北朝鮮に設立されていた英語だけで授業する国際大学 (上)
2018/05/01
このブログは、2015年6月28日にアップされたものです。いま、北朝鮮をめぐる情勢が急転回しています。
日本では、北朝鮮問題は偏った情報しか入っていないような気がしますが、すでに3年前から世界のジャーナリストの間には、南北統一を視野に入れた考えが広がっており、北朝鮮も国際化に舵を切ろうとしているように思いました。
上下2回にわたる情報を再アップしました。
World Conference of Science Journalist 2015に参加
先ごろSeoulで開催された「World Conference of Science Journalist 2015」に参加した。MERSの騒ぎのさなかの訪韓となったが、ソウルの医師に問い合わせたところ感染者は限定的であり、人ごみさえ避ければ心配ないというコメントを信じて訪韓した。
会議のセッションで特に興味を持ったものの一つが「Science diplomacy in North Korea」というセッションである。北朝鮮の科学技術の動向を知りたいというのは、知的財産のことで少々動きを聞いていたからである。
パネリストは、米、英、韓国の研究者であり、いずれも北朝鮮と学術交流を体験したか研究現場を知っている人である。全体の印象では、北朝鮮の科学技術の国際的な交流は非常に細く、PCの普及もインターネット接続もまだ遅れている。南北朝鮮の統一という視野を入れた発言が多かったのはびっくりした。世界はすでに朝鮮半島の南北統一を前提にして話が進んでいるのだろうか。
セッションの会場風景
韓国の科学技術評価計画研究所のパク所長の発表
韓国の科学技術評価計画研究所のPark,Youngah女性の所長の発表には驚いた。所長は宇宙から撮影した地球の写真を示しながら、北朝鮮がまっ黒になっている光景を示しながら、「北朝鮮がエネルギー不足に陥っているのは明らかである」との見解を示した。食糧不足の状況もいくつかの写真で示していた。
パク所長の発表によると、北朝鮮は1997年に金正日第1書記の時代になってから科学政策を始めた。それが現在も引き継がれており、2022年まで5回の5か年計画を策定している。
南北朝鮮の合同科学技術会議をしているそうで、97年に中国で開かれたのが第1回だった。北にも科学研究者がいるのは当然だが、これまでの脱北者が多数出ている。しかし研究レベルの南北差は歴然としており、北朝鮮で科学者であっても韓国に来て科学者になったのは30パーセント程度であるという。
南北は言葉は同じだが、科学の用語の違いがある。文法も違うところがある。南北統一ではまずこれを統一するところから始めたいという意見だった。さらに東西ドイツ統一までの経過を見ていると、1973年から80年まで東西で科学交流があったことを例に、南北朝鮮も将来を見ながら人材、文化の統一をしたいとの見解を示した。
これは南北統一を具体的な視野に入れた考えであると筆者は理解した。統一に向けては、互いに尊敬しあうこと、そして話し合うことであり、個人→機関→国家の順で協力しあうべきだ。北朝鮮の現状を考えると、農業、漁業、園芸、醸造学など科学が実生活に役立つことが多数あるので、その研究が重要になってくるという見解だった。
しかしこの発表よりも、北朝鮮に設立したアメリカ主導の科学技術専門大学の運営には度肝を抜かれた。
発表したのは、朝鮮系アメリカ人のPark教授だった。
その内容は次回に示したい。