第10回全国学校給食甲子園大会で優勝した月夜野学校給食センターを訪問
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第127回21世紀構想研究会の開催

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 第 127回・21世紀構想研究会は、6月21日(火)午後7時から開催され、黒川清先生(政策研究大学院大学アカデミックフェロー・教授、元日本学術会議会長)が「規制の虜」の演題で熱弁をふるい、講演後にはフロアと熱い討論、意見表明が展開された。

 会場には、荒井寿光さん、大村智先生、黒木登志夫先生、藤嶋昭先生、そして演者の黒川清先生と5人の21世紀構想研究会アドバイザーが顔を揃えた。

 時代認識を明確に持つ

 黒川先生はまず、1990年代の後半から今日まで、世界は目まぐるしく変転した状況を振り返った。

Wikiが始まり、グーグル、フェイスブックが出現し、MS,アップルが世界中を席巻する。一方でアメリカでの同時多発テロ事件、中東の紛争とアラブの春でアフリカが大混乱に陥った。その3か月後に日本を大地震が襲った。 

 気候大変動、地球温暖化などの環境問題が大きな課題として浮上し、デング熱、難民がヨーロッパを中心に流動し、最近では2015年11月13日にパリ同時多発テロが発生した。

 黒川先生は、このように目まぐるしく変転する世界は不確かな時代の象徴であり、そのような時代背景の中で東日本大震災が勃発し、そして福島原発事故が発生したとの認識を示した。

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 国会事故調査委員会は憲政史上初

福島原発を巡る事故調は、政府事故調、東電事故調、民間事故調などが設置された。しかし政府事故調は、各省庁からの寄せ集めスタッフであり、出身省庁の動向を見ての調査であり、東電は自社の利害の中での事故調だった。

 立法府が設置した事故調は、国政調査権を背景にしたものであり、法的調査権を付与された民間人による調査委員会は憲政史上初めてのことだった。

 様々な専門分野から集まった国会事故調メンバーは、関係者から正確に聴き取りを行い、自分たちの判断や解釈を入れず事実関係だけの報告書を作り、政府に7つの提言を行った。

 6か月に20回の委員会を開催し、記者会見も行い公開原則の方針を貫いた。この報告書は英文に翻訳して発表した。

 2012年6月に国会に提出した報告書は、福島原発事故は地震と津波による自然災害ではなく「規制の虜」に陥った「人災」であると明確に結論付けた。

 「規制の虜」とは、規制する側である経産省原子力安全・保安院や原子力安全委員会などが、規制される側である東電など電力会社に取り込まれ、本来の役割を果たさなかったことを意味する。

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 原子力発電をめぐる日本の特異文化

 原発をいったん運転するとやめられない。地方自治体・住民が電力会社から金を出させて配分した。電力会社は予算制度に縛られ、結果として世界一高い電力料金として跳ね返った。

 そして原発には重大な事故は起こらないという「神話」がまかり通るようになった。日本がIAEA(国際原子力機関)の指摘する原子力施設の安全対策を多段階に設ける考え方(深層防護)を踏襲せず、いまなおそのような備えのない原発がいくつもある。

 経産省の官僚に「どうして深層防護をやらないか」と聞いたところ、「日本では原発事故は起こらないことになっている」と言われた。 

アカウンタビリティの真の意味を誤解する日本

 アカウンタビリティ(Accountability)という言葉の正しい定義は、与えられた責務・責任を果たすことが本来の意味だが、日本では「説明責任」という間違った意味と翻訳になった。

 誰も責任を取らない、なんとなく周囲の空気で判断して流れていく無責任体制が社会全体を支配するようになった。

 福島原発の発生によって、不十分な深層防護、組織的な知識とマネージメント伝達の欠如、安全意識の欠如、規制とアカデミックな判断にとらわれている現状が露見した。

  そして何事も疑ってかかるような学習する態度が欠如し、安全文化は不完全なままに放置された。固定観念に自己満足し、閉鎖された単一の教養が高いコミュニ ティーを作った。エリートが固まってグループで考えて行動する集団浅慮ともいうべき「Group Thinking」が、国を滅ぼすことになる。異論を言いにくい社会システムが固定していった。

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 日本の大学は「家元制」である

  黒川先生が国会事故調を担当して強く感じたことは、リーダーには歴史観、世界観、反骨精神が必要であることだったという。歴史的に振り返ってみると、山川 健次郎、朝河貫一という偉大な二人の巨人が、被災地になった福島県から出ている。二人の偉人がとった信念に裏打ちされた言動を忘れないようにしなければな らない。

  日本はいまだに江戸時代から続く鎖国体質から抜け出ていないように感じるという。日本の大学は家元制というのが黒川先生の主張だ。特定の研究室に所属する 人材が後を継いでいくだけであり、外部から見ると魅力がない。大学全体が研究のスキルを教えるだけで、歴史や哲学や学問の精神などを教えていない。

 見えないヒエラルキーの中にいるのではなく、出る杭を育てる教育が大事であり、世界に出て日本を見ることが大事だ。自分が変わらなければ社会は変わらない。若い人は海外留学するべきだ。

 講演後のフロアからの質問で「いま、黒川先生に教育する年代のお子さんがいたら、どういう教育をするか」との趣旨の発言があった。黒川先生は「まず海外へ出す」と答えていた。

 元官僚、実業家、企業人など多くの人からコメントが発せられ、実り多い講演と討論だった。

 

 

 

 

 

 

 

                                                           

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