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128回・21世紀構想研究会の講演と暑気払いパーティの報告

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 128回・21世紀構想研究会は、7月19日午後6時半から開催され、黒木登志夫先生の「研究不正」(中公新書で同名の著書を刊行)の講演のあと、暑気払いパーティで盛り上がりました。
 講演で黒木先生は、分析よりも事例の紹介に重きを置いて話ししてくれましたが、どれもこれも、どうしてこんなことが起こるのか、こんなことに騙されてしまうのかと、不思議な気がしました。

 ワースト1は、日本人研究者!

 

氏名

撤回論文数

所属機関国

分野

藤井喜隆

183

日本(東邦大)

医学(麻酔科)

Joachim Boldt

94

ドイツ

医学(麻酔科)

Peter Chen

60

台湾

工学

Diedrik Stapel

55

オランダ

社会心理学

Adriam Maxim

48

アメリカ

物性物理学

Hua Zhong

41

中国

化学

加藤茂明

36

日本(東大)

分子生物学

Hendrik Schoen

36

アメリカ

物理学(超伝導)

Hyung-In Moon

35

韓国

薬学

10

James Hunton

32.5

アメリカ

経営学

 このランキングを見て驚かない人はいないと思います。捏造、不正などが発覚して論文を撤回したランキングです。ワースト1はなんと日本人研究者。しかも第7位に、日本では優れた人が集まると信じられている東大の教授です。

 個別の事例では、「リン酸化カスケード捏造のMark Spector(24)、Cornell大学大学院生、超電導のにせ伝道師のSchön、1998年Konstanz大からBell研・Batlogg研究室へ留学していた研究者の事例を詳細に報告しました。

  シェーンの不正については、NHKの村松秀さんが「論文捏造」(中公新書ラクレ)で詳細に書いています。続いて韓国を熱中させたヒト卵子核移植の黄禹錫 (Hwang Woo Suk)(韓国、2006年)についても、捏造と判明した後の韓国社会の反応なども入れて報告。いまは犬のクローニングでビジネスを展開しているというこ とにも驚きました。

  ペットの犬のクローンを作ると報酬が1千万円とのこと。これを毎月5匹生産しているようです。Novartis社(日本、2012年)の不正、さらに小説 を書くがごとくねつ造した藤井善隆(日本、2012年)なども報告しました。さらに18年に及ぶ画像捏造をしていた東大分生研教授・加藤茂明などは、発覚 が指摘される直前に教授を辞職しています。やはり確信犯だったとしか言いようがありません。

 虚構の細胞、STAP細胞小保方晴子(日本、2014)は、いまだにスタップ細胞の存在を気にしている人もいます。筆者は、当初から研究者にありがちな単なる思い込みではないかと思いましたが、黒木先生は彼女の学位論文時代からの取り組みと論文作成について詳細に分析して捏造としています。

 

Martinson,らが「Nature 2005」で発表したアンケート調査の結果が下の表です。これは、NIH R01 中堅研究者3600名、NIH postdoc 4160名へのアンケート調査ですが、研究者は常に不正の誘惑と闘っている様子が見えています。

不適切な行為分類

不適切な行為中、重要10項目

自己申告者%

データの操作

データの操作(クッキング)

 0.3

 

他人の不正の見逃し

12.5

アイデア/情報

他人のアイデアを許可なく使用

 1.4

 

関係する秘密情報を許可なく使用

 1.7

不都合なデータ

自分の不都合な先行研究を隠す

 6.0

ヒト対象研究

重大な条件無視

 0.3

 

マイナーな違反

 7.6

資金源

関係企業の不適切な開示

 0.3

 

資金源の圧力による研究デザイン、方法、結果などの変更

15.5

人間関係

学生、被験者、患者との不適切な関係

 1.4

以上の重要10項目

 

 33.0


 そして、ショックだったのは日本が研究不正大国であったことです。これまで誰も知らなかった事実ではないでしょうか。論文ねつ造のトップは、日本人研究者でしたが、国別に見ても、日本は明らかに途上国並みの不正大国でした。

 

 

論文撤回率

%)

撤回論文数*

2004-2014

発表論文数**

2008

1000

1

インド

0.0340

131

35

2

イラン

0.0323

39

11

3

韓国

0.0285

94

30

4

中国

0.0175

201

104

5

日本

0.0143

108

69

6

アメリカ

0.0081

245

276

7

ドイツ

0.0078

64

74

8

イタリー

0.0073

35

44

9

イギリス

0.0054

45

76

10

フランス

0.0047

28

54

 

世界平均

0.0239

2590

987

 黒木先生は、論文撤回はべき乗則に従っている事実を発見し、そのグラフも見せてくれました。また論文を撤回する確率は、撤回数が5回の著者は、5年後に26-37%が撤回、10年後には45-60%撤回している事実も指摘しました。

 これを撤回数が1回の著者は、5年後に3-5%、10年後は5-10%ですから、小保方晴子も名誉回復をかけて研究を続けることもできるでしょうか。


 日本に不正が多いのは、研究だけでなく、企業にも重大な不正が続いています。東芝不正会計、東洋ゴムの免震防振ゴムの不正、化血研のワクチン製造不正、三菱自動車の燃費不正など次々と有名大企業のあきれた不正事件が明るみに出ています。

 ワイロなど中国の不正をあげつらう風潮がありますが、振り込み詐欺を見ても企業不正を見ても、日本の方が悪質で根が深いと思いました。