に会して、各々の大学の取り組 みを学ぶことは、日中両国にとってその意義は計り知れないこととしている。近年、日中大学交流は目覚ましく拡大しているが、これをさらに発展させる必要が あるとしている。 
 
 今回の日中大学フェア&フォーラムは日中大学全体に向け俯瞰的な交流の場を提供することより、両国の大学の新たな動きに対する最新の情 報を提供すると同時に、研究協力をはじめとする両国の大学の協力・連携の更なる推進を目指すものである。 
 
 また、本フェア&フォーラムは大学関係者だけで なく、日中の大学行政に携わる方々、そして企業の方々等にもこのようなダイナミックな大学変革と研究進展にどう対応するか検討する機会を提供することも目 指している。 
 
 【開催概要】(予定)・会期: 平成22年1月29日~30日・
 開催場所: 東京国際フォーラム・
 主催: 独立行政法人科学技術振興機構中国総合研究センター、独立行政法人日本学術振興会、中国留学服務中心後援(予定): 文部科学省、中華人民共和国駐日本国大使館、社団法人国立大学協会、公立大学協会、社団法人日本私立大学連盟、財団法人日中経済協会、独立行政法人学生支援機構、独立行政法人大学評価・学位授与機構
                                   

中国総合研究センターの定例会議と研究会

            

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 中国総合研究センターの定例会議が7月23日に開かれ、来春開催される「日中大学フェア&フォーラム」の準備状況、今後の中国の科学技術の調査内容などを検討した。会議後、中国のフロンティアサイエンス分野の研究会が開催され、中国の基礎研究の現状が報告された。

 来年開催予定の日中大学フェアは、かつてない大きな規模になる。参加する大学は、日中から50大学になるかもしれないが、まだ大筋は決まっておらず、今後、実行委員会で具体的な内容を決めていく予定。

 また、この日開催された研究会では、中国の宇宙、海洋開発の現状と数学、基礎物理、高 エネルギー物理、天文学、海洋の分野の研究予算、人材、成果、国際交流などについて発表された。宇宙開発では、有人宇宙活動など最近の中国の進展は目覚ま しく、将来は火星探査まで視野に入れた宇宙計画が進んでいる状況が報告された。

                              

中国総合研究センターのご紹介

  中国総合研究センターは、2006年4月から、独立行政法人科学技術振興機構(JST)に設置されました。

同センターは、中国の科学技術関係の諸団体や機関との相互理解と学術交流を目指す一方、中国の科学技術関係のさまざまな成果を日本に伝えたり、日本の科学技術関係のニュースを中国に伝える役割を担っています。