森友事件に見る新聞メディアの最期 その2
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森友事件に見る新聞メディアの最期 その3

証人喚問NHK

国会で証言する籠池氏(NHKテレビから)

 戦前回帰を目指した「右翼思想の森」に隠れた真実

 森友事件は、学校建設の許認可をめぐる不正疑惑と国有地のタダ同然の払下げの不正疑惑が大きく取り上げられている。しかし問題の本質は、日本会議という右翼団体の影響を強く受けた政治勢力にあるというのが、筆者のコラムの主張である。

 右翼団体である日本会議とそれを取り巻く人脈は、あたかも一つの森を形成するように大きな茂みを作っているが、確たる輪郭を持った形状物ではない。それは「日本会議の研究」(扶桑社)で、著者の菅野完氏があますところなく書いている。

 現政権と直結するような「森」の調査報道となれば、従来の新聞メディアには不得手なテーマである。時代の要請を受けたインターネットサイトからの発信でこの事件の端緒が語られるようになったのである。

 菅野氏の緻密な調査結果、それを発信したインターネットサイト、その反響を受けて実現した刊行本。その手順こそ、第4次産業革命の産物と言えるものである。それは筆者が追跡してきたもの作りの現場と類似する点がある。

 安倍首相夫人が森友学園に3回も講演に訪れ、幼稚園児らの時代錯誤のシュプレヒコールを見て涙したという話や、国会の証人喚問などで話題の中心人物になっている籠池泰典氏夫妻と夫人の記念写真を見ても、首相夫人と森友学園が親密な付き合いであったことは明らかである。

 右翼団体の森を作っている数々の樹木の一本が森友学園であり、幼稚園児たちの教育勅語の朗読や軍歌の「海ゆかば」を歌唱する活動は、あたかも森を覆うおびただしい枝葉の一つのように見える。

 森と枝葉を涵養する忖度という「空気」

 安倍首相は、森友事件が国会で問題にされてきた当初、籠池氏を評して「教育に熱心なお方・・」と語っていたことや、首相夫人が森友学園の名誉校長になっていたこと、さらに「安倍晋三記念小学校」と名付けようとしていたことからも、籠池氏が安倍首相の大ファンであったことが分かる。と同程度に安倍首相夫人もまた、森友学園の教育活動に共鳴していたからこそ、親密な付き合いが続いてきたのである。

 

 このような事実を重ね合わせると、日本会議という右翼の森を形成する木々の一本に首相夫妻が関わっていたという状況証拠は疑いないのではないか。そう理解してみると、国有地払い下げや学校設立許認可に対する不正疑惑は、また違った見方ができる。

 すでに「忖度」という言葉が出ているように、当事者が直接指示や下命をしなくても相手の思惑を慮って行動を起こすことがあったのではないか。それが忖度である。

その裏付けになるような籠池氏の言葉がある。「突然、神風が吹いてきた」と語ったように、森友学園の設立許認可事項や払下げ話が同学園の都合のいいように、にわかに進展していったのである。

 そのような風潮を私たちは「空気」という言い方をする。誰が発信して誰が責任者になっているのか判然としないが、全体を覆ってくる一つの方向性の勢力を「空気」という抽象的な言い方で表現する。まことに言い得ている言葉であろう。

 大きな森を形作っている木々とおびただしい枝葉とその陰影の中に、安倍首相夫妻の姿が筆者にはくっきりと見ることができる。そしてその木々を取り囲むように首相官邸の夫人付き秘書たちと官邸スタッフという別の木々が繁茂して森をいよいよ勢いつかせているように見える。

 森と木々と枝葉を涵養する「空気」こそ、森友事件を形成した要素になっているのではないか。だから話題にされている当事者たちが、違法性がないことをタテにして「問題がどこにあるのか」と抗弁することができるのである。

 空気は景色と言い換えることもできる。森の景色がある意図をあたかも持っているかのようにある色に染めていく。このような色付きの景色が見えてきたのは、森友事件が発覚してからほんのわずかな時間の中で展開された森の中の木々と枝葉のざわめきの中であぶりだされたことである。

 この色とざわめきを「違法」という尺度で決めつけることは、ほとんどできない。森の木々を形成する政治勢力はそこに拠り所を見つけ、忖度と空気という言葉に寄り掛かって、今回の森友事件を森の奥深くの闇に葬ろうとしているのではないか。

 しかし、森そのものは消すことができない存在感を出し始めており、その証拠の一つがすでに出てきている。安倍内閣は教育勅語を「憲法や教育基本法に反しない形」で教材として使用を認める閣議決定をした。なぜ、そこまでこだわるのか。

 森とその中に生息する木々と枝葉の存在に、筆者はこれからも注視していくことにする。

(つづく)

 

 

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