宇宙ステーションからスペースポートへ
戎崎俊一 理化学研究所・情報基盤研究部長
日本の有人宇宙開発の柱として、地球周回軌道上にスペースポートを建設して恒常的に運用し、多様に拡大する宇宙活動の拠点、宇宙から地球に向けて様々な情報を発信する拠点にすることを提案する。スペースポートには、独立衛星の試験・修理・補給・改修を行えるスペースドックの機能、軌道間輸送のための発着基地の機能、大型宇宙構造物(直径10mクラス)の組立能力などを整備する。そして、宇宙や地球を観測するための大型望遠鏡の組み立て、静止軌道上で繰り返し運用する多目的プラットフォームの母港としての運用(プラットフォームの補給・修理、ミッション機器の交換・更新など)、月や火星の周回軌道に投入しそこで運用される人工衛星の組立や整備が行われる。
スペースポートは、多様な宇宙活動を生み出すインキュベータであり、人間の宇宙開拓におけるオアシスの役割をも担う有人拠点であり、国際協力として進めるのに相応しい人類史的事業である。これに向かうステップとして、また、このコンセプトを技術的にも実証する場として、国際宇宙ステーション(ISS)を最大限に活用して、技術の構築と有効性の実証を段階的に進める。第1段階(2005-2010)では、ISSの日本実験モジュール(きぼう)曝露部をスペースポートのプロトタイプ(機能検証モデル)として再定義し、そこで必要な技術開発と実証試験を行う。第2段階(2010-2015)では、ISSに関連するインフラ(きぼう、HTV及びその機能発展型)を有効に活用して、ISS近傍の独立衛星に対する軌道上サービスの技術実証を行う。第3段階(2015-2020)では、ISSの運用利用期間の延長を国際的合意によって実現した上で、大型観測装置の組立、地球静止軌道プラットフォームの建設、月・火星基地への周回軌道プラットフォームの組立などに向けた技術実証を行う。そして、これらの積み重ねを基礎にして、本格的なスペースポートの建設へと向かう。